原作で金薔薇が初登場した時から好きでした!
え?合法金髪ロリB(ナンデモナイヨ……グシャドゴ)
『この子は生まれながらにして天才である』
それが、母と父が抱いた最初の印象だった。
実際その子は、母の腹から生まれた際に内包した魔力量は魔女と呼ばれた母以上。
何よりそう思わせた一番の理由は母と父が一流の魔術師である事にある。
母と父が一流故にあるモノ。
経験と才能を見向く眼である。
その子は母と父の予想通り—————否、予想以上の『天才』だった。
幼初期からその天才性は異常の領域。
言葉より先に魔力を理解し———―
文字より先に魔術を理解し———―
僅か十年という歳月で
さらに優れた才は魔術だけにとどまらず、武にまで及んだ。
まさに文武に優れた鬼才だといえるだろう。
十を過ぎ、幼かった容姿は男らしく逞しくなり、顔立ちは世の女性が見たらカッコいい部類に入るだろう。
数年後。母を父を超え、結社の幹部だった母から指輪を貰い受けた。
一流の自動人形、一流の
彼がこの現世に生を授かり十八年。僅か十八年の歳月で全てを手に入れた彼は渇き切っていた。
魔力も
魔術も
自動人形も
金も
地位も
女も
全てを手に入れる事が可能になってしまった今
彼は渇き切っていた———————
彼は絶望してしまった。この『世界』に。
幼い頃から何をしても上手くいった。
上手くいった。そう—————
この『世界』は可能性で出来ている。
それは人の数だけあり、もしかしたら可能性とは無限なのかもしれない。
だが、果たして彼はこれまでの人生に可能性を見出す場面などあったか?
可能性とは選択である。
人は生きていく限り選択に迫られる。
この選択は時に自分の人生を大きく左右する事もある。
しかし、そんな大きな選択はそうあるものではない。
服はどれを着おうか?
今日の夕飯はどうしようか?
どの本を買おうか?
更には右足を最初に踏み出して歩くか、左足を最初に踏み出して歩くか、フォークを右手で持つか、ナイフを左手で持つか、無意識化で行われる選択もある。
数えればきりがない程の選択。
普段は意識しない選択。
しかし、人はその些細な選択を考え、悩み、時に苦悩する。
なら彼はどうだ?
確かに彼は他の人間同様選択の中で生きている。
生きている限り選択に迫られる。
選択には二種類がある。
失敗と成功である。
それを決めるのは本人の意思だが、この二つは選択において必ず訪れる結果である。
彼が子供の頃は魔力量と異常性を抜けば好奇心旺盛なただの子供だった。
魔力に魔術に興味を持ち、ただひたすらに技術を吸収した。
初めて自動人形を作ることに成功した夜は興奮のあまり眠れなかった。
念動と剣術を組み合わせた戦闘方法を東方の書物から発見し書物庫で新しい事に挑戦できると心踊った。
挑戦しては成功し、初めての事でも成功した。
そして、母から指輪を貰い受けて初めて疑問が生まれた。
『失敗とは何か』
人間は選択の際、失敗と成功の二つの可能性がある。
人間は失敗を選択しない様、考え、頑張り、努力する。
だが彼はどうだ?
何をしても成功し、初めての事もある程度やれば出来てしまう。
『失敗とは何か?』
最初はそんな事を考えたが馬鹿馬鹿しいと笑った。
だが幹部になり、全てが上手く行く今、彼は渇き切っていた。
彼は潤いを求めた。
失敗と成功が平等な場所。
生と死の平等。
———————『戦争』である。
非情で無情な世界。
破壊を撒き散らしながら迫り来る敵。
形さえ定かではない肉の死体。
夥しい血。
人を自動人形を殺す(壊す)瞬間。
彼は興奮した。
子供の頃に置いてきたあの高揚感。
ここ(戦争)では全てが平等だ。
死が訪れる。
弱肉強食。
シンプル故に単純。
強き者が生き残り。
弱き者は死ぬ。
何より彼はこの死が漂う世界を、戦争を楽しんでいた。
だがまだ充たない。
何かが足りない。
そう——————彼女に出会うまで。
☦ ☦ ☦ ☦ ☦ ☦
社交界。舞踏会。パーティー。呼び方なんてどうでもいいが、事情を知らない奴がここの会場にいるメンツは知るだけで殺されるレベルの顔ぶれだ。まあ、ここの警備システムはそこらの国の首脳よりも厳重だが。
服装は奇妙と言ってもいいだろう。中世を思わせる衣装を纏い、ヨーロッパ、ユーラシア、アジア、様々な国の衣装を身に纏っている。更には顔が分からないように仮面を着ける徹底ぶりだ。
斯く言う私も派手すぎず地味すぎない衣装を着ているが。
パーティーで無料で飲める高級ワインを嗜みながら、仮面を着けているならパーティーではなく仮面舞踏会かと、くだらない事を考えていた。
彼はこの会場にいる人物達に目を走らせながらある人物を探した。しかし、周囲を観察するが目的の人物は発見出来なかった。しかしながら此処にいるメンツの凄さが改めて分かる。中世の衣装と仮面で誰か分からなくなってるが、体格、声までは変えられない。例えば窓際のテーブルで話し込んでいる三人組はそれぞれ戦争中の国のトップ。この三人が今こうしてワインを飲み、話に花を咲かせてる間もそれぞれの国ではたくさんの人が死んでいる。
——————まあどうでもいいが。
反対のテーブルにいる二人組の女性が彼を見ながらひそひそ呟いている。本人は自覚してないが、仮面ごしからでも彼は女性を魅了していた。女性陣の方からダンスに誘えばいいのだがそれが出来ないでいる理由があった。
彼は女に興味が無い戦争好きとして有名だった。
そんな相手に声を掛ける勇気は女性陣には当然無かった。
本人は周りから何と言われているかは自覚しているつもりだ。
『戦争好き』 『戦闘狂』 『狂戦士』
人が耳にすれば褒められたものではないだろう。更には—————
『化け物』 『死神』 『死を振り撒く者』
最早人ではなくなっていると突っ込んでやりたい所だが言われても仕方がない事を
此処にいるメンツである意味浮いているのは彼だろう。
彼はこの様な催し物はあまり好かないタイプの人間だ。普通こういった場所では必ず幾人のグループに分かれ挨拶を交わしながら反吐の出る上品な会話を楽しむものだ。しかし、話し掛けるな、近づくなオーラ全開の彼に話し掛ける自殺志願者はいない。
では何故此処にいるのか?理由は簡単。
数年前魔術結社の幹部になったばかりの彼だが、いまだに他の指輪の所持者に出会ってないのが現状だ。円卓が開かれれば簡単なのだが、ここ数年開かれていない事から何時やるかは正確には決まってはいない様だ。
魔術結社の幹部—————化け物と言われても文句の付け様のない連中が彼を含め十人……母から指輪を貰い受けた彼は自分自身と同じ『化け物』に出会えると喜んだ。だが、此処数年間他の指輪の所持者に出会えないでいた彼は、普段は参加しないこの催し物に参加したのだ。
だが今回もハズレらしい。まあ、始めからそう簡単に会えないのは織り込み済みだ。ここ最近は戦争にも参加せず指輪の所持者を探しているのだから。そうこう考えにふけっていると何やら周りが騒がしくなっている事に気付いた。窓際に居た三人組も女性の二人組も他も面々も驚いた顔をしある一点を見つめていた。
そこには——————『魔女』がいた。
容姿から推測するに年齢はおそらく十四~十五歳。黒で彩られたドレス。フリルが大胆に重ねられたスカートは薔薇のように膨らんでいる。剥きだしの肩を、大きなリボンが飾っていた。これだけのメンツの視線を奪いながらその堂々たる佇まいで存在する彼女はまるで異世界の住人かの様な幻想に駆り立てられる。
気持ちが躍った。彼女から発せられる存在が空気を通し肌を刺激する。蜂蜜色の金髪、黄金の瞳を持ち、どす黒い瘴気を帯びている。その美しさは猛毒を持つ花のようで、女神とも天使とも捉えられるが、その表情からは人を値踏みするかのようで女神や天使よりやはり魔女がしっくり来る。
彼は放心しながら彼女に歩み寄って行く。気付いた時には膝を折り彼女の右手を優しく握り、親指に填められた指輪に口づけをしていた。彼女はそれに驚きつつ表情にはださず優しく微笑む。
「………なにか?」
その小さな口から紡がれた声はとても甘く、いつまでも聞いていたい衝動に駆り立てられる。
彼女の噂はよく耳にする、様々な噂が囁かれているが一言で言ってしまえば『戦争好き』。彼と同じ時期に幹部になった彼女は彼同様好くない意味で目立っていた。
片は戦争の黒き死神——————
片は夜の黒き魔女——————
魔術結社の幹部でこれだけ目立っているのはこの二人だけだろう。故に他の幹部よりも会いたかった。故に求めた。彼は自分同様『化け物』と呼ばれる彼女を焦がれた。彼女なら彼が求める答えを知っているかもしれない。
魔力も
魔術も
自動人形も
金も
地位も
女も
全てを手に入れる事が可能になってなお彼は渇き切っていた。この渇きを充たすにはどうすればいいのか。同じ化け物である彼女なら答えを知っているかもしれない。最初はただ彼女に答えを聞きたかった。彼女に会えなくても他の幹部にでも聞こうと考えていた。だが——————彼女に出会い砂漠のように乾燥していた何にかが水を飲んだかのように充たされた。
彼は彼女の透き通るほど綺麗な黄金の瞳に魅了されていた。小柄な容姿からは想像できないその存在感——————カリスマ性から目が離せなかった。
いつの間にか彼の胸にポッカリ空いた渇きが充たされていた。
彼は確信した。
彼女が答えその者なのだと。
彼はしっかりと彼女の瞳を表情を脳裏に刻みつけるため見つめる。
意識せず口が開いた。
「一曲……踊りませんか?」
それが、魔術結社<薔薇の師団>に属する十数人の<薔薇>と呼ばれる幹部の一人——————
金薔薇『アストリッド・セト』との初めての出会いだった。