・豪華客船事件後
・↑の事件で主人公と会ったのは少年探偵団の中でコナン君だけ
「では次に帝丹小学校課外授業受け入れの件について」
「はーい、まず帝丹小学校ってどこなわけ?」
「帝丹小学校は米花市米花区米花町にある小学校よ。どうやら今回はその一年生が来るみたい……資料にあったでしょう。読んでないの?」
「だって俺別に子どもとかどうでもいいしー」
「はあ……先輩、久我の事は気にせず続けてください」
「あ、ああうん、じゃあ続けるね。それでその子たちは一日体験入学っていうことで軽い校内見学と簡単な調理実習、最後に少し話して質問とかに答えて終了……の流れなんだけど。今回は正式な遠月のイベントじゃないから私たちは引率の先生たちの案内役に二人くらいでいいみたい。だれかやる人いない?」
「子供とか面倒」
「ももはそのまま紛れ込んじまうもんなー」
「リンドウうるさい」
「しかし背の高い俺や女木島がいったところで怖がらせてしまうのではないか?」
「となると必然的に行けるのは限定されるか……」
じゃあいけるとすればリンドウ、寧々ちゃん、慧君、久我……たしか叡山君とえりなはそれぞれに仕事があるから学園にはいないだろうし、私は商談と一部書類の決裁があるから初めからの参加は無理だから……
「じゃあそれぞれ前半と後半に分けましょうか。前半はリンドウと久我、後半は寧々と一色で」
「ええ!?りんどー先輩と一緒!?」
「おーう、なんか文句あんのかよーくがー」
「ぐえ、くび、首締まって」
リンドウに思いっ切り玩具にされる未来しか見えない(というか今も既に玩具にされている)。でも寧々ちゃんと一緒になって喧嘩が絶えないよりはいい組み合わせだと思うんだよ。うん。
「司先輩は今回どうするんですか?」
「私は商談とか仕事が入ってるから基本的には出ないよ。でも早めに学園に戻るつもりではあるから何かあった時は執務室か私の携帯に連絡お願いね」
「わかりました」
これで分担も決まったし、後は心配ないだろう。にしても米花町か……なんか引っ掛かるんだよね……
とりあえず決まった以上考えていてもどうしようもないのでこれについて考えるのを放棄することにした。
「……」
慧君の意味ありげな微笑みが何となく怖かったことだけは記しておこうと思う。
――――――
当日、私は予定より早めに商談や外部での仕事が終わり執務室に帰って来ていた。
十傑としての仕事とか書類はこういう空き時間を活用してやっておかないと後々後悔することになるのだ。
「これでこの書類は終わり、と」
気付けばそろそろお昼近いので一応形だけでも休憩はとっておくべきだろうか。と席を立つと扉が若干開いていた。
そしてそこからこちらをのぞき込んでいる。小さな人影。
「どうしたの?迷子?」
「あ、えっと、そのぉ……」
近寄ってドアを開けて目線を合わせると恥ずかしいのかもじもじとうつむいてしまう。うーむ困った。子供の相手ってあんまりしたことないからなー……と思っているとその子は学園の入場パスを首から下げていた。
ああなるほどこの子、今日の一日体験入学の小学生か。
「……とりあえず中に入って何か食べる?ちょうど休憩しようと思ってたところだからお菓子とお茶があるの」
「わあ、い、いいの?」
「どうぞ」
そうして子どもを招き入れるとおやつとして作っておいたタルトタタンと甘めのミルクティーを差し出すと勢いよく食べ始めた。
「美味しいー!」
「口に合ってよかったよ。ところで君の名前は?見たところ今日の一日体験入学生みたいだけど……」
「歩美。吉田歩美っていうの。おねえさんは」
その時吉田さんの言葉を遮るようにして私の携帯が鳴った。
「ちょっとごめんね」
「う、うん」
「――もしもし」
≪司先輩≫
「寧々。ちょうどよかった実は」
≪すみません、今回の体験入学の児童が数名行方不明になってしまって……≫
「ああ……おそらくそのうちの一人の女の子なら今私の執務室にいるよ」
≪え!?……りょ、了解しました≫
うんわかるよ。だって私の執務室って案内する棟とは別棟どころか一番遠いもんね。……この子どうやってここまできたんだろう。
「じゃあ、他の子たちも探すから名前と特徴教えてもらえる?」
≪はい―――≫
寧々ちゃんから教えてもらってメモしていく。
なんでも一班丸ごといなくなってしまったらしくついさっき点呼の際にそれが発覚したらしい。学園は生徒の人数も多いし、それ以上に敷地も広大だから迷子になったらほぼ遭難と変わりなかったりするからなあ……
寧々ちゃんの方も他の皆に連絡を回してくれるそうなのでひとまずは……
いやもし集合場所に行って戻ってない子がいたら校内放送するか。小学生の行動力をなめてはいけないと最近よくテレビでもやってるし。
「お姉さん?」
「ああごめんね、今君たちを引率してた先生たちから連絡がきてね。君を連れてきてほしいって」
「えーでもまだ食べ終わってないのに」
「なら残りのタルトタタンはお土産用として君にあげるよ」
「いいの!?」
「うん。ちょっと待っててね」
タルトタタンをラッピングして手渡す。それなりに可愛らしく出来たが、店に出すものではないので出来栄えについては気にしないでもらえると助かる。
「じゃあ行きましょうか」
「はーい」
そしてそのまま集合場所に到着すると子どもを引き渡した。
「あの他の子たちは?」
「それがまだ……」
「わかった。私の方から校内放送で呼び掛けてみるよ」
「ありがとうございます先輩」
「僕も付き合いますよ」
「いや今回は大丈夫。放送するだけだし。また迷子になる子が出ないとも限らないからこの場をよろしくね」
「……分かりました」
慧君と寧々ちゃんにその場を任せて放送室へと急いだ。
『皆さん授業中に失礼します。緊急の校内放送です。今日一日体験入学生として来て頂いている帝丹小学校一年生の江戸川コナン君、小嶋元太君、円谷光彦君、灰原哀さん――この四名を見掛けられましたら至急十傑評議会司瑛璃まで連絡をお願いします。繰り返します――』
それから私が執務室に戻って数分で連絡がきた。
「はいこちら第一席執務室」
«あー瑛璃先輩で合ってます?»
「ああ幸平、どうしたの?君から連絡って珍しいけど」
«実はそのー、先輩の言ってたっぽい子らを見つけたんで今俺ら授業終わったところなんで集合場所に連れていきますわ»
「ありがとう。私も今から向かうから」
そう言って私も再び執務室を出た
―――のはよかったのだが。
「司先輩も来たことだし、説明してくれるわよね?」
なんでこんな凍てついた空気になってるのここ!?
寧々ちゃんが問い詰めると件の子たちは俯いていた。
状況が分からない私は慧君に説明を求める。
「私のいない間になにかあった?」
「司先輩のいない間というか、彼らの場合迷子になってからというか……」
「……詳しく聞かせてくれる?」
「ええ……」
慧君と寧々ちゃんが幸平から子どもたちをあずかった時に聞いた話によるとどうやら彼らは私のところにきた子を探して同じく迷子になっていたらしい。
皆でいつものように迷子になった子の行き先を推理してしているうちに、大柄な子が空腹に耐えかねて食材や料理を食べてしまっていたのだとか。それに気付いた全員でその子を注意したものの、そこに入っていた料理が複数あったことから結局全員食べてしまったところに授業が終わって移動していた幸平が遭遇し今に至るということだ。
「だからあんなに寧々が厳しいのか」
「いえ、確かに食材が足りなくなることは死活問題ですし、スチコンを開けたことで中断された料理もありますけど……彼らが食べて食材が足りなくなって授業を変更せざるを得なくなったところや調べて散らかしたまま放置された教室もあって苦情が来ているんです」
「……なるほど」
そういうのって私たちの方に回ってくるようになってるからなあ……
「この度は本当に申し訳ありません!」
「いえこちらの監督不届きもあります。頭を上げてください……それに子どもたちに事情を聞きたいので」
「!」
「だ、だってよぉ朝食べ損ねたから腹へって仕方なくて……」
「すみませんでした」
「ごめんなさい」
「だそうですよ、司先輩」
慧君に促されてその子たちの前に立つ。……あれ、メガネの子どこかで見たような?なんか顔色悪いけど大丈夫だろうか?
いや、皆に怯えられてはいるんだけどメガネの子は一層際立っていた。
「その前に一色、不足分の食材の手配をお願い。寧々はそれぞれ被害のあった教室の担当者に聞き込みして壊れた備品とかがないかの確認、もし酷い有り様なら業者に入ってもらって」
「「はい」」
これでとりあえず大丈夫だろう。
「さて、あとは君たちについてなんだけど」
「「「「!!」」」」
「ま、まって!」
その子たちと私のあいだに入ってきたのは執務室にきた子だった。
「待って天使のお姉さん!皆は悪くないの、歩美がお姉さんの後を付いて行っちゃったから……」
天使?
「ええと、君が私の後を付いてきたってことで合ってる?」
「う、うん。何もかも真っ白で綺麗で天使様みたいだと思ったの。それで見学の時にお姉さんが歩いていくのをみて追いかけなくちゃって……ごめんなさい」
うん、それはよくある幻覚だから忘れたほうがいいと思う。でも必死に伝えようとしてくれているので言わないでおくのが吉だろう。
「とにかく子どもといえど行動の責任はあります。君たちは家に帰ったら今日の事を正直にご両親に説明すること、いいですね」
「えー……」
「ちゃんと言えますね?」
「「「「「はい……」」」」」
とりあえずこれで今回はなんとか収まり、あとは何事もなく終わった。
あとでちゃんと誤解を解いておかないとな……
オマケ
「あれ、このスチコンに入ってた私のおやつと試作品は?」
「それも被害に遭ったスチコンの一つです」
「え゛」