お待たせしてしまって、誠に申し訳ございませんでした。
どうにかこうにか、我らがビッキーの誕生日に投稿が出来てホントよかったです。
おめでとうビッキー。いっぱい食べる君が大好きです。これからもちょっとずつですが、君の可愛い部分のちょっとでも良いんで私の下手な文章で書かせてください。
「ホンットーに、すみませんでしたぁあ……ッ!」
開口一番。ワタシはお腹の底から声を捻り出しながらそう言って、自室の冷たい床へと自ら頭を擦りつけていた。
肘と膝を綺麗に折って、きっちり手の先を揃えながら頭のてっぺんを相手に向けるという、姿勢正しい全力土下座のポーズ。
まさか、以前たまたま視聴していた極道モノの映画の内容が、こんなところで役立ってくれようとは思ってもいなかった。
まるで幾千の修羅場を、この身一つで潜り抜けてきたかのような、そんな洗練された体さばきで全身を丸めて頭を下げているワタシの姿。きっと今のワタシには、言葉では決して言い表せないような、美しさにも似たなにかが漂っているに違いない。
立花響、全力全開ハートの全部をかけた、渾身の土下座姿だった。
クリスちゃん辺りがきっと今のワタシを見たら「お前、地面が好きすぎるだろう……」と、やや引きつったような顔でツッコまれてしまうことが受け合いな、そんな無惨な姿である。
無惨で、我ながらなんとも残念な姿だった。
しかし、今の自分にとって――そんな一時の恥や外聞なんてものはどうでもいい、実に些末な問題に過ぎない。
自分のプライドだろうがなんだろうが、今のワタシが置かれている『この状況』をなんとか出来るのであれば、喜んでかなぐり捨ててやるつもりだった。
それほどまでに、今のワタシは追い詰められていた。自ら進んで、フローリングの床へぐりぐりと額を擦り付けているほどに。
果たして。ワタシが自らの尊厳を放棄してまで、全身全霊を懸けて謝罪している相手――頭を下げている、その先には。
「……響? みっともないから今すぐそれ、やめてくれないかな?」
――見 苦 し い。
絶対零度の視線でこちらを見下ろしている、無表情の幼馴染――小日向未来さんの姿があった。
「……ひゃい」
すぐさま身体を起こして、その場で正座の姿勢になったワタシ。
自分にとっての唯一無二、かけがえのない『陽だまり』である彼女。いつだってワタシに、暖かな春の日差しのような気持ちをたくさん分けてくれるワタシの大親友は、しかし今に限って言えば、見る者にブリザード級の寒波を与える冷ややかな視線で、ワタシのことを見ていた。
極道モノの映画を鑑賞し蓄えたはずの自分のノウハウが、まったくと言っていいほど効果を発揮していないようだった。
おかしいな、ワタシが見たあの映画の中だと、この土下座ポーズでヤクザの組長さんから恩赦が下りていたハズなのに……。
ワタシの土下座では恩赦どころか、未来の眉一つ動かすことが出来なかった。
さっきからワタシの背中に流れ続けている冷たい汗が、いっこうに止まる気配がない。
未来を――怒らせてしまいました。
なぜワタシの『陽だまり』がブリザード級の寒波を引き起こすことになってしまったのか。
それは時間を巻き戻すこと数分前のこと。
S.O.N.G.での基礎トレーニングを終えて、いつものように寮へと帰宅したワタシは、夕食の支度をしてくれていた未来に出迎えてもらいながら、自宅のリビングスペースで何をするでもなくごろごろしていた。
未来が作ってくれる夕食の完成を今か今かと待ちわびながら、未来の扱う包丁のトントンという規則正しい音を聴いて、なんとなくうとうとしながらソファの上でくつろいでいると。
『あれ? ……ねぇー、未来ぅー。この本なぁに? 机の上に置きっぱなしになってるヤツー』
『……ん? あぁ、それね。私が好きなシリーズの最新刊だよ。今日が発売日だったの。後でゆっくり読もうと思ってて』
机の上に、なにやら自分が見慣れない本が置かれていることに気が付いた。
『へぇ~、そうなんだッ! どれどれ……って、うわぁッ!? 隙間なく文字がびっしり……ぅひゃ~、よくこんな難しそうなのが読めるねぇ、未来』
『そりゃあ小説なんだから、文字がいっぱいあるのは当然のことでしょ。ていうか昔から響って、活字を読むのが苦手な子だったよね』
『むむッ! 言ったね未来~ッ!? ワタシだって読もうと思ったら小説の一冊や二冊ちゃんと読めるんだからッ! ホラ、この本だって――』
キッチンから飛んできたそんな未来からの言葉を受けて、大して必要もない対抗意識を燃やしてしまったワタシは、内容どころかジャンルさえよくわからないような、そんな未来の本を少しだけ読んでやろうと、勢いよくページを開いた――これが本当に、イケなかった。
びりっ。
どうやら思っていたよりもほんのちょっぴり強いチカラを込めてしまったらしいワタシの手は、未来が『楽しみ』にしていたという、その文庫本の表紙を易々と引き裂いてしまって。
『……ねぇひびき、今の嫌な音は――いったい何かな?』
ピタリと止む包丁の音。途端に血の気が引いて、額に大粒の汗が浮かび始めたワタシ。
『……えッ!!? あぁ、いやッそのあのえっと未来あのねその――』
そして――時間は元に戻して、数分後の現在である。
「……響の、馬鹿チカラ」
「うぐッ!?」
「……不器用」
「ぐはッ!?」
「……お馬鹿のくせに本なんか読もうとして」
「ぎゃぉう……ッ」
まるで怒りのオーラが目に視えているのではないかというぐらい、非常に不機嫌な顔をしている未来が、まるで小さな子供に向かって延々とお説教を言っているみたいな口調で、ワタシのことを責めていた。
なにも言い返すことが出来ない。真正面から飛んでくる、そんな未来からの感情が乗った言葉を甘んじて受け止めることこそが、今の自分が唯一出来る反省の姿勢というものだった。
というか、全ては自分のドジが招いた事態なので、当たり前のことである。
「……あとでじっくり読もうと思って、ずっと楽しみにしてたのに」
「うぅぅ……ご、ごめんなさいぃ……ッ」
不貞腐れたようにそっぽを向いた未来に向かって、ワタシは全力の平伏姿勢で、何度も何度もしつこいくらい謝罪の言葉を述べた。
未来は昔から――無類の読書好きだった。
陸上で走ることも大好きだったけれど、それと同じくらい、未来は本を読むのが昔から大好きだった。暇さえ見つけたらいつもなにかの本を開いているし、本屋さんへ買い物に行けば、ずっと目を輝かせながら楽しそうに本棚を眺めているような、そんな知的な女の子だった。
つまり、未来はそれだけ本が好きだということであって、幼いときからずっと彼女と交流を持ってきたワタシが知っている限りでは、彼女が本を粗末に扱っているところなんて一度だって見たことがない。
それなのに、ワタシのせいで――
自分のドジのせいで、未来を怒らせてしまったことがとても情けなかった。
この調子じゃあ、今晩のご飯はおろか、数日の間はまともに口も利いてもらえなくなるかもしれない。
そ、そんなのイヤだぁ……ッ。
すっかり涙目になりながら、ワタシはなんとか彼女に機嫌を戻してもらおうと、必死でない知恵をフル回転させた。
「……い、今すぐ新しいの買ってくるからッ」
「このシリーズすごく人気だから、今から行ったってどこの本屋さんもぜんぶ品切れになっていると思うけど」
「で、でもでもッ、近所の本屋さん全部まわれば一冊くらい――」
「表紙が派手に破れちゃっただけで、べつに中身が読めなくなったわけじゃないんだし、わざわざそんなことしなくたっていいよ――どうせ売ってないんだし」
にべもなくピシャリと言いのけられてしまって、ワタシの中の焦りがさらに増していく。
「じゃ、じゃあ、えっとッ! せめてテープとか貼って、修繕を――」
「ドジな貴女がそんなことしたら、余計酷いことになるのが目に見えているから絶対にしないでね」
「あ、ぅ……あッ、そ、それじゃあ今日のご飯はワタシが作るねッ!? ねッ!? たまには未来はゆっくり休んで――」
「もうほとんど出来てるから、いらない」
「……うぅ」
ダメだ。まったく取り付く島もない。
全身に黒いオーラを纏った(ように見える)未来は「……もういいよ」と呆れたように言うと、さっさとキッチンへ戻っていこうとした。
マズい。これは大変にマズい。このままいけばもしかしたら、ワタシ達は今夜、お互いに別々のベッドで夜を明かす結果になってしまう。そんなの嫌だ。ぜったいに嫌だ。
ワタシは「ま、待って未来ッ!」と、慌てて歩いていく未来の背中に声をかけた。
「……なに? まだなにかあるの?」
「え、ええと、そのぉ……あのぉ……ッ!」
考えろワタシ。頭を使え。拳を握るくらいしか取り得のない、グズでドジでダメダメなワタシだけど、ワタシの歌は『誰かを護る』ことの出来るチカラだったハズ――どうにかして、この未来のご機嫌を元に戻す方法を考えるんだ。
なにか未来が好きなこと。なにか未来が好きなこと。なにか未来が好きなこと……ッ!
「そ、そうだッ――カキ氷ッ! 今度、どこかにカキ氷を食べに行こうよッ! すっごく美味しいヤツッ! 今回のお詫びにワタシがご馳走しちゃうからさぁッ!?」
「…………」
名案を思いついたとばかりに声を弾ませて、そんな提案をしたワタシに、しかし未来はゆっくりと振り返ると。
「……食べ物で釣ろうだなんて、いつから響はそんな酷い子になっちゃったのかな?」
私ちょっと、ガッカリしちゃったよ。と。
絶対零度を更に下回って、もはやこの街全体が凍ってしまうんじゃないかと思ってしまうくらいの冷たい声で、未来はにっこりと微笑んでいた。
表情こそ穏やかなものだったが、その目はまったく笑っていなかった。
「……ひ、ひぃッ」
ぶわぁっとワタシの背中を伝っていた冷や汗の量が倍くらいに増えた。
しまった。自分で自分の墓の穴を掘ってしまった。これじゃあさっさと埋めてくれと急かしているようなものじゃないか。
我ながら、なぜいつも自分はこうも浅はかなのだろう。昔から幾度となくこのパターンで、未来を怒らせてしまっているというのに、一向にそこから学習する気配すらない。
「……じゃあ、ご飯つくってくるから」
未来はそう言って、今度こそキッチンの方へと向かって歩き出してしまった。もうすぐ完成するという今日の晩餐メニューをこの目で見るのが、もうすでに恐ろしい。せめて食べられる物を出してもらえたらいいな……。
水溶き片栗粉とご飯だけとかだったらどうしようと、そんな早くも諦念めいたことを考え始めていたワタシの頭はそこで、最後の交渉手段がまだ一つだけ残されていることに思い至った。
昔から未来を怒らせてしまったとき――ワタシが彼女に機嫌を戻してもらうために『とっておきたいとっておき』にしてきた、最後の最後の手段。
陸上で走ることと本を読むこと。そして、カキ氷を食べることと同じくらい――未来が好きなもの。
ワタシはお腹の底から声を出して、やけくそ気味に叫んだ。
「わ、わかったよ未来ッ!! それじゃあ『焼き肉』ッ! 焼き肉に行こうッ!!」
ワタシの全力渾身の提案を聞いた未来の背中が、わずかにピクリと反応をしたのがわかった。
「なんなら今からだっていいよッ!? 高いメニューでもなんでも頼んじゃっていいからぁッ! だからもぉう許してよぉッ!?」
「……い、今からはダメだよ――もうご飯、つくっちゃってるんだから」
半分泣き喚くように告げたワタシに向かって、しかし冷静な口調で未来はそう言うと、さっきと同じようにゆっくりとした動きをしながらこちらへと向き直った。
「――だから三日後くらいに、連れて行ってくれる?」
なにもかもすべてを放っぽって、ついに最終手段を使って打って出たワタシを見ながら、そう聞いた未来の表情には――やっと笑みが戻っていた。
「そしたら、許してあげる」
心の底から待ち望んでいた、幼馴染の暖かな表情。
そうして――ようやくワタシの『陽だまり』は、いつもの輝きを取り戻してくれたのだった。
いくら若者が勝手にぞろぞろと集まってくる学校施設とはいっても、ワタシや未来が通っている『リディアン音楽院』はあくまでも女子高なので、はたしてそんな女学院の近くにこんなお店を建てて本当に繁盛するのかずっと疑わしかったけれど――リディアンから徒歩で移動できる距離の中に、そのお店はあった。
黒っぽい塗装が施され、店内の様子がよく見える造りをした外壁。何本もの排煙管が上から飛び出ていて、遠くからでもすぐさま目を引く、特徴的な形をした屋根。
そこからもうもうと吐き出され続けている煙には、えもいわれぬ香ばしい匂いが混ざっており、ただそこに立っているだけでなんとも胃袋を刺激するかのようだった。
俗に言う――『焼き肉専門店』である。
日々、音楽を学び続けているようなうら若き女の子たちが、学校帰りの腹ごしらえに立ち寄るには、随分と脂ギッシュでギトギトとした場所だったけれど、しかし健全な若者たちの胃袋にはいくら女の子と言えども適切なカロリーと脂肪分は必要不可欠なようで、窓を通して覗いた店の中には、ワタシ達と同年代くらいに見える女の子の姿もちらほらと見受けることが出来た。
女の子だって、たまにはがっつりとお肉を食べたくなるときがあるのである。仕方のないことだ。
それは食べることがなによりも大好きなワタシにとっても――そして、ワタシの前を歩いているこの普段はお淑やかな幼馴染であっても、同様のことであるらしかった。
「……やっと来たわね、この時がっ!」
お店の前。噛み締めるようにしてそんな感想を零しながら、あの未来が仁王立ちで佇んでいた。
その顔には、ワタシがよく見知っている普段の、落ち着き払った彼女らしさはまったく感じられない。まるで大きな陸上大会にでも参加しているときのような、真剣そのものといった風の険しい表情をしていた。
「ね、ねぇ未来ぅ……ワタシ、もうお腹が減り過ぎてて、目が回ってきてるんだけどぉ……?」
ぐぅぅ。そんな彼女の隣で、まるで猛獣の低い唸り声のような音を響かせているのはワタシの胃袋だった。
当然だ。だって『あれ』から三日間――ワタシが口にしてきた食事といえば、お茶漬けや湯豆腐といった『消化にいいとされる食べ物』しかなかったのだから。
ぐぎゅるるる。と。乙女が出しちゃいけない音を垂れ流しにしながら、ワタシは涙声と弱音を隠すこともせずに漏らしていた。
「い、いくら焼き肉だからって、なにもここまでしなくったってぇ……」
「何を――何を言っているのかな、響はっ!? あの日あの時から『戦場』はすでに始まっていたんだよ? 来たる今日に向けて万全のコンディションを整えて挑むのは、当たり前のことなんじゃないのかな?」
ついにあの未来までもが、戦場を『いくさば』と呼ぶ事態にまで陥ってしまっていた。
そこまでなのか焼き肉……。未来だけは違うと思ってたのに……。
そう言いながらこちらに振り返って見せた未来の顔にだって、あまり元気そうな雰囲気はない。そりゃあ、未来だってこの三日間ワタシと同じものを食べて過ごしていたのだから当たり前のことだった。限界まで焦らされた彼女の胃袋だって、ワタシほどじゃないにしろ、今ごろキリキリと小さな悲鳴をあげているに違いない。
というか、むしろ普段は少食なくらいの未来でさえ、こんな有り様になってしまっているのだ。普段から人の何倍も食べて生きてきたワタシが、今まで倒れずにここまで来れたということは、もういっそ奇跡に等しいことなんじゃないだろうか。
ただでさえ、今こうしている間もずっとお店の方から漂ってくる、お肉の焼ける香ばしい匂いは殺人級の威力で、いますぐにでも何か食べ物にありつきたいとワタシの胃袋は悲鳴の大絶唱をしている最中だった。
もう……限界だよ……死んじゃう……。ぎぶみーかろりぃー……。
「『焼き肉』という罪深い食文化を何のリスクもなく満喫するためには、女の子はこれだけの苦労を支払わなきゃいけないんだよ? 女の子の身体はそれだけ繊細なんだから。ほら、ちゃんと真っ直ぐ歩いて響」
「うぇぇん……」
焼き肉に行こうと提案したのはワタシだけど、せめてワタシにはちゃんとした食べ物を与えて欲しかった。さすがにお茶漬け一杯だけじゃあ、ちっとも満たされやしない。今まで感じたこともないようなあまりにひどい空腹感に、すでに思考もろくにままならず、目の前にいる未来の身体さえも美味しそうだと思ってしまっている自分さえ居るくらいだった。
……すごく柔らかそうだ。いやいや、待て待てワタシよ。さすがに今の状況はヤバイよ。
「ちゃんとゴムの緩い下着も履いてきたし……これでもう、何も恐れるものなどないわっ」
「全力全開が……過ぎる……ッ。ぐふぅ……ッ」
キリリと凛々しい表情を浮かべて、いざ焼き肉屋さんへと臨もうとする未来に、身体を支えてもらうようにしながらやっとワタシは、待ちに待った食事場への敷居をくぐったのだった。
「――お待たせしましたぁ。バラエティ豪華絢爛トライバーストセットになります」
一人が抱えてやっとなくらい巨大な平皿を、店員さんがワタシ達の座っていたテーブル席へと持ってきた。
皿の上にはまるで金銀財宝と見紛うほどの、キラキラとリッチな赤みが輝いているお肉が、これでもかというほど綺麗に盛り付けられて並べられている。
『きゃあーッッ!!』
そんな絶景を前に、未来と二人で声を揃えながら、ワタシ達は黄色い悲鳴を遠慮なく漏らした。
「ごゆっくりどうぞー」
店員さんの『えっ、女の子二人でこの量を頼んだのかよ』という異質なものでも見るかのような目線など一切気にも留めず、ワタシはテーブルの真ん中に取り付けられていた網焼きグリルへと向き合うと、
「はやくッ! ねぇ、はやく焼こうよ未来ぅッ! もう無理だよッ! これ以上焦らされたらワタシ、生のまんまお肉に噛り付きかねないよッ!」
と、対面に座った幼馴染を急かした。
「もう、焦らないの響。お肉には美味しく焼くための順番ってものがあるんだから」
未来は冷静にそう言うと、焼き肉用のトングを手に持ちながら、慎重にお皿の上に盛られたお肉の種類を吟味していた。
「うぅぇぇー!? もう全部焼いちゃおうよッ! ドバーッて! お肉の絨毯ッ! 見渡す限りのお肉の地平線だよぉッ!」
「ダメだよ。そんなことしたら、それぞれ食べ頃の焼き加減を見るのが大変になっちゃうじゃない。せっかく食べても、味に集中出来ないんじゃ、本当のお肉の美味しさは楽しめないわ」
「うぐっ!? うぅ~……でもでもぉ……ッ」
「はいはい、心配しなくてもちゃんと全部焼いていってあげるから、そこで良い子にお座りしといてね」
「まさかのワンコ扱いッ!? えぇ、ひどいよ~みくぅ~!」
たくさんのお肉を前にしてすっかり落ち着きを失ってしまっているワタシとは対照的に、未来はそう言いながら涼しい顔で、トングを使いながら皿の上のお肉の一つを掴んだ。そして静かに、火の点いたグリルの網の上へと並べていく。
じゅう――と、お肉が焼けて脂の滴る、なんとも耳にまで美味しい音が辺りに響いた。
もうその音でご飯がイケるんじゃないかと思って、すでに届いていた自分の分のどんぶりによそわれたご飯へと箸が伸びそうになったが、すんでのところでその衝動を抑え込んだワタシ。
まだだ……ッ! もう少しだ……ッ! ここまで来たんだから、お肉と一緒にご飯をかきこまなきゃ勿体ないよぉ……ッ!!
「最初に焼くと、まだ温度に馴染んでいない網にお肉が焦げ付いちゃったりするから、最初に焼くお肉はなるべく薄めで、かつ脂がよく出るものが良いんだよ」
だから焼き肉の、最初のお肉といえばコレ――そう言って、未来が選んだのは。
「食感と、噛むたびに溢れる美味しさが魅力の牛タンだよ」
「きゃぁ~~~ッ!」
自分と未来の分のタレ皿を用意しながら、ワタシは今か今かとそのときを待ちわびる。
牛タンといえばレモン汁だよねッ! すぐに焼きあがるそれはなんともスピーディで、お腹がペコペコで入店してきたワタシ達の胃袋の中へ、すぐさま飛び込んできてくれるなんともよく出来た子だッ!
「はい、出来たよ響」
「待ってましたぁ~……ッ! ふぁぁあ、いただきますぅッ!!」
片面15秒、裏返して10秒。未来の完璧なテクニックによって焼きムラのない、綺麗な焼き色で仕上がった牛タン。
熱を極力逃がさないようにレモン汁へとさっと通して、口の中へ投入すれば。
「――ッ、ふぅ、んぅ~~~~ッッッ!!!」
コリコリとしたタン独特の歯ごたえ。そして、今までその薄いお肉の中のどこにあったのか不思議なほど、じゅわじゅわと湧き出すように溢れてくるジューシィなお肉の脂。
ほどよく火の通ったタンの柔らかさは絶妙で、コリコリの歯ごたえは適度に残しつつも、舌の上で溶けていくようなしっとりとした食感を演出している。思わずジタバタとテーブルの下で両足をバタつかせてしまうほどの、圧倒的な美味しさだ。
「はぐっ、はぐもぐんぐッ……くぅッ――ぁ、ぁあ~~……ッ!」
すぐさま白米をかき込んだ。なかなか箸が止まらない。
噛めば噛むほどタンから際限なく生み出されてくる旨味と、白米の優しい風味とが混ざり合って、目の前で火花がバチバチするような力強い美味しさがワタシの身体を駆け巡っていく。そして。
「んぅ~……っ、おい、しぃい……!」
自分の分を口に入れて、未来。
普段からずっと穏やかな顔をしていることの多い彼女には珍しい、ふにゃっと力の抜けたようなゴキゲンな笑顔。
蕩けたような、うっとりとした恍惚の表情。わかる、わかるよ未来ッ! こんなに美味しいモノ食べちゃったら、誰だってそうなっちゃうよね! ワタシなんて焦らされすぎたせいなのか、ちょっと泣きそうにすらなっちゃってるんだよ!
「ね――ねぇ、もっとッ! もっと焼いちゃお未来ッ! もうワタシ達の前に障害なんてないんだよッ! なにもかも忘れて、今日は思う存分食べまくっちゃおッ!」
「う、うん……ッ!」
せがむように言って未来を急かすと、照れたような顔になって未来が頷いた。目の前にはまだまだ盛られたお肉の山と、自分の分のどんぶりご飯。まるでその全てが、ワタシに早く食べてくれと語ってくるみたいだった。
こうなったら食欲開放全開ッ! ハートの全部で行っちゃう以外ないんだよぉッ!!
ワタシたち二人は、まったくの同じタイミングで同時にごくりと喉を鳴らしたのだった。
「次のお肉は――サーロイン。ロース肉の王様ね……って!?」
「な、なんと美しい霜降りのお肉ぅ……ッ!? さすが豪華絢爛トライバーストセットだね、未来……ッ!」
「こ、こんなの私たちみたいな学生が食べたら、バチがあたっちゃうかも……いや食べるけど!」
今まで見たこともないような贅沢な霜降りのお肉を前に、きゃあきゃあとはしゃぎ合いながら、いまだ知らないその未知の味へと期待を膨らませて、テンションを上げるワタシと未来の二人。
生唾を飲んだ後、未来がおそるおそるといった調子でトングを手にとって、その霜降りお肉を掴んで網の上へ慎重に持っていった。
「えっ……それ――何をしてるの、未来ぅ?」
すぐには焼き始めずに、網の上でまるでしゃぶしゃぶをしているような動きで、お肉を何度か往復させている未来を見て、不思議に思ったワタシが思わず尋ねた。
「こうすることによって、お肉のサシが網と馴染んで焦げにくくなるんだよ。それに脂身が溶けて、焼いた後の甘みがさらに増すの」
「へぇ~~ッ! さすが未来だねぇ!」
網の上に載っていた時間はほんの僅かで、ささっと火を通す程度にとどめた未来が、焼きあがった極上のサーロイン肉をワタシのタレ皿へ入れてくれた。タレに浸かった途端、キラキラと浮き上がってきたそれは、まるで宝石のような輝きだった。
「はい、出来たよ」
「おっほぉ~~ッ!! まるで肉汁がダイヤみたいに見えるよぉ~……ッ! これがテレビなんかでよく見る、スーパーじゃあ滅多にお目にかかれないお高いお肉の存在感……ッ! ごくっ、いただきます……ッ!」
「……えへへ、私もっ」
「は――ぐっ、ぅ、んぅッ!!!? ふぁ、ふぁにふぉれッ!? お肉がトロけるぅ!?」
「はふ……ん――ぅ~~~ッ!? ふ、ふぁぁ……」
噛むというより、もはやほどけると言ったほうが正しいのではないかと思うほどの、柔らかさを極めたような食感。
トロトロと溶け出した脂と肉汁は、甘辛いタレと混ざり合うと、えも言われぬ幸福感をいっぱいにワタシ達の頭へと伝達してきてくれた。
甘みの強い肉汁。そして、ふんわりと鼻へ抜けていく、ほのかながらも香ばしいしっかりとしたお肉の風味。
舌の上で溶けていくほどの高級なお肉を、まさか自分が味わう日が来るだなんて……! あぁ、すぐに消えていっちゃうのがもったいないよッ! もっとゆっくりしていってぇッ!?
高級なお肉の美味しさに二人でメロメロになりながら、すぐに自分たちの取り皿の中は空っぽになってしまった。
「柔らかいお肉もいいけど、今度はそろそろしっかりとしたお肉らしい食感がウリのお肉にいこうかな。カルビはどう?」
「カルビッ!! カルビといえばご飯の最強の友だよッ!! これはもうおかわり確定だねッ! いまのうちに次の分のご飯を注文しとかなきゃッ!」
「えっ、もう食べ終えちゃったのそのどんぶり……?」
ビックリする未来をよそに、机の上に置かれていた注文端末を手に取って、ご飯の追加オーダーをしたワタシ。
タンとサーロインで、早くももうワタシのどんぶりご飯は残り少なくなっていたのだ。これでは次のカルビさんを相手取るには少し、いやかなり心許ない。
これじゃあカルビさんに失礼というものだよッ! 満足にかき込めないだなんてッ! ワタシの胃袋という名のバビロニアの宝物庫は、まだまだ開ききったままなのだぁッ!
ワタシはさっそく二杯目のご飯が来るのを、今か今かと待ちわびるのだった。
「ねぇ、知ってた響? 実はカルビとひと口に言っても、その基準は少し曖昧だから、今じゃ『カルビ』っていうメニューそのものが無くなっちゃったお店も増えてきているんだって」
「えっ、そうなのッ!? じゃあ、もともとカルビって呼ばれてた子達は、いったい今なんて呼ばれてるんだろ……?」
「ううん、バラ肉とかマクラとか……今では高級なお店になるほど、部位の名前で呼ぶことが多いんだって。そもそもカルビはアバラ骨の周りについてあるお肉のことだから、豚肉でいうところのスペアリブのことだよ」
「はぇ~~ッ!」
知らなかった。さすが物知りなワタシの幼馴染だ。というか焼き肉についての知識なんて、どこで覚えてきたんだろう……。ん、待てよ。そもそもそんな脂ギッシュな知識、十代の女子が持っていて平気なものなのか……?
それとも、ただワタシが世間知らずだというだけなのかも……ううん、今度クリスちゃん達とかにも聞いてみよぉっと。
「はい、それじゃあ焼くよ。焼くときはなるべくお肉を動かさないこと! お肉の脂は繊細だから、何度もひっくり返すと網の下に落ちていっちゃって、風味や味が落ちちゃうからね」
「はぁーいッ!」
未来の焼き肉講座を聞きながら(なんと幸せな響きの講座なのだろうか。これなら毎日だって受けたいよ)、お肉の色が鮮やかに変わっていく様子をわくわくと見守る。
「とにかく大事なのは、焼きすぎないことだよ」
そう言って、すぐに網の上のカルビは焼きあがると、ワタシの取り皿の上へと未来が置いてきてくれた。
お肉の焼けた、香ばしい匂い。表面では肉の脂がパチパチと弾けていて、すでに目で見ているこの時点で味がするんじゃないかと思うほど『美味しい』景色だった。
さっきまでとは打って変わって、今度はたっぷりとタレに絡める。
行儀が悪いといつもならばきっと怒られるけれど、ここなら未来だってお説教はしないはずだ。ポタポタとジューシーに滴ったそれを、どんぶりのご飯の上で受け止めながら、大きく開けた口で贅沢に頬張った。
「はぁあ――むッ! っぐ、むむぅッ!? ぅ、きゅ~~~~……ッ!! はぐはぐッ!」
「む、ぐ……はふ、……っは……ふ。はぁ~、おいしぃ……」
またもや恍惚な表情を浮かべる未来さん。ワタシは白米をかき込むので忙しくて、幼馴染のそんな貴重なシーンをじっくり眺めることが叶わないのが、少し残念に思えてしまうほどだった。
しっとりした歯触り。さっきまでのお肉よりも厚めにカットされているというのに、中までちゃんと火の通ったそれは、なんの抵抗もなく一度で噛み切れると、噛むたびにまるで美味しさそのものが零れていくかのように、じゅわじゅわと溢れんばかりの肉汁を放出していた。
サーロインとはまた違った、コクのある香ばしい甘み。白米をどれだけ後から口の中へと頬張ってみたところで、その圧倒的な存在感が薄らぐことは一切ない。
すなわち、どこまでもご飯が進んでしまう実に恐ろしい威力だった。
「み、みふッ! ふぉいふぃいッ! ふぉふぇ、ふぉいふぃいふぉッ!!」
「もう、口いっぱいに食べ物を入れながら喋らないの。美味しいのはわかったから。はぁ~……お肉って、どうしてこんなに美味しいんだろ……」
……これでカロリーさえ無かったらなぁ。
未来がまた少しだけ黒いオーラを纏って呟いていた。ううん、未来はどちらかと言うと細身なほうなんだし、むしろ華奢なくらいなんだから、もう少しご飯を食べても平気だと思うんだけどなぁ……。
もぐもぐと白米を咀嚼しながら、幼少期からずっと一緒に過ごしてきた幼馴染は、そんなことを密かに思うのだった。
「次はコレね……ハラミ肉よっ!」
「ハラミ――って、うぇえ!? この重厚な分厚めカットはもしかしなくてもステーキ肉ぅッ!? くっはぁーッ、眩しくって直視が出来ないよぉッ!!」
「ハラミ肉は他の部位と比べ、程よい柔らかさと程よい食感の、そのどちらもが味わえるマルチな美味しさがウリのお肉……っ! そのうえ他のお肉に比べ、カロリーが低いという圧倒的な強みを逆に活かして、ステーキカットにするだなんて……このお店、わかっているわねッ!」
いつもお淑やかな未来はいったいどこへ行ってしまったのか。ワタシと同じ謎のハイテンションを見せながら、未来は期待の滲んだ顔で、網の上にその重厚なお肉を並べていった。
網の中心ではなく、温度が均一な網の周りに置くことによって焼きムラを抑えるテクニック。さすがはワタシの幼馴染だ。
「うぅ~……はやく焼けないかな~、待ちきれないよ~……ッ」
「そんなに急がなくっても、お肉は逃げていったりなんかしないよ? 落ち着いて響。この焼き上がるのを待っている間も、焼き肉の醍醐味なんだから」
「そうだけどぉ~~」
いますぐにでもお肉とご飯をかきこみたい衝動に駆られつつも、じぃっと我慢すること数分。
ほどよく焼き目のついたそれを、未来がトングと焼き肉用のハサミを使って、一口サイズにカットしてくれた。
「……ッ!! ふ、ふぉぉおお……ッッ!!?」
「ふふっ、狙った通りのレア具合だよ……ッ! さぁ、熱いうちに食べちゃお響ッ!」
ステーキらしさを残すためにわざと太めにカットしたそれの断面には、まだほんのりとした紅みが残っていて、そこからまるで泉のように肉汁が染み出しているのが見える。
箸で持ったそれはずっしりと重たい質感で、ワタシはいちもにもなく口の中へとステーキを放り込んだ。
「はぐ、っん、ぐ、っむ――んぁッ!? な、なんてジューシィー……ッ!?」
「柔らか過ぎず固すぎない……っ! これがハラミステーキの持つ魔力……ッ! うぅ、私までご飯の手が止まらないよぉ……ッ!」
ステーキならではの、口の中がたくさんのお肉でいっぱいに満たされるという至上の幸福。
ほどよい弾力を保ちながら、しかしクセのない味わいが特徴的なそのお肉は、ストレートで淀みのない美味しさをワタシたちの舌へと真っ直ぐに伝えてくれる。
分厚くカットされたお肉だからこそ味わうことの出来る、お肉らしいしっかりとした噛み応え。それにより、相対的にお肉から溢れ出してくる肉汁の量も増えるので、幸せな味が口いっぱいにどこまでも広がっていく。
大好きなご飯を減らしてまで、今日という日に備えてきたワタシの胃袋コンディションは、途端にフル活動を始めているのか入れた端からすぐさま消化してしまって、もっともっと美味しいものを寄越せとさっきからずっと派手な音を立てながら喚いていた。
まるでどこまでも無限に減り続けるんじゃないかと不安さえ覚えながら、それでもまだまだこんなにも美味しいものを食べることが出来るという幸せに、ワタシの顔はだらしなく緩みっぱなしになるのだった。
「……あれれ~、未来ぅ~? そのお茶碗の中身、もう無いよ? ご飯おかわりしないのかな~?」
「うぐっ……、だ、だってぇ、ご飯を食べたらその分、お肉が入らなくなっちゃうから……」
「こんなに美味しいお肉なのに、ご飯と一緒に食べないなんてそれこそ勿体ないよッ! 今日は満足するまで食べてもいい日なんだよッ? 我慢しないで、ワタシと一緒におかわりしようよッ!」
「う、うん、そうだよね……って、もうご飯なくなっちゃったの響ッ!? 貴女さっきおかわりしたばっかりでしょ!?」
「でへへ、だってさっきから、ワタシの胃袋が天然の溶鉱炉みたいになっているみたいでぇ……」
「もう~。食べ過ぎて、後でお腹が痛くなっても私知らないよ……? う、うん……じゃあ、私も……」
「決まりだねッ! じゃあ、さっそく注文っと~ッ!」
注文端末を操作しながら、未来と二人分のご飯を追加注文するワタシ。未来はさっそく次のお肉を焼くべく、お箸からトングへと持ち代えていた。
「ね、ね、次はッ!? 次はなんのお肉~ッ!?」
「こーら、慌てないの。まだまだ豪華絢爛トライバーストセットは残ってるんだから。えっとねぇ――次は」
上機嫌に網の上にお肉を並べていく幼馴染の姿を見ながら、ワタシはまだ見ぬ、焼き肉たちの美味しさと魅力に胸を躍らせながら、もう一度大きく喉を鳴らしたのだった。
「ふぇー……食べた食べたぁー……うぅ、歩きづらいよぉ」
「いくらなんでも食べすぎだよ響。店員さんがビックリしてたじゃない」
帰り道。寮へと続く帰路へ着きながら、行きの時よりも何倍も重くなったような気のする身体を引きずって、未来と二人で笑いながら歩いていた。
さすがの未来さんも、久しぶりの満腹感と美味しいものを食べた幸福感によって、すっかりゴキゲンなようだった。表情がいつもより明るい。
「だぁーって、美味しかったんだもん……」
「うん、美味しかったね」
すっかり暗くなっていて、帰り道の空には、星がちらほらと出ていた。
二人で手を繋いでそれをぼんやりと眺めながら、ゆっくりとした足取りで並んで歩いていく。
「また食べにこよーね、未来ッ!」
「ふふ、また三日間も、あのお茶漬け生活をするの?」
「う、うぐッ!? で、出来ればあんな苦行はもう、今回限りにしてもらえると……次は、ワタシが餓死しちゃうカモ」
「えー、どうしようかなー」
「うわーん、未来がイジワルだー」
調子を合わせながら、二人でふざけ合ってくすくすと笑い合う。
美味しいものを食べている間も幸せいっぱいだけれど、こうして誰かと一緒に笑い合う時間も負けないくらい、幸せな気持ちになるからワタシは大好きだった。
美味しいものを食べながら、それを大好きな人と一緒に「美味しいね」と言い合いっこする。
それがワタシ――立花響がなによりも大切にしたいと思える、なによりも大好きなことなのだった。
「ねぇ、みーく」
「ん、なぁに。ひびき?」
「……本、破っちゃってごめんね」
「いいよ。こちらこそ、冷たく言ったりしちゃってごめんなさい。そして、こんなに美味しいものご馳走してくれて、どうもありがとう」
「……えへへぇ」
「……うふふ」
だからこそ、ワタシたちの帰り道はこうしていつも――幸せで満ちているのだった。
「――それはそうと、響」
「ほぇ? どうしたの未来?」
「帰りは走ろっか。少しでも摂ったカロリーは減らさないと」
「うぇええッ!? えッ、で、でもでも食べたばっかりで急にそんなに動いたら、お腹が痛くなっちゃうんじゃ……」
「ダメだよッ! こうしている今だって、私たちの胃袋は大量のカロリーを持て余しているんだよッ!? 少しでも運動して燃やしてあげないと、すぐにぜんぶ脂肪になっちゃうんだからッ!」
「そ、そんなぁ……」
「ほら急いで響ッ! でないと置いて行っちゃうよッ!」
「わわわッ、ちょ、ちょっと待ってよ未来~ッ! ひぃ~ん、お腹が重くて上手く走れないぃ~! これだから元陸上部ってぇ~ッ!」
おしまい。
誕生日だというにもかかわらず、いきなり土下座から書き出すという暴挙。少しでもひびみくっぽさが出せたら良いんですが……。
まぁ他カップリングに比べて、文字数が倍近くに膨れ上がっているので、そこで393には許してもらいたいと思います(笑)
そしてどうやら自分の書く未来さんは、わりとノリの良い子みたいです(笑)
ちょっとだけおまけというか次回予告(になればいいな)
???「あーぁ、なんか腹ァ減っちまったなぁ。訓練の後だから仕方ないんだろうけどさぁ」
???「うぅん、でもなぁ。一人でなんか食いに行っても味気ないし……困ったねぇ」
???「――そうだッ! どうせならあっちへ渡って、翼たちと飯でも食いに行くか!」
???「……あぁでも、あっちの翼はライブとかで忙しいだろうから、もしかしたらそう都合よく会えないかもなぁ、うーん」
???「いや、ちょっと待てよ? ……ちょうど良いのが居るじゃないか。食いっぷりが良くて、なおかつ可愛くて、なんたってアタシにとっての妹みたいなヤツがさッ!」
???「よぉーっし!そうと決まればさっそく実行だ!弦十郎のダンナに頼みにいかねぇとなッ!!」ダッ