契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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Vの再襲来 -真実-

「"J.A.idoll(ジェイドール)"──正式名称Justice.Artificial.idoll。"人工化された正義の偶像"・・・・いや、"象徴"の方が正しいんだっけ?さっきまでコイツの身体動かしてたモノは、そのシステムの統括AIだ」

 

輝夜の髪を引っ張りながら、ナマリは語る。

 

「その目的は、()()()()()だ」

「神世紀しょとう、に・・・・・造られた・・・・このシステム、は・・・・・おじいさまに・・・・・よって、凍結され・・・・・とある場所に・・・・・ほかん、されて・・・・・ました」

「そいつを掘り起こしたのが────────白鳥文野だ」

「文野おばあちゃんが・・・・・」

 

答えながらも友奈は端末を起動し、勇者に変身しようと試みている。が、封印の儀で消費したエネルギーが回復していないのか、反応は無い。

 

「白鳥文野は、コイツを人間として育成しようとしていた。まぁ、実際、その試みは上手くいっていたさ──────バーテックスの襲来さえ無ければ」

 

遠くの東郷がスコープ越しにナマリを見つめる。引き金には常に指をかけてはいるが、少しでも動けば輝夜を盾にしようとしてくるナマリに、手が出せないでいた。

 

 

「ナマリ、さん・・・・との、戦闘記録・・・・・を、かくにんしました・・・・・・そして・・・・・システム、が・・・・・正常・・・・に起動している・・・・こと、を・・・・・おじいさまは・・・・・理解、しました」

「だから、アタシらは狙いをコイツに絞る事にした──────全てはお前たち勇者を護る為に」

「これ・・・・が・・・・・わたしたち、の・・・・・目的・・・・・です。そして・・・・・」

「ハッキリ言わせて貰う。コイツは、いつかお前たちを殺すぞ?」

 

一息に、全てを語ったナマリと幼女。それに対して、風が怒りを顕にする。

 

「さっきから聞いていれば、煌月の事をまるで人間じゃ無いみたいに言って・・・・!!」

 

 

 

 

 

「はい・・・・・そのとおり、です」

 

 

 

 

 

幼女の、凍てついた笑みに、風は思わず気圧される。

 

「まあ、百聞は一見に如かずって言うしな・・・・・・おい」

「行きます」

 

ナマリが輝夜の顔を突き出し、幼女が右手を振り上げる。

 

「待っ・・・・!?」

 

友奈の声も虚しく、幼女の巨大な爪は振り下ろされ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バギン!と音を立てて、輝夜の顔面左半分が砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ・・・・・・・ぁぁ・・・・・・・・」

「上蓋が砕けただけだよ。死んじゃいない」

 

よく見れば、額から左目の辺りまでが消失しているだけで、他に外傷は見当たらない。

が、その開けられた穴から見える内部構造に、友奈たちは戦慄を隠せなかった。

 

「・・・・・・なに、あれ?」

 

 

 

 

 

電子的な輝きを放つ機械の中心、硝子製の水槽のような物の中に、それは浮いていた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・赤ちゃん?」

「・・・・・・・木・・・にも、見える・・・・けど」

 

 

 

 

 

膝を抱えて眠る、赤子の様な形状の樹木か。

若しくは、樹木の如き身体の赤子か。

兎も角、そのような奇っ怪なモノが、浮いていた。

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

 

 

仮面越しでも判る程に、満面の笑みを浮かべて、ナマリは続ける。

 

「"樹状退行"と言って、神樹様の細胞を植え付けられた人間の末路さ」

「まず・・・・・しんじゅ様、の・・・・細胞が・・・・・からだを、赤ちゃん・・・・に、まで・・・・・たいかさせます・・・・・そのあと・・・・そのからだ、を・・・・・栄養に・・・・じゅもくに・・・・なります・・・・これ、が・・・・・"樹状退行"・・・・です」

「どういうワケか・・・・・コイツは中途半端に樹状化して止まってるが・・・・・・おかげでバケモノじみた外見になっちまってる・・・・・」

 

友奈たちは絶句していた。

あまりにも突拍子の無い事だったから、思考が停止したとも言える。

 

「さて・・・・・それでもお前らは、コイツを人間だと・・・・・・言えるか?」

 

沈黙が流れる。

風も、樹も、夏凛も、東郷も、誰も、何も言えないでいた。

 

 

 

 

 

一人を除いて。

 

 

 

 

 

「言えるよ!だって、かぐやちゃんは、かぐやちゃんだもん!!!」

 

 

 

 

 

友奈である。

 

「・・・・・・友奈」

「本当の姿がどんな形だって、かぐやちゃんには変わりないもん!!だから早く、かぐやちゃんを放せ!!!」

 

友奈に力強く睨み付けられ、ナマリは肩をすくめる。

 

「やれやれ・・・・・仕方ない。離してやるよ」

 

そうしてやっと、ナマリは輝夜から手を離した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただし、お前らの命は保証しないがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・え?」

 

離された瞬間、輝夜は立ち上がり──────

 

「『 抹殺対象を確認 』」

 

輝夜───ではなく、システムの統括AIは、五武具足の双炎義を呼び出すと、東郷にその切っ先を向けた。

 

「!?」

「かぐやちゃん待っ───」

 

友奈の静止の声も届いた様子は無く、AIは静かに呟く。

 

「『 これより対象の処理を開始します 』」

 

瞬間、弾かれた様に東郷へとダッシュ。

足の動かない東郷はそれに反応できても避ける事が出来ず、結果として棒立ちのままそれを見ていた。

 

「東郷さん!!」

 

AIの刃が東郷へと突き出され──────

 




樹状退行について───


神樹の細胞を取り込んだ人間は、勇者と同等の身体能力を獲得できる。
しかし、神樹細胞の働きを抑制する特殊な薬を服用し続けなければ、忽ち身体が赤子にまで縮んでしまい、体組織が樹木の物に変質してしまう。
これを、"樹状退行"という。
樹状退行が始まってしまえば、二度と元には戻れなず、樹木になってしまうのを待つしかない。

たった一人を覗いて・・・・・
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