あれから学年が上がり、私たちは無事二年生へと進級することが出来た。そして―――迎えた入学式と始業式。
「多いね…」
「んーと、たしか今年の新一年生は812人だとかって言ってたっけなー」
「812…!?」
「おう、っていっても全員内部進学だから目新しいってほどのやつはいねーけどな。つーかこれでも減ったらしいぜ?最初は900人近くいたらしいし」
「これでも減った方、なんだ…」
私たちが話しているうちに式が始まった。十傑は一般生徒とは違う場所に席を設けられているが始業式はともかく入学式は新一年生の総代と総帥が話すだけなのでそこまで緊張しない。いや、十傑専用席に居る時点で目立ってるんだけどさ…
『新一年総代――――――紀ノ国寧々』
「はい」
え
今、なんていった?
紀ノ国、寧々って、そう、言った?
呼ばれて壇上へと登っていくその女子生徒は、眼鏡やおさげなど記憶の中の幼い少女とはやや差違はあれど、彼女は間違いなく―――私の幼なじみの一人、紀ノ国寧々だった。
――――――
「寧々!!」
「おねえちゃ…コホン、司先輩」
あ、言い直された。
「久しぶり。高等部進学おめでとう。あと普通に昔みたいに瑛璃でいいよ」
「いいえ、一応公の場ですし、先輩は敬わないと示しがつきませんから…それと、ありがとうございます」
「そうかな?」
「そうです」
寧々ちゃんは極めて公平だが結構頑固なところがあるのできっとこれは譲らないだろう。
「というか中等部からいたならもっと早く再会しててもよかったんじゃない?」
「なんだか先輩は食戟とかで忙しそうにしていたので、中等部と高等部の校舎も離れてますし…」
「…そういえばそっか」
いや私の場合は食戟だけじゃないんだけどね。むしろ食戟よりそっちのほうがやばいんだけどね。…う、思い出したらまた胃が痛くなってきた。
「先輩、大丈夫ですか?顔色が良くありませんけど…」
「ああうん…大丈夫…ちょっと、思い出して胃が痛いだけだから」
「え、ちょ、本当に私たちがいない間に何があったの?」
「いや…ストーカー、みたいなものに遭ってさ…おかげでせっかく寮に入ったのに中等部の一年間しかいれなくて…今まで食戟で全部なんとかしてきたんだけど…」
「ストーカー!?お姉ちゃん大丈夫!?」
「はは…」
もう既に素の口調に戻ってしまっているけどそうなってしまうくらい突拍子もないことを胃痛交じりに私も話しているので致し方無いだろう。
「…今のところは、結構厳重なマンションに住んでて郵便物も届かないようにしてるから前ほど気になることは無くなったんだけど…時々視線を感じたり、私物が無くなったり…あ、でも常に特注の小型盗聴発見器は持ち歩いてるから盗聴器見つけるのはうまくなったよ」
「お姉ちゃんもういいから!!それ誇っていいことじゃないよ!!」
「そ、そう?…そういえばリンドウからも似たようなこと言われたなあ…」
あの時は無言で頭撫でられてももと斎藤と女木島にタルトと手鞠寿司とラーメン恵んでもらったんだっけ。ふみ緒さんといいみんなといい優しいなあ…。そんなふうに思いふけっていると後ろから声がした。
「あ、いたいた紀ノ国くん!一体誰と話して―――」
声のした方を振り返る―――とそこには端整な顔立ちの男子生徒がいた。あれ、かなりガタイが良くなって昔のような可愛らしい顔じゃなくてイケメン化してるけど…慧君、だよね?
「慧、くん…?」
「――――――」
おそるおそる名前を呟くと慧君(仮)が固まった。すると寧々ちゃんがため息を吐いて助け船を出してくれた。
「…お姉ちゃんよ、一色。返事くらいしたら?」
「…ああ!うん、久しぶり。ごめんよ。前に別れた時よりもずっと綺麗になっていたものだから」
「いや別にいいんだよ、忘れてたって…」
「そんなんじゃないよ!ところで二人でなんの話をしていたんだい?」
「えっと…」
「お姉ちゃんがストーカーに遭ってるっていう話」
「ちょ、寧々!!」
「大丈夫よ、一応信用できるし。何よりちょっと協力してほしいことができたから」
「ふうん、ストーカー、ね…詳しく聞かせてもらってもいいかい?」
「はい…」
慧君ののほほんとした爽やかイケメンスマイルが一瞬氷の微笑に見えたのは気のせいだと思いたい。
結局、私の知る限りすべてを二人に話した。今日は入学式だけで二人はもう自由だが私は十傑のメンバーなのでこれからも仕事の予定が詰まっている。
名残惜しいが別れることになり、そのあと二人が色々話し合っていたのは残念ながら聞こえなかった。
この数日後、同級生の一部が謎の失踪を遂げることになるのだが私には知るよしもないことである。
はい。ストーカーは全員未来の六席と七席によって始末されました。特に一色はそのせいで極星寮から主人公が出ていってしまっているので容赦しないと思います。
ちなみにこの物語で恋愛要素のほとんどをかっさらっていくのはこいつです。