恋人同士でいちゃラブするのも良いけど、それとは違った味わいがある、と言うか、なんというか・・・・
「東郷~?これの配置はこんなモンで良いか~?」
「どれ?──────うん、良いと思う」
ある日の勇者部。
友奈ちゃんと夏凜ちゃんは、剣道部のお手伝いに。
風先輩と樹ちゃんは、花壇の草むしりに行っていて、残った私と輝夜くんは、部室にてホームページの更新作業を行っていた。
基本的には私の担当ではあるのだが、諸用で部活に参加できない時等は、輝夜くんが代理を務めてくれている。
その腕前は、ともすれば、私よりも早く正確なのではないか、なんて言われる程の物なのだが、今日まで誰も、彼の作業している所を見たことがなかった。
「まさか、こんな方法でプログラミングを行っていたなんてね」
「ふふん♪誰にも真似できない俺だけの技よ!」
輝夜くんの操作により、高速で英語を並べていく画面。しかし今、彼はキー操作をしていない。そもそもキーボードを使用すらしていない。ではどうやってタイピングしているのか?
それは、輝夜くんの左腕に注目すればわかる。
今、彼の左腕からは管が伸びており、それがパソコンと繋がっている。
輝夜くんに曰く、左腕とパソコンを繋ぐことで、頭で考えるだけでほとんどの操作を行えるのだとか。
「左腕のことを知らないと、何をやっているのか分からないわね」
「別に秘密にしているワケじゃー無いんだが、説明とかめんどいから。基本、しゃべらないようにしてんのさ」
「・・・・・そこを面倒くさがって、隠蔽工作は面倒がらないあたり、輝夜くんらしい考えね」
「それ褒めてる?」
「ふふ、どうかしらね?」
―――――――――――†――――――――――
「イチイチ日本語に変換せにゃアカンっつーのがめんどいんだが・・・・」
「最初から日本語で組んでおけばよかったのに・・・」
「俺は基本ADAしか使わないの!」
「えい・・・・?」
「だー、もう!!わーったよ!!ちくしょーめ!!!」
―――――――――――†――――――――――
「・・・・・・終わったぁ」
「お疲れ様。はい、ぼた餅」
「あー」
口を開けてこちらを向く輝夜くん。
「・・・・・・食べさせて欲しいって?」
「あーー」
「駄目です」
「・・・・・・・ちぇ、しょーがねーなぁ」
―――――――――――†――――――――――
「・・・・・・・輝夜くん。一つ、聞いても良いかしら?」
「答えられることなら」
「この前の人形劇のとき、舞台が倒れたでしょ?あのとき、園児たちにぶつかりそうになって、そのあと壊れた。あれ、輝夜くんがやったんじゃないの?」
「───────まぁ、もう隠す意味も無いから良いか」
輝夜くんはそう言って、右手を広げた。
その右手の中に、風が渦巻く。
「これは────」
「『魔法』だよ」
「魔法・・・・・?お伽噺の?」
「ゲームとかにあるやつみたいに、便利に使えるワケじゃねーけど」
「そう・・・・それで、舞台を壊したの?」
「こっそりやればバレないかなー・・・って思ってたんだけどなぁ・・・・」
右手の中で渦巻く風をそのまま握り潰して、輝夜くんは机に突っ伏した。
「別に責めるつもりは無いわよ?」
「とーぜん。誉められこそすれ、責められる理由なんてあるもんか」
「舞台壊しておいて?」
「コラテラルダメージ。園児たちを救うための、必要な犠牲だったのさ・・・・」
「はいはい。そういうことにしておいてあげます」
何もする事が無い時の私と輝夜くんは、大抵、こうしてとりとめの無い会話を繰り広げている。
「東郷の足」
「え?」
「二年も動かして無いってのに、なんでそんな美脚なん?」
「ええ・・・?」
「知り合いに聞いたことがあるんだがね?筋肉ってのは、使わないとドンドン衰えていくそうだ」
「ええ、私もそれは知ってるわ」
「だったら、二年も使ってない東郷の足はさ・・・・筋肉痩せ細ってかなり可哀想な感じになっていても、おかしくは無いハズだよな?」
「えっと・・・・・ほら!私、定期的にお医者さんに診てもらっているから・・・」
「────────ふぅん?」
「─────────理由に、なってない?」
「────────とりあえず、そういう事にしといてあげよう」
「納得してくれた・・・・ということ?」
「疑問は尽きないけどねー」
輝夜くんは、勉強はそれほどできないけれども頭はそこそこ良い。回転が早い、とでも言えば良いのだろうか。
だから、そんな彼が疑問に思うと言うことは、私たちの知らない何かがあるということで────
「まあいいや。それより東郷!膝枕ぷりーず!!」
「は?」
さっきまでの真面目な態度は何処へやら、私にそんな事を要求してくる。
「なんで私?」
「今ここに東郷しかいないから」
「なんで膝枕?」
「俺が足フェチだから」
「それ、理由になってないと思うんだけど・・・・」
やっぱりこの前の責任、取らせようかしら?
「いやさ、ここんとこ色々忙しかったから・・・・東郷の素晴らしいおみ足様に癒してもらいたくて・・・・」
「─────────」
「うわぉ。ゴミを見るかのような視線。その手の人にはご褒美なんだろうなー。俺は違うけど」
「─────────────────」
「頼むよ東郷~。ね?」
「──────────もう、仕方ないわね」
なんだかんだで、輝夜くんにはいつもお世話になっているし、時々なら、甘えさせてあげても良いかしら?
「ちょっと待ってね」
車椅子を操作して、輝夜くんの隣に移動する。
「─────うん。これでよし。はい、どうぞ」
「わーい」
ぽふ
「────────なんで顔面から飛び込んだの?」
「東郷の太腿を堪能したくて」
無言で輝夜くんの頭を絞め上げる。
「あだだだだだだだだだだだだだだ!!!!!!!!わかった!わかったから!!」
今度こそ、輝夜くんが私の膝にちゃんと頭を乗せた。
「────────その、どうかしら?」
「─────────────────」
「─────────輝夜くん?」
「───────────────すぅ・・・・すぅ・・・・」
安らかに寝息をたてて、輝夜くんは眠っていた。
なんて早い。
「・・・・こうして見ると、輝夜くんってほんと、女の子みたい・・・」
子供みたいな可愛らしい寝顔を眺めていると、いつの間にか、彼の頭を撫でていた。
この後、友奈ちゃんたちが戻ってくるまで、私は眠る輝夜くんを撫で続けたのであった。
煌月輝夜の左腕について──
輝夜の要望により、様々なギミックが搭載されている。
しかしそのせいで、耐水性に難があり、水に滅法弱い。
対して義足の方は、ESEが搭載されているくらいなので、一応の防水処理が施されている。その為、入浴くらいなら可能だが、水泳は残念ながら不可能。
よって、輝夜の弱点は『水』である。