だいぶ遅くなってしまいました。すみません。
言い訳は、見苦しいのでしません。
遅くなってしまいましたが、楽しんでいただけたら、幸いです。
それでは、どうぞ。
静岡県警察沼津中央署。そこにある『超常犯罪課』に所属する刑事である、課長の
「―というのが、今朝、被害者の遺体が海岸で発見された時の状況です。」
ホワイトボードの前に立って説明を終えた古山が、会議室に居る面々の顔を見渡す。
「....古山。」
「はい、頼堂さん。」
「被害者の身元は判明していないのか?」
「あ...すいません。分かっています。」
頼堂の周りの空気がピリッと、少しだけ緊張した。
「何故、説明しなかった?」
「...すいません、忘れていました。」
「忘れていた?」
頼堂は古山をギロリと睨んだ。
その眼光の鋭さと、低い声から滲み出る威圧感に、古山は一瞬ビクリと肩を震わせる。
かつて捜査一課に居た頃は、「頼堂にかかればどんな容疑者でも30分ですべて吐く」なんて言われたほどの恐ろしさだ。
「お前、そうやって先週も情報を言い忘れて、俺に怒られたよな?」
「は、はい....。」
涙目で肩を震わせながら返事をする古山。
頼堂は背後に鬼が見えそうなほどの剣幕でさらに古山に語りかける。
「その時に二度と忘れないって言ったのは...嘘だったのか?」
古山はあまりの恐ろしさに最早返事すらできなかった。
「はい、ストップ。頼堂君。それ以上やると古山君が何も話せなくなる。」
マリアが頼堂の肩に手を乗せて頼堂を落ち着かせる。
「...すいません。課長。」
「君もたまに抑えが利かないときがある。取り調べの時なら大いに結構だけれど、あんまり日常でやりすぎると敵を増やすだけだから、気をつけたまえ。」
微笑を浮かべながら頼堂を諭すマリア。
その微笑みは名前の通り、
「はい。」
「古山君も、今後同じミスをしないように。」
まだ涙目の古山は首をブンブンと数回縦に降って、マリアの言葉に同意の意を示した。
「分かったならよろしい。城山くん。」
「...はい。」
「被害者の身元については、君も調査していたね。古山君の代わりに、私と頼堂君に説明してくれないか。」
「...了解しました。」
そう言って城山は立ち上がり、古山に代わってホワイトボードの前に行く。
すれ違い様に、古山が申し訳なさそうに会釈してきたが、城山はそれを黙殺した。
城山は女性だが、同期の古山よりも身体的にも精神的にも勝っている部分が多い。
だが、女性にしては少し低い声をコンプレックスに思っているらしく、口数が少ない。
それにより、古山とは警察学校時代からの仲だが、業務連絡くらいしかしていなかった。
「今朝発見された遺体のDNAから、沼津市内の大学生である
「なるほど。大学生か。」
マリアが相づちを打つ。
「はい。さらに、先週発見された同じような変死体の身元も判明しています。そちらの被害者の名前は、
「ということは、犯人は彼らの同級生の可能性が高いということか。」
頼堂が素直な感想を言う。
「確かに、その可能性が高いですね。俺、被害者達の身辺を洗ってみます!」
古山が意気揚々と立ち上がって宣言し、会議室を出ようとする。
が、マリアに止められた。
「いや、古山君と頼堂君はもう一度現場に行ってもらいたい。犯人の目星は私と城山くんでつけておく。」
「分かりました。ほら古山。俺たちは現場だ。」
「了解です!」
結局はなんとかして先ほどの名誉挽回をしたいだけなので、古山は頼堂と共に今度こそ会議室を出ようとする。
「あぁ、頼堂君。」
「どうかしましたか?課長。」
マリアが、今度は頼堂を呼び止めた。
「『彼』にも協力を依頼してあるから、状況説明とかは任せるよ。」
そう言われたとたん、頼堂が露骨に顔をしかめ、大きな溜め息を吐いた。
「...またですか。しかもなんで俺に。」
「仕方ないだろう。本人が頼堂君の方がの方が気が楽だと言っているんだ。」
「だとしたら、尚更嫌ですよ。どうせまた、こき使われるだけじゃないですか。」
一体、頼堂は何を嫌がっているのか。
気になった古山が、マリアに聞いた。
「あの、課長。」
「どうした?」
「いや、その『彼』って誰ですか?」
「あぁ、そうか。新任の君たちは知らないんだったな。」
そう言うとマリアは、いたずらっぽくウインクし、
「この街の涙を拭う、白いハンカチさ。」
と言い、いまだに顔をしかめたままの頼堂は、
「めんどくさい奴だ。」
と言って、また溜め息を吐いた。
古山と城山の頭上には、クエスチョンマークが、大量に浮かんだのだった。
※※※
海岸線を走る一台のパトカー。
それに乗っている警察官は勿論、頼堂と古山の2人だ。
ハンドルを握る頼堂は、ずっとむすっと、不機嫌な顔をしている。
例の『彼』に会うのがよほど憂鬱なのだろう。
「あの...頼堂さん。」
「ん?何だ?」
おずおず、といった風に古山が頼堂に話しかけた。
「その『彼』って、 そんなに嫌な人間なんですか?」
「ん~、どうだろうなぁ。」
「は?」
頼堂がとぼけたように言ったせいで、古山はすっとんきょうな声が出てしまった。
「とりあえず、悪いやつではないさ。でもなぁ...俺は苦手なんだよ。」
「な、なるほど...。」
「あぁ、苦手だ。ああいう、変に大人びたガキは。」
「ガキ?」
思いがけぬワードが飛び出たので、古山は思わず聞き返す。
「ん?言ってなかったか?今から会いに行くそいつは、まだ17歳の高校生だぞ。」
「17歳!?」
古山が驚くのも無理はないだろう。
自分の上司―しかも、所属する部署のトップである課長―が一目置き、捜査情報を公開する相手が未成年だったとは、夢にも思わないだろう。
「そ、そんな少年マンガみたいな高校生、本当に居るんですか!?」
「残念ながら、居るんだなぁ。」
軽い口調で、古山の質問に答える頼堂。
怒らせさえしなければ優しい、気さくな人間なのだ。
「まぁ、あいつの推理力がピカイチだってのも捜査に協力してもらう理由の1つではあるが、それとは別の理由もあるんだがな。」
「別の理由?それって、」
『何ですか?』と、古山が聞こうとしたときだった。
『二人とも、聞こえるか?』
署に居るマリアから、無線で連絡が入った。
「こちら、頼堂。どうかしましたか、課長。」
『頼堂君か。緊急事態だ。君たちが今居る辺りから1キロ程先の三津海水浴場で、ドーパントが暴れているとの通報が入った。すぐに向かってくれ。』
「了解。」
無線が切れる。
頼堂は一気に険しい表情になり、パトランプを点け、サイレンを鳴らし始めた。
古山も真剣な眼差しで、前を見つめる。
配属されてから初めて、ドーパントと対峙するのだ。
緊張しないはずがない。
「...古山。」
「はい。」
緊迫した空気の中、正義を貫く警察官の顔になったが2人が、会話をする。
「分かっているな?最優先すべきは、」
「一般市民の命、ですよね。」
「そうだ。よく分かっているじゃないか。」
通報を受けた海水浴場に、到着した。
「行くぞ。」
「はい!」
拳銃を片手に、パトカーから降りる2人。
すると、砂浜を見た古山の目が、驚愕に染まる。
―2体!ドーパントが、2体も!
そこには確かに、2体の異形が居た。
薔薇のような見た目の、生体的な異形。
白い体躯に、黒いマントを羽織った黄色い複眼を持つ異形。
白い異形は、サバイバルナイフのような武器で、薔薇の異形を何度も切りつけている。
―戦っている?
その光景は、古山にとっては未知の世界だった。
「ぼさっとするな!古山!」
頼堂に一喝され、我に還る古山。
「すみません!」
「あそこのドラム缶の陰に、一般市民が2人隠れている!救助に行くぞ!」
「はい!」
異形達に銃口を向けながら、古山と頼堂は砂浜を走って進む。
「大丈夫か!?」
ドラム缶にたどり着き、そこに居た2人の少女に、頼堂が聞く。
「はい!!大丈夫です!」
オレンジ色の髪の少女が大きな声で答え、隣に居る紅い髪の少女は、首を縦に振った。
「良かった!さぁ、早くこちらへ!」
古山がオレンジ色の髪の少女の腕をとり、パトカーへ連れて行こうとする。
しかし、
「駄目!ユウ君が!」
と、少女はそこを動こうとしなかった。
「ユウ君?その子はどこに?」
離れたところに隠れている友人でも居るのか。
古山はそう思い、少女に聞いた。
すると、少女はあろうことか、白い異形を指差した。
「まさか、ドーパント!?」
「違います!ユウ君はドーパントじゃありません!」
「でもあそこには、2体のドーパントしか居ないじゃないか!」
いくら友人だとしても、メモリを所持することは犯罪だ。
その、ユウ君とやらは古山達が逮捕しなくてはならない。
「頼堂さん!」
「何だ?」
異形達の戦いを見ていた頼堂がこちらを向く。
「この子の友人が、白いドーパントみたいです!」
「だから!ユウ君はドーパントじゃないです!」
古山の言ったことを強く否定する少女。
「お嬢さん。あの白いのと知り合いか?」
頼堂がこちらに近づき、少女に聞く。
「はい!!」
少女は、頼堂をまっすぐ見つめ、答えた。
頼堂も、少女をジッと見つめる。
すると、不意にニヤリと笑った。
「どうやら、本当みたいだな。」
そう言って、少女の頭にポン、と手を置いた。
突然の頼堂の行動に、古山と少女は驚く。
「安心しな。おじさん達も、あいつの知り合いさ。」
「え?頼堂さん、どういうことですか。」
古山に聞かれた頼堂は、振り返って、異形達の戦いをもう一度見る。
「おらぁぁ!!」
「ぐっ...!!」
白い異形が、薔薇の異形の腹にアッパーパンチを見舞う。
あまりの痛みに、薔薇の異形が膝を着いた。
「どうした?もう終わりか。」
2メートル程距離をとった白い異形が、挑発的に言う。
その言葉に薔薇の異形は、怒りを覚え、うなり声をあげながら立ち上がる。
右の手のひらを白い異形に向けると、そこから何枚も薔薇の花びらが飛び出し、白い異形へと飛んでいく。
花びらは白い異形に当たった瞬間、それぞれが小さな爆発を起こした。
砂が巻き上げられ、白い異形の姿は隠れる。
勝利を確信したのか、薔薇の異形は右手を下げた。
「...こんなのが本当に、効くと思ったか?」
砂煙の中からそんな声が聞こえたかと思うと、薔薇の異形の目の前に、白い異形の拳が迫っていた。
「はぁっ!!」
気合いの雄叫びと共に、白く、鋭いパンチが、薔薇の異形を襲う。
薔薇の異形は避けられるはずもなく、背後の海へと飛んだ。
「これで終わりだ。」
そう言うと白い異形は腰に着いたスロットに、白いメモリを差し込んだ。
「さぁ、地獄を楽しみな。」
『ETERNAL!!MAXIMUM DRIVE!!』
電子音声が鳴り響くと同時に、白い異形は飛び上がった。
「...古山。」
「はい。」
黙って戦いを見守っていた頼堂が、口を開いた。
「あれが、そうだ。」
「え?」
白い異形は回転し、ドリル状のエネルギーの渦を纏いながら、薔薇の異形に向かって行く。
「あいつが、例の『協力者』だ。」
「あいつが?」
どんどん距離を詰める白い異形。
薔薇の異形は、そこから動く体力も残っていないようだった。
「あぁ。いけ好かなくて、めんどくさい。」
白い異形の足が、薔薇の異形の腹に衝突する。
「この街の涙を拭う、白いハンカチ。」
「『仮面ライダー』、エターナル。」
頼堂がそう言ったと同時に、薔薇のドーパントが大爆発を起こした。
エターナルの蹴りから送り込まれた過剰エネルギーに、身体が耐えきれなかったのだろう。
その爆風を背に受け、エターナルはマントを靡かせる。
そのまま無言で、サムズアップした右手を横に突き出し、親指を下に向ける。
その姿はまるで、
いかがだったでしょうか。
まだAqoursのメンバーが全員揃っていないので、早々になんとかしなければと思っています(笑)。
また、例によって、下手くそな戦闘描写を入れましたが、前よりは良くなったと、個人的に思っています。
ご指摘がございましたら、感想欄や、作者のプロフィールページ(?)に貼っておいたTwitterのアカウントでも、受け付けております。勿論、感想も待っておりますので、気軽に書いてもらって大丈夫です。
次回はなるべく早く更新したいと思っています。
楽しみにしていただけたら、幸いです。
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