あれは嘘だ。
ニルヴァーナについて説明しなかったのを思い出したので、五話後半を執筆。
そいでは、どうぞ、御堪能ください。
「ん?あれは・・・・・」
友奈たちが戦っているであろう戦場に向かっている途中、上空に炎の塊が浮かんでいるのを見た。
その炎が突然弾けた、と思った瞬間、何かが落ちていった。
「お姉ちゃん!!!」
樹の叫びから、火の玉をくらったのは風さんで、それを出したのはバーテックスのようだ。
「そいつを倒せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」
樹の声がした方角とは別の方角から風さんの叫び声が聞こえてくる。まだ、バーテックスは倒せていないようだ。
ふと、辺りが暗くなった。
変だと思い上を見れば、巨大なバーテックスの御霊が。
いったい何が起きているというのか。
木々の間を抜け、俯瞰できる高所に登り、そうしてようやく全貌が見えてきた。
どうやら巨大バーテックスを相手に封印の儀を行ったところ、あいつの巨大御霊が空に出現した様子。
そういえば、俺の端末でもマップは見れたな・・・・
確認したところ、あの巨大バーテックスは複数のバーテックスが融合して出来た模様。
なら・・・・・!
「ニルヴァーナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バーテックスへと飛び掛かりながら、俺は
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《ニルヴァーナ》
正式名称《模倣型解脱法方程式演算処理錠鍵》
太古の昔に"解脱の方程式"というものを発見した魔導師がいたという。
そいつはその方程式を、"鍵と錠前を組み合わせた剣"に組み込み宝具にすると、『人の世の理を正す』という名目の下、大量虐殺を行ったのだと言う。
そんな曰く付きの代物を、
ニルヴァーナを振りかざし、悪霊を
あのときの事は、今でもトラウマの一つとして、心に刻み込まれている。
ばっちゃに叱られたことが、じゃない。
ばっちゃに大怪我を負わせてしまった自分自身に、恐怖し、トラウマになったのだ。
なぜ、俺にこんなモンが扱えるのかはわからない。
だが、その理由が何であれ、今、こうして、みんなのために戦えるのであれば、俺は────────!!
―――――――――――†――――――――――
「
右手に握るニルヴァーナの形状が、杖から剣へと変化する。
これこそ、ニルヴァーナ本来の姿。
とは言っても俺に出せる出力は、精々が一割弱程度。
それ以上出力を上げようとすれば、五年前の時の様に自壊を起こして、今度こそ俺は肉塊となってしまうだろう。
だが、一割もあれば事足りる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「えっ!?かぐやちゃん!?!?」
合体バーテックスに飛び乗ると同時に、ニルヴァーナをバーテックスに突き刺し、
「
ガチャリ、とニルヴァーナを回した。
瞬間、バーテックスの合体は解け、元の四体のバーテックスへと変化した。
「な!?」
「これは・・・・・!?」
「輝夜くんが・・・・これを?」
夏凛、樹、東郷の三人が驚愕の声を上げる中、
「────見て!御霊が!!」
友奈が、空から三つの御霊が堕ちてくるのに気付いた。
どうやら宇宙にまで行っていたらしく、大気摩擦とやらで真っ赤に燃えながらこちらに向かって来る。
大気圏突入とか、ロマンだよなぁ・・・なんて、体内の魔力がごっそりと奪われたせいで思考力が低下した頭で考えていると、堕ちてきた三つの御霊が、それぞれの本体の元にふわりと着地。
「何がなんだか良くわからないけど、今よっ!!」
夏凛の剣が、樹のワイヤーが、東郷の砲撃が、三つの御霊を破壊した。─────そういや、今気付いたけど、なんか東郷がめっさごっついの乗ってるんだが・・・・・なにさ、あれ?カッコいいから別に良いんだけど。
何はともあれこれでバーテックスはあと一体。でもアイツの御霊は未だに宇宙遊泳の真っ最中。
「最後の一つは私が行くよ!!」
「友奈ちゃん、一緒に行こう!今の私なら運んであげられる!!」
「友奈さん、気をつけて!」
「一番の大役、譲ってあげるからしっかり殲滅してくるのよ!!」
「うん、行ってくる!!」
東郷の戦艦に飛び乗って、友奈は宇宙旅行へと旅立って行った。
ぼけーっと宇宙を眺めていると、御霊っぽい星の近くで桃色の輝きが瞬いて、御霊だと思う星を打ち砕いた。
さて、魔力も回復してきて、だいぶ思考力も戻ってきた・・・・・
「樹ィ!ちょい手ェ貸してくれ!!」
「は・・・・はいっ!?」
樹の隣に飛び移り、ニルヴァーナを落下してくる友奈たちらしき物体に向ける。
「ところで樹。なんか服装変わってね?どしたん?」
「あ、これですか?私、満開したんです!」
満開って服装まで変わるの?確かに樹から感じる霊力が普段の時よりも数段パワーアップしてる。
「なら、ちょっと無茶やっても平気か?」
「・・・・・・・・・・・やります!友奈さんたちを助けられるなら!」
「ナイスガッツ。今から俺の指示する場所にワイヤー張って緩衝ネット造ってくれ!」
「はいっ!!」
樹の瞳には、決意に満ちた光が見える。まだ怯えもチラついちゃいるが、今はこれくらいで充分。
「夏凛!お前も来い!」
「え?何する気!?」
「俺とお前で、樹にパワーを送るの!焼石に水だけど、何もしないよりはマシだ!!」
「そんな事できるの!?」
「出来るっ!この『ニルヴァーナ』なら!」
樹の前にニルヴァーナを突き立てる。
「二人とも、ニルヴァーナに触れて。樹はワイヤーを。夏凛は樹にパワーを!」
「───────っ!」
「っ!?これは・・・・・!」
ニルヴァーナに触れる樹の両手に、夏凛と俺が手を重ねる。
その状態で樹はネットを二重、三重に展開。友奈たちの受け止め準備に入る。
ギリギリネットは間に合った。
が、勢いを完全には殺しきれず、ネットは悉く破れてしまう。
「まだです!!『なるべく・・・・・・あきらめない』!!!」
それでも、樹の心は折れていない!
ワイヤーを伸ばして絡めとったり、再びネットを展開したり、懸命に、友奈たちのいるであろうカプセル的な何かを受け止めようと、努力する。
「樹・・・・・・・」
「大丈夫だ、樹・・・・・・お前の力を信じろ。俺が信じてる・・・・・お前自身を信じろ!!」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・!!!」
瞬間、ニルヴァーナに輝きが灯り、あと五m程で墜落しそうになっていたカプセルを、
風の力も受けてカプセルの勢いは止まり、無事に着地させることに成功したのだった。
「やった・・・・!やったわよ樹!!あんたがやったのよ!!!」
興奮を隠そうともしないで、夏凛は樹に抱き付きながら、彼女の頭を撫でた。
対して樹は疲労困憊。
「行ってあげて・・・・・ください・・・・・」
「あ・・・・・うん!」
ふり絞るようにそれだけ言うと、ふらり、と倒れてしまった。慌ててそれを抱き止める。
いつの間にか、先程までの衣装から、普通の勇者服に戻った樹は、俺の腕の中で死んだように眠っている。脈はあるので死んではいないのは確かだ。
「友奈・・・・・?東郷!?」
夏凛が悲鳴に近い叫び声をあげている。
突き立てたままのニルヴァーナに触れて、二人の脈を感じとる。
うん、大丈夫。生きてる。樹と同じで眠っているだけだ。
「ちょっと・・・・・二人とも起きろよぉ!!!!」
涙声で更に叫ぶ夏凛。彼女に大丈夫だと声をかけようとした、その時だった。
「けほっ─────けほっ─────」
「ゴホ─────ゴホ─────」
「っ!友奈!東郷!」
「──────へへ、大丈夫・・・・」
友奈と東郷が目を覚ました。更に、腕の中の樹も、咳き込みながら目覚める。
と、そこに風さんから電話がかかってきた。
「ああ、風さん。大丈夫かー?生きてるかー?」
「はーい・・・・・・一応・・・・・生きてまーす・・・・・」
「おう。そりゃ何より。全員生還。目出度い・・・・・ねぇ・・・・・・」
視界が暗転する。
みんなが無事で気が緩んだばっかりに、疲れがどっときたのだろう。
「・・・・え?輝夜!?ちょっと!」
「あー・・・・・だい・・・・・丈夫・・・・・・・ちょっと・・・・・・・・疲れた・・・・・だ・・・・・・・け」
意識が遠退く中、樹海化が解け、讃州中学の屋上に転送されたのを確認した俺は、焦点の定まらない頭でぼんやりと思った。
そういや俺、カバン何処に置いてきたっけ?
ニルヴァーナについて・・・
最大出力を発揮できれば、『三千世界内に存在する全知性体を天上解脱させることができる』のだが、発動した瞬間にニルヴァーナの所有者が真っ先に解脱してしまうため、発動なんてしない。そもそもそれだけの出力を安全に操作できる人間がまず、いない。神樹などの神霊クラスならば可能だが、知性体の範疇に収まってしまうため、解脱。そもそも神霊だったらこんなものが無くても人類をどうにでも出来てしまう。
そんな、強いんだか強く無いんだか、良くわからない宝具。