貴方、生きているのでSANチェックです。   作:トメィト

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一日に二話更新して、自ら発狂していくスタイル。


『そして、世界は平和になったのでした』

 

 

 

 

 

 

 気が付いたら、コフィンの中に居た。

 急いで周りを確認してみれば、そこには先程まで居たソロモンの姿はなく、見慣れた管制室の光景が広がっていた。マシュ、兄貴、清姫、ブーディカさん。()()無事に帰ってくることができたようだ。

 

「よかったぁ……。皆無事に帰って来て………ソロモンが来た時はどうしようかと思ったけど。正直、僕らに興味がなくてよかったよ」

「本当……に、そう……だね……?」

 

 ドクターに言葉を返しながら、疑問を覚える。俺達は本当にソロモンに会って無事に帰って来たのだろうか。今思い返してみても……うん、ここに居るので全員だと思う。

 

「ともかく先輩。今日はもう休まれては?」

「………うん。そうしようかな」

 

 マシュに言われてきっと今日の疲れからか、頭の整理がついていないのだろうと思う。何処か身体も重いし、ぐっすり寝れそうかな。

 

 スタッフの皆にお礼を言ってから、管制室をでて自分の部屋へ向かう。けれど、歩いている最中、どうしても引っかかるのだ。

 俺が本当に人類最後のマスターなのか。誰かもう一人此処に居たのではないか。……考えては見るもののどうしても頭に靄がかかったように思い出せない。

 

「……うーん、気持ち悪いなぁ……」

 

 気にはなるものの今の俺ではどうしようもないと悟り、簡単に着替えと身支度を整えてからベッドに潜るのだった。

 

 

~~

 

 

「………」

 

 立香の無事と帰還に喜びを覚えると同時に、やる気を上げるカルデアのスタッフ達。彼らは今回の件を通して、改めて自分達の敵である存在の強大さを知った為、少しでも立香の負担を減らすために奮起を始める。そこに一片の迷いはなく、不純な感情もない。誰もが純粋に立香の助けになりたいと思っている。

 

 けれど、その中に一人だけ心の底で考え事をしている人物が居た。

 

「………」

 

 カルデアの技術顧問であり、サーヴァントでもある万能の天才。レオナルド・ダ・ヴィンチである。

 彼女はカルデアのスタッフの様子を見て、今起きている出来事を確認していた。そして、優秀な頭脳を持つ彼女は既に何が起きているのかを把握している。

 

「……カルデアから乾真琴が消えている……」

 

 そう。カルデア最後のマスターである藤丸立香と同じくマスターとして四つの特異点を越えて来た人物。乾真琴。不自然なほどにスタッフやサーヴァントから警戒され、第三の特異点に至っては未知の化け物から立香達を救った人物。

 

 彼は確かにこのカルデアに在籍していた。彼が召喚したネクロノミコンは未だに倉庫に封印してあるし、彼が使っていた部屋には使われた形跡が残っていた。そして言っては何だが彼はこのカルデアの嫌われ者だ。彼がいるだけでスタッフの士気は下がっていただろう。

 しかし今はそれがない。彼らはまるで乾真琴の存在なんてなかったかのように―――いや、本当に居ないと思っているのだろう。彼らだけならともかく真琴と仲良くしていた立香まで彼のことについて触れようとはしなかった。カルデアスタッフの登録欄にもあった彼の名前は削除されている。

 

 考えられる可能性とすれば、魔術王たるソロモンが何かをした、ということだろうが……それにしたって自分だけ記憶が残っていることが不自然だと彼女は思う。

 

「だとすると、これは魔術王以外の仕業なのかな……?」

 

 発言してから、本当にそんなことができる存在が居るのかと改めて考えてみる。

 

「……いや、居たね。可能な存在が」

 

 思い出すのは第三の特異点で遭遇した未知の化け物。その外見はおぞましく、この世のものとは思えないほど醜悪だった。けれど、あんな生物は知らない。今まで見たことがない。いや、もしかしたら知っているのかもしれないが、真琴のこと同様に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――ふふっ」

 

 万能の天才。どうしてそう呼ばれるようになったのか。才能があったから? たぐいまれなる頭脳があったから? それらも要因だろう。しかし、最も重要なのは―――知りたいという探求心。挑もうとする精神。それこそが、今のダ・ヴィンチに繋がっている。

 

「さて、君はいつ帰って来てくれるのかな? 真琴君」

 

 ある意味、彼の者も外れ者なのだろう。

 カルデアの頼れる技術顧問は、他のスタッフ達に悟られることなく口の端を吊り上げるのだった。

 

 

~~

 

 

 沈む。沈む。沈む。

 まるで引っ張られるように……奥へ奥へと、引きずり込まれていく。

 

 止まる気配はない。

 止められる気配もない。

 光も感じない。

 体の感覚もない。

 

 あるのは、自分が誰なのかという疑問と耳に聞こえる声、そして視界に広がる化け物達。

 

 

 貌がなく、三つの足を携えた怪物。

 カイトのような翼を生やした怪物。

 まるで某ラーメン店のメニューのような姿をした怪物。

 三つの赤目を携えて漂う怪物。 

 etc.etc.

 

 

 どれもこれもが、一目見るだけで正気を持っていかれそうになる。けれど目を逸らすことはできない。そもそも逸らし方がワカラナイ。何処が目でどこが耳なのかそれすらも分からない。

 

 けれど、聞こえてくるのだ。声なき声で。囁くのだ、目の前のソレラが。

 

 

――――お前の役目は終わった。

――――私達の元へ還ろう。

――――そして、眺めよう。

――――彼らの行く末を……。

 

 

 言葉は耳に心地いいものだろう。

 けれど、隠しきれていないのだ。内なる愉悦が。どうにも気に障るのだ。人類(俺達)をおもちゃだと思っているその態度が。

 

 別に人類全員が強いなんていうことはない。むしろ、人類は弱い。人と違うものは排除するし、上に行くのではなく他人を蹴落とすことを常とする。大部分はそうするだろう。けれど、アイツだけは違う。特別な才能がなくても精神でねじ伏せてこれまでやって来た人間を知っているから。一括りにしておもちゃになんてされてたまるものか。

 

 

 

 

 感覚のない腕に力を込める。

 下半身に力を入れて、あるはずのない地面を踏みしめる。

 深呼吸をして態勢を整える。

 

 これからやることに意味はないのかも知れない。

 もう既に俺は死んでいるのかもしれない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

―――――()()()()()()()

 

 

 

 思い出したのだ。

 自分が何者なのかを。どんな人生を送ったのかを。けれど、

 

 

「俺は――――」

 

 

 

 

 




そう。それでいいのです。
貴方はそうでなくては面白くない。だからこそ私達は貴方のことを見ているのですから。


さぁ、見せてください。
さぁ、楽しませてください。


私達に、ニンゲンの強さを見せてください。


それだけが、私達の願いです。
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