ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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ほのぼの版 11~15

 

 

その11

 

閃光が辺りを包む。衝撃も爆音もすべてシルバースキンで遮ったが、それでも周りが酷いことになっていると言うことはわかる。

変態ショタコンピンクヘッドの産み出した瞬間の爆発の渦は、中心の俺達にはなんの被害も出さずに周囲にある全てを一息に薙ぎ払った。

 

「…………よ……予想以上の威力が出たわね……」

「何人死んだか見物だね。殺人処女卒業おめでとう。感想は?」

「……正直、あんまり気分のいいものじゃないわね。最悪よ」

「むしろいい気分だって言ってたら全裸にして放り出してたね」

「わざわざ全裸にしなくてもいいじゃない!」

「え? 何言ってるの? 常識的に考えてそんな感性の持ち主は普通武装解除のために全裸に剥いて両腕両足を引き千切って焼くか凍らせるか縛るか塞ぐかして血を止めてから逆さに吊って禿鷹に啄まさせるでしょ。常識だよ、常識。それをあれだけで済ますんだから、俺も優しいよね」

「どこの常識よそれ!? どこの世界にそんな物騒な常識があるのよ!?」

 

いや、無いけどね。

 

「それじゃあお仕事終わらせたらさっさと学院に戻って寝るよ」

「駄目よ。学院の前に王宮に行かなくっちゃ」

「面倒だからその辺は任せるよ。頑張ってー」

「あんたも行くのよ」

 

めんどくさいなぁ。まったくもう。

そう思いながらも、俺はバギブソンゴウラムを城の方に走らせる。

 

「……まさかとは思うけど、あんたこのまま城の門までぶち破るつもりじゃないでしょうね?」

「あっはっはっは。そんなことする訳がないだろ」

 

俺がそう言うと、変態ショタコンピンクヘッドはあからさまにほっとした表情を見せた。

 

「そ、そうよね、いくらなんでもそんなことはしな」

「ぶち破るのは門じゃなくて直接王城の壁だから」

「門破るのよりさらに過激!?」

 

なんだか変態ショタコンピンクヘッドが金髪でバーニングな小学三年生に見えてきた。ツッコミ役と中の人的な意味で。

 

「と、止めなさいっ!」

「車は急には止まれないんだよ?」

 

現在進行形でアクセル吹かして加速し続けてるけど。

そんなことをしていて、しかもブレーキをかける気もハンドルを切る気もなければ……まあ、ぶつかるわな。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「あっはっはっはっはっはっはっは」

 

どっかーん。

 

 

 

 

 

side ルイズ

 

その後、城の一部を吹き飛ばしたにも関わらず、私達はある程度の歓待を受けた。まあ、一応どちらかと言えば助けた方に入るわけだし、おかしくないと言えばおかしくない。

城の中に残っていたのは非戦闘員を除けばたったの300きり。それなのに敵軍は50000。150倍以上の差があるその戦争は、もはや戦いと呼べるような優しいものにはならないと言うのが、貴族ですらない平民の子供でもわかることだろう。

 

その圧倒的戦力差を、突然現れたたった二人がひっくり返したのだから……まあ、この喜びようもわからないことはない。

……と言うか、手紙の内容がなんであれ、それを返してもらう意味がなくなっちゃったような気もするんだけど…………気のせいかしら?

王党派は滅ばない。なら手紙も奪われない。そしてゲルマニアの皇帝の目に触れるようなこともなくなるはず。

 

……でも、今は正直すごく眠い。イチカと一緒にいるとよくいきなり眠くなることがあるけど、今日はかなりの量の精神力を使ったし…………。

 

それでも、ウェールズ殿下にこの手紙を渡して、姫さまの書いた手紙を返してもらわないと。寝るのはそれからでもいいわ。

それまでならなんとか我慢できるし………一日泊めてもらうことくらいはできるわよね? 城壊しちゃったけど。

 

 

 

次の日。ちゃんと手紙を返してもらった私とイチカは、さっさとアルビオンから出ていくことにした。

授業は受けなくても大体わかるし、食事も少し格が落ちるとはいえ美味しいのが出てくるけれど………私の部屋の方が落ち着くのよね。

それに、精神力の回復にはイチカに協力してもらって情緒不安定になってた方が効率がいいし………精神力と一緒にストレスも溜まるけど、それも精神力の一種だから回復はするし。

 

そんなわけで見送りのいないうちにさっさとイチカの後ろで鉄の馬に跨がり、イチカにしっかりしがみつく。

 

「それじゃあ、そこそこ飛ばすぞ」

「できるだけ速く!」

「…………挽肉になるぞ?」

「死なない程度にできるだけ速く!」

 

死ぬのは嫌だから、訂正のひとつやふたつはする。昔は意地をはって絶対訂正しなかったと思うけど。

 

ヴォン!と鉄の馬が嘶き、アルビオンに来るときにも出た光の道が現れる。

一度壁を越えるために急上昇し、それからトリステインに向けて舵をとる。いや舵ないけど。

 

「出発よ!」

「少し静かにしてくれ。シルバースキン脱がすぞ」

「ごめんなさい」

 

こんなところで脱がされたら寒すぎて凍えちゃうわよ。

 

 

 

 

 

 ~ちょっとしたオチ~

 

ワルドは焦っていた。それと言うのもアルビオンに共に行くはずだったルイズが朝にはいなくなっており、計画が大幅にずれ込んでしまったからだ。

 

初めは久し振りに出会ったルイズと語り合いながらアルビオンを目刺し、アルビオンでルイズと婚姻を結んでからトリステインを裏切り、ウェールズを殺して手紙を奪い取る予定だったのだが………見事に出遅れてしまった。

 

ギリッ……と歯軋りをしながらグリフォンを急がせ、ルイズとその使い魔を探している。

ルイズがいなくなっているのに気付いたのは昨日の朝早く。そしてルイズ達の使える中で最も速いのは、馬だ。グリフォンならば馬で2日かかる道も一日かからず走破できる。つまり、既にルイズ達が見えていても……否、見えていなければおかしいのだが…………ルイズの特徴的な桃色の髪などどこにも見当たらない。

 

(まさか……どこかで追い越したか!?)

 

ワルドがそう思ってグリフォンを止めようとした瞬間。空の彼方から飛んできたなにかに凄まじい勢いで撥ね飛ばされた。

 

閃光と呼ばれるワルドに反応すらさせなかったそれは、奇妙な形をした馬のようにも見えた。

そしてその馬に乗っている二人のうち、後ろに座っている者の帽子から特徴的な桃色の髪の毛が風になびいていたのに気付いたが………………ワルドの意識はそこで途切れた。

 

城壁を楽々破り、船を余裕で貫通するような威力のそれに跳ねられて生きていた理由は、偏に乗っていたグリフォンのお陰である。

グリフォンが文字通り、ワルドの肉の壁となっていなければ、グリフォンの代わりにワルドが粉々になっていただろう。

既に左腕の大半が粉々になっているが……命に比べれば安いものだ。

 

…………その命も、上空から地面に叩き付けられては助からないだろうが。

 

 

 

 

「ねえ、イチカ。今何か跳ねなかったかしら?」

「さてな? なんのことやら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その12

 

王宮に到着。今回は一応ゆっくり中庭に降りる。

ちなみに、飛行禁止の命令が出てたかもしれないが、これは飛行してるんじゃなくて空に道を作ってそれの上を走っているだけだから問題ない。無いと言ったら無い。

 

ちなみに、降りるときに見知らぬ髭に止められたが、変態ショタコンピンクヘッドに耳を塞がせて子守唄を歌ったら落ちていった。どうしたんだろうな?

 

「寝たんでしょ。イチカ。あなた子守唄を歌うの禁止」

「やだ」

「いいから、こういう真面目な時には真面目にしててよ」

「ねーむれー♪ ねーむれー♪」

「ちょ、まっ………くー…………」

 

寝付くの早いな。きっとよっぽど疲れてたんだな。そうに違いない。

 

そんな変態ショタコンピンクヘッドの首根っこをひっつかんで大半が眠っている王城を歩く。あのアホリエッタ……じゃなかった、姫さんはこっちの方だろ。多分。

そんな風にして歩いていると、執務室らしきところで机に突っ伏して寝ている姫さんを発見。ここまで来る途中でかなりの人数が寝ていたのを見ると……どうやら俺の催眠誘導スキルも捨てたものではないらしい。

 

……あーあ、世界を平和にしたいなぁ……とりあえず、そのためにはあの坊主共の国が邪魔だ。宗教なんて大嫌いだよめんどくさい。

ついでにあの優秀すぎて逆に馬鹿(束姉さんに似てない?)のイカれ人間ジョートルズの国も邪魔。ほんと、なんでみんなのんびりゆっくりできないのかねぇ……?

 

とめどもなく考え事をしつつ、姫さんの顔のすぐ上(横だとよだれで濡れる)に手紙を置いて、変態ショタコンピンクヘッドの手から指輪を抜き取って重石の代わりに置いておく。はいあの金髪王子への手紙の回収完了。後は好きにするといいかもな。

 

俺はここに来たときと同じように変態ショタコンピンクヘッドの首根っこを掴んで、さっさと王宮を後にする。

ああ、本当にこの世界は面倒臭い。もっと楽にいこうぜ?

 

 

 

魔法学院の変態ショタコンピンクヘッドの部屋のベッドに変態ショタコンピンクヘッドを放り込み、鍵をかける。

着替えさせてやる気は無いし、俺も眠いのでさっさと変態ショタコンピンクヘッドのベッドの下に潜り込む。

 

……起きたら、とりあえず地下の風石をなんとかしよう。それからあの鬼畜王ジョセフを………めんどくせえなぁ……。

まあ、ロマリアにはちょっと俺のために退場してもらうとして…………エルフはこっちから手を出さなければ干渉して来ないだろうから大丈夫………………だと思いたい。

一番にやるべきことは…………強王ショセフをなんとかすることだな。うまくキレイキレイしてやればもう少し世界が平和になると思うんだけど…………。

あと、凶行ウィクトーリア(?)をなんとかして…………そうだ、始祖の秘宝とやらをみんなアンダーグラウンドサーチライトにしまって永久封印しておけば、あのイカれ神官はなにもできなくなるだろう。よし、泥棒にいこう!

 

俺の快適な睡眠時間の確保のために!

 

……ああ、ジョネスはアリス・イン・ワンダーランドで書き換えよう。平和的解決平和的解決。

 

 

 

 

 

side ジョゼフ

 

俺の目の前に、見慣れない顔の子供がいる。

 

「貴様は誰だ」

「俺かい? 俺は一夏だよ」

 

イチカと名乗るその子供は、グラン・トロワの俺の寝室でベッドに寝転がっていた。

俺はそんなイチカをベッドの隣に立ったまま眺め、イチカも眠たげな目で俺の顔を見上げている。

 

「どのようにしてここに入った?」

「見えないくらい早く移動した。あんたなら簡単だろ?」

 

イチカという子供は、俺の力を知っているのかそんなことを言う。何を企んでいるわけでもなく、ただ聞かれたから答えたと言う風に。

 

「何が目的だ?」

「戦争を起こされると面倒だから、その理由を潰すついでに王様のベッドの寝心地を知りたくて」

 

その顔には嘘は浮いていない。邪気も悪意も何も浮いていない。

それは無表情を作っていると言うわけでも仮面を被っているわけでもなく、実際に何も浮いていないようだった。

 

「ほう? それで、どうやって戦争を止めると? 俺を殺してみるか?」

「殺さないよ。内乱が起きて面倒だからね。ただ、あんたにちょっと教えてあげるだけ」

「何を教えると?」

 

そう問うた俺に、イチカはゆるりと緩んだ笑みを見せて言う。

 

「あんたが殺した弟さんが、どれだけ王になりたかったか。そしてそのためにどんなことをしたか」

「……ふん。馬鹿な」

 

そう、それは馬鹿なことだ。

シャルルは俺に笑顔で王位を譲った。父王から俺が王に指名された時に、屈託のない笑顔で俺を祝福した。

 

だからこそ《・・・・・》、おれはシャルルを殺してしまったのだから。

 

「自分のことしか知らないんだろ? だったら願ってみるといい。あんたが心底『欲しい』と思えば、その二つの遺物は必要なものを教えてくれるよ。具体的にはあんたが今使える‘加速’の魔法と同じ、虚無の魔法の一つ。‘記録《リコード》’のスペルをね」

 

イチカという子供が言い終えた瞬間に、俺の指輪が輝く。同時に、寝室に置いてあった香炉から煙が立ち上ぼり、それが呪文となって描かれた。

確かにそれは、呪文だった。詠唱しなくともその効果が理解できる。理解できてしまう。

震える声をそのままに、俺はその呪文を唱えた。イチカの言った通りの呪文、‘記録《リコード》’を。

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

大抵すやすや布団の中に、にじり寄る混沌(存在がカオス的な意味で)織斑一夏だ。

そんなわけで戦争を止めてのんびり寝るために、ガリアの王様を陥落させに来たんだけど……なんか想像以上に簡単に終わった。

 

原作ではウィキトリオがやったのをジョーセフがやって、勝手に泣いて勝手に自己完結して、それで今なんだかすっきりした顔をしている。

 

「で、悪いんだけど今日このベッドに泊まってっていい?」

「好きにしろ。だが、俺もそこで寝るぞ?」

「わかってるわかってる。それじゃあおやすみ」

 

布団を被ってさっさと寝ることに。変態ショタコンピンクヘッドは…………まあ、連絡は一応してあるし、いいや。

 

…………残してきたメモ日本語表記だけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その13

 

目が覚めたら目の前に超イケメンなおっさんの顔。それとなんでか俺とジョネスの顔を眺めながら

 

「ジョゼフ様がいたいけな少年相手に……アリね!」

 

とか呟きつつ鼻血を流している女の顔が。なんだか貞操がある意味危険な気がするね。実際に襲っては来ないだろうけど。

とりあえず一言。ねえよ。妄想までなら実害が来ない程度なら勝手にしてくれて構わないけど、実行に移さないでくれよ? 頼むからさ。

 

………そうだ。そろそろ変態ショタコンピンクヘッドのところに行かないと。

 

「まあ待てイチカ」

 

俺がベッドから出ようとしたら、ジュズルが声をかけてきた。どうやら起きていたらしい。

 

「なんだいジョゼット」

「なに、朝食くらい食べていくといい。あと俺はジョゼットではなくジョゼフだ」

「ジョネス?」

「……ジョゼフだ」

 

多分と言うか確実に覚えられないだろうが……まあ、いいか。一応頷いておこう。

 

「それじゃあごちそうになろうかな」

「ああ、そうしておけ。まだ話もあるしな」

 

なんの話かは……その時まで気にしないでおこう。面倒臭そうだし。

 

 

 

食事中だが、なんでか俺にかなり奇異の視線が向けられる。まあ、いつの間にかこの場所にいた王の客人に向ける視線なんてものはこんなものなのかもしれないけど。

食事のついでに話をするが、たいした話じゃない。どこであの呪文のことを知ったか、どうしてそれを教えたか……そんな感じのばっかりだ。

とりあえず、知った理由は秘密。どうやって知ったかも秘密。教えた理由は、世界中での戦争とか面倒だから冷戦状態にしていてくれると一番平和だからということにしておいた。

最後のはあながち間違いじゃないんだけどさ。

 

ついでに地下の風石のことも教えておいて、世界中が浮き上がったらおちおち昼寝もできないから阻止する手伝いがほしくてと言ってみた。ジョセツが喚んだ使い魔は魔道具の扱いが上手かったはずだから、風石を燃料にした何かを作れるんじゃないかと思ってたのは本当だけど。

 

結果。ジョレフは協力してくれるそうだ。とりあえず世界を地獄絵図に変える作戦から、ロマリアを地図上と考古学者の記憶の中にしか無かったことにしようとしている。

なんだか考え込んだまま大人しくなってしまったので、フィーさん(ミョズニトニルンのフィーさん)に多分また来るよーと伝言を残してトリステインの変態ショタコンピンクヘッドの部屋に跳躍ぶ。ヘルメスドライブ超便利。

 

そんなわけで午前中に魔法学院に付いたんだが、なんだか色々騒がしい。変態ショタコンピンクヘッドがアルビオンでどうこうって話が何故か流れていた。原因は…………金髪の馬鹿薔薇貴族。

どうやらあの日ドアの外で聞き耳を立てていたが、俺がそこに居るのを知って出なかったらしい。

まあ、前に食堂で恥ずかしい秘密をぶちまけた上に杖を奪われ罵倒され貴族の誇りを傷つけられた誰かさんは三年生だったらしいし………上級生がやられたら自分もやられるかもっていうのは簡単に予想がついたらしい。

 

そうして怖がられてるお陰で俺は面倒なことに巻き込まれる事もなくこうしていられるわけなんだけどさ。

 

…………どうでもいいなそんなこと。昼寝しよう。一食抜いたところで死にゃしない。

夜まで寝て、夜も寝て、朝も寝る。最高だな!

 

「それは寝過ぎよ」

「おや変態ショタコンピンクヘッド。どうしたんだ?」

「授業の合間の教室移動よ。あと、その呼び名は辞めて」

「じゃあなんて呼ぶ? ゼロ娘《むすめ》?」

「普通にご主人様なりルイズなり呼びなさいよ」

「俺は三音以上の人名は覚えられないから無理。と言うことでゼロ娘ね、けってーい」

「嫌よそんな名前。私につけられたゼロって蔑称よ? 今だって腸が煮えくり返ってるんだから」

 

……それにしては外に出てないけど? 原作だったら抑えるなんて事はしないでところ構わずぶちかましてたような気がするんだが。

…………ゼロ娘も成長したってことか?

 

「成長おめでとう?」

「ありがと。賞品として私の事はルイズと呼びなさい」

 

……えーっと…………

 

「ルイル?」

「違うわ。ルイズよ」

「ルース?」

「誰よ。ルイズよ」

「ルーク?」

「それ男性名詞よ。ルイズよ」

「ルシウス?」

「だからそれは男性名詞だってば。ルイズよ」

「ルリス?」

「今度はちゃんと女性名詞ね。でも違うわ。ルイズよ」

「ルミル?」

「始祖ブリミルの名前の一部にそんなのがあったわね。ルイズよ」

「ロリス?」

「次言ったら爆殺するわよ?」

「ルニル?」

「スキ……って頭につきそうね。ルイズよ」

「変態ショタコンピンクヘッド」

「それはやめてってば」

「じゃあ渾名でいい? 渾名なら呼べるから」

 

そう言ったら、ゼロ娘は溜め息をついて頷いた。どうやら許可は出たらしい。

 

「それじゃあよろしく、ルーちゃん」

「ル………まあ、それでいいわ」

 

さっきまでのと比べれば……って頭につきそうだけどな。俺はそれがわかってても変えないんだけどさ。

 

「……そうそう、今日から私と同じベッドで寝ていいわよ。ずっとベッドの下で寝てたみたいだし」

「ん? ありがと」

 

ベッドの下と言ってもアンダーグラウンドサーチライトの異空間で布団敷いて寝てたから別に必要ないんだけど…………いいって言うならお言葉に甘えようかね。

昼寝の時には外で揺り椅子使って寝てると思うけど。

 

……それじゃあ、すぐに寝ようか。揺り椅子で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その14

 

なんの事件もなく暫く時間が過ぎた。やっぱりジョジョさん(ガリアの王様)を落としてアルビオンの後顧の憂いを断っておくと平和だねぇ。

全てが原作通りとはいかないが、アホリエッタは結婚の際にルーちゃんに紫蘇の……始祖の祈祷書を渡していた。

まあ、指輪は無かったから虚無に目覚めるなんて事は無かったんだが、そんなものが無くてもルーちゃんは十分成長している。

 

……アルビオンで大量虐殺をしてから少しして夜泣きしたりもしていたが、なんでか俺を抱き枕にしているとかなり気が楽になるらしく、今では俺がいないと寝れないほどらしい。

正確には、寝れはするが安眠はできなくなるらしく、ジョジョさんのところに泊まりに行った次の日なんかは目の下に隈ができてしまっていた。

 

そんなことで悩めるのも平和だからだと思えばいいことなんだろうな。俺にとっては睡眠事情は死活問題だけど。

 

 

 

そうしてのんびり暮らしていた俺達の中に、ある日突然異物が飛び込んできた。

それはルーちゃんの方ではなくジョジョの方だったが、俺がいないと安眠できないルーちゃんもジョジョのところについて来ていたので知っている。

 

日常の中に飛び込んできた異物の名前は、エルフと言った。

 

エルフは強いらしい。どう強いかはわからないが、とりあえず強いらしい。

だがこのエルフは敵対しに来た訳じゃないらしい。どうも、ジョジョに頼みがあって来たようだ。

どうも、虚無の担い手が四人揃いそうだから揃わないようにしといてくれ、と言うことらしい。

 

……この場に既に二人揃ってるってことは言わないでおこう。

俺は基本的にここの神様とやらを信仰する気は一切ないし、揃わなければ平和だしね。

 

そんなわけでジョジョの解答は了承。ただし、やってきたエルフ……ビダさんを部下に加えることを条件に、だ。

ビダさんは渋々了承したが…………まさか初仕事がおれとルーちゃんの子守り的仕事だとは思っていなかったらしく、なぜか呆然としていた。

 

「……なぜ私がこんなことを……」

「ジョジョの部下になったからでしょ。いいからいいから、ほら寝ようぜ?」

「しかしな……」

「ねーむれー♪ ねーむれー♪」

「むっ!? こ、これは……く………不覚……ッ………すー…………」

 

よし寝たな。

 

「……イチカの歌ってエルフ相手でも効くのね」

「そのようだね。さあ寝るか」

「そうね。…………ところで、今さらなんだけどここどこよ? いつも瞬間移動してるからわからないんだけど」

「ここ? ガリアの王宮」

「……………………は?」

 

間の抜けた顔しちゃってまあ。

 

「いいから寝ようぜ」

「え、ちょっ、どういうことなのねえ!? なんでイチカがガリアの王族と懇意にしてるのよ!?」

「話せば長くなるから一言で。色々あったんだよ」

「はしょりすぎ!?」

 

五月蝿いなあこの変態ロリベド桃色ワカメは。いいから寝とけよ。

 

「詳しい説明はまたいつかねー」

「…………夢ね。きっと疲れてるのよあはははははは………………おやすみなさいちいねえさま、母さま、エレオノールねえさま、お父様。ルイズはなんだかちょっとだけ大人になったような気がします」

 

それだけ言い残して、ルーちゃんはぱたりとベッドに倒れた。常識とかそう言うのは人によって違うんだから、柔軟にねー。

 

……すかー…………。

 

 

 

 

 

side ビダーシャル

 

ジョゼフに仕え始めてから早くも10日が過ぎた。正直に言って、後悔し始めている。

 

ジョゼフの気分によって振り回され、時々この城に泊まるイチカに振り回され、最近では胃痛が取れなくなってきている。

イチカが時々つれてくる桃色の髪の少女と、ジョゼフの娘との茶会が無ければとうに胃に穴が空いていたかもしれない。

 

桃色の少女と初めて向き合ったのは、子守りのような仕事の途中のことだった。

イチカを止めようと進行方向に‘反射《カウンター》’を張って立ち塞がったのだが、イチカはほんの僅かも立ち止まることなく‘反射《カウンター》’を自らの拳で貫き、そのまま逃げていった。

その直後に桃色の少女から

 

「あ、ご、ごめんなさい私のところの子が迷惑かけてるみたいで!」

 

と、何度も何度も頭を下げられてしまった。

まるで母親だな、と苦笑いしたものだ。

その直後に桃色の少女が悪魔の力を使って超高速でイチカを追いかけていったのには驚いたが、どうやらシャイターンの門に近付こうと言う気はこれっぽっちも無いようなので放置している。

 

ちなみにそのときの会話だが

 

「少女よ。警告する。けしてシャイターンの門には近付くな」

「シャイターンの門ってどこよ? わからないと近付かないようにすることもできないわ」

「……シャイターンの門とは、お前たちの言葉で言う聖地のことだ」

「ああ、安心しなさい。わざわざ行く予定は無いし、行きたくもないわよ。……そんなことよりイチカを見なかった? またわたしの取っといたクックベリーパイをチョコチップクックベリーパイにすり替えたから追いかけてるのだけど」

 

……本当に、力の抜ける会話だった。これでは重く考えている私が馬鹿のようではないか。

 

ジョゼフの娘と出会ったとき、ジョゼフの娘はかなり憔悴しているようだった。

と言うか、むしろやけくそだった。

 

「今日も仕事~♪ 明日も仕事~♪ きっと一週間後も休みなし~♪」

 

……不憫な……。

 

「寝ても仕事~♪ 食事中も仕事~♪ 水の代わりにポーション飲んで~♪眠らず休まずまた仕事~♪ アハハハハハハハハハハハハ!ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

 

………………これが年頃の娘の歌う歌なのだ。私にも姪が居るからわかるが……苦労性だな。

 

「あら、あんたエルフ? ふーん。父様はやっぱりエルフをこの城に招いてたのね? また仕事が増えるわ~♪ 箝口令敷いて出入り制限つけて~♪ あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」

 

……あまりの不憫さに、精霊の力を借りてこの娘の

精神を徹底的に癒してしまった私は悪くないと…………

 

「どうしたんだいビダーシャル。泣いているよ?」

「……なに、目に塵がな」

 

私はそうごまかして、つかの間の平穏を楽s

 

ドゴンッ!!

 

ギャーギャーワーワー!

 

マタジョゼフサマカー!

 

ツカマエロー!

 

ソッチニイッタゾー!

 

……本当に束の間だったな(半泣)!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その15

 

なんにもなく終わると思ってたんだが、どうやらそうもいかないらしい。

アルビオンの王家はまだ健在で、ガリアは戦争なんて起こすこともなくのんびりしていて、トリステインもゲルマニアもしばらく戦争なんて起こすことは無さそうだったのに………。

…………ほんと、腐れ坊主共が。鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す地獄のような大戦争に巻き込まれて死ね。

……ああ、戦争なら相手が必要になるな。じゃあ内乱で。

 

「なに怖いこと言ってるのよ」

「俺の睡眠を邪魔するやつとか問答無用で死ねばいいと思ってる」

「……ちょっと待って? 少し前から学院の生徒が行方不明になってたりするんだけど………まさか!?」

「……見てみなよルーちゃん。いい天気だよ」

「そっちは壁よ」

「…………見てみなよルーちゃん。いい天気だよ」

「そっちも壁よ」

「………………見てみなよルーちゃん。いい天気だよ」

「まさかの床よ」

「……………………見てみなよルーちゃん。いい天気だよ」

「そっちは天じょ……天窓から見えるわね。雲が」

 

曇りもいい天気。晴れもいい天気。雨もいい天気。悪い天気は槍と矢と砲弾と魔法の雨くらい? ……ああ、血の雨も悪い天気か。

俺にとっては大体の天気がいい天気。

 

そんなわけで対策会議。出演者は俺とルーちゃん、ジョジョとフィーさん、ビダさんといざべえの六人だ。

 

「……とりあえず、私をいざべえと呼ぶのをやめてもらおうか」

「それじゃあ対策会議を開始します。ロマリアを物理的に地図から消して、それからハルケギニアの全ての人間の記憶からロマリアとブリ教のことを消せばいいと思うんだけど、どうだ?」

「私の言ってることは無視かい!? ってか『ブリ教』!? 神官にでも聞かれたら異端だって言われちまうよ!?」

「仕方無いじゃん俺ブリ教の信者じゃないし」

「モロで異教徒!?」

「それ初耳よ!? 別にいいけど!」

「る、ルイズ!? いやいやいやいやよくないからね!? あんたは非常識側《そっち》にいっちゃダメだ!戻っといでー!!」

 

おお、いつものコントだ。いつもいつもいざべえは必死な演技が上手いなぁ。

 

「そりゃそうだろうよ演技じゃないからね!」

「まあまあいいではありませんかいざべえラ様」

「ちょっと待ちなシェフィールド。今私のことを普通に呼ぶと見せかけて凄まじく不快な名前で呼ばなかったかい?」

「はて? ここ最近ジョゼフ様の悪戯と言う名の監査のお手伝いのために働きすぎて、記憶がしっかり残っております」

「残ってるんじゃないかい!!」

 

いざべえがばんばんと何度も机を叩くが、ほとんど全員がそれをスルーする。

していないのは、憐れみのこもった目を向けているビダさんだけだ。

 

「それじゃあ、とりあえず私はロマリアをどうにかして止めたいわ。聖戦なんてただ面倒なだけだし、エルフって言うのも思ってたより悪いやつじゃないしね。蛮人蛮人五月蝿いのが珠に傷だけど」

「ふむ。私もここに来て初めて悪魔の後継者を見たが、実に一般的な蛮人で少し驚いていた。むしろ使い魔の方が破天荒だな」

「そんな誉めないでもいいわ。照れちゃうわよ?」

「今のどこに照れる要素があったんだい!?」

 

『破天荒』って所じゃないかな?

 

「『破天荒』って所よ」

「なぜに!?」

 

ほら言った。って言うか、ビダさんもいざべえも突っ込みポジションだな。

ただ、シャルの苦労人ボジションはいざべえで、時々突っ込みながらボケ返すポジションがビダさんって感じか?

なんにしろいざべえお疲れ!

 

「……ちくしょう………胃が…………」

「……ネフテスから送らせた胃薬を分けてやろう。水の力に働きかける秘薬だ。今のお前にも効くだろう」

「……いつもありがと」

「なに、かまわんさ」

 

…………エルフの秘薬で思い出したんだが、タバサの母親治さなくていいのか? ジョジョは綺麗になっちゃってるし、もうそのままにしとく意味がないと思うんだが。

まあ、俺は斬魔剣・弐の太刀で薬の成分だけ斬り飛ばしてやれば治せるんだけどさ。意外に便利だよな。

 

「おお、そうだビダーシャル。心を直す薬を作れ」

「了解した。だが時間がかかるぞ?」

「俺達がロマリアを滅ぼすまでに終わるか?」

「その程度なら造作もない」

 

ビダさんはジョジョにそう言ったが……確か完成までは十日くらいかかるはず。

それだけあればロマリアを含むハルケギニア全土の人間・亜人全てに忘却をかけて差別やら争う理由やらをみんな消してやる事くらいはできそうだがね。

 

なにも言わないでおくけど。

 

「…………ちょっと思ったんだけど、イチカなら私にやったみたいに洗脳とかできるんじゃないの?」

「さらりと洗脳されてます発言!? どんな状況で洗脳させたんだい!?」

「使い魔品評会で落ち着かないといけなかったから、感情に蓋をして押さえるのを簡単にしてもらったのよ。そうしたらなんだか世界が広く見えるようになってね? まあ、溜め込みすぎは体に悪いらしいから時々イチカにお願いして発散させてもらってるけどね」

「それ軽く言うことじゃない!絶対軽く言っていいことじゃないよ!!」

「いいじゃない。おおらかになったら少し胸も成長してきたし」

「嘘ぉ!?」

「ほんとよ、ほんと」

 

ルーちゃんは見たことのないお姉さんのようにコロコロと笑う。やっぱりおおらかになると胸は増えるのか?

……いや、ただのプラシーボだな。いつもいつも言い聞かせたり、性格がきつくて胸が小さい方のお姉さんと性格が丸くて胸も大きな方のお姉さんの話の例えに相当信憑性を感じてしまったようだ。

 

……凄いね。人体。

 

 

 

 

 

 

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