食卓の聖騎士(ターフェル・パラディン)   作:紗代

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三皿目 がんばれヒヨコ

あの飾り切りの一件以来暇さえあれば慧君は私のところに来るようになった。そしてヒヨコの刷り込みのように私の後ろを付いてくる。可愛い。

そうなると私も嬉しくてつい甘やかしてしまう。

あのときのソースを付けた焼き魚に味をしめたのか慧君は私に和洋折衷な魔改造料理をねだるようになった。私もほぼ思い付きと息抜きで作っているくらいなのだがこれが結構美味しいので不思議である。

慧君が喜んでくれるのでやめる気は更々ないが、一回この創作料理がばれて店主や女将さん(慧君のご両親)に大目玉をくらい酷い目にあった(雑用や皿洗いの量を増やされた)のでそれからは人の目を気にしつつ二人で作るようになった。

食材を無駄にしてるわけじゃないんだけどなあ…

でも一色家の人たちにとってはそれ以前に跡取りの慧君への影響が心配なのだろう。伝統ある祇園の老舗割烹の跡取りが和食以外の研鑽どころかでっち上げのような創作料理の方に傾倒するなんて…とか思われてそうだ。下手するとこの店継いでもらえなくなるかもしれないんだし。

 

そうこうしているうちに私は五歳になり、慧君も四歳になった。

一色家では跡取りが四歳になると故郷を離れて修行するという仕来りがあるらしく、慧君も例に漏れず同じ名門である「紀ノ国家」に行くらしい。

私はというと現在保留中だ。私としては少し寂しい気もするが私がここで働く期間は決まっていて幼稚園卒園までだ。どうやら両親も心の整理がついたらしい。あと約一年しかないのだし、このまま一色家に居続けるのが無難だという周りの意見なのでおそらくそうなるだろうと思っていた。のだが

 

「え?えいりちゃんが行かないならぼくも行かないよ」

 

ということで私も行くことになった。え、本当に?

いくら跡取り息子の初めてのわがままだったにしても創作料理の味を教えた輩を修行に同行させていいんですか?え、構わない?もっと和食を骨の髄まで叩き込まれてこい?あはは、やっぱりそうですよねー…

そんな私にひきかえ慧君はルンルンで楽しそうに荷造りをしている。というか私がついていくことになったのを聞いたあたりからご機嫌だ。まあそりゃあそうか、いくら交流があるっていってもそれは家同士のことであって慧君個人じゃない。これから知らない人たちのところにいくわけだし一人だと心細いんだろう。

 

そして行き先の紀ノ国家で今度は寧々ちゃんと出会い、二人から三人になってこの一年間を楽しく過ごすことになるのを新幹線に乗ったばかりの私はまだ知らない。




幼少期はとりあえずこのくらいにしようと思います。

ちなみにこのあと寧々ちゃんも主人公に懐いてヒヨコが二匹になる予定。
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