side 織斑ルイズ
魅惑の妖精亭での楽しいバイト生活を終わらせて、魔法学院の新学期に突入。途中でキュルケやタバサ達が来て国軍の騎士と一戦やらかしたり(後始末は私が請け負った。金属製品美味しいわ(^q^))、ギーシュがモンモランシーとケティをつれて見事にエスコートして見せたり(時々女の子達に目移りしそうになってむくれた二人にほっぺをつままれていた。なんだか空気がほっこりした)、姫様がやって来て狐狩り云々言っていたのを軽く流して変装(メイド服+ポニーテール+眼鏡+化粧)をしてもらって一日働いてもらったり(ルイズはそんな姫様を見て目を白黒させていた)……とりあえず色々あった。
私の世界でも同じだったのか違ったのかは知らないけれど、キュルケとタバサがどうして仲がいいのかって話も聞いたし、私が作ったBHC(ベーコン・ハシバミ草・チーズ)サンドの感想も貰ったし、ついでに私の……じゃない、フーケの盗んだ貴族達の汚職の証拠が活用されていたことも知ったし、私にとってはとても有意義な時間だった。
……けれど、今の状況はちょっと予想外だったわね。まさかエレオノール様がルイズに会いに学院に来て、しかも私を見つけて騒ぎ出すなんて。
とりあえず私とルイズは一端ヴァリエールに戻る事になり、その世話役として近くに居たシエスタが連れていかれることになった。
ちなみに、私はまだシルバーローブをメイド服から変えていない。エレオノール様はぎゃあぎゃあと騒いでいるけれど、どうせ一秒目を離した瞬間に召喚時のローブ+ブラウス+ロングスカート+ズボンにでもカティと色違いでお揃いにでもなれるんだからとにこにこ笑顔で受け流している。
ちょっと心配な点は、私が明らかにカティとしてはおかしい行動をとっているのにあまり驚いていないこと。もしかしたらカティは私の予想以上に暴れてたのかもしれないわね。
……ああ、私の世界のカティの行動を思い出すわ。あと数年早く体が治っていたら、きっと今の三倍は動いていたでしょうねと、クスクス笑いながら屋敷どころか領地中を駆け回り、様々な武勇伝を打ち立てたカティを。
………………それで、私はそんなカティの体を本当に数年早く治してしまったのよね。後悔はしてないけど失敗だったかもとは思っているわ。反省はしてないけど。
「聞いているの、カトレア!」
「……え? 三年前に失敗した豊胸薬の話ですか? あれでしたらつい最近完成させましたよ?」
「───その話、もう少し詳しく聞かせてくれるかしら?」
突然目を爛々と輝かせながら私に詰め寄るエレオノール様に、私は笑顔で告げる。
「完成品を適当にワインに混ぜておいたらルイズが飲んじゃったわ」
……なお、これは嘘八百である。
しかしどうやらそれを信じてしまったらしいエレオノール様は、凄まじい勢いでルイズに詰め寄っていく。
「ルゥゥゥイズゥゥゥゥゥゥ!!」
「わ、私そんなことしてません!」
「嘘をつきなさい!貴女がそれを飲んでないんならッ!」
ガシィ!とエレオノール様が掴んだのは、最近成長著しいルイズの胸部。エレオノール様の手によってむにむにたゆたゆと形を変える。
「ひゃんっ!? や、やめてください姉様っひやぁぁんッ!?」
「このっ!この胸がッ!ちびルイズが薬を飲んだ動かぬ証拠でしょうがァァァッ!!」
全力で叫びながらもエレオノール様はルイズの胸を揉むのをやめない。ルイズから救援要請の視線が送られてきているような気がするけれど、きっとこれは私の幻覚ね。
「た、助けてレア姉様ぁぁぁっ!」
「胸がッ!この胸がッ!ちびルイズの癖に生意気なっ!」
……ちびちびと言っていても、胸のカップ数ではエレオノール様はルイズに確実に大敗しているけどね。もうこれ以上無いほどぼこぼこにされてて見ていて悲しくなるくらい。
一応言っておくと、私の胸は天然物だ。強いて言うならイチカへの愛が大量に詰まっている。
私の胸が愛で出来ているのに、鈴さんやラウラさんの胸が小さいのは……きっと胸の大きさよりも実力の方に愛情を使っているんじゃないかと思う。事実はどうだか知らないけどね。
「やンッ!姉様ぁ……はぅンッ!?」
「貴族の娘が胸を揉まれた程度で艶かしい声をあげるんじゃないッ!そんな声をあげるのもこの胸が悪いのよこの胸がこの胸がこのこのここここのむむむむ胸がッ!!!!」
……私が何か言っても止まらなさそうね。と言うか、ここまで怒っているエレオノール様を見るのは久し振りかもしれないわ。
正確には怒っていると言うより『嫉妬している』と言う方が正しいのだろうけど、多分本人は認めないでしょうね。
私は艶かしい声を上げ続けるルイズと、ルイズに怒鳴りながら胸を揉みしだき続けるエレオノール様を視界の端に納めながら、デルフリンガーを腰元にいつも開いているアンダーグラウンドサーチライトから引っ張り出す。
そして適当に引っ張り出した布を使って無理なく錆びまみれの刃を磨く。
磨いてもあまり見てくれは良くならないけど、見てくれよりも大切なものがあるから私としては別に問題ない。
……ルイズの悲鳴と嬌声は聞いていないことにする。助けようとしたらこちらに矛先が向くのはわかりきったことだし、放っておいても命の危機も貞操の危機も無いものね。
「こ……このぉっ!」
「きゃっ!? な、何をっ!?」
「ふ……ふふふふふ……散々やってくれましたわねエレオノール姉様……お返しDEATH★」
「な、や、やめ……ひゃぁぁぁんっ!?」
あら、攻守が入れ替わったわ。やっぱり母様もエレオノール様も自分が攻めるのは得意でも攻められるのは苦手なようね。
言ってみれば……そう、ガラスの剣。鋭く軽く美しく、それでいて相手を切ることにかけては天下一品。ただし横からの攻撃や攻撃を受け止められることに弱い、と。
“硬化”で強くするにも元がガラスじゃあ限界があるし、そもそもとして衝撃に弱いことには変わり無いしね。
「あら? 貴族なら胸を揉まれたくらいで変な声を上げるのはおかしいのではないのですか? それにしては姉様は随分と……ふふふ♪」
「ち、違う違うぅぅっ!き、気持ち、よくなん……ってぇ……」
「……へぇ……? 私は“気持ちよくなってる”とは一言も言ってないのですけど……そうですか、姉様は妹に胸を揉まれて気持ちよくなってるんですか~♪」
「ッ!?」
ルイズに言われてエレオノール様の頬に朱が刺す。……今までの婚約者の方々も、こう言う風に強引に攻めていけばこんなに可愛いエレオノール様を見られたと言うのに……。勿体無いことをしてきたわね。
私はそんな二人の行為を完全に無視しながら、デルフリンガーの刃を磨くのだった。