ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 織斑ルイズ

 

魅惑の妖精亭で私達が働き始めてから早くも一週間ほど。恒例(らしい)のチップレースが始まる。内容は実に簡単で、単に期間内にチップを多く集めるだけの競争のようだ。

ちなみに本命はスカロン店長の娘のジェシカ。実力でこの店のトップに君臨しているようで、その実力は時間がある時に私も観察させてもらった。

ただ、観察はしたけれどけして真似はできないし、真似する気すら起きないような内容だったので、極基本的な内容だと思われる一部を除いて真似していない。

 

こうして働いてはいるけれど、私はイチカ以外の相手に体を許す気は無い。そんなことになるくらいならエクスプロージョンを多重詠唱して威力と範囲を乗算した状態で発動して世界ごと破壊することすら視野に入れている。

まあ、そんなことをしないでも普通に当人とその関係者だけを殺して世界全てに“忘却”をかけて存在ごと無かったことにしちゃうのが一番手っ取り早くて後腐れないからそうやると思うけどね。

恨みを買うなんて面倒だし、やる気になんてならないわ。

 

……私がどれだけイチカに惚れているかをノロケるのは後にして、今はいつも通りに仕事をしましょう。平民の噂話という情報を集めながら愛想を振り撒き、料理を運び、時に客を『めっ、ですよ?』とたしなめ、ルイズや他の女の子達に気を配り、料理やワインが足りなくなりそうな人の所に行って先駆けて注文を取ったり、結構働いたと思う。

 

……私の精神力は、実は上限が無い。正確には貯まりきるラインはあるのだけれど、それ以上に溜まりそうになると自動でそのラインが上昇してしまうのだ。

ゲーム風に言うと、最大MPの表示はあるけど自動MP回復を着けて最大値のまま歩いたりしていると、勝手に最大値そのものが上昇してしまう。

なら私が寝ている間にどんどん際限無く上昇していくんじゃ無いかと言われるが、あれは『MPを最大値まで回復する』だけであって『無限に回復する』わけではない。

前にも言った事がある気がするけれど、私は抑え込まれているだけで激情家だし、激情のような強い感情は精神力に姿を変えることが多々ある。少しぶっ飛びすぎているけれど、ラインからヘプタゴンまでランクをあげたイザベラがいい見本だろう。

 

要するに何が言いたいのかと言うと……。

 

「精神力が増えたわ、やったねデルフリンガー」

「そのバケモン並みの状態からまだ上がる余地があったってことに本気でびびるぜ、俺はよぅ」

 

そんなことを言われても増えちゃったものは増えちゃったんだから仕方無いじゃない。不可抗力よ。

それに、私はちゃんと毎日寝る前にはタルブで契約したあの風の精霊───名前はウィル、真名は秘密───に魔力を供給して位を上げてもらってたし、こっそりデルフリンガーにも魔力を送って地味に強化してたし、そんなに増えない筈なんだけど……。

 

「寝る前にやったって寝たら全快すんだから意味無いだろうがよ」

「そうね。朝起きたらまた増えちゃうわね」

「自覚ありかよ」

 

無いわけがないじゃない。少ないよりは多い方が断然いいんだから、半ばわざと増やしてるわよ。

寝て起きたら回復しきっているんだから、資源はできるだけ有効に使わないとね。

 

「その風の精霊が大精霊クラスになってんぞ」

「目指すは精霊王ね」

「相棒だと本気でやりそうだから怖ええよな」

 

……そう言えば、精霊王の代替わりってあるのかしら? 世界の端末である精霊には恐らくその世界が終わるまで寿命は無いし、力尽くで奪い取るくらいしか……。

 

「……おい相棒? 何で黙ってるんだよ? まさか本気で精霊王を目指させるつもりじゃねえよな?」

 

……四大精霊の王がいるなら、他にも居たっていいわよね? 大概は四大に属しているけど、それでも精霊王ぐらいの力があれば王を名乗っても殆ど問題は無いだろう。

例えばどれかと言えば土に属する大樹の精霊。例えば水に属する氷河の精霊。例えば二極の闇に属する影の精霊。例えば風に属する雷の精霊。例えば金属繋がりで土に属する剣の精霊。

 

……剣の精霊。

 

「……相棒? 何で俺を見るんだよ? なあ、何でだよオイ?」

「………………何でもないわ?」

「なんで疑問系なんだよ!? しかも最初の沈黙の長さが嫌な予感しかさせないんだけどよ!?」

「私にとってはいいことばかりだから大丈夫よ」

 

……なんて言っても流石にデルフリンガーを精霊王まで成長させる気はないんだけどね。大精霊までなら成長させてもいいけど、精霊王ともなると世界にそう認めさせる作業が面倒臭い。死ぬほど……いや死なないけど、とにかく面倒臭い。やる気にならない。

だから安心してもらっていいわ。私が狙ってデルフリンガーを精霊王にすることはないし、もし精霊王になってもならなくてもあなたは私が坐まで持ち帰るからね。ずっと一緒よ?

 

「わーお、ありがてえようなありがたくねえような微妙で奇妙な気分だぜ」

「胃薬は水に溶かして刃に塗りつけておけばいいかしら?」

「俺には胃はねえよ。刃に塗るんなら油か錆び落としにしてくれ」

 

……そう言えば、前に磨いてあげるって言いつつそのままだったわね。今夜にでも磨いてあげましょうか。

錆び落としは無いけど、私が約束したのは錆を落とすことじゃなくて磨くことだけだものね。適当に磨いておけば錆びもそれなりに落ちるでしょう。

全部落としちゃうと相手が私を侮ってくれなくなるから少し残すつもりだけれど、切れ味は無いも同然の状態から少しは改善すると思うわ。

 

……と、お仕事お仕事。あんまりぼんやりしてたら叱られちゃうわ。チップもそれなりに稼げてるんだし、できるならこのまま目立たず騒がずしっかり任務も仕事も終わらせちゃいましょう。

姫様からの任務については私はあまりやる気はしないけれど、ルイズは随分とやる気があるようだからルイズに任せる。反対に、酒場の仕事については私の方がやる気もあるし向いているようだから私がやる。役割分担役割分担、それなりにちゃんとした酒場で平民に混じって働いてみたかったのよね。

私は一応公爵家の生まれだったからそんなところに縁なんて無かったし、行って接待してもらうんだったらともかく、自分が接待する側に回るなんて……昔の私じゃあ考えもしなかったわね。

しかもメイド服で、あまり荒っぽい輩が集まってくる訳でもない結構安心できる酒場でなんて……そうできることじゃない。

 

まったく、いつか帰ることは決定事項とは言え、ルイズに召喚されるのは結構楽しめたわね。

 

「そうかい、楽しんでくれてよかったよ」

「デルフリンガーとの出会いも良かったことの一つなのよ?」

「…………そりゃどうも」

 

 

 

 

 

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