貴方、生きているのでSANチェックです。   作:トメィト

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お気に入り500突破しました。なので私に1D6のSAN値チェックです。
本当に、こんな話を読んで下さりありがとうございます。


貴方、夢を見たのでSANチェックです。

 

 

 

 

 

 

 

 目を閉じて、眠りに入るとたまに聞こえてくる音がある。それはまるで厳格な男性のような呼びかけであり、蠱惑的な女性の誘いでもある。無垢な子どもの笑い声であり、多くを経験してきた老人の語りのようでもあった。内容は理解できない。そもそも言葉ではないのかもしれない。耳に音として届くには届くのだが、其れだけだ。

 

『■■■ ■■■■! ■■■ ■■■■■!』

 

 けれど、ここ最近は違う。

 これが音ではなく言葉であると理解でき始めている。

 不可思議な音色の雑音ではなく、意味のある言葉であると、脳内が判断し始めている。正直、視界に映るもの全て肉塊に変化させる程度の能力を持っている脳内に正気なんて期待していないから、この夢もその一環の可能性は否定できないけどね。

 

 体感的にはそろそろ目覚める頃だろう。昨日聞いた話では第二特異点の座標を見つけ、レイシフトが可能になるほどには安定したようだ。ということはこれから第二特異点の攻略に動き出すことだろう。

 戦力は増えた。立香が召喚に成功し、今ではクー・フーリン以外にもジークフリートとそのおまけでついてきた清姫がいる。戦力的には申し分ないと思うのだけど、相変わらず礼装しか引けない糞雑魚なめくじの俺も現地に向かうことになっている。今回もなんとかして立香を無事に帰ってこれるようにしないとね。本人は悩んでいたみたいだけど、英霊三体を召喚して協力を貰える時点で彼は大した人物だと思う。

 だからこそ、彼だけは守り切らないとカルデアは一気に瓦解する。実質、彼が最後のマスターだから。

 

 

 

 音―――否、言葉が聞こえる。

 

『■■■ ■■■■! ■■■ ■■■■■! ■■■ ■■■■! ■■■ ■■■■■!』

 

 まるで、水中に漂っている中で海上に引っ張られるような感覚と共に意識が確かなものに変わっていく。今日も、狂った世界で生き延びよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――私は、何処にでも居る。

 

 

 

 

 

 最後の最後で怖い言葉が届くなんて、聞いてないんですけど。

 

 

 

 

 

~~

 

 

 

 

 やって来たのはローマ。ここではオルレアン程人外が闊歩しているわけではなさそうだった。とても見慣れた肉塊がうねうねとうごめきながら集団同士で激突する場面を見ることができた為にそう考えたのだが、皆の反応を見る限り間違いではなさそうである。

 

 そこで俺達は一人の女性が指揮している部隊に助太刀をすることになった。相手は普通の兵士。サーヴァントを率いている立香達の敵ではなく、難なく撃退。俺達は助けた女性――――ローマ帝国第五代皇帝ネロ・クラウディウスに客将として世話になることになった。声の高さから言って、ネロ・クラウディウスは女性のようだ。あの暴君ネロが女性ということに驚きを隠せないキリエライトさんや立香。気持ちは分かるけど、アーサー王が女性だった時点でもうなんでも許せるよ。俺は男女問わず肉塊だから実感わかないけどさ。

 

 話を戻そう。

 彼女の話では真のローマ帝国なるものが現れて、現ローマ帝国が危機に陥っている為にこちら側で戦ってもらいたいということだった。色々な情報を含めて彼女の味方をすることに決めたカルデアは、奪われた領土を取り戻したり、敵として立ちはだかっている歴代ローマ皇帝を倒したりしてこの特異点を過ごしていた。

 

 現在、幾重もの勝利を越えたことで民衆の士気を高めるためにちょっとしたお祭りを開いている最中である。ネロ・クラウディウスは戦争中であるが故にそこまで派手な祭りではないことを詫びていたが、立香やキリエライトさんにとってはそうではない。また、一緒に戦ってくれた英霊たちもこの活気を好ましく思っているようだった。

 

「……余は、この光景を。何時までも続くローマを護る義務があるのだ。そなたらには感謝している。あの時の助太刀が無ければ、この光景を再び見ることはなかったであろう」

 

 彼女は、そう言っていた。

 立香達もその発言に同意して、より一層今後の活動に意欲的になるだろう。

 

 

 確かに美しいと思う。

 困難の中にあっても生きることを諦めず、日常を謳歌する。普段と変わらぬ反響を見せ、自慢の商品を高らかに謳い上げる。すれ違った人と他愛ない話をして、走り回る子ども達に心配の声をかける。

 そこには昔から人々が織りなして来た幸せの光景があった。こんなものをみせられては護るしかないだろう。

 

 俺も、そう言った。

 彼らと共に笑いながら、この光景を護るための手助けをしたいと口にした。

 

 

――――けれど、本当にそう思っているのだろうか。

 

 

 耳に聞える音は活気に満ち溢れ自然と元気が貰えるようなものだろう。鼻を通り抜ける匂いは生活を感じさせ、食欲を刺激するだろう。彼らにとっては愛おしい人の営みが映っていることだろう。だが、人によってものの見方は違うのだ。

 

 確かに聞こえる。活気に満ち溢れた喧騒が。

 確かに感じる。生活を感じさせ、三大欲求を刺激する匂いが。

 でも、見えないのだ。人々の愛おしい営みが、目に見える形では。

 

 いつでも視界を埋め尽くすのは肉塊と、動物の内臓をぶちまけたような通路と建物だけ。文字通り見えているのは者ではなく物なのである。

 

 今では慣れた。視界を開けるたびにサイコロを振ることなく、この光景こそが自身の現実であると受け入れることができた。今まではそれでよかった。でも、人理修復という偉業の重荷を背負いながらも、どれだけ世の中が尊いものかを学んでいく二人を見ていると、慣れたはずのこの視界を恨めしく思ってしまう。

 

 

 

 きっと、こんなことばかり考えているからサーヴァント達からも信頼されないのだろう。そう思うと物凄く凹む。

 ネロ・クラウディウスを先頭に突き進むカルデア勢の最後尾に位置している俺は歩みを進めながらも空を見上げる。

 相変わらずそこに在るのは満点の星空ではなく赤黒く敷かれる空と、別の生物に見える月のみ。

 

 

 

 

 普段はなんとも思わないその月が今だけは俺を見て笑っているようで、とても腹が立った。

 




見えるものが異なれば、立ち位置は異なる。
理解できないモノがあれば、遠ざける。
物事には理由がある。
彼が好かれることにも、彼が疎まれることにも平等に……。


因みにこのカルデアでは清姫が嘘探知機として重宝されています。主に主人公に対しての。
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