前回の前書きにて、『丸亀城の戦い』は書かないと言ったな。
アレは嘘だ。(ウワァァァァァァァァ······)
ネタを思いついたので、がんばって書くことにしました。
とりあえず今回分をどうぞ、お納めください。
ある日の授業中、いつも通りに睡眠学習をきめこんでいたら、謎の電子音に叩き起こされた。
「っ!?・・・???」
周囲を見回すと、教師を含め全員がなんでか僕の方を見ていた。
「え?・・・・・・何?え??え???」
「りっくん」
なにがなんだか分からず狼狽していると、左隣の席のみぃが教えてくれた。
「鳴ってるの、りっくんのスマホだよ」
「え!?・・・・・・ぅお、マジだ。さんきゅ、みぃ」
みぃにお礼を言って、教師に一言謝罪して教室を出る。
「おーい輪廻ー。ちゃんと電話でられるかー?」
「できらあ!」
教室を出る直前、タマっちクンがからかってきたけど元気よくガッツポーズして答えた。
廊下に出てスマホを見る。んで、誰からなんだ?
「・・・・・・・・・え?誰の番号?」
知らない番号だった。歌野たちの番号は全部入力済みなので、少なくともみんなではない。(もっとも、全員今授業中だからこんなこと出来るわけがない)
「とりあえずでてみるか・・・」
えっと・・・たしか・・・ここを、こう!
「よし!はいもしもs」
『輪廻テメエ!いつまで待たせやがる!!』
いきなりの大声で耳がキーン、てなった。
いや、というか・・・
「なんでニックが電話かけてくるの?」
『んなこたァどうでもいいからさっさと来い!』
ブツンッと勢いよくきられた。
「・・・・・・・・・・・・来いってどこに?」
―――――――view,change:side―――――――
輪廻が教師に早退する旨を伝え、足早に去っていった後、歌野は
「(あのデビル・・・・・・いつか畑の肥やしにしてやる・・・・・・)」
物騒なことを考えていた。
それと並んで水都は
「(りっくん・・・・・・またあの悪魔に振り回されてる・・・・・・)」
輪廻の心配をしていた。
と、その時授業終了の鐘が鳴り、教師が挨拶して去っていった。
「輪廻のやつ・・・・・・なんの用事だろうな?」
「さあ?でも、あのニックっていう悪魔に呼ばれたみたいだよ?」
授業が終わるや否や、珠子と杏が話し合う。
そこに乗り掛かるようにして友奈が叫ぶ。
「きっと人助けだよ!ニックさんって悪魔だけど実はいい人なんだよ!」
「高嶋さん・・・・・・あいつになにかされたの・・・・・・?」
友奈の発言を受けて、千景が問う。すると、
「この前ゴリゴリ君もらったんだー♪」
「・・・・・・・・・は?」
友奈のこの発言に、千景は困惑した。
何故ゴリゴリ君なのか、そもそも何故持っていたのか、いやそれ以前に
訊きたいことがたくさんありすぎて、さしもの千景もフリーズしていた。
「ゴリゴリ君?こーんな時期によく食えるなぁ・・・」
珠子が感心していると、ひなたが
「そういえば輪廻さんが、『ニックのやつ、アイス好きでさぁ。春夏秋冬いつでもどこでも食べているんだよ』と言ってましたね」
「そうなのか・・・・・・・・・余程身体が丈夫と見える!」
「そういうことじゃないと思うわ・・・」
若葉の何処かズレた考えに突っ込む千景。
その時、なにか考え込んでいた歌野が
「よし!みーちゃん、りっくんをチェイスするわよ!」
「いきなり何を言い出すの、うたのん!?」
唐突にアブないことを言い出した。
「考えてもみてよ!このままだと、りっくんはあのデビルの言いなりよ!?そしたらきっと、最後には私たちから離れていってしまうのだわ!!」
「ッ!!」
「いや・・・流石にそれは、考え過ぎなのでは?」
若葉がやんわりと止めようとするが、火の付いた歌野は止まらない。
「みーちゃん!今ならまだりっくんをレスキューできるわ・・・・・・私たちが、あのデビルから、りっくんを守るの!!」
「わ・・・私たち、が・・・・・・でも・・・そんなの・・・」
「これは私とみーちゃんにしかできないミッションよ・・・・・・二人で、がんばりましょう!!」
「うたのん・・・・・・うんっ、私、がんばってみる!」
「それでこそみーちゃん!一緒に守りましょう!りっくんを!!」
ひしっと水都に抱き付く。
「うたのんっ!」
水都も負けじと抱きしめ返す。
「これが・・・・・・愛のちから・・・・・・!!」
「うむ・・・!なんだかよく分からないが、素晴らしいぞ!二人とも!」
「ふたりとも、りんくんのことが大好きなんだねー♪」
目を輝かせる杏と、よくわかっていない若葉と、呑気に感想を述べる友奈を除いた三人が、額を寄せ合いひそひそと話し合う。
「どうする?あれ」
「このままは流石に不味いと思いますが・・・」
「そうね・・・・・・でも、良い機会なんじゃないかしら・・・・・・」
「良い機会・・・とは?」
「あの『悪魔』を名乗ってるあいつについて・・・・・・なにか掴めるかも・・・・・・」
「なるほど・・・普段の私生活すら謎に包まれている彼ですからね。では、歌野さんたちに協力する、ということで?」
「タマはもうなんでもいいぞ。むづかしくて付いていけん」
「なら・・・・・・決まりね・・・・・・」
その後、三人は歌野に協力する旨を伝え、それを見た杏たちも便乗し、結果、全員で輪廻の尾行をすることになったのだった。
「・・・・・・思ったのだけど・・・・・・尾行するには、人数、多すぎじゃない?」
「ま・・・まあ、そこは、なせば大抵なんとかなる・・・ということで・・・」
「ならないと思うわ・・・・・・」
「ですよね・・・」
やれやれ、と肩をすくめる千景とひなたであった。
―――――――――――†――――――――――
さて、その件の輪廻だが―――
彼は坂出市に来ていた。
「ここか―――」
正確には、坂出市内の総合ショッピングモール『イネス』内、一階フードコートエリアにいた。
「さて、反応はこの辺だけど・・・」
「遅ェぞ輪廻ェ!!」
「・・・・・・はい、見ーつけた」
周囲への迷惑を考えない大声。それに導かれてたどり着いた先に、果たして、ニックはいた。
「んー?・・・・・・こっち・・・も・・・?それとも・・・こってぃも?なんて読むの、これ?」
「店の名前なんざどうでもいいんだよ。オイ輪廻」
「はいはい、お金ならここにありますよー」
輪廻がニックに財布をまるごと渡す。
受け取るや否や、ニックはアイスクリーム屋のアイスを片っ端から注文していくのだった。
「・・・・・・まあ、どうせ使い道なんてなかったからいいんだけどさ・・・」
ふと、後ろを振り返る。
視線の先の柱の影に、見覚えのある・・・なんて言葉がなまっちょろく思える程見知ったメンバーが、そこからこちらを伺っていた。
すなわち、歌野たちである。
「(バレてるの・・・・・・わかってなさそうだなぁ~。どうしよう・・・・・・)」
一方、歌野たち―――
「・・・・・・戸塚くん、気付いているわね」
「気付いてますね・・・すごく戸惑っているみたいです」
(今のところは)まともな思考の持ち主である、千景とひなたが渋い顔をして他の全員を見ていた。
「うたのんうたのん、どうしよう・・・りっくんのお財布、ニックに獲られちゃった・・・」
「ぐぬぬ・・・忌々しいデビルマンね!アイスが食べたいなら自分で払いなさいよ!!」
歌野と水都は輪廻たちの様子を、
「ふわぁぁぁ!!三角関係!三角関係だよ!タマっち先輩!変則だけど、それがまた素敵だよぉぉぉ!!」
そんな彼女たちを眺めて興奮する杏と、
「あんずが壊れた・・・」
「しかし、あの『ニック』という悪魔・・・何が目的でアイスを・・・」
「アイスが好きなんだよ、きっと!なんだかわたしも食べたくなってきちゃった~」
杏を見て若干引いてる珠子と、ニックについて考察している若葉、そんな彼女にピュアな答えを提示する友奈。
正直に言おう。
端から見れば只の変人集団である。
実際、彼女たちを見た男性客の一人が、顔をひきつらせて去っていったり、子供連れの女性客が不思議がる子供の手を引いて足早に立ち去っていっていた。
と、その時
「あ、りんくんからメールだ」
「む・・・私にもきたぞ?」
「どうやら、全員に送ったみたいですね」
とうとうしびれを切らしたのか、輪廻は隠れている(と、本人たちはそう思っている)みんなに対して一声かけることにしたようだ。
「りっくんが、私たちにもアイス奢ってくれるって」
「タマはチョコ味ー!!」
「わたしイチゴが良いー!!」
「な!二人とも!待て!」
「行ってしまいましたね・・・どうしますか?若葉ちゃん」
「はぁ・・・・・・仕方ない、行くか」
あっさりと飛び出していった珠子と友奈を追いかけて、全員が輪廻のもとに集うことになった。
―――――――view,change:輪廻―――――――
ニックに呼ばれてイネスに来たらアイス奢らされるわ、後から尾行してきた歌野たちにも奢ることになるわ、で、僕の財布はすっかりやせ細ってしまった。
まあ、特に買いたい物とか無いからいいんだけどね。
「でも、ここのアイス・・・・・・ジェラート?ラインナップがありきたり過ぎるよねー」
「輪廻テメェ、いい加減オレにゲテモノ食わせるの止めろ!!」
「この前の『ゴリゴリ君信玄餅風味』は良い反応見れて愉しかったなぁ・・・」
「お前・・・食べたのか・・・あの信玄餅風味を・・・!」
若葉がニックのことを見る。その瞳は驚愕と『こいつ無いわー』の色に染まっていた。
・・・どんな色だ?
「食わされたんだ!!自分から食ったワケじゃねえ!!」
「・・・・・・・・・・・・・へぇ」
郡クンの氷点下の視線がニックを射抜く。
完璧に信じてませんねぇ(笑)
「そこまでひどいんですか?その・・・信玄餅風味って?」
「伊予島クン、食べたこと、ないの?」
「あれは酷かった。中に入ってた餅さえ無ければ最高だったのに、あれが全部台無しにしてくれた・・・」
なぜか若葉が味のレビューを語ってくれた。もしかしなくても食べたことがありますね、コレは。
「他にはどんなの食べたことあるの?」
友奈がニックにそんなことを聞く。いくら友奈でも、ニックが相手じゃ―――
「ナポリタン味にコーンポタージュ、カスタードプリンはまだマシだった。一番思い出したくもねェのは、手羽先味だな」
ニックのやつ、ここ最近僕があげたゴリゴリ君を全部答えやがった!どういうことなの・・・!?
「へえ、ニックさんはいろんなアイスを食べたことがあるんだねー♪」
「・・・・・・・・・まぁな」
ほ・・・・・・絆されているっ・・・!
高嶋友奈・・・恐ろしい子っ・・・!
「はいっみーちゃん、あーん」
「あーん・・・うん、おいしい。うたのんのは・・・何だっけ?」
「ミックスキャロット味よ!というわけで!みーちゃんのもプリーズ!」パックン
「ふぇ!!」
向こうは向こうで食べさせ合いっこ(?)してる。
・・・・・・・・・うん。最高。
「そういえば、りっくんは食べてないのね」
「も、もしかして・・・・・・」
僕がアイスを食べてないのに歌野が気付いて、それを受けてみぃが申し訳なさそうな顔をする。こっちのことなんて、気にしなくてもいいのに。
「お金ならまだあるよ。ギリギリだけどね・・・食べないのは単純に、寒いのが嫌いだからだよ」
「あら、それならいいアイディアがあるわ!」
言うや否や、歌野がぎゅーっと僕に抱きついてきた。
「にゃっ!?!?!?!?」
「あら、キュートな声ね♪」
ぎゅー。と歌野が更に密着してくる。やばい。何がやばいって、歌野の匂いがすんごい。土の匂いにまじって女の子特有の『なんかいいかおり』がするからほんとやばい。
「ほら、みーちゃんも!」
「ええ!?私も?」
「まって歌野今はダメ今みぃに抱きつかれたら」
「えっと、じゃあ、失礼しまーす」
ぎゅー。
「!!!!!!!!!!!」
「ほわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・輪廻さん、顔真っ赤です!!」
「あらまあ、輪廻さんは案外純情な方なんですね♪」
あわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわ
「・・・・・・なんか、輪廻のやつ。様子がおかしくないか?」
「フリーズしてやがるな」
「どういうことなの?ニックさん」
「輪廻のヤツは鼻が良いからな。大方、二人の匂いに挟まれて頭の奥がショートしてるんだろ」
「・・・・・・・・・・・・戸塚くんって、意外と弱点が多いのね」
「りっくんはそこがキュートなのよ♪」
「・・・・・・えっと・・・ねぇ、うたのん。これって、いつまでやるの?」
「え?」
「え?」
結局、次の日の朝になるまで二人に挟まれたままだった。
後日談―――
「ニックさんはどうしてそんなにアイスが好きなの?」
「あ?ああ・・・コイツはオレの体質の問題だな」
「体質?」
「そうだ」
「へぇ~、そうなんだ~」
「・・・・・・・・・詳しく聞かないのか?」
「へ?なんで?」
「・・・・・・・・・・・・いや、いい・・・・・・食うか?ゴリゴリ君」
「良いの?じゃあ、遠慮なく♪」
「ニックのやつ・・・・・・友奈にすごく甘くなってる・・・・・・!!」