東郷さんも、風先輩も、来てくれなかったよ・・・・・
ま、樹ちゃんは来てくれたけどね~♪
あれから、かぐやちゃんはお部屋に引きこもったまま出てこない。
マッキー先生の呼び掛けにも答えないなんて・・・・・すごく、心配。
「今はそっとしておきましょう。坊っちゃんならきっと、大丈夫ですよ」
先生はそう言うけれど・・・・・・それでも、心配だな・・・・・・
けれども、かぐやちゃんの心配ばかりしていられなくなった。
「結城友奈様で御座いますね・・・・?」
かぐやちゃん家から出たら、大赦のお面を被った同い年くらいの神官さんがいた。いきなり声をかけられたからちょっとびっくり。
「え・・・・・あの・・・・・大赦の・・・・?」
「東郷様を始め、他の勇者様方は既に車中に。結城様もどうぞ、こちらへ」
促されるまま、高級車の中に入る。神官さんの言った通り、車の中には勇者部のみんながいた。と言っても、かぐやちゃんはいないけど・・・・・
「──────友奈ちゃん」
「東郷さん・・・・みんな」
「友奈、輝夜の様子は・・・・・・?」
黙って首を横に振る。
夏凛ちゃんはそれだけで俯いてしまった。
「皆様には、これからさる御方に御面会していただきます」
「さる御方って・・・・・?」
「先日、貴女様方が樹海内でお会いした方─────と言えば、御理解頂けますでしょうか?」
風先輩の言葉にそう返した神官さん。
樹海で会った・・・・・・それって・・・・・・
―――――――――――†――――――――――
車は、前に入院したあの病院にたどり着いた。
ここに、あの子が?
「それっぽい娘・・・・見なかったけどなぁ・・・・・」
『病室から出られないとか?』
「此方です。皆様」
「─────とにかく、付いて行きましょ」
案内されるて歩くこと、少し。
病院の奥の奥。『こんな場所あったっけ?』と思うくらいの所にその病室はあった。
中に入ったわたしたちを待っていたのは─────
「あ、やっと来てくれた~。いらっしゃい、今代の勇者のみんな~♪」
身体中包帯だらけのこの前の女の子が、ベッドに寝ていた。来ている病院服はわたしたちが前に着た物とは違って、なんだか、変な感じがした。
でも、それ以上に変な感じなのは──────
「・・・・・・なによ、これ」
「これが・・・・・病室・・・・・?」
「────────────!!」
部屋中を覆い尽くす、人型のお札。
壁、天井、床にすら。至るところに張り巡らされている。
ベッドの前には鳥居が立っていて、それはある種の神社のように、わたしは思った。
決して、病人が居ていい場所なんかじゃない。
「・・・・・びっくりしちゃったかな?ごめんね~、大赦のえらーいおじいちゃんたち、私がここを片付けて~って頼んでもぜ~んぜん、聞いてくれなくて・・・・」
女の子が困ったような顔で謝る。
「えっと・・・・あ、そうそう。自己紹介がまだだったんよ~。私、乃木園子って言うんだ。一応、あなたたちの先輩にあたる・・・・のかな?先代勇者ってやつなんよ~」
「先代勇者・・・・私たちの他にも勇者がいたなんて・・・・・」
「てか、乃木ってまさか・・・・大赦中枢の『六花』の"乃木"!?」
「いや~、お恥ずかしながら~♪」
「ちょっと待ってよ!!乃木って言ったら大赦で最も権力を持つ『六花』の中でも、まとめ役として存在している最高の権力を持つ家柄じゃない!!なんでこんなところに・・・・・というか、先代勇者って・・・・!!」
夏凛ちゃんがパニックになって、なんだかよくわかんない事をしゃべってる。
「あはは~、そんなに難しい事じゃないんよ~。私と、あと三人のお友達。四人でえいえいおー!ってバーテックスと戦っていた。それだけのお話だからね~」
「あの・・・・・乃木・・・さんは、バーテックスと戦って、そんな風に・・・・?」
「ううん。違うんよ。これでも私、結構強いから~」
「園子様。そろそろ本題に」
いつの間にか、乃木さんの隣に移動していた神官さんが話を区切る。
「あ、ごめんごめん。こうやってまともに人としゃべるのって久しぶりだったから~」
神官さんに謝る乃木さん。二人は、仲良しなのかな?
「えっと・・・・みんなは満開、したんだよね・・・・?わーって咲いて強くなるやつ」
『!?』
乃木さんのその一言に、空気が凍りつく。
「─────────私以外、みんなしたわ・・・・・満開」
「夏凛ちゃん・・・・・・」
「・・・・・・そっか」
夏凛ちゃんの言葉に、乃木さんは一度目を閉じて、もう一度開けた。
「咲き誇った花は、その後どうなると思う・・・?」
え・・・・・・?
「満開にはね・・・・隠された機能があるんだ。『散華』っていうんだけど」
「さんげ─────"花"が"散る"って書く・・・?」
東郷さんの言葉に、乃木さんは頷いて───
「満開した後、身体のどこかがおかしくなったよね?」
その瞬間、東郷さんは右耳を、風先輩は右目を、樹ちゃんは喉を、無意識に触れていた。たぶん、わたしもそう。
「それが散華。花一つ咲けば一つ散る。神様の力を振るう代償として、身体の一部を供物として捧げるシステム。代わりに、勇者は決して死ぬ事は無いし、捧げた供物の数だけ強くなれるんよ」
「・・・・・・じゃあ、その体は・・・・・そのせいで・・・・・?」
「うん」
無慈悲な肯定の言葉が、わたしたちの頭に響く。
「身体の機能を徐々に喪って、最後はこうして祀られる。元々、ぼーっとするのが特技で良かったよ~・・・・ぜんぜん動けないのは、ちょっと辛いからね・・・・・・」
「痛むん・・・・ですか・・・・・?」
「痛みは無いよ~。敵にやられた訳じゃないからね~」
「どうして・・・・・・私たちが・・・・・・」
東郷さんが呟いた。それに反応した乃木さんが言う。
「何時の世も、神様に見初められるのは、無垢な少女だけだからね・・・・・穢れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。仕方ないこととは言え、残酷だよね・・・・」
その時、どすん、という音が後ろから聞こえた。
そちらを振り向けば、風先輩がしゃがみ込んでいた。
「─────────知らなかった・・・・・知らなかったのよ・・・・・・・身体を供物に捧げて戦うのが勇者・・・・・・知ってたら・・・・皆を巻き込んだり・・・・・・しなかった・・・・・」
項垂れて涙を流す風先輩に、樹ちゃんが寄り添う。
「治す方法は?無いとかふざけた事言わないでよ・・・・・!」
「──────────」
夏凛ちゃんの質問に乃木さんは答えない。
乃木さんへ夏凛ちゃんが詰め寄ろうとしたその時だった。
『あるよ!たった一つ、希望がなっ!!』
乃木さんの寝ているベッドの隣。机の上に置かれたパソコンから、その声は聞こえた。
「あ♪おかえり~ミノさん」
『ただいまー。よっと』
パソコンの画面から手がにょっきりと生えてきた!?
とか思っていたら画面から人が!?え!?呪いのビデオ!?
「ふぅ・・・・シャバの空気が美味し─────くは無いな。ここだし」
「ごめんねミノさん。大赦のおじいちゃんたち、私をお外に出させてくれないから~」
「ま、こうやって身体を動かせるだけマシだからね。それ以上は高望みってやつだと思っておくさ」
パソコンから出てきたのは、ナマリによく似た人。
あれ・・・・どこかで見たような・・・・・・・・・・・・・?
「お、ナイスタイミングってか?今、園子が満開と散華について説明していた所だろ?」
「お~♪さっすがミノさん!わかってる~♪」
さっきまでの重たい空気は何処へやら。
乃木さんに"ミノさん"と呼ばれている人が現れた瞬間、なんだかいろんなものが吹き飛んだような・・・・・
「んじゃ、次はアタシの話だな。アタシは三ノ輪銀。園子と一緒に大橋で戦ってた勇者の一人だよ」
三ノ輪────?あれ?どっかで聞いた名前・・・・・・
「訳あって、今アタシの身体は別の所にあってさ・・・・ま、ユーレイみたいなもんだよ。だからさっきみたいに、ネットワーク回線を使っていろんな場所に行けたりするんだ。とは言っても、園子の近くに居ないとこうやって出てこれないんだけどね・・・」
「───────で?あんたの言う"希望"ってのは、いったいどんな?」
夏凛ちゃん、ちょっと怒ってるみたい・・・・
「反大赦組織『錬獄』────連中の持つ魔導技術を利用すれば、散華で奪われた身体の機能をある程度、取り戻せる」
『!!!』
「────かもしれない。飽くまで可能性の話だよ」
でも、もし、本当にそれができたら─────
「──────樹の、声も・・・・・?」
「きっと。その右目だって、見えるようになるかもしれないよ」
三ノ輪さんの言葉に、樹ちゃんが風先輩に抱き付く。
「さっき、その成果を確認してきたんだ。もう少しすれば、みんなの後遺症は治せるはずだよ」
笑顔の三ノ輪さんに、みんなも笑顔になる。
良かった・・・・・バーテックスも倒し切ったし、後はその『錬獄』ってところの人たちを信じて待っていれば────
「────────私の記憶も?」
え?東郷さん?
「二人の言葉が正しいなら、私は──────。だとしたら、私の記憶も、取り戻せると言うの?」
「────────」
「────────」
東郷さんの言葉に、押し黙る二人。
え・・・・・と?どういう事?
「貴女たちの言う魔導技術。それは、輝夜くんの身体に使われているものと同じ技術。違うかしら?」
「───────半分、正解」
「ちょっと待って─────それじゃ、私たちの身体を機械化しようっての!?」
「そうなるかもしれないし、そうならないかもしれないんよ・・・・少なくとも私は、機械化はあんまり好きじゃないな~」
いたって真面目に、乃木さんは答える。
「─────それで?わっ・・・・・・美森ちゃんは、何が知りたいの?」
「私は、魔法の力でどれだけの事が出来るのかを知らない。でも、それって・・・・・・記憶の再生まで可能なものなの・・・・・?」
そういえば、かぐやちゃんが前に言っていたっけ・・・・「魔術は決して万能では無い」って・・・・
「───────あなたたちをここに呼んだのはね・・・・ほんとは、満開の真実を伝える為じゃないんよ・・・・」
「・・・・・・え?」
「アタシらにとっては、そっちはついで。後遺症を治す術は見つかっていたからね」
「本題はここから。
そうして、乃木さんと三ノ輪さんは語り始めた。
二年前に、彼女たちの身に起きた悲劇を………
ここからオリジナル路線に突入。
でもちゃんと原作はリスペクトしていくつもり。
がんばるぞいっ!