食卓の聖騎士(ターフェル・パラディン)   作:紗代

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十三皿目 入学式からライフゼロ

編入試験からひと月と少し経った四月某日。桜咲き乱れる遠月学園高等部始業式。

 

『在校生代表―――十傑評議会第一席・司瑛璃』

「はい」

 

名前を呼ばれて今日のために用意した原稿を持ち壇上へ上がる。

 

「本日はお日柄もよく―――」

 

 

 

「おい見ろ、第一席の司瑛璃だぞ!」

「うはー、今日も美しい~」

「いつ見ても綺麗な銀髪、羨ましいわ」

「あんな女神みたいな人が彼女だったらな~」

「バッカ、あの完璧超人美女が振り向くわけないだろ」

「あー…そういえば今年の編入試験でも担当した会場の受験生全員逃げ出したとか」

「そーそー俺たちにとっちゃ雲の上の存在だよ」

 

 

と一般生徒たちが話す中、少し離れた十傑専用席では―――

 

「…なんてこと言われてんのも知らずに内心『噛まずに詰まらずに~』とか思ってんだぜ?おっかしいだろー?」

「まあでもそれが司さんだからって言ったらそれまでだけどね~」

「…司先輩の話が終わったんですから静かにして下さい。」

「はあ?もう総帥の話も司さんの話も終わってあとは閉式するだけなのに。これだから真面目おさげは」

「あなたには言ってない。うるさいわよ久我」

「何ピリピリしてんのー?食あたりー?あ、それとも生理ー?」

「消えろ」

「ざーんねーんでーしたー消えませーん!ていうか司さんまだー?」

「もうそろそろだと思うよ―――ほら」

 

 

 

私はやっとの思いで話し切って檀上から降りると十傑専用席へ向かう。私が席に着くと同時に閉式の言葉により無事始業式は終わった。

 

「や、やっと終わった…」

「残念だがまだ終わっていないぞ」

「え」

「…始業式が終わっても、ももたちはこのまま入学式に出席する」

「そ、そんな~、今日はゆっくりできると思ったのに~…」

「はは♪ま、諦めろよ司。それにほら、今日は薙切ちゃんの晴れ舞台だぜ?」

「!そ、そっか。ならもう少し頑張る」

「その意気その意気。それに入学式は総帥と薙切ちゃんと―――編入生以外しゃべらなくていいんだから」

 

リンドウの言葉に内心首を傾げた。編入生?

 

「え?―――編入生って誰も合格者出なかったって聞いたけど」

「それが一人だけ出たらしいんだよ。あたしもさっき聞いたばっかりで詳しくは知らねーんだけどな」

「ふうん…」

 

うちの学校に金持ちはごろごろいるので寄付金で入学出来るほど甘くないし、大体高等部の本格的なふるい落としを知ってて高等部からの編入にしたのだろうか?下手すると入ってすぐ退学とか経歴が中卒とかになりかねないのに。凄いな。

 

 

 

在校生が全員去った後、中等部からの内部進学者たちがやってきた。

 

「今年も多いね」

「ああ、ざっと980人あたりいるらしい」

「去年より多いんだ」

「この中の一体何人が卒業するんだろう」

「んーまあ、何事もなければ十傑はほぼ確定だろ。他はそいつ次第」

「身も蓋もないな」

「だってよー斎藤、現にあたしらの学年はもう進級試験が終わった時点で三十人いるかどうかじゃんか。なー司」

「たしかに授業で一緒に受ける人ほとんどいなくなったような気がする。でも私、大体リンドウと組んでるし、なんか他の人と組もうとするとみんな私のこと避けるから…あんまり印象にないな」

「だめだこりゃ…と、そろそろはじまるぞー」

 

リンドウの声に姿勢を正し椅子に座り直す。

 

 

そして入学式は例年通り何事もなく進んで行った―――

はずだった。

 

『高等部から編入する生徒を1名紹介します』

 

アナウンスとともに壇上に上がった一人の赤毛の男子生徒…なんで遠月の制服きてないんだろう?

 

「やー…なんか高い所からすいませんねーへへ…所信表明でしたっけ?まいったなーやんなきゃダメすかー?だ壇上でとかこそばゆいっすわー」

 

『いいからさっさとしなさいっ』

 

司会の先生がイラついて急かし始めた。あ、あれーなんか、なんでだろう嫌な予感がするなー?なんて…

 

「じゃー手短に。二言三言だけ…」

 

 

 

「えっと…幸平創真っていいます。この学園のことは正直―――踏み台としか思ってないです。思いがけず編入することになったんすけど、客の前に立ったこともない連中に負けるつもりは無いっす。入ったからにはてっぺん獲るんで」

 

「3年間よろしくお願いしまーす」と壇上から降りた編入生は何事もなかったかのように去っていった。

 

「なっはっはっはっは!おもしろいこというなあ今年の編入生!!」

「なにあれ」

「あ、あんな大勢の前で宣戦布告なんて、すごいなあ…私なんか…あ、でも今ので食戟増えるのかな…そしたら今よりもっと忙しくなるんじゃ…っど、どうしようっ」

「どうしようも何もないだろー、もう言い終わったんだし。そんじゃ、入学式も無事に楽しく終わったし帰ろーぜ」

「た、楽しくないよ~」

 

みんなそれぞれ散らばっていく中、私はこれからのことに顔面蒼白だ。

 

「過ぎたことだろー、つーわけで今日は進級祝いってことで付き合えよ司。木久知先輩に開店祝いで買い物に付き合って銀食器プレゼントしたの知ってんだからなー」

「ふぁ?!なぜそれを!?」

「ふっふっふ、あたしの情報網舐めんなよー」

 

ぐえっ、と襟を掴まれてカエルが潰れたような情けない声を出しつつリンドウに引き摺られていく。

 

「寧々も一緒来いよ。今日は司の奢りだぜ!…あ、そーだ。一色はどーする?」

「僕は寮に新しい子が入るらしいので、その歓迎会がありますから今日は遠慮します」

「ふーん、そっかー。じゃ、またなー」

「はい」

 

こうして私は慧君に見送られながらリンドウと寧々ちゃんと行き付けの料亭に行くことになったのだった(十傑待遇で急遽予約を取り付け懐石を味わい、なんとなく悪徳官僚や悪代官の気分になってしまったのは私だけだろうか…)。

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