おそらく次で名探偵コナン編は終わります。
「広ーい!凄く素敵!」
「でしょでしょ。なんたって最新鋭の豪華客船なんだから」
俺たちは今園子の誘いで鈴木財閥の出資する客船「ハイリガー」にいる。園子の友人ということで特別優待なんだとか。
「で、なんでオメーらまでいるんだよ」
「あら、私たちは博士に付いてきただけだもの」
「そうですよ」
「コナンばっかりごちそう食い放題なんてずりーぞ!」
「あゆみたちだってパーティー出たいよ!」
「まあまあ皆、大人しくするんじゃぞ」
「えー」
「まあそうね。ここにいるほとんどは鈴木財閥に関わりのある大手企業の重役やその身内、果ては政財界の大御所なんかもいるみたいだし」
「流石鈴木財閥、ってことか。それに世界最新鋭の客船だからな」
「ええ、それもあるでしょうけど、それよりも彼らの興味を惹くものは別にあるみたいよ」
どういうことだ?不思議に思っていると上機嫌で立ち話をする大人たちの声が聞こえる。
「そういえば聞きました?なんでも今日の料理を担当するのはあの遠月の学生さんなんですって!」
「ええ存じていますわ、それも評議会の第一席なのでしょう?私今日という日を心待ちにしていましたの」
「そういえば君たちはMs ツカサの料理を口にするのは初めてだったか」
「バーネット様はご存知なのですか?」
「ああ、前に一度だけ会食でね。彼女の作る料理は神の賜り物と言っても過言ではないよ」
「まあ!」
遠月?ミスツカサ?
「今回の客船で出る料理が目的なのか?」
「ええ、今日この会場で提供される料理のほとんどは遠月の――世界有数の料理学校·遠月茶寮料理学園の生徒が提供したレシピだそうよ」
「けど学生なんだろ」
「あなたがそれを言えるのかしら」
「うぐ」
「まあいいわ。それに遠月学園はそんじょそこらの料理学校とは違うわ。なんせ徹底的な実力主義の教育理念で毎年退学者を出しているくらいだもの」
「退学って……んな大袈裟な」
「嘘なんかじゃないわよ、現に遠月学園に在籍していただけで業界では圧倒的に支持される。卒業出来た日には出世コース間違い無しでしょうね。最近東京にオープンしたSHINO'S TOKYOのオーナーの四宮小次郎や霧のやの女将·乾日向子も学園の卒業生よ」
「ふーん……」
だからああやってお偉方が浮足立ってるわけか。
遠月茶寮料理学園ねえ……一体いくら積んだのやら。
「副料理長に従えと何度言ったら分かる!!」
「っ!?」
いきなり大声がして思わずその方向を見る。
すると怒り心頭になって怒鳴る険しい顔をした男と怒鳴られている白いコックコートをきた男がいた。
「し、しかし」
「しかしも何もない!あの小娘をここに呼ぶのに一体どれほど苦労したと思ってるんだ!もういい、下がり給え!!」
「は、はい!」
そしてそのままよろけるようにしてコックコートを着た男は去って行き、怒鳴っていた男もその場を離れていった。
「ねえ園子、あそこにいた人たちは?」
すると園子は苦い顔になりながらも蘭に聞かれたからか説明し始めた。
「さっき怒鳴ってたのは今回の人事総括の永倉吉信さん。それで怒られてたコックさんは料理長の戸田幸人さん。今回の人事のことで厨房の方はかなり揉めたらしくて、永倉さんが無理矢理推し進めたんだって」
「厨房が揉めたって?」
「この客船がいかに最新且つ最高かっていうのをプレオープンも兼ねたこのパーティーで示したかったらしくて、特に永倉さんはそういうのに妥協しない人だから、こないだのお父様とお母様の会食の話を聞いて遠月に依頼したらしいの」
「遠月ってひょっとしてあの遠月グループ?」
「そ。そこのメインの遠月茶寮料理学園で一番料理の上手い生徒をわざわざ連れてきたらしいのよ。それで急遽そんなことになったもんだから色々しわ寄せとかがあっちこっちで起こってるって聞いたわ」
なるほど、だからあんなふうに……
「あ、でも料理の味は保証するわよ。確かに周りの人たちが期待してるように遠月の子も作るしレシピも殆どその子から提供されたものだけど、この日のために腕のいい人たちに来てもらってるわけだし」
「そっか」
園子が言うなら大丈夫だと蘭は頷き、俺もその場を後にした。
それからしばらくした頃、事件が起こった。
永倉さんが食事の途中で苦しみだしたのだ。症状からして何らかのアレルギーに過剰反応を起こしてしまったのだろう。そのまま息を引き取ってしまい、到着した警察は殺人事件として捜査……していたのだが。
「(いくらなんでも犯人の断定早すぎるだろおっちゃん!)」
アリバイがなく、担当していた料理という事やこの日のためにスケジュールを滅茶苦茶にされたことなど確かに色々あったようだが、それでは説得力に欠けるしなにより彼女以外にもまだ候補はいるのだ。
まず真っ先に疑われていた副料理長の司瑛璃(つかさ えいり)さん。
彼女が今回被害者の永倉さんによって急遽入れられた遠月学園の生徒。
今回のレシピやコースの構成など料理関係に関してを一手に引き受けていたらしい。そのうえ急遽入れられたものだからスケジュール管理において学園と彼女は奔走していたのだとか。
「私はやっていません。確かにレシピを作るにあたって食物アレルギーの有無などの情報はもらいましたけど、よりによって料理で人殺しなんてしません」
次に料理長の戸田幸人(とだ ゆきひと)さん。
今回の人事変更で一番永倉さんに振り回されていたのを俺たちを含め何人か見ているらしい。
「そうですよ、現に私が彼女からいただいた今回のレシピには米が別の物で代用されていましたし、全員そのレシピで作っているのでありえません」
そしてウェイターの間﨑薫(まさき かおる)さん。
彼に関してはアリバイがあやふやだというのと、永倉さんを快く思っていなかった人物の一人であるということから。
「つーかなんで自分まで……死因って料理なんですよね、なんで飲み物と出来上がったの持って行くだけの自分まで疑われてるんですか」
「すみませんが、もう少しお待ちください」
「待つも何も、そこの女なんでしょう犯人って。さっき探偵さんもそう言ってましたし捜査するだけ無駄じゃないんですか?」
「し、しかしですね」
どうやら警察やおっちゃんたちは被疑者を落ち着かせるのに手こずっているらしい。
「(一回直接厨房を調べてくるか)」
「ねえ、そこのきみ」
「へ?」
「これからどこへ行くつもりなんだい?」
声を掛けてきたのは司さんと関わりのあるという男。たしか――一色だったか。
「え、えっと。僕、おじさんに頼まれて厨房の写真撮ってこないといけないんだ」
「へえ、じゃあ僕も一緒に行ってもいいかな」
「で、でも……」
「邪魔はしないから」
やばい、この人顔は笑ってるけど目は笑ってない。子供相手にする表情じゃねえだろこれ。
「分かったよ。でも僕、厨房に行ってこいって言われたんだけど場所が分からなくって……」
「それについては大丈夫さ、司先輩に付き添ってる竜胆先輩から地図データを送ってもらったから」
それじゃあ行こうか
そういう笑顔の男に、俺は付いて行くしかなかった。