ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 織斑ルイズ

 

突然の父様の言葉に驚愕したような表情を浮かべながら、私は心の中で笑む。けれどエレオノール様や母様が全く驚いていないことを少し不思議に思いながらも、カティの方に視線を向ける。

すると、どうやら全く同時に私の方を向いたらしいカティと目が合ったのでとりあえず質問。

 

「父様はいったい何を驚いているの?」

「うふふ♪ ごめんなさい、そう言えば父様には説明してなかったわ」

「原因はそれね」

「そうでしょうね」

 

一応納得して前を向く。

 

「……そう言えば、何故二人もいるのよ!?」

「……ハッ!? あまりにも当然のように居るから気付かなかったわ!」

 

…………。

 

もう一度、カティと視線を合わせる。

 

「……ねえカティ。もしかして、ヴァリエールってどこか抜けている人が多いのかしら?」

「十分に考えられる話ね。だけど本人達の前で言うことじゃないと思うわよ?」

「……その前に説明した方がいいと思うぜ?」

 

私の腰元から響くデルフリンガーの声にもう一度前を向くと、そこには杖を抜いたは良いもののどちらが本物かわからなくて杖先を私とカティの中間辺りで右往左往させている。

……ちょっと可愛いと思ってしまったのは私の秘密だ。どうして普段凛々しい人がこうしておろおろしている姿はこんなにも可愛らしいのだろうか。本当に不思議だわ。ついでに半泣きだったらもう言うことはないのだけど。

 

「相棒。相棒の若干歪んだ性癖のことなんざ聞きたくねえから本題に戻ってくれや」

 

強制的に人化の上で女体化させて半泣きにさせてやろうかしら。服は……あえての巫女服で。

 

「俺が悪かった、頼むからそれはやめてくれ」

 

デルフリンガーに頼まれたので保留(あくまで保留)にしておくとして、そろそろこの慌てん坊の家系の皆に話をして誤解を解いておいた方がいいだろう。

一部は正確には誤解じゃないんだけど、誤解ってことにしておいた方が説明しやすいし色々楽なので誤解ってことで押し通す。ルイズにもそう説明しちゃったし、今の状態でも困ることは何もない。だったらこのまま続けた方が得策だろう。多分。

 

「とりあえず説明しますから、一度杖をしまって私の話を聞いてくださいな」

「正確には私達の話となりますが、聞いておいて損はしないでしょう」

 

……『損はしないでしょう』の前に『私達は』っていう言葉が入っていそうね。まったく、カティってばあんな綺麗で裏表の無さそうな顔をしておきながら結構腹黒いんだから。

私が言えるようなことじゃないけど、いくらなんでも黒すぎると思うわ。服まで黒い私が言えることじゃないってわかってはいるけど。

 

渋々と席についた母様と父様を見ながら頭を回す。何しろ相手は敵に回したらそれなりに面倒な上、精神的にもあんまり殺したくない相手なんだし、注意してもし足りないってことはないはず。

 

「とりあえず何があって私がここに居るのかを三行で説明すると……

 

 ・私はルイズに召喚された

 ・よくわからない力が働いた

 ・なぜか増えた

 

……ってところね」

 

私がそう簡単に説明すると、追加でカティが補足する。

 

「ついでに二人になった時に病巣がきれいに半分になったみたいで、そしたら回復力の方が強くなったみたいで病気も治ったわ」

「それで、お互い別れたことに気付いた私達は暫く前に一度合流して」

「ついでに自分達がどっちなのかを区別するために渾名を決めて渾名で呼び合っているの」

「カティがヴァリエールに居て、」

「レアが学院で使い魔をして、」

「「ここ暫くはのんびりと過ごしていたわ」」

 

……嘘がいっぱい混ざっているけれど、この嘘は私の心の中にしまっておけば絶対にパレない類いの嘘。誰かが突っかかってきても受け流せるだけの言葉も用意した。相手がよっぽどの馬鹿か救いようのない馬鹿か面倒臭いクズでなければ言葉だけで撤退させられるはず。

……私は悪口はあんまり得意じゃないんだけど、相手の神経を逆撫でするのはそれなりに得意なのよね。誉められるような特技じゃないけど。

 

「使い魔召喚で二人になった? そんな話、聞いたことがないわ」

 

そう言ったのはエレオノール様。実は私も自分で作った話で聞いたのが初めてです。

けれどそんな思考はおくびにも出さずに、エレオノール様に笑顔を向ける。

 

「聞いたことがなければあり得ないと? 自分が知らぬことなど無いと? 今まで起こらなかったことはこれからも起こらぬと? ……そんなことはないでしょう? もしかしたら噂が無いだけで、異世界なんて物もあるかもしれない。もしかしたら知られていないだけで、始祖ブリミルの使い魔の一人がエルフだったかもしれない。今まで起きなかっただけで、ハルケギニアの半分が空に浮くようなことがあるかもしれない。……ありえないなんて言葉が一番ありえない。研究者たる者、目の前で起こった事実のみを信頼して考える。それくらいのことはエレオノール様なら呼吸のようにできて当然でしょう?」

 

そう言って私は笑顔を浮かべる。なんだかエレオノール様が顔をひきつらせているけれど、いったいなにがあったのかしらー?

……まあそんなわかりきったことは置いといて、今度は父様に向き直る。

 

「なぜ使い魔召喚に私が選ばれたのかはわからないけれど、事実私はルイズに呼び出されたわ」

「どうして私とレアが同時に存在するようになったのかはわからないけれど、事実こうして存在するわ」

「遍在ではなく、私はこうして生きている」

「そのお陰で、私の病気は回復しています」

「「信じてください」」

 

……と、私は語る。ナノハのように言葉に魔力と意思を乗せて、心に響く声で。

本当の事なんてほとんど言っていないくせに信じてなんておかしいとは思うけれど、まあ、しょうがないわよね? 世界は違えど私は私、かつてヴァリエールだった織斑ルイズなんだから。

 

世界相手に大嘘ついて、力任せにその大嘘を通して、周りの迷惑も条理も倫理も何もかもを無視して、世界に数多存在する不幸を理解しながら見逃して、それで自分は幸せに生きて幸せに死んで、死後まで幸せに過ごしている。それが私。

 

……卑怯で狡賢くてヴァリエールらしくなくてごめんなさい♪ 今更変わる気はないけれど、一応ね。

 

 

 

 

 

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