あの苦しみの不意打ち面会の翌日。マンションを出て学校に行くまでのうちに複数の視線を感じる。その次の日もそして今日も。これで三日連続でつけられている。中等部から高等部の二年生まで感じていた感覚だ、間違いようがない。どこまで行っても消えないその視線が怖いし、何かあっては不味いのでえりなのいる極星寮にも行けずじまいだ。
あとそれから、関係あるのかは分からないが今日の朝学校に来たら上履きが消えてた。
「(せめて犯人の狙いが分かればいいんだけどな…)」
私かえりなかそれ以外か、それだけにしても心の持ち様が違うのだ。一番いいのは犯人が捕まることだけど。
「司ー、昼一緒に食べよーぜ!!」
「ああうん分かった。ちょっと待ってて」
どうやら考えているうちにいつの間にか昼になっていたらしい。リンドウたちを待たせるわけにもいかないので弁当を出そうと鞄を漁った。…のだがない。弁当を包んだ布の感触どころか弁当箱の感触すらない。
…あまり考えないようにしてたけどまたストーカーだろうか。
「...ごめんリンドウ先に行ってて。弁当忘れてきた」
「そっかー、じゃあ後でなー」
二年生に上がった時に会議で提案した購買部があるのでそこに買いに行くことにした。…購買部設置しててよかった。
――――――
それ以降(といってもあの会食から一週間だけど)も現在進行形で続いている。今日は今日で盗撮写真が送られてきた。そろそろリンドウたちに相談してみた方がいいんだろうか…今日は金曜日なので週明けの月曜日になってしまうだろうけど。それでも言わないよりはマシだろう。
「(結構遅くまで残っちゃったな…)」
試作してその後十傑の書類整理をしていたらいつの間にかもう6時を回ってた。あーもう外真っ暗だ。
「そろそろ帰るかー…」
なんて呑気に伸びをしていると足音がした。だんだんとこっちに近付いてくる。
「(まあでも私が一席になってからこの部屋も改装したし、大丈夫…)」
私のマンション並みのセキュリティにさせてもらったので大丈夫だろうとたかをくくっていた。いや、ちょっと待て。
急いでさっきの盗撮写真を見てみた。授業中、プライベートに執務室での、居眠り……
まずい。非常に、まずい。
授業中はどうしようもない。でもプライベートと執務室は、ただごとじゃない。だってプライベートはマンションの部屋で寛いでるときの写真で、執務室も同じセキュリティにしてあるわけだから…
「(まさかこのセキュリティを突破してくるなんて…)」
相手は余程腕の立つハッカーらしい。…じゃなくて、マンションでも執務室でも気が抜けないということだ。それに気付くとさっきの靴音が嫌に大きく響く。間違いなくこっちに向かってきている。血の気が引く、冷や汗が伝う、震えが止まらない。荷物をまとめ、念のため盗撮写真を送られてきた封筒に入れてそれも鞄に入れて窓に向かった。十傑の書類も書類が悪用されないように片付けたので、とりあえずやり残したことはない。
「(よし……)っ!!」
私は荷物を持って窓から飛び降りた。
「い、…っつ…」
足に衝撃はあったが少しぶつかった木のおかげで動けないほどじゃない。携帯で窓を自動で閉めて極星寮に急いだ。寮生でもないし、えりなのようにやむ負えない事情があるわけでもないので迷惑をかけてしまうのに抵抗があるが、今学園で必ず人がいるのはあそこである。…あの会食の後すぐに私がこうなったということはえりなもまずいかもしれないわけなのだし、えりなの様子見も兼ねて、少し遠いが行った方がいいだろう。
えりなの家出の時のように、あの時以上に暗い道を走った。
――――――
なるべく落ち着いてからチャイムを押した。
「はいはい、誰だいこんな時間に…」
「ふみ緒さん!」
「おや、司かい…って大丈夫なのかい!?」
「えりなはいますか?」
「あ、ああ、いるよ。けどあんたその怪我…」
「お姉様?」
ああよかった。元気そうだ。被害は私だけだったらしい。するとえりなもふみ緒さんと同じく顔を青ざめさせた。
「お、お姉様、お怪我を…」
「?」
言われて視線を辿ると見事に右足から出血していた。それも結構な量だ。気づかなかった…もしかしたらあの飛び降りた時に引っ掛かったのだろうか。とりあえずこれ以上見せると精神的にきつそうなので通りかかった新戸さんが付き添ってえりなは部屋に戻って行った。
「これについては自業自得だから大丈夫。それよりえりなも寮のみんなもなんともなさそうでよかった」
「どういうことっすか?」
来客を察知してか幸平やみんなが集まってくる。ごめんよ、こんな時間に来て…
「どうしたんだいみんな、一体誰が来て…司先輩!」
「いっし…!?」
慧君の声がしてやっと本題について語れる、と声のした方を見る。エプロン。かわいい熊さんのエプロン。とスリッパ。だけ。え
い、いやいやそんなはずないよ。きっと長いエプロンの丈から見えないだけでちゃんと着てるんだよ。やっぱりこの頃休めてないからそんな邪な結論にたどり着くんだよきっとそう!!
「怪我してるじゃないですか!!」
「え!?ああうん」
慌てて駆け寄ってくる慧君は、私の怪我の心配をしてか私に傅くような姿勢になる。童話のお姫様みたいで憧れてる女子だって多いシチュエーション。でも今の私にとっては一番してほしくない姿勢だった。
だって、上から慧君の後ろがほとんど見えているんだ!!綺麗な背中にはエプロンのリボンしかないからがら空きだし。!?リボンの下の方も肌色…だと!!?
「は、はだっ、はは裸あぁぁ―――――――――!!!?」
そこで私の意識は途絶えた。