ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side シエスタ

 

作戦はとても単純。驚かせて、光と音で目と耳を潰して、鉛弾で直接目と耳を潰して、近付いて殴る。魔法を唱えられそうになったら鉛弾を口の中に撃ち込んで詠唱を止めてからまた近付いて殴る。ただそれだけ。

中ではミス・ロッタとミス・モンモランシがなにやら色々と仕掛けているらしいので注意が必要だけど……多分、例の水火薬を使って色々やっているんだろう。あのお二方が同時にいる状況で、ついでに仕掛ける時間もたっぷりある状態なんだから多分間違いないはず。

あの水火薬は揺らすと爆発するのであまり大きな音は出せないし、火を使ったらかなり危険だ。だからこそ相手が火のメイジなら有効なんだけれど。

 

そう言うわけで、作戦の始めとして紙で閃光弾を作って飛ばす。ゆっくりゆっくりと飛んでいくそれは、食堂の中へと入って行って……ミス・ツェルプストーが杖を振った瞬間、太陽のように眩く輝いた。

食堂の中から悲鳴が聞こえてくる。ほぼ同時に連続して小さな爆音と、軽いものが床に転がる音も僅かに聞こえる。

 

数瞬の光が収まるのを待って、私を含めた精鋭メイド15人が中に踏み込む。かなりの人数が杖を取り落として顔を押さえていたり、踞っていたりする中で……一人だけ、恐らくミス・モンモランシ達の水火薬の爆発で僅かに血を流しながらも立ち続け、頭の上に炎の壁を作りながら私達に狙いを定めている者がいた。

白髪で大柄、そして鋼鉄製だと思われるメイスのような杖を持っているその男が、燃やされかけたメイドが言っていた『目でも耳でもなく回りを見るメイジ』なんだろう。

 

私はそのメイジに指針を変える。明らかに自分に向けて方向を変えた私を見て狂ったような笑顔を浮かべてそのメイジは一歩を踏み出し───粒のようにして撒き散らされていた水火薬を踏みつけて自爆した。

 

足首から先を失ったその傭兵に最速で近付き、杖を持った手首を掴んで下を潜る。

手首を掴んだままその傭兵の後ろに回り、伸ばしたままの肩から先を捻り上げながら相手の腕を中心に宙返りのように身を翻して後頭部に膝を入れる。

手首を握り潰しながらバランスを崩してまえのめりに倒れ込んでいく傭兵の首筋に膝を当て、さらに腕を捻って肩と肘を折る。

最後に傭兵の首に膝が突き刺さり、手から杖が落ちたのを確認してから立ち上がり、次の相手を探そうとして……既に立っている傭兵がいない事に気がついた。

 

……そう言えば、始めに入った時に随分倒れている人が多かった。あの程度の閃光で驚いたにしては、あの人数は明らかに多すぎる。

それに、私が見た時に自分の頭の上に炎の壁を出していた理由を考えると……と考えていたら、目の前で倒れている男の首筋に小さな水の針が突き刺さり、そして針の形を失って行く。

これはもしかして……ミス・モンモランシ?

 

予想以上に簡単に終わってしまった戦いに、出番がほとんど無かったミス・ツェルプストーがなんだかショックを受けていたり、痺れ薬を使って傭兵達を痺れさせたミス・モンモランシと硫黄から水火薬を作っていたミス・ロッタがまた秘薬を買うのにお金がかかるとこっそりぼやいていたり、人質にとられていた教職員や生徒達から畏怖の目で見られるようになったりしましたが、恐らくこれにて一件落着。

ただ、ミス・ロングビルが私達をじっくりと観察しているような目で見てきているのが少し気になるところではあるけれど、なんにしろ平和に明日を迎えられるはず。

二名ほど死んでしまった銃士隊の方には悪いけれど、私達はこれからも頑張って生きていきます。

 

……なんだかミスタ・コルベールが私が倒した白髪の傭兵を微妙そうな目で見つめていたけれど……知り合いなのでしょうか? 差し出がましいかもしれませんが、交遊関係を見直した方がよろしいですよ。

 

……さて、もう寝ましょうか。夜更かしは美容と健康の天敵です。

 

 

 

 

 

side 織斑ルイズ

 

なんだか久し振りに話したような気がするわ。気のせいかもしれないけれど、私がそんな気がすると言うだけだから別に問題らしい問題はない。

さて、それは置いておくとして……作戦は成功した。アルビオンの空中艦隊はダータルネスに吸い寄せられ、ついでに私のバイクに撥ねられて数を減らし、残ったアルビオン空中艦隊の一部を粉砕したトリステイン・ゲルマニア連合軍はロサイスに到着。これがゲームか何かなら、第一関門突破!って感じにファンファーレでも鳴っているところだと思うけれど、そんなのはあくまでゲームの中くらいでしかあり得ない。特に何があるわけでもなく、次の行動に移っていく。

 

…………だけど、本当にここの元帥は屑ね。兵を数字で語り、それを当然だと思い込み、一人のメイジを兵器として扱うことになんの躊躇いも持っていない。私ならこんな奴には従いたくないけど、トリステインの人間達はよくもまあ従う気になるわよね。

昔はこれを当然のことだと思ってたんだけど、イチカについて行って英霊の坐で異世界の知識を身に付けると随分変わってきたわ。仕方無いとは言え、この世界って随分遅れてるのね。可哀想に……。

 

「……レア姉様? いったいどうしてそんな憤怒と憐憫と嘲笑と狂気が複雑に入り交じったものを圧し殺しているような表情をしていらっしゃるのですか?」

「ちょっとイライラすることと可哀想になってくることと下等生物についての事を同時に考えていたからよ?」

 

狂気についてはノーコメント。これでも若干気にしてたりするんだから。

一度本格的に狂気に堕ちると登るのが大変なのよね。色々と。

まあ、この世界にイチカのことを知っている相手はいないから狂気に堕ちることは少なくなってると言うか一度もないけど、何も知らない奴がイチカのことを馬鹿にしたりしたら……本気で殺しにかかるわ。全力で。多重詠唱で“加速”と“爆発”と“時空消滅”を使ってでも滅ぼしてやるわ。

 

……そんな時は来ないと思うけど。と言うか、ほんとに来ないで欲しいわ。疲れるし、何も生まないし。

それがわかってても実際に起きたらまず確実にそうしちゃうのが目に見えちゃってる辺り、恋とか愛とかって厄介よね。

 

でも、私はイチカが好きなのよね。大好きなのよね。愛しちゃってるのよね。…………あ、魔力が回復した。

ああもうイチカかわいいかっこいいかわいいかっこいいかわいいかっこいい食べちゃいたい。カニバリズム的な意味じゃなくて性的な意味で。私もチフユ様みたいにイチカの子供がほしいよ~。

 

 

 

 

 

 




 
ちなみに、突入寸前の連続した爆音は光に驚いた傭兵達にモンモランシーが麻痺針を刺して倒れた傭兵と、その手から離れた杖がケティの操るニトロに触れて爆発した音です。
メンヌヴィルは頭の上に炎の壁を作って針は防ぎましたが……その結果がこれだよwww


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