煌月輝夜
一月二十日産まれの十三歳。
勇者部唯一の男子部員である。
そんな彼が─────
現在、フリフリのメイド服を見事に着こなして、丈の短いスカートを抑えつつ、顔を真っ赤にして、写真を撮られていた。
「──────────しにたい(涙目)」
「うんっ♪良いよ良いよ~!かぐやちゃんすっごく良い!!!」
「本当!被写体がこんなにも素敵だと、撮影してるこっちも、俄然やる気が出るわ!!!」
鼻息荒く、写真を撮りまくる友奈と東郷。その二人を睨み付けながらも、スカートからは手を離さない輝夜。
そんな三人を、私は少し離れた位置から見ていた。
「・・・・・・ねえ、風。アレ、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫♪・・・・・・・・・多分」
「お姉ちゃん、多分て・・・・」
確かに、普段の様子からはかけ離れたその姿は、十分に嗜虐心をくすぐられる。
が、それに従い輝夜をいじり倒せば、その分、後になって仕返しが来る。しかも倍で。
「・・・・・・ほんと、あいつって見た目だけは女の子みたいなのよね」
「中身はまるで正反対なのにねえ」
「よし!それじゃあかぐやちゃん!」
「─────────やっとおわりか?」
「次はゴスロリでいってみよー♪」
「──────────なんでさ(白目)」
―――――――――――†――――――――――
さかのぼること二日前。
「貸衣装屋さんから依頼が来たわ!」
「貸衣装?」
「ということは、コスプレして接客とかですか!」
友奈が嬉しそうにそんなコメントをしていると、輝夜のやつは、微妙な顔をしていた。
「─────友奈のあの顔は、俺を着せ替えて遊ぼうとたくらんでる時の顔だな」
「あんたを?」
「おう。これでも見てくれだけは良い方らしいからな、俺」
「ふぅん────────ぶふっ!」
ふと、タキシード姿の輝夜を想像してしまい、思わず吹き出してしまった。
「───────おいヤク中女。今何を想像した」
「誰がヤク中だ」
「あわわわ。ケンカしないで・・・・!」
「ハイハイ。煌月も夏凛も、ケンカしてないで話を聞きなさい」
風に言われて、睨み合っていた視線を外す。
「・・・・命拾いしたな」
「・・・・そっちこそ」
「はぁー。まったく、煌月。この依頼はあんたが居なくちゃ始まらないんだからね?」
「────────────まじで?」
「マジよ」
―――――――――――†――――――――――
内容によると、宣伝用の写真を撮る為に、モデルになってくれる美人が欲しい、とのこと。
「うん。それは理解できる。でも何で俺なん?」
「この中で美人って言ったら、あたしか東郷か煌月でしょ?」
風のその発言に、友奈がうんうん、と首を縦に振る。
「じゃあ風さんがやれよ!!」
「向こうからのご指名なのよ!!」
「だからなんでさ!!!」
「この写真見せたらそうなっちゃったのよ!!!」
「ごふっ!?」
風が一枚の写真を取り出した瞬間、輝夜が吐血してぶっ倒れた。
「え!?ちょ・・・・輝夜!?」
「わぁ!懐かしい!去年演劇部のお手伝いした時のやつだぁ♪」
「無視されてる・・・・」
「煌月はそのうち復活するから、ほら、二人も見てみなさい」
釈然としないが、写真が気になるので仕方なく放ってそちらを見る。
舞台後の集合写真のようで、演劇部のメンバーとおぼしき男女数名に交ざって、友奈、風、東郷の三人が写っている。輝夜の姿は無い。
と、思ったら────
「────あれ?お姉ちゃん。このお姫様役の人は・・・・?」
「さすが樹。鋭いわね。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
今、風は何と言ったか?
この、
「風。騙そうったってそうはいかないわよ。こんな良いとこのお嬢様みたいな女の子が、輝夜な訳無いじゃない」
「まぁ、そう思うわよねぇ。普通」
死んだ目をして風が視線を反らす。
「・・・・・・・・東郷?」
「夏凛ちゃん。残念だけど、これは真実なの」
「・・・・・・・・友奈?」
「あのときのかぐやちゃん、すっごく可愛かったなぁ♪」
─────────────────マジで?
―――――――――――†――――――――――
なんて、衝撃の事実が明らかにされたのが、つい先日の話。
「─────────『女は化粧をすれば化ける』って、よく言われてるけど、まさか男もだなんて」
「夏凛さん。多分違うと思います」
わかってるわよ。ちょっと現実逃避してただけ。
「ハァ・・・・ハァ・・・・良い・・・・良いよ~♪すっごく良いっ!!!」
「やっぱり輝夜くんは、黒よりも白い服の方が似合うわね♪甘
「─────────────(虚ろ目)」
フリフリで真っ白でふわっふわな衣装を着せられた輝夜が、終始鼻息が乱れっぱなしの友奈と東郷に撮影され始めて、既に一時間が経過した。
その間着せ替えられた回数は、計六回。
どれもフリフリがいっぱい付いた、かわいい系の衣装だ。
「(無)」
「かーぐーやーちゃん!もっと笑顔で~」
「そうよ!せっかくの可愛い衣装なんだから、笑顔を頂戴!!」
「(無無)」
輝夜も、撮影が始まった当初は、恥ずかしさから顔を赤らめていたが、現在は最早、悟りの境地にでも立っているかの如く、無表情を貫き通している。
「・・・・・・そろそろ、良いんじゃない?」
「・・・・・・そうね。多分大丈夫でしょ」
時計を見て、そう判断した私と風は、いまだにハッスルしまくってる友奈と東郷をなだめ、依頼を完了することとなった。
宣伝の結果、その貸衣装屋は大繁盛したそうだ。