ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side ルイズ・ラ・ヴァリエール

 

一部を除いて完全に固まっていた空気が動き出す。母様が用意されていた紅茶のカップに口をつけてゆっくりとそれを飲み下し、カップを元に戻して私に視線を向けた。

……流石は元・マンティコア隊隊長、すぐに呆然自失から復帰するだなんて普通はできないわ。

 

「……どこの誰ですか」

「エレオノール姉様です」

「ブフゥッ!?」

「あらあら、はしたないですわ姉様」

「あらあら、勿体無いですわ姉様」

 

私の言葉にエレオノール姉様が頬を朱に染めながらスープを噴き出す。落としたスプーンを取り替えてもらったばかりなのに、また落としちゃったわ。

けれどそのスプーンはすぐにジェロームに拾われ、まるで既に用意してあったかのように新しいスプーンがエレオノール姉様に渡される。素晴らしく良い仕事ね、ジェローム。

 

「まあ、私が家族であり姉であり同性である相手に恋心を抱いているなんてどうでも良いことは流して、お父様にお願いがあります」

「どうでも良くはない!重大なことだ!」

「私にとってはどうでも良いことですわ。家族の事が好きだと言うのは自然なことですから」

「いいや重大な事だ!それこそ、これからのヴァリエールの進退に関わる……いや、それどころか存続すら危うくなりかねんことだぞ!」

「問題ないでしょう。私が勝手にエレオノール姉様のことを好いているだけで、エレオノール姉様自身は普通に殿方が好きでしょうから。私は無理矢理は好きではないのです。確かにエレオノール姉様は無理矢理でもモノにしたくなるだけの魅力はありますが……」

「エレオノール、自分の部屋に戻っていなさい」

「………………」

「……エレオノール? なぜルイズを見ながら頬を染めているのだ? ……まさか!?」

「ッ!? ち、違うわお父様!確かにルイズは可愛いですし上手ですし良い子ですが、妹ではないですか!」

「あらあら、『上手』って、いったい何が『上手』なのかしら? ねぇ?」

「さあ? いったい何が『上手』なんでしょうねぇ? ……そう言えば、昨日ルイズはエレオノール様の部屋に……」

「あらあら♪ ってことは姉様はもう……」

「「うふふふふ♪」」

「何を楽しそうに……と言うかわかってたなら止めなさい!」

 

カティ姉様とレア姉様がクスクスと笑い合いながらエレオノール姉様をからかっているけど、そんな事をしても無駄よ。だって相手はカティ姉様とレア姉様だもの。どう考えても勝てないわ。

 

「それで父様、先程言いかけた件なのですが……」

「だからこちらの方が重大だと言っているだろうが!話を逸らそうとするんじゃない!」

「……では、私の判断でやっても?」

「好きにしろ。だが、エレオノールは女でルイズも女だ。結婚はできんし、させんぞ」

 

真剣な表情で私に向かってそう言う父様。確かにエレオノール姉様は魅力的だし可愛いし弄り甲斐があるけど、流石に本気で同性結婚を望む程じゃない。そこまで私は壊れてないし、レア姉様みたいに非常識でも理不尽でも不条理でもない。

それに、今回の交渉で欲しい物は手に入れた。まさかこんなに簡単に戦争に参加する許可が貰えるだなんて……やっぱり考えることは大事ね。

 

「ではそのように。それと、私はエレオノール姉様だけでなく、カティ姉様もレア姉様も母様も父様も大好きですよ? 最近までよく意地悪をしてくるエレオノール姉様は少しどころでなく苦手でしたのでこうして言ったのですが……ダメでしたか?」

 

ちょっと涙で目を潤ませて、小さい身体を活かして上目使いに。両手は軽く握ったまま自分の胸元に引き付けて、しっかりと父様と視線を合わせる。

魅惑の妖精亭で聞いて身に付けた、なにもなくてもできる女の武器の使い方。そのお陰で父様はなんだか少し慌てている。

 

……父様ってこんな顔もするのね。何て言うか……正面から見るのは初めてかも。

母様に怒られてる時とかに横から見ていたことはあったけど、どうしてこんな顔をしてるのかしらね?

 

「い、いや、ダメではない。ダメではないが……もう少し別の言い方があるだろう」

「? けれど、私はエレオノール姉様のことが好きになったんです。人を好きになることは素晴らしいことだから、恥じることなんて一つも無いって教えてくれたのは父様ですよ?」

「うっ……」

 

純粋な疑問の表情を意識して浮かべて父様に言うと、父様は何故か口籠る。確かに恋人ができたって言う報告に聞こえる言い方で始めたけど、どうしてこんなに後ろめたそうにするのかしら?

 

「む……ぬぅ……か、カリーヌ、何か言ってやってくれ」

「ルイズの言った通り、家族が好きなのは良いことでしょう」

「ぬぐぅっ!……エレオノール」

「ルイズが……ルイズが私を好きって……えへへ……♪ …………ハッ!? 違う違う、あの子は妹、あの子は妹………………えへへへ♪」

「あらあら、姉様ってば嬉しそうね」

「それでも素直じゃないのは……血、かしらね?」

「ならば、カトレア、なにが不味かったかをルイズに伝えてやってくれ」

 

なんだか蕩けた笑顔を浮かべてはすぐに引き締めてを繰り返しているエレオノール姉様からすぐにカティ姉様に標的を移し、私に注意をするように言ってくる。

 

「……ルイズ。ちゃんと『愛してる』とはっきり言わなければなりませんよ」

「何を言っているのだカトレア!? そうではなくてだな……カトレア、なんとか言ってやって……く、れ…………?」

 

カティ姉様にすっとぼけた答えを返された父様は、今度はレア姉様に言う。けれどどうしてかその声は尻すぼみになっていき……私達は首を傾げる。

この状況はさっきとなんら変わりない。父様が突然黙るようなことはない筈なんだけど……何があったんだろう?

 

カティ姉様とレア姉様を指差したまま父様は口をパクパクと開閉させる。まるで呼吸のできない魚のようだけど、本当に何があったのかしら?

 

「……か…………」

「……か?」

 

父様の言葉にこの場の全員が意識を傾ける。昔、王宮の近衛にまでなった父様をここまで驚愕させる状況とは、いったいなんなのか。

それに、その事に気付いたのが母様ではなく父様だと言うことも気になる。

母様は風のスクウェア。父様は水のスクウェア。索敵能力だったら母様の方が明らかに高いのに、どうして父様が先に気付いたのか。

 

……いや、それよりも、母様の索敵を抜けられる相手って……!

それに気付いてすぐ私も頑張って意識を集中してみるけど、別におかしな気配は感じない。いったいなにがどうなってるの!?

 

そこで、漸く父様が続きの言葉を叫んだ。

 

 

 

 

「なぜカトレアが二人いるのだ!?」

 

 

 

 

……………………え? いまさら?

 

 

 

 

 

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