食卓の聖騎士(ターフェル・パラディン)   作:紗代

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十八皿目 下調べと準備、そしてルールの把握は必須事項

「はい、今の図面通りにお願いします。―――はい。では失礼します」

 

今年の月饗祭の出店届は既に提出しており、去年と同じく山の手エリアに出店場所を確保した。と言っても場所は山の手エリアの中でも奥まったところなので奪い合う必要性なんて欠片もない所だから確保、というのもいささか語弊があるかもしれないけど。

今日は既に会期の店に関しての指示は出し終わっているので十傑の仕事に戻る。書類の山は少なくなっているが、それ故に今のうちにこなしておかないと後々に響く。

 

「やっほー司ー!」

「リンドウ、どうしたの?」

「ん?追加の書類持ってきた!」

「…そう」

 

ため息を吐きたくなりながら書類を受け取る。…あれ?途中から紙の色合いが違う?

 

「リンドウ、この書類って…」

「おー、なんかここに来る途中叡山の奴に会ってなー。司に提出する書類がどうとか次の会議に関わるとかなんとか言ってたからさー。一緒に持って来てやったんだよ」

「ふーん、あの叡山君がねぇ…」

 

となるとおそらく叡山君の持っていた書類というのはいつもの書類より硬めで白い方の書類、という事だろうか。急ぎの書類なら先に片付けておくか…と、叡山君の書類を机に置いた瞬間。背後からの突風に書類が散らばる。私のコーヒーも勢いに負けて倒れた。

犯人は分かってる。分かってるんだけど敢えて後ろを振り返った。

 

「…リンドウさん」

「な、なはは~ほ、ほら、締め切ったままだと気持ち的に沈むだろーだから空気の入れ替えしてやろーかなーって…」

「…」

「……わるい」

「…いいよ。でもそのかわり書類集めて仕分けるの手伝って」

「はーい…」

 

渋々ながらちゃんと手伝うリンドウを横目に私も書類を仕分けていく―――と、手に横に倒れた私愛用のティーカップが当たった。あれ、そういえばあの強風で倒れたんだっけ?割れてなくてよかったー…と思ったのも束の間だった。

―――待てよ、たしかあれってまだ一口しか飲んでない飲みかけだったはずだ。

心臓が嫌な心音を立てる。

嘘であってくれと、そーっと机の上を見た。

 

「!!」

 

結果、えーざんくんのしょるいは、見事に全て私のコーヒーに侵食されていましたとさ。

 

 

「リンドウー!!」

「おわ!?司、悪かったって!!」

 

―――――――――

あれから数日後、店舗の下見が終わり順調に作業が進んでいるのを確認して他のスペースも見に行ってみる。たしか久我と出店しないリンドウと叡山君以外はみんな山の手エリアなんだっけ。ちなみに私が今回奥の方に店舗を構えたのは客足を制限したからである。今年は寧々ちゃんはまた個人で、慧君は極星寮で出店するので調理のヘルプができる人がいないのだ。なので来てくれた人には申し訳ないが事前に予約してくれた人たちに客層を絞ることにした。しかしおかげで規模は縮小したし、会期中は早めに閉店して自由時間もあるのでスタッフのみんなから賛同を得ることができた。よかったー。

とりあえず一通り見終わったので、出店者の顔ぶれを見るために受付に行ってみよう。

と、歩いていると何やら声がする。気になるので行ってみると、そこには幸平がいた。ああ、なるほどね、幸平も出店するのかな?

 

「え!?ほ…本当にここでいいんですか!?」

「?」

「中華料理研究会の真ん前ですよ!!?」

「!!」

 

いきなりか。いきなり十傑に食らいついてきたのかこの子。―――あ、でもそういえば

 

『とにかく!これからも十傑の仕事とか行事とかでもっと忙しくなるんだしおまえらひよっこに構ってる余裕なんてなーいーの!!…ま、おまえらに何かひとつでも俺に料理で勝てるものがあるなら食戟受けてやってもいいけど』

 

『……今の話はホントっすか、久我先輩』

 

なんていうやり取りが紅葉狩り会の時にあったような…

―――なるほど

 

「え?空いてないんすか?」

「い、いえ、しかし―――「空いてるよ」!あ、あなたは」

「―――司先輩」

「中華研の両隣、真ん前は空いてる。久我のリピーターでごった返すし、中華の強烈さに客を奪われるからあまり客が寄ってこないこともあってみんな避けてるの。だから書いて出す分には食戟も必要ないしすんなり受理される。で、料理のジャンルは?」

「ああ、俺も中華で行きます」

「ふうん…真っ向勝負ね」

「これで勝ったら食戟してくれるらしいんで」

「席次を賭けてもらえる保証もないのに?」

「いいんすよ別に。いや、確かに十傑には入りたいですけど、それよりもとにかく強い奴と食戟したいだけなんで」

 

ああ、そういうこと。いいな、こういう野性味溢れたまさに「生きてる」って言っているような感じ。

 

「…そっか、じゃあこの欄に中華って書いて渡して、そうすれば受理完了よ」

「うす」

 

そして幸平は記入して受付で申請し、受理された。

 

「あざっした、司先輩。」

「いえいえ」

 

あ、そういえばドキドキさせられることが多くてすっかり忘れてたけどこの子今年が初めての月饗祭なんだよね―――聞かなくてもたぶん分かってると思うけど、一応聞いてみるか。

 

「ねえ、幸平。一つ確認したいことがあるんだけど」

「?何すか?」

「赤字を出したら退学って…知ってる、よね?」

「…え?」

「え?」

 

もしかして一番危ないところになるんじゃないんだろうか、なんて最悪の予感がした私は間違っていないと思う。




叡山先輩の書類は例の新総帥の件についてのものです。ナイスりんどー先輩!ナイスコーヒー!!

叡山「」
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