貴方、生きているのでSANチェックです。   作:トメィト

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信用1
説得65


幕間の物語

 

 

 第一特異点を何とか乗り越えた次の日。俺は少しだけ不安になっていた。まだまだ始まったばかりの旅だけど、敵として出て来たのは其々信念を持った英雄や伝説上の生き物、そして元々無辜の民だった人もいた。

 無事に成し遂げたと喜ぶことはできなかった。少なくともまだあと6回これらを繰り返すのだから。

 

 ……本音としてはそう思っていても、俺は最後のマスターの片方としてカルデアに居る。こっちが不安な姿を見せて仕舞えば、今限界一歩手前で頑張っている職員の人に余計な心配をかけてしまうことになる。サーヴァントとして召喚に応じてくれた英霊達にも情けない姿は見せられない。こっちとしてはいつ見限られてもおかしくないほど、普通の人間なのだから。

 

 そんなことばかり考えていると、妙に落ち着かなくなった。こんなところは見せてはいけないと思い、今日1日はゆっくり部屋で過ごすと皆には伝えてある。

 

 けど、往々にして一人になっていいことなどある訳もなく、1人になった所為で余計にマイナス面に想像が膨らんでいくことに気がついた。

 

「あ"ー、やめやめ!」

 

 頭を振ってマイナス面に傾いていた考えを追い出す。情緒不安定かもしれない。これはどうしたものか、と思ったところで俺と同じ立場に置かれている彼のことを思い出した。

 

「行ってみようかな」

 

 確か彼も元々は魔術とか知らなかったとマシュから聞いているので、もしかしたら愚痴など言い合えるかもしれない。あとはこれを機会に仲良くなれればいいかな、なんて少し打算を交えながら俺は真琴の部屋へ向かうことにした。

 

 

〜〜

 

 

「藤丸君? おぉ、部屋に人が来るなんて珍しい……いいよ、入って」

 

 許可を貰ったので、開いた扉を抜けて部屋の中へとお邪魔する。中は自分に割り当てられた部屋と変わらない間取りで、荷物などもとくに置かれてはいなかった。俺より長くカルデアに居るはずだけど、それにしては荷物が少ないイメージがあった。私物も見当たらないし。

 

 不躾ながらキョロキョロと周りを見回していた俺に、真琴は苦笑して「18禁の本はないよ」と言った。

 そんなもの探してない、と言葉を返しながら、ここに来る前友人達と交わしていたノリを思い出して少しだけ懐かしい気持ちになる。

 

「ベッドの上に座って待ってて。今お菓子と飲み物用意するよ」

「あ、お構いなく」

「取っておいてもドクターが食べちゃうから、遠慮しなくていいよ。俺甘いものとか苦手だから」

 

 と、言いながら真琴はお盆の上にお茶と茶菓子を乗せて俺の隣に座った。

 

「食べないなら素直にあげたら? ドクターにさ」

「人の部屋に侵入してサボるような人にはちょっと……」

「真琴もやられたんだ……」

「この部屋が開くまでの仮部屋として使ってたよ、今は藤丸君が使ってる部屋はね」

 

 意外な事実に驚く事と同時に共通の話題ができた事で、話がしやすくなった。

 当初の目的とはちょっとだけ違ったが、どこに住んでいたとかゲームは何をしていたか、見ていたアニメなどの話で盛り上がった。言っても彼は知っているだけで、内容までは詳しくなかったけれど。でも、そう言った所謂普通の会話ができることが何より安心した。その時だけは、人類最後のマスターではなく、藤丸立香であることができた気がしたから。

 

「久しぶりに普通のことを話した気がするよ」

「まぁ、ここに来たらそう言った話はしないだろうからね。いるのは真面目な技術者と鼻に付く態度の変態(魔術師)しかいないから」

「辛辣っ」

 

 もしかして、彼も色々溜まっているのかもしれない。顔を少しだけ引きつらせつつ、俺は一度間をとってここに来た真の目的である話題を出した。

 

「ところでさ」

「どうしたの」

「第一特異点の時、どうだった……?」

 

 自分でも漠然とした質問だった。いや、質問ですらなかった。でもこれ以上の言葉を投げかけられる気がしなかったので一先ず真琴の出方を見ることにした。

 

「どうだったかと言われれば……大変だった、としか言いようがないかな。まぁ、俺は殆ど何もしてないけどね。……むしろこっちがやられそうになったくらいだから」

 

 思い出したかのように溜息をつく。

  確かに彼は何かと英霊の皆に狙われている気がする。第一特異点で出会った英霊は例外なく彼のことを程度の差はあれども警戒していたように感じた。俺自身としては彼の人柄も知ってるから不思議でしょうがないんだけど。

 

「それは本当に、ドンマイ」

「そんな言葉で片付けていいレベルじゃなかったんだよなぁ……」

 

だろうね。

 

「おっと、このままだとまた話が脱線しそうだから話を戻すね。で、多分藤丸君が言いたいことはあの特異点で今後のマスターライフに大きな不安を持った。このままでは夜も眠れにぃ、ということかな」

「なんで若干謙虚なナイトが入ったんですかねぇ。こっちは真面目なんだけど?」

「……なら真面目に話すけどさ。別に心配いらないと思うよ」

「えっ」

「優れた知識がなくても、特別力が強くなくても、何事にも動じない精神がなくても……問題なんてない。だってこの旅は始まったばかりだからね」

「…………」

「それに、優れた知識を持った人、武力に長けた人、何事にも動じない人は召喚した英霊が補ってくれる。別になんでもかんでも藤丸君-----------立香がやる事はないのさ」

 

 ここで言葉を切って、真琴は俺に視線を固定した。彼のガラス玉のように澄んだ目から、意識を背けられなくなる。

 

「大丈夫。少なくとも、<<君に>>力を貸す気であるからこそ、彼らは召喚されたんだ。だからこそ、君は君のまま進んで行けばいい」

「……………………そっか」

 

 

 すっと、肩の力が抜けた気がした。体の中に巣食っていた重みが少しだけ軽くなり、視界もはっきりとしているように感じる。もちろん全ての重みが消えたわけではないけれど、すぐにパンクするようなことはなさそうだった。

 

「なんかありがとう。同じような立場に置かれている真琴にこんな相談しちゃって」

「俺は能天気だから、全然大丈夫。それに、そうして立ち止まって考えることができるのはいいことだよ。変に慣れると後戻りできなくなることがあるからね」

 

 

 俺からのお礼を貰った真琴は、そう言って静かに笑ったのだった。

 




感想で魔神柱やラフムについての見え方などがありますね…………いやー、そこまで続くかな(白目)
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