ゆゆテの方が忙しくてねぇ・・・・言い訳にしかならんけど
煌月家の実家は玉藻市にある。
白鳥家の分家であるが、そこそこの農地を持っており、シーズンになると、地元民向けに『収穫体験』を行っていたりする。
「親父ぃ!カゴが足りねぇけど!!」
「いつもの所に置いてねぇかぁ!!」
「無いから聞いてんだろぉ!!」
現在、輝夜は実家にてトマトを始めとする夏野菜の収穫を手伝っている。他の勇者部員はいない。依頼で別の場所に行っているのだ。
「ちょっと輝夜ぁ。あんた、どうして風ちゃんたち呼ばなかったんよ?」
「言ったろうに。別の依頼で今日は来れないって!」
「まぁったく!あんたと違って風ちゃんや美森ちゃんは、あーんなしっかりしてるのに!!」
「それ今関係あるか?」
「あたしがもう少~し若けりゃ、あんな良い娘放って置かなかったのにぃ~」
「あーハイハイ。そーですかい!」
「あ。言っておくけどあたし、ちゃんと旦那のことも愛しているからね?これでも若い頃は『両刀使い』なぁ~んて言われてたんだから!」
「聞いてねーよ」
―――――――――――†――――――――――
収穫が一段落して、輝夜は母親に一言告げる。
「ちょっと出掛けてくる」
「おん?どこに?」
「プラモ屋!」
―――――――――――†――――――――――
プラモ造り。
これは、輝夜にとっては趣味と言うよりも日課に近い。
幼少の頃より、文野に教えられてきたことの一つに、『なにか細かい作業をこなして、手先の器用さを鍛えるべし』というものがある。
それを輝夜は、ボトルシップ作成やプラモ造りでもって行っているのである。
おかげで、現在の彼の腕前は、木組みとはいえ、かなりの完成度を誇る駆逐艦雪風を、ボトルシップで作成して魅せる程のレベルで、それを東郷の誕生日にプレゼントした事がある。
「~♪~♪」
鼻歌を歌いながら、行き付けのプラモ屋まで歩く。
プラモ屋の前までやってきた、その時──
「もしかして・・・・・輝夜?」
後ろからの声に振り向くと、そこには、二つのおさげを前に垂らした同年代くらいの少女がいた。
「────────ええっと?」
「・・・・・覚えてない?私よ、楠芽吹」
「楠───────ああ!棟梁んとこの頑固娘!」
輝夜は思い出した。目の前の少女の事を。
彼女は楠芽吹。
大工の父を持つ少女で、輝夜にとっては所謂ファースト幼なじみというやつだったりする。
「誰が頑固だ。あと、別にパパは棟梁って訳じゃないから」
「知ってる。大赦御用達の宮大工だろ?」
「分かってんじゃない」
「棟梁ってのはただのアダ名だ。深い意味はねーよ」
「──────それ、パパは知ってるの?」
「返事してくんないけどねー」
「────────あんた、嫌われてるんじゃないの?」
ジト目で芽吹にそんな事を言われて、輝夜はとりあえず高笑いしておいた。
―――――――――――†――――――――――
プラモ屋で、目的の物──『スーパー安土城ロボ・パーフェクトアーマー』を購入した輝夜は、楠家にお邪魔していた。
「棟梁!お久しぶりッス!!」
作業中だった芽吹の父に挨拶する。彼はちらりと輝夜の方を見て、再び作業に戻るのだった。
「──────変わんないなぁ、棟梁は」
「だから棟梁じゃないって・・・・まぁ、良いわ」
芽吹と共に、彼女の部屋に上がらせてもらう。
「相変わらず女っ気の無い部屋だこと」
「なによ、ぬいぐるみでも置いておけっての?」
「ほう、ぬいぐるみかい?」
「・・・・・そうね、私なんかには、似合わないわよね」
自虐的に、そんな事を言う芽吹。だが、輝夜は──
「んー、案外そうでも無いと思うなぁ」
「・・・・・・・慰めかしら?」
「なんでさ。確かに、意外に思われるかも知れねぇけど、似合わないなんて事ぁねーよ」
「・・・・・・・なんでそう言い切れるのよ」
「んー。根拠は無い!」
「自信たっぷりに言うな」
「はっはっはー」
―――――――――――†――――――――――
パチ・・・パチ・・・とニッパーでランナーからパーツを切り取る音だけが響く。
芽吹と共同で先程購入した『スーパー安土城ロボ・パーフェクトアーマー』を作成しているのだ。
こうなると、二人は一言も喋らず、作業に没頭してしまう。
「──────右腕完成っと」
「素組だけ?塗装は?」
「持って来るの忘れた」
「戸棚の上から二番目奥」
「ん、遠慮なく」
がさがさと戸棚の中を漁る。
「──────お前さ、学校かどっかで、なんかあったのか?」
「え?」
「なぁんか・・・・覇気が無いっつーか・・・・気力が無いっつーか・・・・なんか変だぞ」
「──────私の事忘れてた癖に、そういうのを見抜くのは、相変わらず得意なのね」
「言うなよ・・・・・・話、聞かせてくれるか?」
「──────一昨年の事よ」
「──────大赦に呼ばれたっていう、アレか・・・・落ちたんだっけか」
「ずいぶんとハッキリ言う・・・」
「事実だろう。んで?」
「───────私のしてきたことは、いったい、なんだったのか・・・・・って・・・・」
「───────ふむ」
「必要なもの以外全部切り捨てて!必死に努力して!その結果がこの有り様・・・・・!いったい、何が足りなかったの・・・・・?」
「──────────」
「ねぇ、輝夜。あなただったら分かる?私に足りないもの」
ゲートを切り落とす手は既に止まっており、芽吹は懇願するように、輝夜に問う。
「─────────切り捨てちゃいけないモンまで、捨てたからじゃねぇかな?」
「切り捨てちゃ、いけないもの・・・・?」
「例えば・・・・・"他人"とか?」
「───────どういう意味?」
輝夜も、戸棚を物色するのを止め、芽吹に向き直る。
「死んだばっちゃが言っていたことだがね・・・・『孤高であるならば、孤独になるべからず』・・・ってな」
「────孤独」
「思い当たる節でもあったか?」
「────────わからない。けど、私が選ばれなかった理由は・・・・・なんとなく、理解できた・・・・かな」
「そうかい。そりゃ、なにより」
満足そうに頷いて、輝夜は戸棚の物色に戻る。
「────なぁ、ホントにここにあるのか?お前のパンツしかねーぞ?」
「───────────────右じゃなくて、左の戸棚よ(怒)」
ー芽吹と輝夜の関係についてー
輝夜が煌月家の子になって、初めてできた友達が芽吹。
以降、竹馬の友として、輝夜が讃州市に引っ越すまで共に過ごした。
手先の器用さを鍛える特訓として、プラモ造りを教えたのも芽吹だったりする。
風呂に一緒に入ったことは、流石に無い。