「"
輝夜の髪を引っ張りながら、ナマリは語る。
「その目的は、
「神世紀しょとう、に・・・・・造られた・・・・このシステム、は・・・・・おじいさまに・・・・・よって、凍結され・・・・・とある場所に・・・・・ほかん、されて・・・・・ました」
「そいつを掘り起こしたのが────────白鳥文野だ」
「文野おばあちゃんが・・・・・」
答えながらも友奈は端末を起動し、勇者に変身しようと試みている。が、封印の儀で消費したエネルギーが回復していないのか、反応は無い。
「白鳥文野は、コイツを人間として育成しようとしていた。まぁ、実際、その試みは上手くいっていたさ──────バーテックスの襲来さえ無ければ」
遠くの東郷がスコープ越しにナマリを見つめる。引き金には常に指をかけてはいるが、少しでも動けば輝夜を盾にしようとしてくるナマリに、手が出せないでいた。
「ナマリ、さん・・・・との、戦闘記録・・・・・を、かくにんしました・・・・・・そして・・・・・システム、が・・・・・正常・・・・に起動している・・・・こと、を・・・・・おじいさまは・・・・・理解、しました」
「だから、アタシらは狙いをコイツに絞る事にした──────全てはお前たち勇者を護る為に」
「これ・・・・が・・・・・わたしたち、の・・・・・目的・・・・・です。そして・・・・・」
「ハッキリ言わせて貰う。コイツは、いつかお前たちを殺すぞ?」
一息に、全てを語ったナマリと幼女。それに対して、風が怒りを顕にする。
「さっきから聞いていれば、煌月の事をまるで人間じゃ無いみたいに言って・・・・!!」
「はい・・・・・そのとおり、です」
幼女の、凍てついた笑みに、風は思わず気圧される。
「まあ、百聞は一見に如かずって言うしな・・・・・・おい」
「行きます」
ナマリが輝夜の顔を突き出し、幼女が右手を振り上げる。
「待っ・・・・!?」
友奈の声も虚しく、幼女の巨大な爪は振り下ろされ───
バギン!と音を立てて、輝夜の顔面左半分が砕け散った。
「あ・・・・・・・ぁぁ・・・・・・・・」
「上蓋が砕けただけだよ。死んじゃいない」
よく見れば、額から左目の辺りまでが消失しているだけで、他に外傷は見当たらない。
が、その開けられた穴から見える内部構造に、友奈たちは戦慄を隠せなかった。
「・・・・・・なに、あれ?」
電子的な輝きを放つ機械の中心、硝子製の水槽のような物の中に、それは浮いていた。
「・・・・・・赤ちゃん?」
「・・・・・・・木・・・にも、見える・・・・けど」
膝を抱えて眠る、赤子の様な形状の樹木か。
若しくは、樹木の如き身体の赤子か。
兎も角、そのような奇っ怪なモノが、浮いていた。
「
仮面越しでも判る程に、満面の笑みを浮かべて、ナマリは続ける。
「"樹状退行"と言って、神樹様の細胞を植え付けられた人間の末路さ」
「まず・・・・・しんじゅ様、の・・・・細胞が・・・・・からだを、赤ちゃん・・・・に、まで・・・・・たいかさせます・・・・・そのあと・・・・そのからだ、を・・・・・栄養に・・・・じゅもくに・・・・なります・・・・これ、が・・・・・"樹状退行"・・・・です」
「どういうワケか・・・・・コイツは中途半端に樹状化して止まってるが・・・・・・おかげでバケモノじみた外見になっちまってる・・・・・」
友奈たちは絶句していた。
あまりにも突拍子の無い事だったから、思考が停止したとも言える。
「さて・・・・・それでもお前らは、コイツを人間だと・・・・・・言えるか?」
沈黙が流れる。
風も、樹も、夏凛も、東郷も、誰も、何も言えないでいた。
一人を除いて。
「言えるよ!だって、かぐやちゃんは、かぐやちゃんだもん!!!」
友奈である。
「・・・・・・友奈」
「本当の姿がどんな形だって、かぐやちゃんには変わりないもん!!だから早く、かぐやちゃんを放せ!!!」
友奈に力強く睨み付けられ、ナマリは肩をすくめる。
「やれやれ・・・・・仕方ない。離してやるよ」
そうしてやっと、ナマリは輝夜から手を離した。
「ただし、お前らの命は保証しないがな」
「・・・・・え?」
離された瞬間、輝夜は立ち上がり──────
「『 抹殺対象を確認 』」
輝夜───ではなく、システムの統括AIは、五武具足の双炎義を呼び出すと、東郷にその切っ先を向けた。
「!?」
「かぐやちゃん待っ───」
友奈の静止の声も届いた様子は無く、AIは静かに呟く。
「『 これより対象の処理を開始します 』」
瞬間、弾かれた様に東郷へとダッシュ。
足の動かない東郷はそれに反応できても避ける事が出来ず、結果として棒立ちのままそれを見ていた。
「東郷さん!!」
AIの刃が東郷へと突き出され──────
樹状退行について───
神樹の細胞を取り込んだ人間は、勇者と同等の身体能力を獲得できる。
しかし、神樹細胞の働きを抑制する特殊な薬を服用し続けなければ、忽ち身体が赤子にまで縮んでしまい、体組織が樹木の物に変質してしまう。
これを、"樹状退行"という。
樹状退行が始まってしまえば、二度と元には戻れなず、樹木になってしまうのを待つしかない。
たった一人を覗いて・・・・・