ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 織斑ルイズ

 

特に策もなく進軍するトリステイン・ゲルマニア連合軍だけれど、敵はある意味焦土作戦のようなものを行ってきた。

連合軍の通るだろう道筋にある町や村から食糧と言う食糧を奪っていった上に亜人を置いていっていたので、随分と手こずらされた。

とは言え、亜人しかいない町はそれなりに簡単に落とすことができたし、民衆に配り歩いて減った分の食糧も一応トリステイン本国及びゲルマニアから送られてくるそうなので問題は……無いこともないが、今すぐ死ぬようなことではない。

やっぱり戦争はこう言う悪巧みの上手い方が勝つのよね。流石はジョゼフ、自分には被害のないまま他者にだけ被害を出させるなんて……その知謀は異世界にあっても冴え渡っているわね。

 

私も昔はその知謀にお世話になった。こっそりイザベラとビダーシャルの逢い引きを覗くために二人の仕事の日程を調節したり、さらりとデートに丁度良さそうな店を建てていたり、二人の好きな料理を出す店を建てていたり、ちょっと視点を変えれば盗賊なんかと戦う仕事についていたのに知識力と情報操作力と政策で盗賊や他の領との争いを全部避けきって私とイチカの時間を確保してくれたりと……実に様々な方向でお世話になった。

普段は結構馬鹿なことをしているのに、どうしてこんなに頭がいいのかしらね。頭のいい馬鹿って言うのかしら。

イチカは頭のいい馬鹿って怖いと言っていたけど、頭がよくて行動力のある馬鹿はもっと怖い。この世界のジョゼフはまさにその道を突っ走っているような状態よね。ああ怖い。

 

……さて、それじゃあさっきから広がってる『アンドバリの指輪』の気配をどうにかしないとね。ついでにそれの元も潰しに行かないと。

 

「……おお、確かにこれはアンドバリの指輪の一部。集めておくが……既にそれなりの量が汲まれてしまっているな」

 

久し振りにアンダーグラウンドサーチライト中から出した水の精霊を水源に入れた結果がこの言葉。どうやらまた死体の操り人形か生きたまま操られる人形が作られそうだ。

これをどうにかするためには、まずは根本から絶たないといけない。“探知”で探し出した根本である『アンドバリの指輪』は山の中で、それなりの速度で動いている。

指輪を持っているのは多分シェフィールド。その周りには土人形がいくつも並んでいる所から、恐らくそれはガーゴイルか何かなんだろう。『神の頭脳』であるミョズニトニルンはありとあらゆるマジックアイテムを操り、その知識を得る。その中にはやっぱりアンドバリの指輪の情報もあったんだろう。

 

……使えば使うほど減るマジックアイテムなんて欠陥品だと思うのだけど、欠陥品は欠陥品で欠陥品なりに役に立つんでしょうね。

私が使うとしたら、精々水の精霊の機嫌を取るくらいしか使い道がない。

 

けれどその使い道こそが今は一番重要なので、“加速”して山中に走り込んで見つけ出したシェフィールドの指に填まったアンドバリの指輪を引っこ抜き、ついでに周りのガーゴイルの数体をデルフリンガーで切り裂いてから走り去る。

体感時間は数分間、実際の時間は一秒にすら届く事のない暗躍は、結果的には成功ね。

 

これで後は水源からアンドバリの指輪を回収した水の精霊を瓶に戻して、それからアンドバリの指輪の混ざった飲み水からアンドバリの指輪を回収していかないと。さっきまでは割と暇だったのに…………ん?

 

…………よく考えたら、むしろ暫く放置しておいた方が早くこの面倒臭い戦争が終わらないかしら? 他人の目が無くなれば私もさっさとけりをつけられるし、そもそも水の精霊が私の所に居るのだから、アンドバリの指輪で操られた相手なんて糸の切れた人形を相手にするのと変わりない。

ついでに洗脳を解除していけば解除するだけこちらが有利になるんだから……やらない手は無いわね。

 

だけど、ちょっと気になることがあるから戦争が終わってからも暫くアルビオンに残りたいのよね。私やジョゼフと同じ力の持ち主が近くに居るみたいだから。

私の世界ではトリステインの私とガリアのジョゼフ、ロマリアのド腐れ教皇の三人だけしか見なかった上にこれから虚無の担い手が生まれても育たないように始祖の祈祷書と土のルビーは文字通り墓まで待っていったので、私はアルビオンの担い手については殆どなんにも知らないのよね。

 

精々、金髪碧眼でアルビオン王の弟であるモード大公とその愛人のエルフの間に産まれたハーフエルフで名前はティファニア、愛称テファ。純粋で優しくて可愛らしく、腰は非常に細いのに胸の大きさが最早革命的、しかしその事を理解していないためかなり無警戒に行動し、人見知りではあるけれど人懐っこく好奇心も強い。どうやったのかは知らないけれど既に“忘却”の魔法を覚えていて、それを使って自分と暮らしているウェストウッドの村と集めてきた孤児達を守っている、世間知らずだけどしっかりとした芯を持って生活している可愛い娘で、『土塊のフーケ』ことマチルダ・オブ・サウスゴータさんが自分の生活費以外の給料や臨時収入を送り続けている相手ってことくらいしか。

 

ちなみに“忘却”の魔法を覚えている云々って言うのは予想。マチルダさんは虚無の魔法のことなんて全然知らないもの。こう言う効果があるように見える……って言うマチルダさんの記憶から予想しただけの想像だったりする。

他の内容は全てマチルダさんの記憶からそのまま抜き出している。だから村の場所もわかっているし、性格やなんかもある程度わかるわけね。

 

そう言うわけだから、瓶から水の精霊の分体を出して井戸の水を吸い上げてもらう。同時に雲も水に変えて、そのまま新しく個別に開いたアンダーグラウンドサーチライトの中に。水の中なら水の精霊はそれなりの速度で動けるので、こういった準備はやっぱり必要になってくる。

後はルイズとマチルダさん、メイド達とモンモランシー・ケティ・タバサの三人に手紙を書いてシエスタに渡さないと。

シエスタには……直接伝えればいいでしょ。多分。

 

“複製”を使ってイザベラ特性三日は眠る睡眠薬(副作用なし)を用意して、それから紙とインクに“念力”を使って手紙を書く。これで準備はだいたいできた。後は相手の動きを待つばかり也……と。

 

……そうだ。知り合いが居たらできるだけすぐに逃げられるように注意しておこうかしらね。何かが起きる気がする、とでも言って。

 

 

 

 

 

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