契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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Vの襲来 ー Crash & Scrap ー

上から襲い来る鉄塊を、夏凛を抱えて横に飛んで避ける。

 

「────よく、気付きましたね・・・・これが、わたしの手だって」

 

只の鉄塊と思っていたそれは、目の前の幼女の両手だった。

それに気付いたのは、彼女が地面に降りた時。と言っても、アレが彼女の手とは気付いて無かった。ただ、ナマリが襲撃してきた時と同じ様な、圧迫感を感じた。それだけの話だ。

 

「・・・・・なんなのよ、あれ」

「多分、御社の刺客だろ・・・・・お前、巻き込まれちまったな。すまん」

「謝るくらいなら、後でうどんでも奢んなさい」

「オッケ、梅干しも付けてやる!」

「どうせなら煮干しにしてよ!」

 

勇者に変身した夏凛と共に、目の前の幼女に立ち向かう。

と、その瞬間─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪~~♪~~♪~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この音・・・樹海化警報!?て事はバーテックスかよ!

 

「ちょ・・・・!?こんな時に!?」

「ッチ!・・・・・夏凛!お前は友奈たちと合流しろ!」

「でも・・・・!」

「いいから!バーテックス倒すのが、勇者の役目だろ!」

「──────────やられるんじゃないわよ!」

 

視界が光に包まれ、景色が極彩色の密林に変化するのと同時に、夏凛は遠くに飛び経った。

目の前の幼女はそれを動かず、ただ見守るのみ。俺の予想通り、奴の狙いは俺だけのようだ。

 

「さて・・・・・・キミみたいな、いたいけな幼女に襲われる理由はなんだろうね?」

「わかってる・・・・はず、です・・・・・あなた、は・・・・・おじいさまの、じゃま・・・・・・だから、です」

「ふむ・・・・・おじいさまとやらが、御社を統べる者・・・・・という事かな?」

「あなた、には・・・・・おしえま、せん」

 

もう一度、幼女は自身の巨大な手を振り下ろし、攻撃してくる。俺はそれをもう一度横に飛んで避けた。

 

「・・・・・・・うわさ、どおり・・・・・すばしっこい・・・・・」

 

幼女の動きは鈍重な上に攻撃モーションが大振りだから、ナマリよりも相手にしやすい。

の、だが─────

 

「─────────一発でも当たったら即死モンだろ、これ」

 

先程まで俺が立っていた樹海の木の根が、()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「─────────やっぱ、あんたも契約者か・・・・」

「おーばーど、です・・・・・・よく、わかりました・・・・・・・ね?」

「あんたの、その両手がどんなモンかわからんが・・・・単に重いだけでこんな風にはならない。そもそもそれだけの重量のあるモンを、あんたが軽々と振り回せるワケがない。と、くれば───────答えは明白だ」

「─────そういう、こうかの道具・・・・・・・という、かんがえ、は?」

「それもあり得るが、そんなモン動かし続けるにゃ、俺か杏子さんレベルの量の魔力が必要だ。が、あんたからはそれだけの魔力を感知出来ない。だからその線は無いと判断できるってワケだ」

「───────頭の回転・・・・・はやいです、ね?」

「まーな♪」

 

得意げに胸を張っていると、幼女が両手を左右に大きく広げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ────────本気、出しますね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言に、背筋が凍った俺は、咄嗟に上空に高く跳んだ。それと同時に幼女が、まるで目の前のハエでも叩き潰すみたいに、両手を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐしゃり、と音がして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────────うっそだろぉ・・・・」

 

思わずそんな言葉を吐き出す程に、圧倒的な攻撃だった。

 

「これが・・・・・・わたしの悪魔・・・・・・・アンドレアルフスの、能力・・・・・・『圧壊殄掌(プレス・オブ・クラッシュ)』・・・・そして・・・・・わたしの、両手の・・・・・宝具・・・・・『掌上魔猿』で・・・・・射程を、てのひらから・・・・わたしの視界に・・・・広げています・・・・・・」

 

幼女の解説を聞きながら、俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・どうします、か?・・・・・その足・・・では・・・・・自慢のスピードも・・・・・形無し、です・・・・・よね?」

「───────────────」

 

こんな能力の敵が相手では、友奈たちに相手を頼むのも難しい。そもそも、友奈たちが来るよりも前に、俺は紙っぺらみたいになって死ぬだろう。

まさに、万事休す。

なのではあるが──────

 

「─────────────本当は」

「・・・・・?」

「本当はさ・・・・・使いたくなかったんだ」

「なんの・・・・・こと?」

 

幼女の質問には答えず、俺は続ける。

 

「コレにはさ・・・・・俺の罪が、その記憶が詰まっているから・・・・・・苦い思い出さ。でも─────」

 

右ポケットから、アンティークな鍵を取り出しつつ、更に続ける。

 

「ちっぽけなプライドに拘って、命捨てンのはバカだからさ・・・・・・・・もう、俺は拘らないことにする」

「─────なに・・・・を?」

 

鍵のブレード部を握り、およそ五年ぶりになる解呪の文言を呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝具解放────────鍵杖(けんじょう)『ニルヴァーナ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?・・・・その、名前・・・・・は!?」

 

驚愕する幼女の目の前で、俺の手の中の鍵が一瞬で足と同じ長さの大きさになる。

 

握りが錠前の形状をした、鍵のような形の杖。

 

これこそ、俺の宝具。その名も"鍵杖『ニルヴァーナ』"

 

「さて─────────こいつを解放しちまったからには・・・・・・さっさとあんたを倒させてもらうからな」

 

ニルヴァーナを構え、俺は幼女に宣言した。




宝具『掌上魔猿』について───

出典元は"西遊記"
釈迦の手のひらの上から逃れられない孫悟空の逸話から。

所有者の視界に映るもの全てを、"掌の上にある"と確定させる宝具。
逃れる術は、所有者の視界から外れることのみである。


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