投稿再開します。休みの日には書けない秒を何とかしないと……。
side ギーシュ・ド・グラモン
トリステインと神聖アルビオンの戦争。僕は学生士官として、その戦争に参加することになった。
モンモランシーとケティ、僕なんかにはもったいないくらいの二人の恋人からの贈り物の小さなペンダントを胸に下げて、僕はまっすぐと前を向く。
……戦争は怖い。僕はまだ死にたくない。モンモランシーとケティを置いて逝くなんて、絶対に嫌だ。
『命を惜しむな、名を惜しめ』と、父からずっと教えられて育ってきた。けれど、ここで死んではこれから先名を上げる機会を失ってしまうし、僕を慕ってくれる二人の乙女を悲しませることになってしまう。
命を失うことは確かに怖いけれど、それよりもモンモランシーとケティの二人を悲しませることはもっと恐ろしい。僕を失って悲しむ二人が、もしもその心の隙をつかれて見知らぬ男のものになる事を考えるだけで……僕は死んでも死にきれない。
だから、僕は絶対に生き延びる。あの時、レア様に完膚なきまでに叩き伏せられた事から、平民に対する意識が変わった。レア様のお陰で二人のレディに許して貰ったし、今ではモンモランシーが正妻として、ケティが第二婦人として僕と付き合うことが二人の間で決まっているみたいだし、そんな風に言ってくれる相手を悲しませたくない。
二人と堂々付き合い始めてから、僕のクラスはラインにまで上がった。それに合わせてできることは増えたし、一度に作れるゴーレムの数も増えた。
……まあ、それでもレア様に勝てる気はしないけど、そのあたりは仕方無いと思っている。むしろこの世界にレア様に勝てる生物が存在するのかが疑問だ。ドラゴンの群れだろうがエルフだろうがまとめて叩き潰してしまいそうだし。
と、割とどうでもいい思考をしている間に、僕の配属された大隊……ド・ヴィヌイーユ独立大隊の旗が見えた。随分端の方にある上に士気も高そうには見えないが……まあ、何のコネも使わないで来た学生士官だったらこんなものなんだろう。
いくつもの旗が乱立している中から苦労して目当ての旗を見つけた結果がこれだとやる気がなくなっていくが、それでもこれはトリステインを、ひいてはモンモランシーとケティを守ることに繋がっている。このくらいのことでやる気を失うわけがない。
僕は魔法学院に残してきた二人の姿を脳裏に思い浮かべ、拳を握る。あの二人の笑顔を守るため……僕は絶対に手柄をたてて、生きてトリステインに戻ってみせる!
そう心に決めた僕は、とりあえず配属先の上官殿に挨拶をするために大隊指揮官殿を探し始めた。
side 織斑ルイズ
戦争に参加することになったけれど、女性士官なんて非常に目立つ存在を隠して船に載せるのは難しい。
それもただの女性士官じゃなくて、伝説の系統を持つメイジだと言うことを秘密にしながらと言うのは……できるだろうけど面倒臭いからやりたくない。
けれどやらないともっと面倒なことになるのは目に見えているので、仕方なく私は隠れて搭乗する。
当然メイド仕事はしばらくお休み。シエスタやマルトーにはその事はちゃんと伝えておいて、何かあったら学院を守ってやるようにと一応言っておく。
ちゃんと毎日鍛練はするように言ってあるし、私とルイズが学院に戻ってくるまでの鍛練メニューを渡してあるので基礎能力はちゃんと上がっていくはずだ。
成長を見るためにできるだけ早めに戻りたいところだけど、どうせいつもの如く降臨祭までに戦争が終わる訳がないので暫く時間がかかると伝えてある。
まあ、学院に襲撃をかけられるような事があるとは思えないし、シエスタ達がそっち方面で活動するようなことはないだろうし、安心して…………?
……おかしい。なぜか安心できない。何か起こる気がする。
だけど、そんな時のためにフーケにルイズ用とシエスタ用の手甲を作ってもらったんだから心配しているような事にはならないだろう。
それに、姫様直属の銃士隊がガードに入ってくれるらしいし、もし攻められても大丈夫なはず。普段は頼りない……と言うかただのエロい爺だけど、頭は回るし実力もある学院長も居る。
じゃあ、私が心配するのも失礼と言うものだろう。こっちはこっちで忙しいし、学院の事は学院の人に任せて頑張りましょう。
……ちなみに今、私は昔“複製”したイチカのバイクに跨り、メイド服にしていたシルバーローブをローブ状態にしてルイズと二人乗りしている。
私はエアライナーは使えないけれど、その代わりにコモンスペルの“マジックバリア”を足場にして空中を走ることができる。
それに、元々このバイクはイチカの魔改造を受けていて最高速度が風竜の成体のそれすら優に越える。その素体を私の魔力で更に強化することにより、軽い“加速”の中でもそれなりの速度で走ることができる。
ちなみに“加速”している最中の私から見ると風竜の最高速度は文字通り止まって見えると言うことからも、この気違い染みた魔改造バイクがどれだけ速いかを理解してくれたと思う。
そして、そんな速度を出せるバイクに生身のまま乗っているルイズはと言うと……。
「……………………」
「……おーい、娘っ子ー? 生きてっかー? 口からなんか白いの出てるぞー」
「……………………」
「……へんじがねえ、マジで屍みてえだ。顔色とか」
「でも、私のローブの中に居るんだから大丈夫なはずよ?」
「流石のそいつでも加速度による重圧までは無効化できねえんだろ。それだけじゃなく、加減速が酷すぎるからな」
と、顔色が土気色になり、口から魂のような白いものが半分飛び出していると言う酷い状態だった。
……私に投げ飛ばされても大丈夫なんだし、このくらいなら問題無いと思ったんだけど……まだルイズには早かったかしら?
私はのんびり考えながらバイクをローブの内側のアンダーグラウンドサーチライトにしまって、ルイズに膝枕をしながらその復活を待つ事にした。
とはいえルイズは見た目から想像できる以上に頑丈だから、復活に必要な時間はそこまで長くないでしょうね。大体……20分もあれば復活できるでしょう。
それまでのんびり待っていましょう。出発前に炎のルビーの“複製”とすり替えも成功したわけだし、時間はたっぷりあるものね。
…………無かったら作ってたけど。忙しい時間よりも、やることが無くて暇な時間の方が好きだから。
私はルイズの頭を撫でながら、のんびりした時間を過ごしていた。