再びやってきた秋の紅葉狩り会。
「何事もなく終わりますように何事もなく終わりますように何事もなく終わりますように何事もなく終わりますように…」
「そろそろ時間だってのに…去年とまんま同じじゃんかー」
「だ、だっていくら二人がメンバーの中に入ってるっていってもあと六人もいるんでしょ?こ、怖い子とかいたりしたらどうしよう…わ、私元々こういう顔合わせとか得意じゃないのに…」
「だが、これも十傑の務めだと総帥は言っていたぞ」
「でも…」
「もー、これ終わったらももが直々にザッハトルテ焼いてあげる。…正直言って、ももも面倒くさいと思うけどちょっとの間だけだし…がんばれ司」
「…頑張る」
「現金だなーおまえ」
みんな「やれやれ」っていいながらも私に付き添ってくれる。うう、おかげでちょっと楽になってきたかもしれない。
「時間だ…それじゃいこうか」
『おう!(うん)』
「仕切ってんじゃねえよ二年が」
「…」
「っ」
「女木島ー?」
「…ああ、今行く」
なんか一席と四席の先輩が女木島から凄い速さで去って行った。顔色悪いけど大丈夫なんだろうか…まあ私に言われたくないだろうけど。
「遠月十傑のおなぁ~りぃーっ!!」
太鼓の音に合わせて私たちも席に着く。うんうん、寧々ちゃんに慧君に―――他にも名前を聞いたことのある子たちばかりである。
「じゃあ、お茶とお菓子お願いします。」
「かしこまりました。」
私が声をかけると給仕の人たちは一礼して去って行った。
「あのー、誰か俺と食戟してほしいんだけどー」
「あ、私で良ければいいよ」
言い出したくてうずうずしていた一番身長の低い男子の挑戦に手を挙げて応えると好戦的な目でギラギラとこちらを見てくる。うん、ちょっと怖いけど陰湿なストーカーよりずっといいな。…なんか舐められてる気がしないでもないけど。
「マジ!?やりぃ!!ねえねえねえねえいつにする?明日?」
「何時でもいいけど…出来れば秋のうちにしてもらえると助かるかな。進級試験とか色々行事が立て込んで食戟できる余裕すらなくなるから」
「ふぅーん…」
男子生徒が考え込むと戻ってきた給仕の人がお茶とお菓子を配っていく。今回は栗きんとんかー、とお菓子を眺めてから一緒に運ばれてきたお茶を一口飲む。あ、これ玉露だ。それもかなり高いの。さすが総帥、出し惜しみせずに提供してくれるのに感謝である。
「すいませーん、おかわりー!」
「リンドウ食べ終わったの!?」
「だって二つしか乗ってねーんだもん。仕方ないだろー?」
運ばれてきたばかりの栗きんとんを既に食べ終わったリンドウが給仕の人におかわりを催促する。
…なんかこれ去年と変わらなくないか?
一年生は…あんまり仲良くないんだ…まともに会話が成立しているのは寧々ちゃんと慧君だけで、なんかすごくピリピリしてる雰囲気が伝わってくる。ひょっとして個人主義が多いのかな。
「お久しぶりです。司先輩」
「久しぶり、一色、寧々」
ニコニコと挨拶してくる慧君とぺこりと会釈する寧々ちゃんにこちらも和む。ちなみに三人で話し合った結果、二人は私を「先輩」と呼ぶ事になり、私も慧君を寧々ちゃんに倣って「一色」と呼ぶ事にした。慧君は納得していないようだったが寧々ちゃんが私が親しい人と興味を持ったもの以外の男子を「名字+さん(またはくん)」で呼んでいると言ったらやや渋りながらも納得した。そんなことしてるつもりはないんだけどな…
「そいつらが噂の幼なじみか?」
「そうだよ」
「ふ~ん?…よし!あたしは小林竜胆。気軽にりんどー先輩でいいぜ」
早速二人に構い倒し始めるリンドウと殺伐とした空気の中話し掛けてもらえたことが嬉しかったのか、和やかに会話する二人。ああ、ここだけ別世界みたいだ。
「おいおい、ここはただの顔合わせであって必ずしもここにいる奴らが十傑に加わるなんてわけじゃないんだぜ?仲良しこよしとか引くわー」
せっかくの雰囲気が一席の放った言葉で一気にぶち壊された。
「あ゛?」
「……」
「…どういう意味ですか?」
やはりこれに一番反応したのは一年生たちだ。大半は黙ったままだけどあからさまに顔を歪めているし、さっき私に食戟を挑んできた子なんかは立ち上がって今にもカチコミそうな空気を醸し出している。
「秋の選抜なんてのはただの目安だ。オレら十傑は学内評価トップの十人、それに対しおまえらはまだまだ世間知らずなアマチャン。そんな奴らと仲良くする気なんて更々ないね」
「大体、こんな顔合わせになんの意味があるっていうんだ、高等部に来て一年足らずの君らとの交流で得るものなんてたかが知れてる。まさに百害あって一利なしもいいところだ」
「二人ともやめないか、三年生が料理も出さずに一方的に一年生を詰るなど…情けないぞ!」
「並樹、てめえ…」
「それに、おまえたちは間違えている。高等部に来て一年足らずであろうがなかろうがここでは料理がものを言う―――たとえそれが一年生であったとしてもだ、現におまえたちは見ているはずだぞ」
「っ…」
仲裁に入ってくれた並樹先輩の言葉に俯く四席と悔しそうに顔を歪める一席。
「うるさい!大体おまえだってこいつに負けたから五席になったんだろう!」
「ああ確かにそうだよ。俺は彼女に負けた。でもな、俺はそれでよかったと思っている。」
「~、くそっ」
四席が立ち上がって私を指差すが並樹先輩は意にも介さずお茶を啜った。
「そういえば一年の一色と紀ノ国は司三席と顔見知りだったか」
「ええ、幼馴染みですよ」
「ふーん…ふっ」
一席が私たちを見て笑った。
「一年生に和食の凄いのがいるって聞いたんだが…まさかこの二人だったとは、特に片方は跡取りのくせに「一色家の落ちこぼれ」なんて言われてるらしいじゃないか。ま、類は友を呼ぶなんて言うしこの魔女にはさぞお似合いだろうさ」
「おまえいい加減に…」
バシャ
「…すみません、手元が狂いました。」
私は一席の頭上にもう冷え切ってしまっていたお茶をこぼした。お茶は一口しか飲んでいなかったため、そのせいで一席は上から下までずぶ濡れである。あーあ、せっかくのお茶が勿体無い。
「な、なんのつもりだ司三席!!」
「こんなことをしてただで済むと思っているのか!?」
一席と四席が喚くが私はそんなこと知ったことではないし、周りの他の十傑や一年生も目を見開いている。
「私のことをどう扱おうとかまいませんが、その対象が私ではなく友人や先輩に向けられるというのであれば、私は手段は選びません。そんなに納得がいかないのであれば―――食戟で決着をつけましょう。ね、いいでしょう?条件としては…そうですね、私が勝ったら『二年生十傑と並樹五席、一年生に謝罪することと自分の十傑業務はなるべく自分ですること』、私が負けた場合は『私は十傑第三席の座を降り、退学する』。これでいかがでしょうか?」
「え、あ…」
「食戟…」
一席と四席の表情が凍り付いたかと思えば直ぐにどこか怯えを含んだようなものに変わっていく。どうしたんだろうか?私は三席だ。彼らがさっきまで延々と語っていた地位も年齢も下の存在だというのに。
「受けてください、食戟。ここにいる全員に勝つ勝算があるのでしょう?だからわざわざこんな公の場で全員を敵に回すような態度が取れるんですよね?逃げちゃだめですよここに居る全員が目撃者です。なんなら私のボイスレコーダーの音声を然るべき機関に引き渡したっていいんですよ――――――で、受けてくださいますよね?食戟」
そして私は一年生の男子生徒と一席と四席の先輩に勝利し、これまた一気に念願の(あまり嬉しくないが)一席に昇格したのだった。
一席と四席についてはあまり考えてません。ただ主人公に叩き潰されたことはたしかです。
あとなぜかオリキャラの並樹五席が妙にかっこよくなってしまった気がする。
一席が主人公を「魔女」呼ばわりしたのは実は後で判明する異名(といっても題名になってるんですが)に関係してます。
ちなみに寧々ちゃんと一色さんは主人公のおかげで仲良しです(あくまで幼馴染・友人として)。