地獄の宿泊研修が終わり学園は運営の関係上連休になる―――のだが
「選抜、かぁ…」
私たち十傑は休日返上で秋の選抜の最終選考のためにおなじみのラウンドテーブルで書類を広げている。一般生徒にとってはゴールデンウィークや夏休みのように心躍る連休だろうが高等部に入ってからの私にとってはまったく喜べない連休である。連休は毎回こうして十傑の仕事に追われて満喫できた試しがない。え?一年の時はまだ十傑入りしてないだろうって?うん。でもさその時ってまだストーカー被害に遭ってた時期なんだよね…あれ?そう考えると碌な連休を送ってないんじゃないのか私。あ、あれー?去年の夏休みが初めてのちゃんとした長期休暇だったのかもしれないなー…学生生活ッテイッタイナンナンダロウネー。
「一色、えりな、叡山君は?」
「薙切ちゃんはそろそろ来るんじゃねーの?」
「一色と叡山ももうじきだと思います。」
「じゃ…あともう少しか」
全員揃うのを待つ。待ってる間は暇なので出場者予定者の顔に目を通しておくことにした。
…!
「(編入生の子、リストに入ってる)」
えりなとの間にある因縁、入学式の時の所信表明という名の宣戦布告―――ただ腕に自信があるだけの子に見えたけど…
「(食戟はえりなの派閥だった水戸郁魅との丼研代理、合宿中のタクミ・アルディーニとの課題。それぞれ勝利と…預かり?引き分けっていうこと?)」
水戸郁魅にタクミ・アルディーニも高等部に入る前からある程度有名だった有望株だ。その二人と入学からこれまでの短期間でぶつかり、そのうえ合宿での課題を高評価でクリアしビュッフェでも土壇場で200食達成。風の噂では元一席の四宮シェフと食戟して引き分けたとか。こんな子が生き残っているなんて…
「これは評価を改めないといけないな」
名前は…幸平創真。ゆきひら、そうま…幸平、ね。―――覚えた。
「?何ニヤついてんだよ司」
リンドウに指摘されて自分の口角が上がっていることに気付く。おっとこれじゃあ危ない人になってしまう。
「なんでもないよ」
その後も一色たちがやって来るまでリンドウに質問攻めされたが「なんでもない」で押し通した。
そして始まった秋の選抜出場者最終選考。それも終わりに近い。
「あと残すは一人、今年の編入生―――幸平創真について」
「私は反対です!」
私が議題に出すとほぼ同時にえりなが発言する。
「この生徒の選抜入り……審議をやり直すべきです!!」
「しかし…その生徒については先日可決を」
「いいえ!彼の素行には問題がありますわ!由緒ある美食の祭典にふさわしいとは言えません!!」
因縁のことがあるからかえりなはいつもより感情的になりながら渋る。しかしそれは慧君によって諭された。
「薙切君、料理に対する君の意見は常に正しい…なのに何故か創真くんの事になると、どうも非論理的に感じるね。―――彼と何かあったのかな、例えば…個人的に?」
「……っ別に…ただ私はこの男が不適格だと…」
圧されていたえりなも負けじと慧君に対して反撃する。
「一色さん…貴方こそ、ご自分の寮の後輩を優遇なさってるんじゃありません事?」
「ふふ…そんな事はないさ~」
火花が散り始めてるしここは私が出るべきだろうか…と思っていたら以外なところから助け船が出た。
「幸平創真…面白そうな野郎じゃねぇか―――俺は推すぜ?」
第九席の叡山枝津也君。珍しいな…
「……!」
「確かに学園での実績は少ねぇ、遠月に入って日が浅いようだしな。けど合宿では土壇場の機転で200食達成…初日の課題でも高評価を得てる。こういう型破りな素材こそ、祭典を盛り上げてくれるんじゃねぇか?―――何が不満なのか俺には分からねぇなぁ」
「……っ」
ここまで言われるとさすがのえりなも黙った。でも…なんだろう。いつもより饒舌なせいか違和感があるのだ。口では認めているように言っているけど本心は別にある、みたいな。…いや、邪推か。
「―――よし。ではこれで最終決定としよう」
評議会による最終選考は終わった。
気になるなあ――――――幸平創真。