ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side ルイズ・ラ・ヴァリエール

 

……今回はまともね。次からもこうしなさい。いいわね?

 

レア姉様に言われて久し振りに学院の制服に袖を通す。なんでも『私が貴族だって言うのはとっくに全員にバレてる』らしいから、必要な時にはこうして貴族として振る舞うことができる。

正直、このトリステインにあんなゴミ貴族が居るなんて信じたくなかったけれど、目の前に現れたのにそれを認めないほど頭が固い訳じゃない。レア姉様に比べれば固いけど。

 

まあ、そんなことは置いておいて、ゆっくり着替えてらっしゃいと言われた私は言葉通りにゆっくり、そして確りと着替える。

シャツの襟やスカートの折り目はきっちりと。後頭部で束ねていた髪を下ろし、櫛を入れて梳る。

 

……毎日櫛は入れていたけど、やっぱりちゃんとお風呂に入りたいわよね。レア姉様はどうやったのかわからないけど毎日綺麗だし。

まあ、無い物ねだりをしても仕方無いからレア姉様が出してくれたお湯で身体を拭いたり髪を簡単に洗ったりするだけで我慢してきたけど……やっぱりお風呂に入りたいわ。

……学院に戻ったらとりあえずお風呂に入りましょう。これはもう決定事項よ。

 

服を着て鏡の前で姿を確認。わかる限りおかしなところは無いし、服じゃなくて髪型なんかでもおかしなところは無いと思う。

それを確認した私は机の上に置いておいた杖を袖に納め、姫様からもらった『お墨付き』の書簡を畳んで懐に入れる。始祖の祈祷書は…………いらないわね。むしろあるだけ邪魔になりそう。実際動くには邪魔だし。

 

そんなわけで準備を終わらせた私が下に降りていくと、レア姉様の近くに二人ほど取り巻きだったと思われるモノが血塗れで転がっていて、今まで見たことがないくらい恐ろしい笑顔を浮かべたレア姉様が椅子に座ったまま悪徳徴税官達を前に殺気を叩きつけることで無理矢理動きを止めている。

 

……さっきまではこんな風にはなってなかった筈だし、多分逃げようとしたか襲いかかろうとしたか……とにかく馬鹿なことを考えたんだろう。

相手と自分の力量差がわからないまま噛みつくのは馬鹿のやること。命が無事ならやり直しの機会はあるんだから、今回は諦めてちゃんと国の裁きを受けていればよかったのにね。

 

そんなことを考えていたら、私のところに黒髪の女……確か、名前はジェシカとか言ったはず……がやって来た。なんだか顔色が悪いけど、レア姉様の殺気はちゃんと集束されてる上に元々の濃度を低くしてあるみたいなのでこの程度で気分が悪くなるなんてまず無い。となると……

 

「ちょ、ちょっとナンシー!」

「どうしたの? ミ・マドモワゼルのセクシーポーズを真っ正面から見ちゃったとか?」

「そんなもの見飽きるくらい見てるわよ!そうじゃなくてあれ!」

 

なんだか物凄い苦労の言葉を聞いた気がするけれど、その辺りはスルーする事にして指差された方を見てみると……普通に怒っているレア姉様が座っている。

 

「……あれをどうしろと?」

「なんとか止めて!」

「無茶言わないでよ。私がユナ姉様を止められるわけ無いじゃない。常識で考えなさいよ常識で」

「何処の常識よ!?」

 

魔法学院のメイドの常識よ。魔法学院最強のメイドはレア姉様。最強のコックは料理長のマルトー。魔法限定でなら最強のメイジはオールド・オスマン。生徒最強は一応私。レア姉様を除いたメイド最強はシエスタ。常識よ。

まあ、生徒の中には無駄にプライドばかり高くて自分がメイドに勝てないって認めたがらないのが多いからあんまり言われてないけど、少なくともツェルプストーとモンモランシーとギーシュとケティの四人はレア姉様が最強の座に君臨していることを認めてるみたいだけどね。

 

「……とりあえず、何ができるかわからないけど……行ってくるわ。止められないと思うけど、頑張ってみるわ」

「……無事に戻ってこれたら、ワイン一杯奢ってあげる」

 

なんだか死地に行く兵士を見るような目でジェシカが私のことを見つめてくるけれど、私はまだまだ死ぬ気は無い。死ぬのは怖いしやりたいこともたくさんある。

今は……そうね。一度でいいからエレオノール姉様をビックリさせてみたい。母様の驚いた顔を見てみたい。父様の慌てた表情を見て、レア姉様達と一緒に笑いたい。こんなところかしらね。

 

人が聞いたらつまらない夢だって、私にとっては大事な目標。少なくともそれを叶えるまで死ぬつもりは無いわ。

 

……と、軽いコントはこのくらいにしておいて、私はレア姉様に近付いていく。

厨房に引っ込んでいた間はよく聞こえなかった話の内容も、近づくにつれて確りと聞こえるように……

 

「それで、貴殿方では私に敵わない事はよくわかったでしょう? 私がその気になれば今この場で貴殿方の首を捻り切ることもできますし、貴殿方が出るところに出ても確実に勝てるだけの様々な証拠を準備しています。いくら貴殿方の上司が庇おうとしたところでこれだけの証拠が揃っていてはよほど上の物が居なければ確実に庇いきれなくなるでしょう。……そろそろ諦めて縄に付く気になりませんか?」

 

……ほんとに私って必要なのかしら? と少し不安になったけれど、相手は青ざめながらもレア姉様の言葉を鼻で笑い飛ばす。

 

「はん!たかが平民の用意した証拠など、いくらでも契り潰せるわ!」

「平民風情が貴族に逆らいよって!」

 

……これはひどい。私も少し前までこんな感じだったから気分はわからなくもないけれど、流石にここまで来ると見苦しくて仕方がない。そしてこんな奴の気持ちが少しとはいえわかってしまう自分が恥ずかしい。

溜め息をつきつつレア姉様に近付いていって、隣に立つ。すると威張っていた徴税官達の視線が私に集まり、そして髪の色などから私とレア姉様が姉妹であることを理解したらしい徴税官が口を開こうとした所で、姫様からの書簡を開いて見せつける。

……みるみる顔色が悪くなっていくって言うのは今みたいなことを言うのかしらね。

 

はい、それじゃあ相手がレア姉様に言った言葉を思い出してみましょう。

まず、公爵家縁の者を平民扱いしたわね。それから罵倒し、暴力を振るおうとし、権力を傘に着て脅迫して犯罪の証拠の揉み消しをしようとした上に冤罪を押し付けて不当に捕縛しようとし、言外に身体を要求し………………コロスワ。

 

「まあ、そう言うことですので……大人しく裁きを受けなさいな、チュレンヌ『元』徴税官殿?」

 

コロスワ、ゼッタイニコロシテミセルワ……クククククククケケケケケケケケケケケケケケカカカカカカカカカカカカキキキコココココココココ……………………。

 

 

 

 

 

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