案外ここまでが長かったような気がする・・・
あれから特に何事も無く、およそ一ヶ月が過ぎようとしていた頃───
「忘れたころにバーテックス。やれやれだな」
遠くに見えるドリルっぽいモンをくっ付けた異形を眺めて呟く。
『敵、射程圏内に入りました!』
端末から東郷の声が届く。彼女の武器はスナイパーライフルにハンドガン、二丁ショットガンだそうで、別の場所にスポットしている。
「一ヶ月ぶりのお役目・・・・ちゃんとできるかな・・・・」
「えっと・・・・ここを、こうで、こう・・・」
「ほうほう」
やれやれ、何をやっているのやら。
ちなみに今回は俺もみんなと一緒にいる。とは言っても、バーテックス相手に戦うのは・・・・まだ、無理なのだが・・・・
「ええい!!なせば大抵なんとかなる!勇者部ファイトーー!!!」
「「おおーー!!」」
風さんに合わせて友奈と樹が、声を上げる。
その時───
ドン!ドドドン!!
突如、バーテックスが爆発した。今のは・・・
「え?なに?」
「東郷さん!?」
『私じゃない・・・・』
「じゃ、誰だよ」
「あ!あれ・・・」
樹の声に、頭上を見上げる。すると───
「ちょろいっ!」
自身の勇猛さを表すかの如き真紅の色をした、スタイリッシュかつスポーティーな衣装を纏った、両手に刀を持ったツインテール少女が、空から降ってきた。
「・・・・・・・ん?」
なんか、見たこと、あるような・・・・?
なんて思っていると、ツインテ少女は刀をバーテックスの眼前に投げた。樹海の、何も無い場所に刺さる刀。
「あいつなにを・・・」
「まさか・・・一人でやる気!?」
風さんの言葉に、ツインテ少女がやろうとしていることを理解した。
彼女は、一人でバーテックスを倒そうとしているのだ。
「封印開始・・・・!」
刺さっている刀は抜かず、新しい刀を虚空から呼び出して少女はバーテックスへと突撃していった。
「思い知れ・・・・私の
初めて目にする封印の儀。
バーテックスの頭が開き、そこから逆三角錘型の物体が現れた。あれが・・・"御霊"ってやつか・・・・
その時、御霊が紫色の煙を吐き出した。
直感的にヤバいと感じた俺は、右手に風の妖精の力を集め、俺たちの前方に解き放った。
「『暴風壁』・・・!」
「きゃあ!!」
「ちょ・・・煌月!?」
「かぐやちゃん!?」
『暴風壁』によって煙は俺たちを避けて行った。その間に───
「そんな目眩まし─────」
少女は煙の中を突っ切って、そして
「気配で見えてんのよ!!!」
御霊を十字に切り裂いてみせたのだった。
「殲・・・滅・・・!」
『諸行無常』
なにあれ。ちょーかっこいー・・・!
―――――――――――†――――――――――
バーテックスが砂になって消えた後、少女が俺たちの前に降り立ち、一瞥。そして
「揃いも揃ってボケっとした顔して・・・・こんな連中が神樹様に選ばれた勇者ですって?ハッ!」
随分と失礼なことを明け透けに言い放ってきた。
オマケに鼻で笑うという仕打ち。
「えっと・・・・だれ?」
「なによ、ちんちくりん」
「ちん・・・!?」
そこに東郷がやってくる。タイミング良かったな。東郷がいる前でさっきの発言は"死"を意味していたぞ・・・・・・多分。
「私は三好夏凜。大赦から派遣された、正真正銘、正式な勇者よ!!」
んん?三好だと?
「つまり、あんた達はお払い箱って事!はい、お疲れさまでしたー」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
他の四人がお払い箱という言葉に驚く中、俺だけは別のことに驚いていた。
(こ・・・・こんな奴が、
―――――――――――†――――――――――
三好春信
俺が、ばっちゃに続いて、心から尊敬する人物の一人。
文武両道。眉目秀麗。
基本的に物腰は柔らかく、誰に対しても優しく接する。
そんな彼の最愛の妹が・・・・
「転入生のフリなんてめんどくさい・・・けど、私が来たからにはもう大丈夫。完全勝利よ!!」
こんな・・・面白い性格をしていたなんて・・・・!!
「なぜ今になって?どうして最初から来てくださらなかったんですか?」
「私だって、最初から出陣したかったわよ。けど大赦は、二重三重に万全を喫していたの。最強の勇者を完成させるためにね!」
東郷の問いに、自身の端末を取り出して語る。
最強の勇者とは・・・・また大きく出たモンだ。
「私の勇者システムは、あんたたち先遣隊のデータを元に対バーテックス用の最新のアップデートを施してあるわ!そしてなにより、あんたたちトーシロと違って専用の訓練を長年受けている!!」
カッコつけて振り回した長箒の柄が黒板に当たり、ガン、と音を立てた。
さっきからなにこいつ、かなり面白いぞ。
「黒板に当たってますよ・・・」
「こりゃ躾甲斐がありそうね」
「なんですって!?」
「け・・・・ケンカはダメですよ・・・!」
む、ちょっと険悪な空気。
春さんの手前、こいつとは仲良くしておきたい───というのは建前で、ぶっちゃけこいつ、かなり面白い性格してるから勇者部においておきたい。
というワケで友奈、よろしく。
目配せして友奈に合図。友奈もちゃんと答えてくれた。
まあ、元よりこいつと仲良くなりたがっていたみたいだが・・・・
「フン・・・まあ良いわ。とにかく大船に乗った気持ちでいなさい!」
「そっかー!よろしくねっ、夏凜ちゃん!」
「い・・・・いきなり下の名前!?」
「イヤだった・・・?」
「別に・・・名前なんてどうでもいい・・・」
照れた風に視線を反らして答える。
なんだろうな、この気持ち。こいつのこと、めっちゃ、からかいたい。
まさかこれが・・・・・・恋煩い!?
・・・・・んなわきゃねーよな。ガキじゃ有るまいに。
「ようこそ、勇者部へ!」
笑顔の友奈が夏凜に告げる。
「は?誰が?」
「夏凜ちゃん」
「部員になるなんて一言も言ってない!」
「ええ、もう来ないの?」
「・・・・来るわよ。あんたたちの監視をしなくちゃだし」
「だったら部員になっちゃった方が良いよ!」
「お、そうだな」
その方が絶対に面白いことが待ってるに違いないからな・・・・
「・・・・お姉ちゃん、煌月先輩がなんか良からぬことをたくらんでる・・・」
「樹、煌月のアレは、"獲物を見つけた蛇"の顔だから、近付いちゃダメよ」
よし!では早速────フフフ・・・
―――――――――――†――――――――――
好物のビーフジャーキーを食べ終えて、ふらふら飛び回っている牛鬼の前に、俺の髪を垂らす。
じぃー・・・とそれを見つめる牛鬼。と、突然
かぷり
牛鬼が俺の髪に噛みついた!今だ!
「フィィィィィィィッシュ!!」
勢いよく、髪の毛を振り回し、牛鬼を引き剥がす。吹き飛ぶ牛鬼。その先には、夏凜の精霊と思われる鎧武者が・・・
かぷり、と牛鬼が鎧武者に噛みついた!
よっし!!!作戦成功!
と、ほぼ同時くらいに
「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」
夏凜が気付き、牛鬼を引き剥がす。
「何してんのよ!?この腐れ畜生め!!!」
『ゲドウメ・・・』
うお、こいつしゃべるぞ!?ますます面白い・・・!
「外道じゃないよ、牛鬼だよー。ちょっと食いしん坊なんだよねー」
「みんな、牛鬼に齧られてしまうから精霊を外に出しておけないの」
「そいつをしまって起きなさいよ!!!」
「勝手に出てきちゃうんだよー」
「ハァ!?あんたの端末、壊れてるんじゃないの!?」
よっしゃぁぁぁぁ!!この反応!!!これを待っていた!!!
「煌月先輩が嬉々としている・・・」
「こういう時の煌月って、ホント、生き生きしてるわよね・・・・」
この後、友奈がうどんを食べに誘ったが、夏凜は拒絶し、一人帰宅。
友奈は夏凜と、どうやって仲良くなろうか考える。
対して俺は、夏凜と春さんを引き合わせたら面白い反応が見られそうだなぁ・・・なんて、考えていた。
それが、あんなことになるとは思わずに・・・・