生まれながら周りがクトゥルフ式に見える障害を持っている。ただ異常なのは視覚だけであり、他の五感は正常。
意味もわからず赤ん坊になり、目に映るもの全てがクトゥルフ式になっていたことから生まれて間もなく発狂した。だがその経験からか、本人の精神力は並大抵のものではなく、大抵の物事には動じない。神話生物が現れても確定1D10くらいにはタフ。ぶっちゃけ、精神がぶっ飛んだだけともいう。それに付随して魔力もそれなりに質のいいものを持っている。
俺の産声はSAN値チェック失敗による発狂からだった。これに関しては仕方がないと許して欲しい。赤ん坊の頃特有の悪い視界の中でも、脈動する壁や、俺のことを愛おしそうに抱きしめ、語りかける肉塊に遭遇したのだからその反応も致し方ないと思う。
尤もお蔭で今では慣れたということだろう。周囲のものを見てもSAN値チェックする必要のない精神力を身に付けることが出来たのだが、それは置いておこう。
こんな半生を歩んできたわけだけど、当然この事を周りに伝えてはいない。だって、周囲のもの全てが豚の内臓をぶちまけたかのようなスプラッタで構成されて、人が全てうねうね動く肉のように見えると説明したところで同意を得られるわけではない。逆に精神病院へ連れて行かれるだけだ。この症状は精神的なストレスはまるで関係ないので無駄に終わるだけだし。
だからこそ、人類最後のマスターの一人としての役割を全う出来ないと理解していたとしてもそれを伝える手段なんてないのだ。
俺にできることはただ一つ。この人類最後の砦にて村八分にされないよう立ち回ることだけだ。
〜〜
「あっ、先輩! 乾さんも、おはようございます」
「おはよう、マシュ。これから真琴君と一緒に食堂に行くところなんだけど……」
「是非、ご一緒させてください!」
「どうぞー」
お二方から許可を頂いたので先輩の隣に移ります。先輩は特に問題もなさそうにしていました。一応、昨日は特異点Fを乗り越えたわけですし、先輩の体に不調が出ていないか心配していたのですが問題なさそうですね。
安心しながら私はお二方の会話に参加します。気を使ってくれているのでしょうか、この後に出てくる料理の話題でした。少々常識に疎い私としてはとてもありがたい事だと思います。
そのような事を考えながら私は先輩と話しているもう一人のマスター。乾真琴さんの事を考えます。
彼は先輩と同じように魔術などの知識が無い状態で所長が連れてきた方です。以前聞いた時は死にそうな思いをして習得したと話してくれました。
先輩よりも先にカルデアへと来たのでそれなりに話したことがあります。その経験から言って彼は少し変わった人でした。今まで魔術師や技術者の皆さんとしか関わらず、経験の浅い私ですがそれでも彼は変わっていると思います。
まずは、人の目を見て話すことができないということが挙げられます。羞恥からくるものであれば納得はできます。しかし、乾さんは身体はしっかりと話している人へと向けてくれるのです。目を見て話すことができない、というよりは焦点が合っていないという方が正しいかもしれません。
けれど、彼が盲目という話は聞きません。メディカルチェックをしたドクターもそのようなことは言っていませんでした。少し気になりますが、本人が直接言わないということであれば何か知られたくない事情があるのだと思うので、なるべく気にしないことにしています。
他にも、他の方は中々会うことができないフォウさんとも頻繁に会っているらしいです。これは本当に驚きました。あのフォウさんが仲よさそうにしている姿を見ることができるとは思ってもいなかったです。これも変わっているということに含まれます。
……こうして考えてみると先輩のことや乾さんのこと、殆ど知りませんね。これから私は先輩のサーヴァントとして戦うことになるのですからお二人とお話をする機会を設けていただいた方がいいかもしれませんね。
まずは目標として、朝食で和やかに会話していきたいと思います!