貴方、生きているのでSANチェックです。   作:トメィト

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貴方、生きているのでSANチェックです。

 

 人によって物の見方は違う。

 よく聞く話ではあるが、十数年という短い人生の中でもそれを痛いほどに感じることができた。

 人生経験、いや、育った家庭によって常識とは簡単に姿を変え認識の違いを生み出す。これによって物の見方に差が出てくるのだと思う。まぁ、みんな違ってみんないいみたいな言葉もあるし、周りに合わせろーな雰囲気を前面的に肯定するわけではないけれど。

 

 長々と話してしまったが、ここで俺が言いたいことはただ一つだけ。

 

「貴方は今日からウチに所属することになったわ。拒否権はありません。既にご両親と話はつけてあります」

 

 魔術がどうたらとか、人類の未来がどうたらとかいう話を聞かされた後によくわからない極寒の地に連行された事は認識の違いなんてレベルでは済ませられないと思うんだ。

 

 

 

 人理継続保障機関・カルデア。

 その場所は科学と魔術が交差して人類の決定的な危機を回避する為の組織……みたいな説明を拉致実行犯である女性らしき人から教えられた。勿論拒否権などはなかったので無理矢理である。向こうもなんか聞くのが当然みたいな反応だったし、これもきっと認識の違いってやつなんだろう。魔術師って響きだけでロクでもないイメージがあるし。

 

 だが、その力は本物だったようだ。ライターもなしに手から炎出せてた事もあり、それは確実だろう。ということは、俺はどうあがいても逃げることなんてできないということであり、俺に残された選択肢はここで不本意ながらも働くことだけだった。……ま、就職活動を飛ばすことができたと前向きに考えることにする。

 

 

 そこから俺は魔術という未知に対しての勉強を始めた。只でさえ、その存在をここ最近知ったということ、その他諸々のハンデを背負っているのだが、例の女性とその近くにいつもいる男性は容赦がなかった。課題が頭おかしいレベル。こんなの一般人、それも拉致して来た人間にするような仕打ちではないと思う。

 けれど悲しいかな俺に選択権はないのだ。こんな一年中雪景色なところに放置なんてされたら死ねる。必死に魔術とやらを勉強してなんとか半人前一歩手前くらいまで成長できた頃………安心なんぞさせるかと言わんばかりに事件が起きた。

 

 カルデアの機械……えーっと、確か……シバとかいうものが異常を感知したらしい。具体的なことは疲れた頭では理解できなかったよ。

 取り敢えず、マスター達を集めてその異常が発生したところに向かうとこの組織の所長が言っていた。で、一際優秀なAチームの皆さんがレイシフトしようとしたところで管制室爆破。中大破。ついでにシバ作動、レイシフト開始となったらしい。

 

 さっき仲良くなった一般枠のマスター君から聞いた話である。これからグランドオーダーとか言う人類を救う旅に出るらしい。ついでに俺も。

 …………ま、マスター適性があるならしょうがないね。ぶっちゃけ俺がいても大して役には立たないと思う。

――――――人によって物の見方は違う。

 

 先程言ったことだが、これは当然俺にも当てはまる。かっこ物理ってつく感じになるけど。

 

 

 いや、いい加減引っ張るのはやめよう。

 つまり何が言いたいのかと言うと……、

 

 

「あ、おはよう。今から食事?もしよかったら一緒に食べないかな?」

 

 

 親しげに話しかけてくれる声が背後から聞こえてくる。

 まるで胃袋の中にいるような通路を視界に収めながら、声のする方に身体を向ける。

 するとそこにはどくどくと、脈動する赤い肉塊がとても親しげに食事に誘って来ていた。

 

 これが俺にとっての彼、藤丸立香の姿。

 そう…………俺の視界は眼に映るものを全てSAN値埋葬できるレベルの物に置き換えるフィルターがかかっているのだ。

 

 うねうねと俺の隣に来た彼に食事をとることを了承しつつ、思う。

 

 

 

 やっぱ俺にマスターは無理だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

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