食卓の聖騎士(ターフェル・パラディン)   作:紗代

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二十二皿目 ストーカー=モテるの方程式は間違っている。

月饗祭が終わってすぐに緊急の会議が行われることになった。議題は―――新総帥薙切薊(十傑の合意が出ていないため立候補しただけの宙ぶらりん状態)について。

ていうかさ…この人ってあれだよね?私の命狙ってる死神真っ黒ストーカーだよね?ていうか薙切?あの人薙切家の一員だったの?じゃあ何、私学園ぐるみで命狙われることになるの?

 

「おーい司。気持ちは分かったけどおまえが仕切らないと会議始まらないから戻ってこーい」

「!そ、そうだね!…こほん、それではこれより緊急の評議会会議を始めます」

 

しかし、資料がない。

 

「ねー司さん、緊急会議は別にいいけどさ。資料一枚もないんだけどー、おかしくない?」

「…資料の方は俺が事前に渡しておいたはずですが?」

 

みんなからの苦情…特に叡山君の視線が痛い。話すからそんな睨まないでよ!頼むから!

 

「それがその…たぶんそれっぽい資料のこと、なんだけど、ね…」

 

私は言いながらリンドウの方を見る。その視線を察してか、みんなもリンドウに視線を移す。

 

「ん?ああ、あの資料ならないぜ」

「俺はおまえに渡したはずだよな?あの資料にはこの件に関しての詳細と著名書類があったはずだ」

「だからないんだって」

「はあ?おまえはともかく司一席が知らないわけ…」

「わりーなえーざん。あの資料と書類、全部司のコーヒーぶちまけて使えなくなった」

「は」

「実は、その…」

 

そして私は気まずくなりながら事の詳細を話すことにした。

月饗祭の前にリンドウが持ってきた書類は、気を遣ったリンドウに開けられた窓からの強風で倒れた私のコーヒーに水没し全て滲むどころかシミになって使えなくなってしまったこと。

まだ内容を見る前だったので著名書類の存在も総帥交代のことも知らなかったこと。

伝える前に月饗祭の準備でお互いに手一杯でそのことを伝えられなかったこと。

 

「ご、ごめんね」

「」

 

ああ、叡山君が真っ白なって魂が抜けてる…本当にごめんね…

 

「ま、それはそれとして!要はあの新総帥をあたしらが認めるかどうかだろー。因みにあたしは反対、あと司も」

「!!」

「だってあいつ来たら司の料理が食えなくなるとかそんなのやだ」

「どういうことです?竜胆先輩」

「ああそっか、おまえらに話してなかったっけな。あの新総帥な去年の月饗祭の司の店に来てたんだよ。司のことずーっと見てるけど声掛けてこなかったし、実害無さそうだったからほっといたんだ。でも今年の編入試験のちょっと前にあった司の仕事に付いていった時、仕事終わった後の控え室にいたときはさすがのあたしもやばいと思った」

 

う、あの時のことを思い出したら悪寒が…

 

「司ー、また吐くならここ出て右突き当たりのトイレなー」

「…わかった、大丈夫」

「本当かー?しっかりしろよマジで」

「うん…」

「そんなわけであたしと司は薙切薊の総帥就任断固反対、拒否派だから」

 

リンドウがそう言うと他の十傑のみんなも声をあげた。

 

「司がそっちに行かないならももも反対」

「それなら俺たちもだ。大体、むこうの考えと俺のラーメンじゃどうあっても対立するだろうしな」

「全く、いい大人が女子につきまとうなど…」

「俺も俺もー!司さんと勝負できないんじゃ一席になったって意味ないじゃん」

「僕らもですよ、もっと頼って下さい」

「台詞は取られてしまいましたけど、困ったときは言ってください。あとそれからそのストーカー被害についてのちほど詳しくお願いします」

「よーし、てなわけで…これで十傑の過半数、意見出揃ったぜ、司」

「うん…では反対派多数により、薙切薊総帥就任は棄却、ならびに今回の緊急評議会会議を閉会します。―――みんな、お疲れ様」

 

こうして、一部の人間たちを置き去りにしながら新総帥就任の件は見送られることになった。

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