そんな訳で、今回は東郷さんと輝夜の馴れ初め話。
どうぞ、御堪能ください。
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「東郷と煌月は、ホント仲良いわよねー」
ある日の事、風と東郷が部室にて作業していると、唐突に風がそんな事を言い出した。
ちなみに輝夜と友奈はここにはいない。依頼で別の場所に行っているのだ。
「そう見えますか?」
「見える見える。なんか~、熟年の夫婦って感じよね~」
「うーん・・・・・・そうなんですか・・・・・」
「あら?それほど嬉しくない?」
「そうですね・・・・別にそこまで私たち、仲が良い訳ではないですから」
「え!?そうなの?」
風の驚きは最もである。
東郷と輝夜のコンビネーションは、まさに阿吽の呼吸と言うべきもので、風が言ったように『長年連れ添った夫婦』のような以心伝心っぷりを見せる時がある。
だが東郷は、『あまり仲は良くない』等と宣うのだった。
「──────そうですね・・・・・せっかくですから、私と輝夜くんの馴れ初めのお話でもしましょうか?」
「良いけど・・・・それ、話して良いの?」
「友奈ちゃんがいないから大丈夫です」
「あ、そう」
東郷の発言に、なんとなく察した風は、とりあえず何も言わずに東郷の話を聞くことにするのだった。
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東郷の、輝夜に対する第一印象は『人形みたいな人』だった。
当時の輝夜は、話しかければ受け答えはするものの、会話をしようとはしない、機械じみた人物だった。
他の人々に対してもそうであったのなら、東郷もそこまで気に止めなかった。
が、どういう訳か、そのような態度を取るのが東郷に対してのみであった。それを知った東郷は、輝夜に問い詰めてみるも、そっぽを向いて「別に・・・・」と宣うだけであった。
これには、流石の東郷も憤慨した。
自分が何かしたのか、悪い所があるのなら治す、そう言ってみるも、「気にするな」だの「なんでもない」だのと、とりつく島も無い。
この輝夜の様子に、当時は友奈も困惑しており、心配して二人の仲を取り持つように行動していた。
が、それでも二人の距離は一向に縮まる気配を見せず、数日が経過した。
そんなある日。
東郷、友奈、輝夜の三人で買い物に出掛けた日のことだ。
忘れ物をしたと言う友奈が、一人店に戻って行った後、少しして輝夜が「ここに居ろ」と言って路地裏へと消えて行った。
直後、路地裏から聞こえてきたのは怒号と殴り合う音。
嫌な予感がした東郷は、輝夜の言い付けを守らず、路地裏を覗いた。
そこでは、高校生くらいの不良たちを相手に、体格の差を上手く利用して無双する輝夜の姿が。
「煌月くん・・・・・!」
「!?お前・・・・・なんでっ!?」
その一瞬の隙を、不良たちは見逃さなかった。
「来い!」
「きゃっ!?」
不良の一人が東郷の腕を掴み、引き寄せる。
「テメエ!こいつがどうなってもいいのか!!」
「────────────」
「・・・・・・煌月くん」
輝夜は何も言わず、両手を挙げ、東郷を見つめていた。
「──────────?」
その視線はとても暖かで、どうしてか東郷は怖いはずなのに怖くなかった。
「やっちまえ!!」
東郷を人質にとった不良が仲間に命じたその時
「ていっ!!」
「んぎぃ!?」
可愛らしい掛け声が、東郷の後ろから聞こえてきたと思った次の瞬間には、不良が潰れたカエルみたいな声を上げて、泡を吹いて倒れた。当然、東郷も一緒に倒れる、が
「大丈夫!?東郷さん!!」
「・・・・・友奈ちゃん」
東郷を助けたのは友奈だった。
そこから後は一方的だった。不良たちを蹴散らし、輝夜は東郷に駆け寄る。
「怪我は無いか?」
「え・・・・・ええ」
「──────────ここに居ろ、そう言ったはずだろう」
「・・・・・・・・・ごめんなさい。でも心配で」
「──────────これに懲りたら、俺に関わるな。また、同じ目にあう」
「───────────────────どうして」
「え?」
その、突き放すような物言いに、ついに東郷の我慢が解かれた。
「どうしてそうやって私を除け者にするの!?」
「え・・・・・いや、別に・・・・」
「私の事が嫌いなら、はっきりそう言ってよ!!なんなのいったい!?いい加減にしてよ!!!」
「───────────────」
ひとしきり声を荒げた東郷は、呼吸を整えて一言。
「─────私は、できることなら、煌月くんとも仲良くなりたい」
「・・・・・・そう」
「ねぇ、教えて?どうして私の事、避けてたの?」
「────────────それ、は」
ちらり、と友奈の方を見る。
何かを察した友奈は、それを見て言った。
「もしかして、私が聞いちゃダメなやつかな?だったら私、先に帰るよ。かぐやちゃん、東郷さんと仲直りしたら、ちゃんと送ってあげてよ?」
それだけ言って、友奈は先に帰宅した。
後に残った二人は、近くの公園に向かい、そこで話し合う事にするのであった。
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公園について早々、輝夜は自販機で緑茶を購入し、それを東郷に手渡した。
「───────ほれ」
「あ・・・・・緑茶」
「ペットボトルだが、そこは我慢してくれ。ここの自販機、紙パックのは置いてないんだ」
「────────ありがとう」
一口飲んで、再び口を開く。
「煌月くんはこうやって、誰かをちゃんと労れる。私、煌月くんのそういう所、嫌いじゃないわ」
「────────そう」
「さっきのだってそう。あの不良さん、猫をいじめていた」
「・・・・・・・・気付いてたのか」
「髪に猫の毛、付いてるわよ?」
言われて輝夜は、自分の髪を探る。
確かに、茶色の毛が付着していた。
「良い観察眼だな」
「ありがとう。それで?どうして私を避けてたの?」
「───────────自分でも、よくわからない」
「え?」
輝夜は至って真剣な顔で語る。
「お前が友奈と会話していると、何故か胸の奥がチリチリする。なんと言うか・・・・・友奈が、遠くに行ってしまったみたいで・・・・・・」
「─────────────それって」
「?」
「煌月くん、もしかして・・・・・・嫉妬してたの?私に」
「嫉妬?これが?」
「そうだと思う」
「─────────────ああ、成る程、これが・・・・・嫉妬」
そう呟いた輝夜の顔は、東郷がこれまで見たどんな表情よりも晴れやかで、可憐であった。
「─────────────」
「ありがとう、お前のおかげでこの感情の正体がわかった」
「─────────────」
「ついては、これまでの礼をしたいんだが・・・・・・・どうした?」
「ふぇ!?」
「俺の顔に何か付いてるのか?」
「い・・・・いいえ!何も!!そ・・・・・それより!お礼ですって?」
まさか、輝夜に見惚れていたとは言い出せず、東郷は話を合わせようとする。
「ん?ああ、何が良い?俺にできることなら、何でもしてみせよう」
「な・・・・なんでも?」
「うむ、男に二言は無い」
一瞬、輝夜に女装を頼もうと思った東郷だったが、それをぐっと堪えて、ある事を提案するのだった。
「それなら、私のこと、名前で呼んでほしいな」
「名前?────────東郷」
「・・・・・・・・・・・・・下の名前じゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・いきなりは流石に」
「もう、仕方ないわね・・・・・・・じゃ、それで帳消しにしてあげる」
「ありが「その代わり!」?」
輝夜の感謝の言葉をふさいで、東郷が続ける。
「これからあなたの事は、"輝夜くん"って呼ばせてもらうわ」
「────────────えぇ」
「あら、駄目?私、今まであなたに避けられてて、すっごい傷付いたのだけれど・・・・・」
「───────────わかったよ・・・・・・・ったく」
「うふふ♪よろしい!」
ため息をつく輝夜。微笑む東郷。
「それにしても、まさか、輝夜くんもだったなんて」
「"も"?」
「だって輝夜くん、友奈ちゃんと一緒にいた時間は、私よりも長いでしょ?それは、私には決して埋められない差。だから・・・・・・」
「─────成る程。似た者同士ってワケね」
「そういうこと」
今度は二人して笑いあう。
「───────なら、今後は
「ええ、仲良くやっていきましょ」
こうして、二人は友達になった。
最も、それだけでは収まらない関係と言えなくも無いが・・・・
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「────こんなところですね」
「・・・・・・・・・なんと言うか・・・・・青春ねえ」
「うふふ、そうですね」
部室に、二人の笑い声が響く。
そこへ更に、二人の声が追加される。
今日も勇者部は、平和である。