今回からラブライブ!サンシャイン!!本編突入となります。
それに伴い、サブタイトルの方を少し変えさせていただきました。
恐らく仮面ライダーファンなら見覚えのあるものになっていると思います。
お楽しみいただければ幸いです。
それでは、どうぞ。
桜の花びらが舞い踊り、これから始まる新生活への期待と不安で胸をいっぱいにした学生達が、次々と浦の星学院の門をくぐる。
一歩校内に入れば、部活に所属している上級生による新入生へ向けた部活勧誘が盛んに行われていた。
サッカー部、野球部、バスケ部、吹奏楽部など、その他にも様々な部活が1人でも多くの新入生を入れようと必死で勧誘をしていた。
その群衆に紛れ、千歌と曜、そして悠も、勧誘に勤しんでいた。
「スクールアイドル部でーす!春から始まるスクールアイドル部ー!」
『スクールアイドル愛』と書かれたハチマキを頭に巻き、メガホン持ってミカン箱の上から声を張り上げる千歌。
メガホンを持っていない右手には、「スクールアイドル部」と書かれた名札が握られていた。
よく見ると、「部」という字の下には、ばつ印が上書きされた「陪」の字。どうやら間違えて書いたようだ。
悠と曜も笑顔で千歌手作りのチラシを配っていた。
肝心の新入生達はというと、チラシを受け取りはするものの、千歌の演説に耳を傾ける者も、足を止める者もいない。
とうとう周りから人が消えてしまい、千歌はガックリとうなだれてしまった。
「千歌ちゃん?」
「千歌ー?生きてるかー?」
悠と曜が声をかける。
「...スクールアイドル部でーす...。」
「え?」
「何?どうした?」
千歌が言ったことがよく聞こえず2人は聞き返す。
すると千歌は涙目になっている顔を上げ、
「...今、大人気の...、スクールアイドルでぇぇす!」
と、叫んだのだった。
※※※
「はぁ~。全然駄目だね~。」
「まぁ、最初はこんなもんだよ。」
ミカン箱に座って落ち込む千歌を、悠が慰める。
が、それもあまり意味を成さず、千歌は大きな溜め息をついた。
「あちゃー。結構、落ち込んでるね。」
「そうだな。ところで、曜。お前、水泳部の方は良かったのか?」
「うん。他の子達がやってくれてるから。」
千歌が設立を画策しているスクールアイドル部は現在千歌と悠の2人だけ。
曜は既に水泳部に所属しているため、加入が難しいのだ。
「まぁほら、これからだよ。千歌ちゃん。」
「...うん。」
曜も千歌を慰めるべく声をかけるが、それでも千歌は落ち込んだままである。
すると、
「ん?」
千歌の目が何かに留まった。
何かと思い悠がその先を見てみると、そこには新入生と思われる2人の女子生徒が居た。
2人で談笑しながら歩いている。
片方の少女は赤毛をツインテールに結っており、もう片方は黄色いカーディガンを羽織った栗色の髪の少女だった。
恐らく世間一般に見ても、美少女と言って差し支えのない2人組である。
「美少女...。」
千歌の隣に座った曜も思わず呟いていた。
「なぁ、千歌。あの2人のこと、勧誘してみたら...って、もういないし。」
悠は千歌にそう提案するが、千歌は既にその場からいなくなっていた。
慌てて曜も追いかけていき、ミカン箱と悠だけが残される。
「はぁ。いっつも考えるより先に動くんだから。あの幼馴染は。」
やれやれとでも言いたげに、優しいひとりごとを呟いた悠は、何故か首を大きく右に傾けた。
すると後ろから、何者かによる蹴りが、空を切って頭の横に繰り出された。
悠はその足を右手で掴み、そのまま蹴りの主に話しかける。
「よぉ、レイナ。やっぱりお前も受かったんだな。」
「おかげさまでね。というか、アタシが落ちるわけないでしょ。」
「どうだかな。だってお前、『NEVER』の活動も並行して受験勉強してただろ?」
「確かにそうだけど、夏からは窓口しかやらなかったから楽だったよ。...ところで足、いい加減離してくれる?」
言われた通りに手を離し、悠はレイナと呼んだ少女の方に改めて振り返った。
少女の名は、羽田レイナ(はねだ れいな)。今年の新入生であり、悠とはNEVERというグループで活動を共にしている仲である。
「というか、賢治が受かったのにアタシが落ちたら京介や剛に何を言われるか分かんないよ。」
賢治、京介、剛とは、2人と同じ『NEVER』、いわゆる助っ人集団のメンバーである。
主な活動内容は、あらゆる部活や団体の助っ人であり、その度に報酬として金を徴収している。
が、さすがに仕事は選んで活動しているので、今のところ危ないことはしていない。
5年前に悠が、同い年の泉 京介(いずみ きょうすけ)と立ち上げ、そのまま現在も悠をリーダー、京介を副リーダーとして活動を続けている。
とはいっても、あまり褒められたものでないことには変わらないが。
レイナと賢治は4年前に加入した最年少組であり、京介は何かとレイナに厳しく、口うるさい。
だが、何かと面倒を見てくれていることは分かっているので、レイナもうるさいとは思うものの、別に京介を嫌ってはいなかった。
「そういえば、新しい依頼が来たよ。」
依頼。その一言を聞いた瞬間、悠の目の色が少し変わった。
「何だ?」
「野球。京介と剛を指名で、今度の日曜。2人とも空いてるよ。」
「報酬は?」
「1人につき5000円。」
そこで悠は少し考える。
金のことになると周りの声も聞こえないくらい真剣になるのだ。
「必ず勝たせるから、2割アップしてもらえるように交渉してくれ。」
「はいよ。」
そう言ってレイナはスマホを取り出し、メモ帳アプリにメモを打ち込む。
打ち込みながら、
「ところで、さっき一緒に居たのって千歌さん達だよね?」
と、悠に聞いた。
「ん?あぁ、そうだけど。」
「何してたの?」
「千歌の勧誘の手伝い。」
レイナはやはりスマホを操作しながら聞き返す。
「千歌さん、何か部活やってたっけ?」
「今年から新しく立ち上げるんだよ。お前もどうだ。スクールアイドル。」
「考えとく。」
打ち込みが終わったのか、スマホを鞄にしまいながら、レイナは答えた。
そしてそのまま、
「それより、大丈夫なの?生徒会長に連れていかれてたけど。」
と悠に衝撃の事実を言った。
「......は?」
悠は慌てて周囲を見渡す。確かに、千歌も曜も、さっきの新入生2人組も、居なかった。
やけに静かだと思っていたが、居なくなっていたとは。
悠は大きく溜め息をつき、頭をガシガシと掻く。
「そ、そんなぁ~!」
聞き覚えのある声がどこからか残念そうに叫んでいるのが、悠の耳に届き、悠はもう一度先程よりも大きな溜め息をつくのだった。
※※※
同時刻、沼津のとある海岸。
ランニング中だった一般男性が、死体となって発見されていた。
一見ただ倒れているだけに見えた男性だったが、通報した第一発見者の女性が触れた瞬間、男性の身体中に小さな棘がびっしりと生えたのだという。
驚いた女性は慌てて警察に通報した。
かなり錯乱しながら。
だから彼女は気がついていなかった。
その一部始終を少し遠くから眺めていた、異形の視線に...。
いかがだったでしょうか。
今回登場したレイナや名前だけ出てきた京介。
恐らく見覚えのある方もいるのではないでしょうか。
彼らは今後も活躍させる予定ですので、今後も是非、読んでいただければ幸いです。
それでは、次回。
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