ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 織斑ルイズ

 

進撃するアルビオン軍を確認。このままでは全軍の退避が終わるよりも早くロサイスまで到着してしまうだろうことがわかる。やっぱりこういう時に個人の保身に走る奴が総大将だと駄目ね。もげればいいのに。

 

「おーい相棒よーい。七万を前にしてそれは色々まずいんじゃねえか?」

「大丈夫よ。どうせ使う魔法なんて一つか二つで済むわ」

 

見たところ竜騎士は数体しか居ない。タルブ村の時に何体も落としたし、ダータルネスに向かう時にも何体か撥ね飛ばしてやったから、数が少なくてもしょうがないわね。

けれど、より驚くべきはあの亜人の兵。どうやって亜人を味方につけたのかはわからないけれど、とりあえず生命力と腕力の強い相手が敵に居ることは確実。首を撥ねればみんな同じだけどね。

 

……あ、もしかしたら意識をある程度操っていたのかな? アンドバリの指輪を使わなくてもその位はできるだろうし、話をつけるよりは操った方が数段早いだろうし。

まあ、それはミョズニトニルンであるシェフィールドくらいしかできない手だけど、できるんだったらとても有効な手だものね。できるんだったら。

 

さてと。それじゃあさっさとやることやっておきますか。

私は袖から杖を抜き、ある魔法を発動させた。

 

 

 

 

 

side ホーキンス

 

それは突然のことだった。裏切ったトリステイン・ゲルマニア連合軍の兵と、我らがアルビオン軍の混成軍が連合軍の居るロサイスに向けて進軍している途中、突然頭上から不可視の何かに押し潰されて地に伏す。

空を舞っていたドラゴンも、食糧を運んでいた馬車も、平民もメイジも将も一般兵も裏切り者も我々も関係無しに、一瞬にして動けなくなる。

 

「な……何が起こった!? 状況を説明しろ!」

「わ、わかりません!突然何かが我々を押し潰し、動きを止めています!」

 

副官に向けて叫ぶが、その副官も何がどうなっているのか理解していない。仕方の無いこととはいえ、あまりに突然の危機に罵声が口から溢れそうになるのを必死に押し止める。

ほとんど動かすことができない身体を必死に動かして、なんとか動かすことができた首を回して周囲を見渡す。殆どの兵も同じように恐慌状態となっていて、とても軍事行動などとれそうもない。

……いや、たとえ兵が恐慌状態でなくとも軍事的な行動などできなかっただろう。我々は杖を握ることすらできないように地面にめり込まされていて、更に未だに上からの圧力は継続中。遠くの方からオーガが暴れようとしているような音が聞こえるが、どうやら何もできていないようだ。

生身での力ならば人間よりも遥かに強力なオーガが何もできていないのに、杖を持たぬ人間にいったい何ができるというのか。現に私は地面に這いつくばりながら、この理不尽な現状を受け入れることしかできないでいる。

 

そこで、水の流れる音が聞こえてくる。アルビオンには川は少ないし、こんなところを流れる川など記憶に無い。

その事に思い至った次の瞬間、地にめり込まされている身体が突然現れた水に被われ、そしてすぐに解放された。

何故このようなことをしたのか。我らを殺すならば、ゆっくりと水を流し続ければそれで十分だろうに。

理解のできないことが続けざまに起き、私はもう意識をどこかに飛ばしてしまいたくなった。

 

……しかし、そんな私の願いを嘲笑うかのように場面は進んでいく。一部の部隊……あの辺りに居たのは確か傭兵が固まってできた部隊のはずだ……の人間が次々に悲鳴を上げ、そして徐々に声が少なくなっていく。これは恐らく、この現状を作り出してい者が傭兵達を虐殺しているのだろう。

少しずつ、少しずつ近付いてくる悲鳴と、風メイジであるがゆえに聞こえてしまう幽かな足音。それに恐怖し、必死に離れようとしても……私の身体はその場から動く事は無い。

……そう言えば、ずっと聞こえていたはずのオーガやオークの声が聞こえない。と言うことは、恐らく迫ってくる者に殺されたのだろう。

七万の人間の動きを上から押さえつけ、少なくとも数百はいたオーガやオークといった亜人をあっという間に殺し尽くす? それはいったいどんな魔法兵器だ!トリステインはいったい何に手をだし、何を作り上げたのだ!?

 

……いつの間にか、足音はすぐ近くに来ている。何故か周りの者達の大半は殺されていないようだが、所々に死体が転がっている。

 

「……こんにちは、ホーキンス将軍。申し訳ありませんが、貴殿方は暫くこの場で足止めを受けていただきます」

 

……聞こえてきたのは、女の声。顔を上げることができないためその姿を見ることは叶わないが、間違いなく私に話しかけてきた者は女だと確信できた。

 

……しかし、この場に居て、そして私に話しかけることができる場所まで近付いてくることができたという事実からだけでも、理解できることがある。

それは則ち、この状況を作り出している何者かに関係がある、あるいはこの女がこの状況を作り出した本人ということ。

答えがどちらかはわからないが、どちらだったとしてもこうして動くことができない状態でここまで近付かれてしまえばもうあとは腹をくくるしかない。

敵を無力化したら、次は捕らえて尋問するか殺害するか。どちらにしろ見逃すという選択肢を取ることはまずないだろう。そして軍で最も多く、正確な情報を持っているのは将軍である私。

 

……これで、我が命運も尽きた……か。

 

「……聞いてるかしら?」

 

ガゴンッ!と轟音が響き、一瞬上から何かを叩きつけられたような衝撃が全身を同時に打ちのめす。どうやらこれは私だけに起きた現象らしく、周りから悲鳴や呻き声が聞こえてくることはない。

この事から、この現象はこの女によって引き起こされているという事実がはっきりした。

 

「……まあ、いいです。それでは皆さんには、こうして這いつくばったまま三日三晩過ごしていただきますね」

「……なん……だと……?」

 

三日三晩? まさか、この女にはこれを丸三日続けるほどの力があると!?

いや、それも重要ではあるが、それよりも丸三日間身体を動かせず、食事をとることすらできないと言うのは……。

 

「まあ、三日後まで頑張って我慢してくださいね。…………トイレを」

 

この瞬間、間違いなくその言葉を聞くことができた全ての者がの顔から血の気が引いたのがわかった。かく言う私もその一人だ。

しかしその女は騒いでいる私達から鎧や武器をどうやってか抜き取り、そのまま何処かへと去っていってしまった。

 

……唯一の救いは、実際には三日ではなく一日でこれが解けたことだった。

そのお陰で私はなんとか私は恥を晒さずに済んだのだが、中には…………いや、言うまい。

 

 

 

 

 

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