ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

16 / 68
044

 

 

 

 

side 織斑ルイズ

 

「……と、言うことで水嵩を増やすのを辞めれば襲撃者は来なくなり、そして私が探し物を探すからには水嵩を上げる意味がなくなり、そして私も貴女も誰も損をしなくなるわ。理解してくれた?」

「うむ、襲撃を止める理由を作ってくれた事に感謝しよう」

 

……と、こんな感じで水の精霊との話は簡単に終わってしまった。

向こうは襲われなくなればよく、襲われる理由を私が見付けてそれを解決させたことを襲撃者に伝えてしまえば襲う理由がなくなった二人はわざわざ意味もなく水の精霊を襲うなんて無駄なことはしない。

それに二人は一応顔見知り(文字通り顔を知っている程度)なので、結構簡単に解決することになった。

 

……二人は私が平然と水の精霊と話していたり、普通人を『単なる者』と呼ぶ水の精霊に『虚ろの英雄』と呼ばれている理由や私がメイジでありながらメイドをやっている理由などを聞きたがっていたが……まあ、大部分を秘密にしたことは言わないでもわかって貰えると思う。

何しろ説明するには英霊の内容まで行く必要がある話だし、正直に言って面倒臭い。説明したものは『私がどうやって水の精霊と出会って依頼を受けたのか』と言うことと、『メイジであることを隠してメイドをやっている理由』。当然色々と嘘を織り混ぜておいたけれど、向こうには真実を確認する手段が無い。精々ルイズに聞くくらいだろうけれど、そのルイズにすら嘘ばかり教えてあるので真実にはまず辿り着けないだろう。

 

……まあ、そんな事はどうでもいいわね。アンドバリの指輪……死者に偽りの命を与えるらしい、かなり強力な水のマジックアイテム。これを相手にするとなると、色々と面倒なのよね。ゾンビ戦術とか使われると面倒で面倒で、つい死体の欠片すら残さず“エクスプロージョン”で消し飛ばしてしまいたくなる。

 

「……そう言うことで問題は先送りにできたけれど、アンドバリの指輪を取り戻さない限り完全に解決した訳ではないわ。なにか知らない?」

「知らないわ」

「……」

 

タバサの風竜に乗りながら、私は二人に問いかける。けれど二人とも指輪について思い当たることは無いらしく、答えはあまり喜ばしい類いの物では無かった。

 

「何でもいいわ。盗んだのはアルビオンの貴族派が関わっている可能性が高いから……そうね、死んだ筈の誰かが居た、なんて言う話でもね。ウェールズ皇太子殿下とかが居たら確実なんだけど……」

「あら? ウェールズ皇太子さまだったら最近見かけたわよ?」

 

…………なんですって?

 

「キュルケ。悪いけどその話、もう少し詳しく」

「……わ、わかったからもう少し引いて頂戴。近いわ」

 

気が付いたらキュルケをまるで押し倒そうとしているような体勢を取っていた。まあ、内容如何では相当不味いことになるし、ここは諦めて貰いましょう。

 

「いいから、早ク」

 

私の目力に負けたのか、キュルケはそのままの体勢で話し始める。そしてその話の内容だと、姫様はいつ殺されてもおかしくないような状況にあると言うことがわかる。

……まあ、これはあくまでも私個人の予想なのでわざわざ不安の材料をばらまくこともないだろうと思って確証が得られるまで黙っておくことにする。

とりあえず一度“探知”で王宮近くに奇妙な水の力で動いている存在がいないかを……居るし。しかも一人皇太子殿下となると……もうこれは決定と思ってしまってもいいかもしれない。

 

……トリステインが滅んでも私は別に構わないけれど、水の精霊との約束は守ってから消えないと。何しろこれは『契約』なんだしね。『契約』はちゃんと守らないと世界から弾き出されることだってあるし、英霊の座から私の存在が削除される危険性もない訳じゃない。

……まあ、破らなければいいだけの話なんだけどね。内容だけはかなり簡単な部類に入るし。

 

「……悪いんだけれど、ちょっと急いでもらえるかしら?」

「……なぜ?」

「トリステインと言う国そのものが危険に陥る可能性が高いからよ」

 

あの姫様のことだ。皇太子殿下に誘われたら自分の立場やら何やらを全て投げ出してホイホイついて行きかねない。

折角『聖女』だなんて呼ばれ始めて人気も出てきた所なのに、そんな大スキャンダルがぶちまけられたら大変なことになるものね。

 

……マザリーニの胃が心配だわ。また今度残りの不正の証拠を提出するついでに胃薬でも贈ってあげましょうか。精霊の涙と同じような物質をふんだんに使った特別製の胃薬なら、どれだけ酷い状態の胃でもたちまち完治させてくれることでしょう。

 

「とにかく、一度学院まで行ってルイズを起こしてから説明するわ。今ここで説明して後でルイズに説明し直すのは二度手間だし面倒だもの」

「……わかった」

 

私の言葉を信じてくれたのかどうかは知らないけれど、タバサは使い魔の韻竜になにかを命じる。すると突然速度が上がり、下の景色がかなりの速度で流れて行く。

そこでついでに私は風の精霊にお願いして後押ししてもらい、更なる加速を得る。この速度なら……まあ、三時間はかからないわね。

“テレポート”を使えば十秒足らずで着くんだろうけど、流石にこの二人に虚無の担い手のことを知られても大丈夫だと言えるほど二人のことを知っているわけでもないし、信用はそれなりにできるかもしれないけれど信頼できるほど信じていない。

勿論裏切られてもいいと思えるほど想っているわけでもないし、裏切られる可能性がゼロだと言い切れるわけでもない。

 

……まあ、裏切れないように鎖をつけることくらいだったらできなくもないんだけどね。

私は(度重なるストレスと積み重なるビダーシャルへの愛情によって)スクウェアを遥かに越え、独力でヘプタゴンスペルを使えるようになった『魔薬』のイザベラと、純正にして相当の実力と知識と技術を持つエルフであるビダーシャルの二人が作った魔法薬の全てを“複製”してきたし、それらの薬の効能等もしっかりと記憶している。イチカが怪我したらすぐ治してあげられるように覚えたんだけど、あんまり意味がなかったのは苦いような嬉しい記憶だ。生きてるなら健康が一番だもの。

 

…………でも、ここで鎖をつけちゃうのはつまらなさそうなのよね。後でもっと面白くできそうだし……。

 

……うん、とりあえずこの事件が終わるまで保留と言うことで、壊れた心を直すお薬は仕舞っておきましょう。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。