side 織斑ルイズ
その後、私は特に何もなく解放された。強いて言えば、左手にあるルーンを見せた時にルイズが驚いていたことと、私とカティに婚約が勧められたことくらい。
私はルイズの使い魔であることを理由に全力でお断りしたし、カティはにっこり笑顔で父様の耳に何かを囁いた直後に父様が真っ赤になりながら撤回していたので多分ちょっと秘密を掴んでいたんだろう。それも多分個人的な秘密を。
……あれかしら? 父様の自室の机の下から二番目の引き出しの中の二重と見せかけて実は三重底の中に入っている本のことかしら?
……だけど、それにしては後ろめたそうな空気じゃないのよね……?
となると…………母様との25回目の結婚記念日用に用意してある指輪のことかしら? 確かにああいうのはバレたら困るし、自分の子供に知られたら恥ずかしいだろうけど……。
「それだけじゃなくて、一緒に置いてあった手紙の内容も言ったのよ。あまぁ~いラブレターだったわ♪」
「あらあら♪ 父様も母様に首ったけなのね♪」
「仲がいいのは良いことよ」
「そうよね。何も間違ってないわ」
「「うふふふふふ♪」」
「レア姉様もカティ姉様も、楽しそうで何よりです」
「……娘っ子はよく相棒達を見てそんなことが言えるよな」
「あら、コツは諦めることなんでしょう?」
「こいつは一本とられたな」
あははははは、とルイズとデルフリンガーから乾いた笑いが溢れる。まあ、暫くすれば無くなったハイライトと一緒に戻ってくるでしょ。
「……何があったのかは知りませんけど、頑張って下さい、ミス・ヴァリエール」
「あははははは…………」
……重症そうね。これは戻ってくるには時間がかかるかも。
だけど、今日は私もカティもそんなに非常識なことや理不尽なことはしてない筈よ? いったいどうしてこんな風になっちゃったのかしら?
「ジェロームが『私(カトレア様)なら魔力も使わず分身していてもおかしくないでしょうな。私(カトレア様)ですから』って言ってからこんな感じだったと思うわよ?」
「つまり、カティが私と同じようにヴァリエールで色々と非常識な実績を重ねてきたのか間接的な原因ってことかしら?」
「むしろ、私とレアが合わさって二倍どころか二乗になって疲れることを理解しちゃったからじゃない?」
そう言ってカティは笑うけど、確かにその通りかもしれない。
ただ、私とカティじゃあまともな合体魔法もできないんだから本当に二乗になるかって言うのは疑問だけどね。
……まともじゃなければ合体魔法も可能なんだけど、その場合カティは系統魔法四種、私はと精霊魔法四種を使うと言う凄まじく面倒なコラボレーションをしなければならないのであまりやりたくはない。
ついでに効果が馬鹿げていて、その魔法の射線上にある全ての物質が問答無用で消滅すると言うふざけた効果であるため手加減は効果範囲を小さくする以外の事ではできないし、どれだけ効果範囲を小さくしてもあたればその位置が消滅してしまうので当たりどころ次第では必殺。その上ガード不可って言うんだから反則以外のなんでもない。使った私とカティですら引いたわよ。
…………なお、初めて考えてぶっつけ本番で母様に使った時、母様は直感に従って風を超高速で動かし、あまりに高速で動いた物質に合わせて空間が若干歪んだお陰で逸らせたけど、剃らした先の山が綺麗に貫通していた。その鏡のように均一な断面に驚きつつ、よっぽどの事がない限りは使わないようにしようと私とカティの二人でそう決めたのは言うまでもない。
それでもカティは研鑽を積んで精霊魔法による増幅無しでも同じ効果の魔法を使うことに成功している。防御不能の消滅剣とかなんて反則よ。虚無魔法で似たようなの作れる私が言える事じゃないかもしれないけど言わせてもらうわ。
まったく、カティはほんとにチートスペックね。チートかバグかは微妙なところだけど、どっちにしろ規格外ってことは間違い無いわ。
……まあ、別に私は困らないからいいんだけどね。
それじゃあ今日はヴァリエールに泊まって、明日になったら学院に戻りましょうか。ルイズはどさくさに紛れて戦争に行く許可は貰ったし、私とカティについても嘘八百……いや、嘘は最小限で言わなくちゃいけないことを言ってないだけなんだけど、とにかく隠すことができたし、やらなくちゃいけないことはみんな終わったもの。
ああ、ついでに今度ゲルマニアの土地でも買いましょうか。懐かしきナハトニッド男爵領を。
賭け事は苦手だから上手いこと増やすことはできないけど、誰にも知られないように他所から持ってくることはできる。トリステインから財貨を外に持っていくと国力が一時的に落ちるけど、私としては別にいついかなる時に滅んでくれても全く構わない訳だから、関係無いわ。
昔みたいにのんびりゆっくり、戦争や大きな事件に巻き込まれるような事もなく…………。
……あ、でもイチカはいないのよね。それじゃ前言撤回、そんなことしてる暇があるならさっさと帰るわ。そしてイチカに存分に甘え倒すわ。
そのためには……ルイズに死んでもらう必要があるのよね。寿命で死ぬまで何年かかるかはわからないけど……まあ、百年くらいは待っててあげるわ。それより長くなったらさっさと帰らせてもらうけど。
side シエスタ
なんだか久し振りな気がします。
レア様とルイズ様に連れられてヴァリエールのお屋敷に来て、何がなんだかわからなかったしすることもなかったのでとりあえず鍛練の時間を増やしたらこのお屋敷の執事さんにその動きを見られて手合わせして、そこそこ強かった執事さんを気絶させてしまったので木陰で休ませている間も鍛練し、そして普通にご飯を食べて寝る。
ちなみにご飯はマルトーさんの作った食事の方が美味しかったけれどそんなことはおくびにも出さず、普通に朝起きる。
朝になればいつものようにレア様と一緒に朝の軽い運動をして、ついでにルイズ様がヴァリエールの長女様から逃げ回るのを心の内で応援しながら眺めて、やることがないので鍛練の時間を増やして、身体が疲れきったら瞑想をして……。
…………なんだかそこはかとなく年頃の娘の普通の一日から遥かに外れた日常を過ごしてしまったような気がしますが、それも今日まで。学院に戻ればいつも通りの普通の日常が私を待っています。
鍛練の時間は朝昼晩の計五時間、たくさんご飯を食べて夜はしっかり休む。とっても健康的で普通で恵まれた日々。これぞ日常。
私はそう考えながら、学院から連れてきた馬車をのんびりと歩かせるのだった。
ストック切れ♪
……そんなわけで、明日から更新が止まるかもです。そうなったら笑ってやってください。