ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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ほのぼの版 1~5

 

 

ゼロの使い魔のルイズに一夏が使い魔として召喚されたらきっとこうなるほのぼの版 その1

 

寝返りを打ったら何かに引き込まれるような気がした。急いでサテライト30で身代わりをたてたら、身代わりの方が銀色の光にちゅるんと飲み込まれて、繋がりが切れた。どうやらこの世界からいなくなってしまったようだ。身代わりたててよかったよかった。

まあ、別に身代わりなんて立てなくても、ここにいる俺はどう頑張っても消えないんだけどさ。一応ここ、英霊の座だし。

 

俺がこんなところにいる理由? 知・る・か☆

気が付いたらここに居た。それが全てだ。マジ話で。

それはそうと、行っちゃった方の俺はどうしてるかね? しっかり寝てんだろうか?

 

 

 

……そんなわけで俺だ。気付いたら目の前にピンク色の頭をしたいぶかしげな顔をして立っていた。

 

「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」

 

…………ああ、把握した。ゼロの使い魔ね。よくあるよくある。

それで俺はこうしてルーズに召喚されたわけね。めんどくせえ。

 

「……あんた誰?」

「人に名前を聞く時は、自分から名乗るものじゃあないのか? そんなこともできないようじゃ、立派な貴族にはなれないぞ?」

 

とりあえず馬鹿にしとこう。けど間違ったことは言ってないから、反論は難しいだろう。

 

「なっ……なんですってぇ!?」

 

……しちゃうんだ。びっくり。事実なんだがなぁ……。

まあ、このピンクヘッドの思い描く理想の貴族像と俺の思い描く理想の貴族像が同じであるとは限らないんだが。

 

そんな風に考えながら目の前の桃色脳天気(誤字にあらず)に杖を向けられた。

とりあえずノータイムで奪い取ってみた。

 

「あっ!返しなさいよ私の杖!」

「爆発するからやだ」

「ぷふぅっ!」

「平民にまで言われてるよ!さっすがゼロのルイズ!」

 

ピンクヘッドは周りの奴等を睨み付けるが、笑い声は止まらない。そして気が逸れている間に、俺はピンクヘッドから離れる。

 

「あっこら、待ちなさいっ!」

「唇を奪われたくないからやだ」

「コントラクト・サーヴァントじゃないの!」

「俺には好きな相手がいるんだよ」

「貴族にキスしてもらえるなんてあんたみたいな平民じゃあありえない幸運なのよ!」

「そんななんの役にも立たないあるだけ無駄な幸運より、ご飯食べる方が重要だろ。名誉じゃ腹は膨らまないよ」

「あっきれた!平民らしい物言いね!いいからさっさと杖返しなさい!」

「なに言ってんの? 馬鹿じゃない? 跪いて口調直して一昨日出直して?」

「何であんたみたいな平民なんかにそこまで言われなきゃならないのよ!」

「君は実に馬鹿だなぁ。君が実に馬鹿だからこうして言われても言い返せないんだよ。そんなわけでハラワタぶちまけて溶け落ちて?」

「ふ、ふふふざけるんじゃないわよ━━っ!!」

「巫山戯る? やだなあ俺は真面目だよ? 真面目に人の唇を無理矢理奪おうとする変態ショタコンピンクヘッドをからかってるだけで」

「うっがぁぁぁぁぁっ!!」

 

あーあーそんな暴れて。貴族ってよくこういう風になるよな。からかってると楽しいし、どうでもいいけど。

 

そんな感じで変態ショタコンピンクヘッドと鬼ごっこ(捕まると強制的にキスされる)を続けていたんだが、話が進まないと思ったのか近くにいた唯一の大人(ただし頭が少々寂しい)が加わった。どうやら空を飛んでいるらしく、中々速い。

 

そんな速い寂しい人(主に頭が)は、袖を掴んで変態ショタコンピンクヘッドにぽーい!

 

「なんとぉぉぉっ!?」

「キャアァァァッ!?」

 

二人はぶつかってもんどりうってこけた。ばーかばーか。変態ショタコンピンクヘッドのばーか。人の唇を無理矢理奪おうとするからそうなるんだ。

 

「あ、ちょっと通してもらえません?」

「ん? ああ、いいぞ」

 

気の良さそうな一人に(目の前に小規模で出したアリス・イン・ワンダーランドで軽く洗脳して俺の言うことをある程度聞いてもらえるようにしてから)話しかけ、普通に通してもらう。

 

使い魔なんて嫌だね。やろうとすれば千の顔を持つ英雄で金貨を出して働かないでも暮らしていけるし、それ以前に食べ物を出せばそれだけで暮らしていけるし。

 

原作? 知らんよそんなもの。

 

「変態ショタコンピンクヘッドのばーか」

「せめて杖だけでも返しなさいよ!」

「やーだよ」

 

杖返したらまた呼び出されるじゃん。それ以前に爆破されるかもしれないし。

あれって普通に怖いよな。何であんな危険人物と普通……とは言わないまでも排除しようとせずに同じ学院で暮らしていけるんだろう?

俺にはちょっと信じられないね。生徒の方も、教師の方も。

 

…………さてと。とりあえず冗談で済ますためにも学院の方に行っとこう。

流石に指名手配されると厄介だし。

この世界だと黒髪はかなり珍しいようだし、まともに暮らしてて見つからない自信はあんまりない。

 

…………アンダーグラウンドサーチライト使えば楽勝だけど、それはまともに暮らすの範疇には入ってないと思うんだよ。

まあ、やらないからどうでもいいんだけどさ。

 

そんなわけで、変態ショタコンピンクヘッドの杖を持ったまま学院に走る俺でしたとさ。

 

「まっちなさぁぁぁいっ!!」

「やーだよ」

 

後ろから土煙をあげながら変態ショタコンピンクヘッドが血走った目で追いかけてくる。ああ怖い。捕まりたくないね。

 

ばいばーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

その2

 

side ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール

 

私は使い魔の召喚に成功した。何度も失敗したけど、最後には成功したわけだし問題ないわよね!

 

……そう思っていたんだけど、使い魔として呼び出したはずなのにその使い魔は全然言うことを聞こうとしない。

平民のくせにいきなり私のことを馬鹿にするし、命令は聞かないし、杖を持っていっちゃうし……。

 

学院の方に走っていったのはわかっているけど、学院にいるかどうかはわからない。…………ほんと、

 

「どうしてくれようかしら……」

 

ぶつぶつと呟きながら寮の自分の部屋のドアを開ける。

 

「や。随分遅かったね?」

 

いた。どうしてか私の部屋に入り込んで……って、どうやって入ったのよ!? 鍵はちゃんとかかってたわよ!?

 

「1、窓から入ってきた。2、ピッキングで開けて内側から鍵を閉めた。3、実は壁や天井に抜け穴があってそこから入ってきた。どれだ?」

「え、えっと……ちょっと待ってちょうだい」

 

急に出された問題を考える。窓から入ろうとした場合、平民には魔法は使えないからよじ登らなくちゃいけない。けどそんなことをしたら服や手が汚れるのに汚れていないから1は違う。

次は2だけど、学院の鍵にピッキングなんてちゃちなのは効かない。だからこれもちがう。

だとすると答えは3しか無くなるけど………もしそうなんだったらキュルケ達は気付いているはずだ。ディティクトマジックがあるんだから。

 

「……ちなみに答えは、壁をよじ登って窓から入り、ドアの鍵を内側から開けて外に出て手を洗ってまたドアから入って鍵を閉めた、だ」

「選択肢の中に無いじゃないの!」

「いつ誰が選択肢の中に正しい答えがあるって言った? 勝手に勘違いしたそっちが悪い」

 

ああもうこいつはああ言えばこう言う!

 

「とにかく!さっさと私の杖を返しなさいよ!」

「そりゃ無理だ。俺もう持ってないし」

「なんでよ!」

「俺が持ってても中途半端に細い薪くらいにしか使えなかったから縦に裂いて厨房の細い薪のところに放り込んで」

 

そこまで聞いたところで私は踵を返して厨房の薪置き場を目指して走る。とりあえず厨房に行って、薪置き場がどこにあるか聞きましょう。あいつを怒るのはそれからでも遅くないわ。

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

話の途中で変態ショタコンピンクヘッドがどこかに走っていってしまった。話の流れ的に厨房に行ったんだろうけど、人の話は最後まで聞いてから行動するようにした方がいいと思うぞ?

そう思いつつ、俺以外に誰もいなくなった変態ショタコンピンクヘッドの部屋で、無視された言葉の続きを言う。

 

「───やろうと思ったんだけど、面倒になったから適当に本の間に挟んで変態ショタコンピンクヘッドのベッドの下に放り込んどいたよ」

 

…………まあ、聞く相手はいないんだけどさ。聞かなかったのはあの変態ショタコンピンクヘッドのミスだし、俺は悪くない。

さてと。それじゃあ俺はベッドの下にアンダーグラウンドサーチライトを開いてそこで寝てるか。寝てるときにキスされるとかマジで勘弁してほしいし、そのくらいの注意は必要だろう。

 

使い魔になるのは全力拒否!英霊の体だから特に痛くないとはいえ、洗脳されて好意を植え付けられた上に傷物にされるのは嫌だ。

それに、平民を人間にカウントしないような奴に従うのはちょっと………。

 

それに、変態ショタコンピンクヘッドは変態ショタコンピンクヘッドだし、色々な意味であれに従う気は起きないよなぁ……。

誇りばっかり高くて実力が伴わない奴ってやだね。身の程を知らないから何してくるかわかったもんじゃない。

まあ、身の程を知っていてなお上を目指してがむしゃらに行動する奴が一番怖いんだけどさ。

そういう奴は大成するときは相当大成するけど、途中でつぶれる奴もかなり多くなる。それを貫き通したのなら、両極端になるんだよな。

 

……どっちに成長しても俺好みに歪んだ性格になってくれるんだけど。

性格歪んでる人は好きだよ? 具体的には束姉さんとかちー姉さんとか鈴とか弾とか。

 

束姉さんは言わずもがな。ちー姉さんや鈴、そして弾は……まあ、わかるはず。

全員『自分はおかしい』ってわかってても自分の意思を曲げない筋の入った狂人だし。見てると楽しい。

………たまに大変なことに巻き込まれたりするけど、概ね楽しいから問題ない。

 

……一応、寝る前に隣の部屋にいたちょっと浅黒い肌の誰かさんに伝言を頼んでおこう。その方が面白そうだし。

 

 

 

 

 

side ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール

 

『呼び出した使い魔に杖を奪われてしまい、本人からここに隠したって言われたから探している』

 

そんなことがばれたら私は学院の全員……それこそ平民を含めた全員に馬鹿にされるだろう。

しかも奪った相手は平民。こんなに屈辱的なことはない。

 

それでも私は耐えて杖を探した。夜遅く、月が空高く昇るまで探し続けて………結局見付からずにとぼとぼと歩いて寮の私の部屋に戻る途中だ。

 

……こんなところをツェルプストーに見付かったら…………私は死んじゃうかもしれない。

 

「あ~らヴァリエール。元気がないわね?」

 

…………最悪。なんでこんなときにばっかり出てくるのよこの女。

ずっと探し物をしていて精神的に疲れていた私は、ツェルプストーの軽口に返すこともしないでただじとっとツェルプストーの目を見つめていた。

 

「……まったく。困ってるんじゃないかと思って持って来てあげたのに」

「…………え?」

 

そう言ってツェルプストーが私に差し出してきたのは、まだ見付かっていなかった私の杖。

縦に裂かれていることもなく、私が最後に見た時のまま、ツェルプストーの手の中にあった。

 

「こ……これ、どうして………」

「ああ、黒い髪の小さい子が、あなたが話の途中で早とちりして厨房に行っちゃったから帰ってきたら渡してあげて、って私に預けてきたのよ」

 

…………その言葉を聞いて気が抜けた私は、もしかしたら気付かずに燃やされてしまったかもしれない、もう二度と見つからないかもしれないといった不安から解放され、かくんと膝を折る。

 

「よかっ……たぁ………」

 

それだけ言って、私はぱたりとその場に倒れた。ツェルプストーが何かいってたような気がするけど、あんまり覚えてないわ。

 

…………ああ、杖が見つかってよかった……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その3

 

アンダーグラウンドサーチライトの中の快適空間で目を覚ます。今がいつかはわからないが、多分朝だろう。IS学園に通っているせいで、朝には起きれるようになったからな。

 

アンダーグラウンドサーチライトから出て、ベッドの下から出る。時刻は普通に朝に見える。残念ながら腹時計は持ってないからよくわからないが、時計はシャルから貰った懐中時計(劣化しないように束姉さん作の特殊なオイルでコーティング済み)があるからそっちを見る。

……この時計はなんでか半分くらい宝具っぽくなってるから、瞬間移動しようが異世界に移動しようが正確な時間を指すようになっている。

原理? 知らね。そんな原理なんて知らなくても使うだけならできるからな。

電子レンジでどうやって物を暖めているのか知らなくても、使うだけならほとんど誰でも使えるのと同じだ。

 

ベッドの上を見てみると、変態ショタコンピンクヘッド(既に名前はこれで固定)がぐったりと眠っていた。

どうやらかなり疲れているらしいが、そんなこと知ったことじゃない。けど起こせとも言われてないし、ほっとくのが一番か。

 

鍵を開けて外に出ると、昨日の褐色の肌の誰かさんが居た。

 

「昨日はどうも」

「……あなた、ルイズの使い魔だったのね?」

 

人の顔を見るなりそんなことを言ってくるこの誰かさんは、赤い蜥蜴を連れていた。名前は知らない。

俺は褐色の誰かさんと視線を合わせる。

 

「どうしてそう思ったのか、聞いていい?」

「簡単よ。あなた、昨日かなりの人数の前でルイズから逃げ出したって評判になってるわよ?」

 

……なるほどね。

 

「コントラクト・サーヴァントを終わらせてないから正確には違うけど、呼び出されたってことならそれであってる。契約はしたってことにしといて? 学院に残れなくなるらしいから」

「……ふぅん?」

 

どうやら多少の理解は得られたようだ。自分の友人(本人曰く仇敵関係)が関わっているとは言え、見ず知らずの相手のお願いを聞いてくれるような優しさを持つ人だし。

 

「……そうそう。あなた、名前は?」

 

そう言えば言ってなかったな。どうでもよかったからスルーしてたからでもあるんだけど。

 

「一夏。姓もあるけど秘密」

「あらそう。なら私も名前だけ教えてあげるわね。キュルケよ」

「ごめん、俺他人の本名は覚えられないから、渾名とか二つ名とかあったら教えてくれない?」

 

俺がそう言うと、褐色の誰かさん改めキュリーさん(きっと違う)は不思議そうな顔をしつつも二つ名を教えてくれた。

 

「ありがと、微熱のお姉さん」

「ええ。それじゃあルイズに……ヴァリエールによろしく」

 

微熱のお姉さんはそう言ってどこかに行ってしまった。まあ、時間的に食堂だろうな。

……ちょうどいいし、俺も飯食いに行くか。英霊に近い状態だから腹は減らなくても食事を楽しむことはできるし。

英霊と違うところは、魔力がなくても現界できるところと、霊体化できないところくらいかね?

 

……それじゃあ食事を楽しみに行くか。食堂………いや、食堂だとあの変態ショタコンピンクヘッドと鉢合わせする可能性があるし、それ以前に俺の分の食事なんて無いだろうから……厨房の方で自作するか。

 

まあ、こんなナリじゃ厨房も貸してもらえないだろうから、厨房の近くで台から何から全部自作して作ることになるんだろうけどさ。

 

……ついでに変態ショタコンピンクヘッドの分の朝食が残ってたらいくつか取っといてやるか。なんか言われたらそれを出して、取引すればいい。

これをやったとしても、俺に損は無いし。

 

何を作ろうかな………カレーでいいか。

 

……そうそう、日本風のカレーは本番インドでは『カレーだと思わなければ美味しい』と言うリアクションだったらしい。

まあ、確かにカレーはカレーでもスパイスだけで作られたカレーと、色々と混ぜ物をされたカレーは違うだろうな。

 

……どうでもいいな。さあ作ろう。スパイスも鍋もガスコンロもみんな千の顔を持つ英雄で作って…………と。

 

 

 

 

 

side シエスタ

 

どこからか凄まじく強烈にお腹に響く匂いが漂ってくる。マルトーさんの料理の匂いを塗り替えて、厨房どころか貴族様の使っている食堂にまでこの匂いは広がっているみたいで、ざわざわと貴族様が話し合っているのが聞こえる。

 

「おい、そこのメイド。この匂いはなんだ」

「申し訳ありません。私共にもなんなのか……」

 

貴族様に呼ばれてしまうが、わからないものはわからない。正直にそう言うと、貴族様はあっという間に私から興味を失ってもとしていたように話の輪に戻っていく。

……けれど、どうやらこの匂いは貴族様の興味を引かせるに足るものだったらしく、話の内容はこの匂いのことに刷り変わっていた。

 

私はこの匂いの元を確かめようと、くんくんと鼻をならす。するとどうやらこの匂いは、厨房の窓の外からしているようだということがわかった。

その事を他のメイド達に伝えて窓から外を見てみると、見慣れない誰かが大きな鍋をかき回しているのが見えた。どうやらあれがこの匂いの元らしい。

 

いったい何を作っているのかを確かめたくなった私は、マルトーさんに許可をもらってその小さな姿に近付いていく。

マルトーさんに、『行くなら完成品を少し貰って来てくれ』と渡された小鉢を持って行ったのだけど……これだけあるなら少しくらい貰ってこれるかな?

 

「……話があるなら話しかけたら?」

「わひゃっ!?」

 

急に話しかけられてビックリした私は、つい素っ頓狂な悲鳴をあげてしりもちをついてしまう。

 

「なにやってんのさ」

 

そう言って手を貸してくれたのは、ついさっきまでは背中しか見えていなかった小さな姿。

……………えっと……男の子? それとも女の子? どっち?

 

女の子らしい格好をしたら女の子に、男の子らしい格好をしたら男の子に見えるだろうその顔は、やっぱり見慣れない顔。

私はその子供らしさを残した眠たげな表情に惹かれ、気が付けばぼんやりと見とれてしまっていた。

 

「まあ、話は聞いてたよ。はい」

 

私を立ち上がらせたその子供は、いつの間にか私が持っていた筈の小鉢に鍋の中の何かを入れてくれていた。

 

「感想聞かせてねー」

 

そんな声を聞きながら、私はふらふらとした足取りで厨房に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その4

 

カレーを作る。中々上手くできたと思っている。

これならきっと厳さん(弾の爺さん、料理の鉄人。料理以外も結構鉄人)も唸らせることができるに違いないと思っていたんだが、どうやら匂いにつられてやって来た奴が居るらしい。多分女で健康体。長いスカートはいてる気がする。

……となると生徒じゃないだろうから、教師か秘書かメイドだな。なんかメイドな気がするけど。

 

そんなわけで作りたてのカレーを分けてあげて、俺は残った鍋の中のカレーを皿に盛り付けて食べる。ご飯は千の顔を持つ英雄を使って炊きたての状態で出した。

初めから千の顔を持つ英雄で完成品を出せばいいんだが、それだと味気ないからな。

 

いつもは味気ないとかそんなことは一切気にしないで寝てるけど。

 

それから、厨房の方からの視線を全部スルーしながら鍋の中身が空になるくらい食べて、ほとんど残っていない(とは言えそれでも普通のカレー三人前に匹敵するくらいの量はある)鍋の中身をヘラで綺麗に集めて丼に入れておく。

そしてその丼は後ろに来ていた黒髪のメイドさんに渡しておいて、鍋とかガスコンロとかは消しておく。

鍋とガスコンロとそこそこ大きな台が一瞬で消えた事にびっくりしてたようだけど、説明してやる義理もないし構わないよな?

朝からカレーは重いような気がするけど、英霊には関係無い。特に俺は常時健康状態を維持するようになってるから余計にそうだ。

 

……さてと。今日はなにして過ごそうかねぇ……やっぱりどこか日当たりのいいところで寝る事にするか。

いい感じの昼寝スポットも見付けてあるし、早速使うことにしよう。

 

シルバースキンをバラバラの状態で漂わせながら適当な広場の端の方に揺り椅子を出して、これで防御面はだいたい大丈夫。シルバースキンを着込むのより防御性能は落ちるが、そこは数でカバーしてある。

シルバースキンを着るとせっかくのいい天気が台無しになるからな。

 

……決闘? やらないよそんな面倒臭いの。気が向いたら人助けはするかもしれないけど。

 

 

 

 

 

side シエスタ

 

お昼になる前に学院中を掃除する。

貴族様の部屋のベッドを整え、床を掃き、拭き掃除をして廊下を清める。

そして掃除をしているうちに、ふとあるものが目に入った。

 

広場の端で椅子に座ってすやすやと眠る、厨房のすぐ近くで料理を作っていたあの子供。その表情は年相応にあどけなく、とても気持ちが良さそうだ。

私の他にも既に数人のメイド仲間達がそれに気付いていて、仕事をしながら遠巻きに眺めている。

 

………なんだか……可愛らしいなぁ……。

 

ぼんやりとその姿を眺めていたら、いつの間にかふらふらと近寄っていた。

周りには同じように惹かれて集まってきていたメイド達が居て…………。

 

……はっ!仕事しなくちゃ!

いち早く正気に戻った私が周りのメイド達を呼び戻して、それぞれの仕事に戻る。数人かなり重度の中毒者が出たけれど………まあ、症状が出ていない間はいつも通りの行動をしてくれるみたいだし……大丈夫だと思う。

 

 

 

 

 

side キュルケ・(面倒になったので以下略)

 

……酷くないかしら? 名前と言うのは貴族にとっては誇りそのものとも言っても過言ではないほど重要な物で、大半の貴族は自分名前を間違えられたら怒るわよ?

それを略すのはもっての他。しかも理由が面倒だからって言うのは、私じゃなかったらもっと怒られていてもおかしくはないのよ? 最悪殺されることも考えておくといいわね。

それが嫌なら、今度から気を付けるといいわ。面倒だから略すって明言しておかなければ、トリステインのプライドばっかり高くって実力が伴っていない貴族だったらなにも感じず考えず流すでしょうからね。

 

……こほん。話が逸れたわね。逸れるような話なんてしてなかったような気もするけれど。

 

今、私は食堂に向かっている。朝に食堂に広がったあの強烈な匂いの元は気になるけれど、どうもここの使用人達も生徒達も、教師ですら知らないなら私が知ることができるはずがない。

ルイズは寝坊してきてあの匂いを嗅いでいないからわからないのだろうけれど、あの匂いは本当に食欲をそそる匂いだった。

タバサなんてずっときょろきょろと辺りを見回していたし、私たち以外にもあの匂いのことが気になって授業に集中できていなかった人も多かった。その中には勿論教師陣も含んでいる。

 

……そうそう、ついさっき話に出てきたルイズだけれど、学園に残ることができるようになったらしい。

確かに呼び出していることは確認されているわけだし、既に生徒達の中ではあの怖いもの知らずの平民はルイズの使い魔として認識されていることもその助けになっている。

実際はまだ契約はしていないと言っていたけど、その事を私がわざわざいい触れ回ることもない。

ラ・ヴァリエールは宿敵だけど、ルイズは私の楽しいおもちゃ。そんなことで失いたいとは思わない。

 

………いつからそう思うようになったのかは覚えていないけど、そんな考えも……けして悪くない。

今ではそう思っている。

 

…………そのルイズは、現在丁度爆破した教室の掃除をしている。そのお陰で練金の授業はしばらくなくなりそう。

……ほんと、ルイズのゼロは一年前から変わらないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その5

 

何やら面倒なことになるような気がして寝ていた椅子から跳ね上がったら、直後にその椅子が爆発した。どうやら椅子を直接攻撃されたようだ。

 

こんなことができるのは、虚無の魔法使いである変態ショタコンピンクヘッドかハーフエルフか名前だけ無能王か腹黒法王か………大穴で王家生まれの孤児院育ちか始祖様(笑)のどれかだろう。

まあ、時期的に場所的に変態ショタコンピンクヘッドだろうけど。

 

着地してから気配のする方に視線を向けると、そこには真っ赤な顔をしながらプルプルと震えつつ俺に杖を向けている変態ショタコンピンクヘッドの姿がある。どうやら予想通りの展開らしい。

 

「あ……ああああんたねええぇぇっ!!」

「変態ショタコンピンクヘッドが現れた!」

「誰が変態ショタコンピンクヘッドよ!って言うかまずショタコンって何よ!」

 

ああ、そう言えばこの言葉は日本語特有の造語だったな。この世界にあるわけ無いか。

 

「ショタコンってのは自分よりずっと年下の子供しか性的に愛することができない奴を指す言葉だ。大概女性に使われ、男性の場合は大概ロリコンと呼ばれる。年端もいかない相手に強制的にキスをしようと迫ったあんたにはお似合いの呼び名だろ? なあ、変態ショタコンピンクヘッド」

 

周囲の人間たちは大概苦笑しながらそんな俺と変態ショタコンピンクヘッドを見ている。変態ショタコンピンクヘッドは変態ショタコンピンクヘッドで顔を真っ赤にしながらプルプルプルプル震えている。……あ、杖振り上げた。

 

「ウル・カーノ!」

 

爆破されるのは嫌だったからさっさと避けた。それにしても、この世界のやつらはこれを見てよくからかう対象にできるよな。俺なら殺しにかかるか離れるかするな。

それにしても、この世界では平民の命の価値が低くて困る。貴族様(笑)の意思一つで簡単に刈り取られたり何なりと………本当に面倒臭い。

 

「おいおい、いきなり何をするんだ。死んだらどうする」

「あんたが死んだところで困ることなんて無いわよ!」

「いやいや、困ると思うぞ? この国中に原因不明の不治の病が蔓延することになるからな」

 

ゾナハだけどな。最重度のゾナハだけどな。アポリオンの使用を解禁するぜ?

 

「平民に何ができるって言うのよ!」

「無能なメイジの一人や二人を殺すことくらいなら簡単にできると思うけど? 人を殺すのには魔法は必要じゃない。うまくやれば針一本で十分だ」

 

それ以前に針すら必要ないけど。

 

「…………それと、そろそろ昼食の時間終わるけど、変態ショタコンピンクヘッドは朝も抜いてるんだからきついんじゃないか?」

「誰のせいで抜くことになったと思ってるのよ!」

「自分だろ。勝手に寝過ごして勝手に食事を抜いたくせに人に責任を押し付けるなよ。あんまりヒステリーばっかり起こしてると胸が大きくならないぞ。もっとおおらかになれば成長の余地は無いことはないんだから」

 

……まあ、胸云々はあながち間違いじゃないわけだが。

 

「……………………それ……………………………………本当?」

「お前んところの性格きっつい方の姉を思い出してみ?」

 

そう言うと、変態ショタコンピンクヘッドは数秒間考え込んだ。そして変態ショタコンピンクヘッドが顔をあげると同時に、もう一言。

 

「じゃあ次は、性格がおおらかな方の姉を思い出してみ?」

「!?」

 

そう言った途端に、変態ショタコンピンクヘッドは愕然とした表情を浮かべて俺を見る。その手からは力が抜けて杖が滑り落ち、膝もかくかくと震えてへたりこんでしまった。

 

「ちなみに、この性格による豊胸術は若ければ若いほど効果があり、10くらいからおおらかな性格でいればかなりの大きさを誇るようになることが多い。勿論この効果を増幅するための体操やマッサージ等も存在するが、一部の強欲な者達の手によってそれが隠され、バラバラの状態で平民達の噂として今もこの世界のあらゆる場所に散っていることは、言うまでもない」

「……あんたは知ってるの?」

「例えば俺がその体操やマッサージやらを知っていたとして、いきなり誘拐したあげく貞操を奪おうと昼日中の人前で襲いかかり、殺そうとして、謝らないどころか悪びれもしないような相手に教えると思うか? 勿論お前に教えられないように、この学院の全員教える気は無い」

 

……一応知ってるけど。覚えてるけど。できるけど。

いたいのいたいのとんでいけーと似たような物で、気を込めた手を当ててうまいこと細胞を活性化してやればできないことはない。

……まあ、一月あれば余裕で五センチくらいは増えるぞ? うまく行けば十とかそのくらいも…………。

 

「教えなさい」

「お前の態度がでかいからやだ」

「……教えてちょうだい」

「まだ誘拐されたことも殺されそうになったことも謝られてないからやだ」

「ッ………殺そうとして、ごめんなさい。拐ったことも、謝るわ…………だから、教えてちょうだい」

「杖を向けっぱなしで言われても謝られてる気がしないから、やだ」

「―――ッ!!」

 

ギリギリと歯軋りをしながら俺を睨み付けている変態ショタコンピンクヘッド。何でこいつがこうしているのかと言えば、どうやら胸が小さいことでお悩みの淑女の皆様(笑)からの視線の圧力に押されてのことらしい。

 

「ちなみに、うまくやれば美肌効果もあるし、元々大きい人なら形がきれいになるし、体に疲れが溜まりにくくなるから毎日が楽しくなるぞ。胸以外は男でも同じ効果があるし」

「教えてくださいお願いします!」

 

ついに変態ショタコンピンクヘッドはプライドをかなぐり捨てて頭を下げた。まさかこんな姿が見れるとは。

屈辱に身を焦がして拳をぎゅうっと握り締めているところもいいね。見ていて面白い。

 

「だが断る」

「どうしろってのよ!」

 

変態ショタコンピンクヘッドは地団駄を踏みながら叫んだ。

 

ああ、楽しい。

 

 

 

 

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