ゼロの使い魔 ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 織斑ルイズ

 

テファからフーケに手紙を預かり、ウェストウッドの村を出る。騎士アニエスは私がトリステインに戻ることを言い出すまでその事を完全に忘れていたかのような反応をしたが、きっとそれは軽い冗談でしょうね。騎士アニエスは意外とお茶目さんだったらしい。

ただ、そう伝えてみたらその場に両手両膝をつけて落ち込み始めてしまった。どうしてかしら?

 

「相棒の話にまんまとのせられて、気が付いたらかなりの時間この村で過ごしていたことがショックだったんだろうよ。騎士の娘っ子は真面目だからなぁ」

「確かにのせたのは私だけど、いつでも降りれる場所から降りなかった事まで言われる筋合いは無いわ」

 

それに、そこまで無理矢理のせたわけでもないし、のるのが本当に嫌ならスルーして私を引っ張り出せばいいだけだったし。

 

「相棒を力任せに引っ張り出せるような奴がこの世界に居るとは思えねえんだが、その辺り相棒はどうよ?」

 

……さっきからやけに突っかかってくるわね? 何か嫌なことでもあったのかしら?

 

「私を引っ張り出せる相手を私は結構な人数知っているわ」

「そいつら人間じゃねえだろ絶対」

 

……まあ、確かに次元世界にその名を轟かせることで信仰を得てただの人間から神格化した自称・音楽家兼喫茶翠屋二代目店主とか、太陽系の消滅まで自らの国を隠し続けて領民に信仰されて神格化したリアル地味神様とか、人間のまま人外の域に到達した挙げ句に神の座まで蹂躙し出した万夫不当とか、愛と気合いで限界突破した世界のバグとかそう言うのばっかりだけど、何の証拠もなくそう言い切るのは酷いと思うわ。

 

「正解なんじゃねえか」

「酷いってことと正解であるって言うことは相反しないのよ?」

「つまり、相棒は相棒で人外だと思ってるわけだな?」

「だって私、英霊だし」

「そう言やそうだったな。英霊ってより悪霊っぽいが」

「だって私、英霊は英霊でも反英雄の英霊だもの」

 

ほら、私ってかなり世界中を荒らして回っちゃったじゃない? そのお陰で私の世界の人間その他はともかくとして、世界そのものに反英雄だって思われちゃったみたいなのよね。

こんなにか弱くて心優しい私が反英雄だなんて……酷いと思わない?

 

「か弱くて心優しい? 誰が? ……え? 相棒が? …………相棒は相棒らしくしてるのが一番だと思うぜ」

「私らしく調教してあげましょうか? デルフリンガー」

「おぉっとタイムだ相棒。流石の俺も連続はキツいからな。そんな辺りも相棒らしいとは思うが、勘弁してくれや」

 

デルフリンガーといつもの掛け合いを楽しみながら、そこそこの速さで空を舞う。久々に登場した風石エンジン搭載型グライダーを“複製”して三つに増やし、一つはルイズが、一つはシエスタが、そして最後の一つは私が騎士アニエスと一緒に使う。

流石に最高速度の快速船よりは遅いが、巡航速度よりは明らかに速い。グライダーは平時だと本当に使うことがないからこう言う時に使っておかないともったいない。

 

……なお、騎士アニエスは時速140キロメートルの速度と高度とついでに風圧に耐えきれなかったようで、くてっと気絶してしまっている。乗せる前にトイレに行かせておいて本当によかったわ。

これで騎士アニエスが高所恐怖症にならなければいいけれど……多分大丈夫よね。実際にはどうだか知らないけど。

 

……ちなみに、時速140キロメートルで飛んでいると普通は呼吸がしづらい。口を開けて前を向くと嫌でも肺に空気が無理矢理入り込んでくるし、口を閉じて下を向くと鼻から空気が強制的に抜けていく。そのお陰で肺が潰れる事もあるそうだけれど……私もルイズもシエスタも全く問題ないから平気でしょう。

騎士アニエスは……まあ、鍛え方が足りないと言うことで。姫様の親衛隊ならせめて斬撃を飛ばすくらいはして欲しいわ。シエスタの場合は構えてさえいれば拳圧を飛ばすことくらいはできるもの。

ちなみにルイズは飛んできた魔法や拳圧を受け止めて投げ返せる。私は頑張れば私の腕力分威力を増して受け流して投げ返せる。イチカの場合は撃ったらその瞬間カウンターを食らって死ぬ。

 

……そうだ、今度人型デルフリンガーも鍛えてみましょう。剣技はあまり得意じゃないけど、ホウキ様や白蓮曰く一流半くらいにはなってるらしいし……なんとか二流くらいには仕立てあげられるでしょ。多分。

二流になってくれれば一瞬自分の命を守る事ができるだろうし、最悪私を連れて逃げられるし。

そうと決めれば(誤字にあらず)すぐに行動に移そう。とりあえず訓練メニューの製作から始めましょうか。目標を決めたら次はそこに行き着くための道筋を作らなくちゃいけないって言うのは自明の理だし、私も結構楽しいしね。

 

けれど、私にできることはあまり多くない。楽しめることは楽しめるだけ楽しんでおかないと、人生を損することになっちゃうわ。もったいないもったいない。

 

とりあえずトリステインの王宮に寄って騎士アニエスを姫様に返還し、それから魔法学院に戻ってメイド達(モンモランシー達を含む)の新しい訓練メニューを作ってからちょっと掃除して……ああ忙しい。

それからデルフリンガーの強化もしなくちゃいけないし、個人用鍛練メニューも作って……それから血を採っておかないと。刃に紋様を入れて更に私との親和性を高めてやれば直接虚無魔法を纏わせることだってできるようになるだろうし、“ディストーションブレイド”をデルフリンガーから出せるようになるのは杖とデルフリンガーの持ち替えをしないで済むと言うことで凄まじく便利だしね。まあ、この世界に来てから使うことなんて一度もなかったけど。

 

忙しさも慌ただしさも危険も平穏もまるごと飲み込んで楽しめるだけ楽しもう。どうせやることは変わらないんだし、やるなら楽しまなくっちゃ。

昔の私はそう言う余裕が足りなかったから胸が育たなかったし魔法も使えなかったのよ。こうして余裕をもって魔法を使ったり胸が育ったりしている私が言うんだから、まず間違いないはずよ。

 

……余裕を持つだけじゃあどうにもならないこともあるけど、それは今度は愛情で何とかすることができるから問題ないわね。

 

……さてと。それじゃあ王宮に着陸しますか。バレないように“ライト”のステルス付きで。

 

 

 

 

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