行き当たりばったりで進めるからこうなるんだぞ・・・と。
翌日───
「仕方ないから情報交換と共有よ!」
そう言って、昨日同様、部室の黒板の前に立つ夏凜。
昨日と違うところがあるとするならそれは・・・
「煮干し?」
煮干しの袋を抱えて、バリバリ食べてるところか。
つーか、こいつもか。春さんも煮干し喰ってたな、そういえば・・・
「なによ。ビタミン!ミネラル!カルシウム!タウリン!BTA!DHA!煮干しは完全食よ!!」
同じ事を春さんも言ってたなぁ!?
やっぱこいつら兄妹か・・・・
「あげないわよ」
「いや別にいらないわよ」
「じゃあ、このぼた餅と交換しましょう?」
「はぁ?何よそれ」
「さっき家庭科の授業で作ったの」
「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよー♪」
「いらないわよ!」
―――――――――――†――――――――――
「これまでバーテックスの襲来は周期的なものと考えられてきたけど、相当乱れている。これは、異常事態よ。帳尻を合わせるために、今後は相当な混戦が予想されるわ」
「確かに、一ヶ月前も三体来ていましたね」
夏凜の説明に東郷が、自身の初戦闘の時を思い出す。
あのとき、三体も同時に相手してたのか・・・・
「それと・・・・要注意なのが、"御社"」
「おやしろ?」
「──────ナマリの所属する、組織か?」
「察しが良いじゃない」
ナマリの名に、全員が反応する。
まぁ、あれだけのことをすりゃあな・・・・
「"御社"は本来、大赦の裏組織でね。表立ってはできないような、所謂、"汚れ仕事"を請け負っていたらしいわ」
「汚れ仕事・・・・」
「そんな連中がどうしてバーテックスと?」
「さぁ?ま、私は別に何が来ても対処できるけど、あんたたちは気を付けなさい。命を落とすかもしれないわよ!他にも・・・」
そう言って夏凜は、黒板に何かを書き足す。
これは・・・・紋様か?
「戦闘経験を貯めることで、勇者はより強くなれる、これを『満開』と呼ぶわ」
「三好さんは、既に満開を経験済みなんですか?」
東郷の問いに、夏凜は顔を背けて「まだだけど・・・」と答えた。
満開・・・・ね。
強すぎる力は何かしらの反動がある。実際、
「なぁんだ。あんたもレベル1なら、あたしたちと大差ないじゃない」
「っ!あんたたちとは基礎が違うのよ!」
「でもそれって、個人の努力次第だろー?」
「んなっ!」
にやけ面を隠そうともせず、むしろ前面に押し出して煽るように問う。
「あ!じゃあ私たちも朝練やろうよ!運動部みたいに!」
「良いですね!やりましょう!」
「樹、あんた朝起きられないでしょー」
「あ・・・・」
図星を突かれる樹。そんな彼女を友奈が笑う。
「友奈ちゃんも、朝苦手だったよねー」
「う・・・・」
そんな友奈も、東郷に図星を突かれる。結果、全員が笑った。そんな俺たちの様子を見て夏凜は──
「・・・・・・・・なんなのよ、こいつら」
すごく、呆れていた。
そんな夏凜に、友奈が言う。
「『なせば大抵なんとかなる』!」
「はぁ?なによそれ」
「勇者部五ヶ条だよっ♪」
そう言って、黒板の右上に貼られた五つの条文の書かれた紙を指す。
・勇者部五ヶ条・
一つ 挨拶はきちんと
一つ なるべくあきらめない
一つ 良く寝て、良く食べる
一つ 悩んだら相談
一つ なせば大抵なんとかなる
「なるべく、とか、大抵、とか・・・・あんたたちらしい曖昧な文章ね・・・私の中で諦めがついたわ・・・」
「あたしたちは・・・・・・アレよ!現場主義ってやつ!」
「それ、今考えたでしょ」
「あーハイハイ。考え過ぎると将来ハゲるわよ」
「ハゲないわよっ!!」
うーん、このツッコミの切れよ・・・・!
―――――――――――†――――――――――
この後、来週末の幼稚園でのお遊戯会のミーティングをやって、今日の部活は終了した。
で、翌日
この日は特に重要な依頼もなかったので、さっさと帰って新開発の酢漬け梅干しの成果を確認しようと思っていたら───
「煌月輝夜。ちょっと付き合いなさい」
夏凜に屋上に呼び出された。
いったい何の用だと言うのか。まあ、なんとなく察してはいるんだけどね。
「誰もいない屋上に二人きり・・・・まさか!恋の告白!?」
「んなわけあるかぁ!!」
「うん知ってた。他に思い付くのは・・・・あ、来週末のお遊戯会のことか?」
「それも違うわよ!」
「なんと・・・・ではアレか?文化祭の出し物について──」
「いい加減にしろぉ!!!」
「(爆)」
あー楽しい♪
なんだろうね、この、"打てば響く"って表現であってるのか?友奈たちと一緒にいるときとはまた違った楽しさがあるね♪
さて、そろそろ夏凜の堪忍袋が切れそうだから、真面目に聞いてあげましょうかね。
「で、何か俺に聞きたいことがあるのか?」
「─────────『錬獄』」
「─────────は?」
「『錬獄』という言葉に、聞き覚えは?」
「──────────いや、無いけど」
『錬獄』?───レンゴク、ねぇ・・・
あだ名か、はたまた組織名か・・・
どちらにしても、ロクなヤツじゃなさそうだな
「────なら、この三人に見覚えは?」
夏凜が三枚の写真を取り出して、俺に見せる。
「────────────────は?」
写真には知り合いの顔が写っていた。
いや、
だって・・・・この人たちは・・・・・・
「なんで・・・・
俺の命を救ってくれた人で、ばっちゃ亡き今の、俺の師匠であり、ライバルでもある人たち。
「反大赦組織『錬獄』。その三人はそこで、幹部をやってるそうよ」
「・・・・・・・なにかの間違いだろ?だって、あの人たちは、大赦の『鉄火場』で・・・」
「その『鉄火場』。
「・・・・・・・嘘だ」
「・・・・・・・・・・信じたくないのはわかるわよ。私だって・・・・信じたくなかった」
夏凜の表情が物語る。彼女は、嘘を言っていない。
「・・・・・・・・三人の居場所を知って、どうするつもり?」
「─────────────」
「答えてくれなきゃ、教えない」
「─────無理矢理にでも、吐かせてやることも可能だけど?」
パン
夏凜の髪が揺れる。右手の人差し指に、風の妖精の力を圧縮し、夏凜の真横に向けて放ったのだ。
「・・・・・・・・今のは『太刀風』。威嚇射撃と思ってくれれば良い」
「・・・・・・・・そ。なら、私も加減しないから」
夏凜が木刀を二本取り出して、構える。
俺は────