三日目に襲撃。あの時灰薔薇は三日……一週間待ってやると言った。実際は一週間ではなく最初に言った三日が事実。もう一つ仮説を立てるなら黄薔薇が原因。今何らかの魔術的影響を受けている黄薔薇を抹消するための襲撃。
俺がこの屋敷に母から貰った呪の指輪を使用し転移した時母は何時使用したか解るようにしていた。黄薔薇にかかっている魔術も同じ類の可能性がある。
「今からフランスに向かう。アスト準備を済ましてくれ」
「何時でも行けるよう荷物はまとめてあるけど……どうやっていくの?」
「ビネット」
『はい。いつでも転移可能です』
ブラットレイ家は全ての部屋と廊下に十メートル単位で伝声管が設置している。これは初代キング・ブラットレイが暗殺などで家族が襲われても瞬時に駆けつけれるようもしもの為の連絡手段として設置した。それを有効活用して様々な情報伝達を伝声管に任せている。
「どこまでだ?」
『フランスまでは侵入に成功したのですが固定式転移魔術を設置するとなると首都から離れ北部に位置するナンシーまでが限界でした』
「上出来だ。しばし家を離れる母のサポートを頼むぞ」
『御意『あ、ラグちゃん!此れからお母さんねー』前線行かせてやるからちょっとは大人しくしてろや!!』
伝声管のフタを静かに閉じる。うん、ビネットよく(切実に)母に仕えてくれている。
「此処に居ろ……は無理か」
黄薔薇クレオは放っておいても付いてくる。ただ黒薔薇を助けたい一心で。
仕方ないとため息をつき自作の自動人形に黄薔薇を抱えさせる。
「<メタトロン><C-MOON>」
「はっ……ここに」
「……」
二体とも俺が制作した人形の中でも魔術回路が戦闘に特化している。<C-MOON>は命令を遂行するただの人形だが<メタトロン>は唯一感情を組み込んだ人形だ。
感情有り無しを観察するためだけに組み込んだはずが今では他の人形を統制するリーダー的存在になっている。
「お前たち二体を連れて行く。メタトロンはそのまま黄薔薇を」
「了解です我が
「……」
地下室の転移魔術まで走る。その最中アストが。
「……転移したら一度帰るわ」
「セト家にか?それは余りにも」
「無策?」
「ああ」
灰薔薇の戦力は未知数で底がみえない。対し黄薔薇は使い物にならないし二人の魔術師と自動人形二体のみ。その状況でアストが抜ければ戦力比は絶望的だ。だが——————
「メタトロンを同行させる」
メタトロンには飛行能力がある移動時間は短縮できるだろう。なによりアストも自分の自動人形が必要だ。一度ある魔術回路の相談も受けた事がある。あの魔術回路が完成すれば勝ち目はある。
「俺はパリに向かいつつ時間稼ぎをする。その間にアストは例の魔術回路を完成にくぎつけてくれ」
「……わかったわ、だから———」
地下室に到着し魔法陣に入る。視界が闇に包まれるが五秒程で視界がクリアになる。何処かの民家の倉庫に出る。
「———私が戻ってくるまで絶対に死なないで」
頬に柔らかく暖かい不思議な感覚が広がる。振り向くと顔を真っ赤に染めたアストがそこにいた。
そんな反応をされれば否応でも何をされたか解ってしまう。
不覚。まずは周囲の警戒が先だが硬直してしまった。けど——————悪くわない。むしろ可愛いと思った。アストにこんな一面もあるんだと思うと嬉しく感じる。
「任せておけ。けど……あまりにも遅ければ全部俺が片を付けるぞ?」
「ふふ……心配ご無用、絶対に間に合わせるから」
可愛く笑うじゃねーか。敵なら殺せばいいがこれにはかないそうにない。
「それじゃーまたな」
「ええ、また」
二人は背中を合わせると逆方向に向かい駆け出した。
☦ ☦ ☦ ☦ ☦
襲撃の数刻前。ラグナの母であるレイン・ブラットレイは執事長ビネットによって部屋を追い出され猫のように首の後ろを掴まれ絶賛廊下を引きずられていた。
「はーなーしーてー」
「うるさいですよ。そうですね……外に行きましょう」
「なんで!?」
「どうせ部屋に放置しても坊ちゃまの所に向かうでしょ?」
「当たり前!」
「だからです」
「なにが「だからです」だよ!いっつもビネットは口数が少ないんだよ!」
「わたくしが相手を務めますので坊ちゃまの話しが終わるまでの間、憂さ晴らしに付き合ってやろうというわたしの気持ちを察してください」
「本当に執事!?敬え!称えろよ!ワタシ、アナタノお・く・さ・ま」
「坊ちゃまにレイン様の年齢とおねしょの実談と『わたしおおきくなったらビネットのお嫁さんになってあげr』」
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!?????」
「うるさいですよレイン様。ブラットレイ家の女騎士たるものもっと淑やかにと昔から教育していたでしょう?そういえば自称永遠の十七s———」
「わかったから!わかったから私の黒歴史を思い出させないで!」
「それでは行きましょうか
顔のしわの分だけ苦悩があるというがこの執事長はしわくちゃの白髪おじーちゃんなのだ。それもそのはず、自称永遠の十七歳レインちゃんの子供の時からのお世話係件教育係を務めていたのが彼なのだ。
想像してほしい。息子ラヴのレインの子供時代は今と違い大人しかったか?当主になってからは当主らしい言動をしたか?答えは"否"だ。
あとは………………察してください。
レインの父——————先々代から仕えているビネットはこのブラットレイ家最年長者でありレインの暴走を止められる実力者の一人だ。
年齢的によぼよぼもやし歩くだけで骨折れる?くらいのおじーちゃん。のはずが、執事服がはち切れんばかりに膨れ上がり見ただけで筋肉質だとわかる鋼の肉体の持ち主。顔はしわくちゃおじーちゃんなのだからアンバランスすぎる。
そのまま正面玄関に到着するとビネットが怪訝そうな顔をする。
「どうしたの?」
「いえいえ……あ、これはまずいですね。此処(屋敷)までの接近を許してしまうとは……わたくしも年ですかね、ほろり」
執事長であるビネットには防衛教育育成の全てが一任させている。ブラットレイ家の領土にはビネットの感知式の結界が張られているのだがまんまと侵入されてしまい"引退すべきか?"っと言葉とは裏腹に真剣に悩む。
「効果音を口にする人初めて見たよ。敵?」
「奥様の真似をしたのですが……敵です。それも一個中隊規模の接近を許してしまいました。二〇〇人の部隊です」
「ビネット」
「ただいま」
執事長の地位はだてではない。近くに居たメイドに戦闘命令をかけるとすぐさま他の使用人に伝達を広めにいった。ものの数分で装備を揃えそれぞれの持ち場に付くだろう。そう教育したのが彼で少しでも遅れたりミスをすればお仕置きされるのを体に教えられているのだ。
"ドン"と衝撃音が響く。
音は正面玄関の逆方向から響いた。あそこの担当者はこれが終わればお仕置きだな。
襲撃された際の報告をするべく伝声管のフタを外す。
『ビネット』
「はい。いつでも転移可能です」
『どこまでだ?』
「フランスまでは侵入に成功したのですが固定式転移魔術を設置するとなると首都から離れ北部に位置するナンシーまでが限界でした」
フランスに送った部隊からは定時連絡を過ぎても応答はなかった。最後の連絡はナンシーの一軒家の倉庫に設置に成功。その後の消息は不明。生存の可能性は限りなく低い。
命をとしてブラットレイ家に身を捧げた彼らに敬愛の意を注ぐ。
『上出来だ。しばし家を離れる母のサポートを頼むぞ』
「御意「あ、ラグちゃん!此れからお母さんねー」前線行かせてやるからちょっとは大人しくしてろや!!」
膨張した筋肉が伝声管を破壊する。
あ……………………伝えたし問題ないでしょう、うん。
「ねえねえねえいまのほんと!特攻ですか?中央突破ですかぁ~?」
「ブラットレイ家の執事長たる者この程度答えられずどうします?」
敵は包囲戦に切り替えてくる。戦力比は5:1勿論此方は"1"。籠城戦は守勢にあって兵力差を覆すに有効な手段ですが我々には似つかわしくない!籠城?守りに徹するのはブラットレイ家の<恥>!
「殲滅戦でしょう」
☦ ☦ ☦ ☦ ☦
この襲撃は本音を言えば今すぐ帰りたいくらいだ。
薔薇直属部隊である我々が黄薔薇様、蒼薔薇様、金薔薇様を"薔薇にとって有害"と判断し抹殺するなど——————世も末だな。
この襲撃は薔薇の命令。
薔薇の命令は絶対。
大幹部——————薔薇の中でもこの方々の命令は最上位命令。
我々が仕えていた黒薔薇様ではなくその地位を奪い取った灰薔薇様の命令。
何故そんな奴の命令を従わなければならない。
命令とはいえ護るべき薔薇を抹殺。
———だからどうした?
隊長は黒薔薇様個人に忠誠を誓っているが副隊長である自分は結社さえ無事ならそれでいい。
我々には断る権利も人権もないのだ。
ただ命令を遂行すればいい。
話は戻るが今すぐ帰りたい思いは紛れもない本心からきている。
別に薔薇を抹殺することに抵抗があるわけではない。それ以前に個々に向ける忠義が自分には存在しないのだ。
この世界の秩序を保つには結社は必要不可欠。
何事も平和が一番、うん。
そう思えばこの反逆は好機だったのかもしれない。
黒薔薇様は優しい。
そこは別に悪くはない。だけど秩序を保つには余りにも甘すぎる。
殺すな?争いをやめろ?皆手を取り合え?
秩序を乱す不純物にいくら語りかけようが不純物は不純物でしかない。
その点灰薔薇様は真逆だ。世界を一度壊すつもりだ。
秩序はなくなり人が人を殺す世界。
秩序を保つ自分の考えに意を反するが世界は一度壊されなければ秩序の大切さを理解できないのだ。
一度壊し無くさなければ身近にある物の大切さが解らないように。
人類は一度秩序を破壊しなければならないのだ。
そのためなら灰薔薇様の命令に従おう。
何の躊躇もなく黒薔薇様おも抹殺してみせましょう。
———何度も同じ話でしつこいと思うが本当に今すぐ帰りたい。
別に任務に不満があるわけではない。
むしろやる気に満ち満ちている。
まじ皆殺し—ヒャーハァー!ぐらいのテンションだ。
けど帰りたい。
今回は相手が悪すぎる。
ブラットレイ家当主である蒼薔薇様や金薔薇様や
条件付きで"一人っきり"が最も好ましいが付く。
えっと……三人とも
たった三人。されど三人。幸いなことに死ぬ覚悟はとっくの等にできている集団だ。
一対多の集団戦で味方ごと殺っちまえば勝ち目はまだある。
何度も繰り返すがほんとーに帰りた!
多対多の集団戦。此方の薔薇直属部隊と結社の部隊の混合部隊に引けを取らない使用人が彼方に揃っている。しかも籠城戦。
あ、これ
これは長期戦かなーと、今後の作戦を練っていると元蒼薔薇様が使用人(執事かな?)を引き連れて出てくる出てくる。
あれ?これチャンス?すんげーチャンスじゃね?わざわざ此方の戦力を確実に削れる籠城戦を棄てて堂々と扉を広げて攻めにくるか。お互い長期戦は望んじゃいないってことか。元々ブラットレイ家は籠城戦などの護る戦いが苦手な節がある。自分達の土俵でやろってのがみえみえ。けど……此れで魔術が存分に発揮出来る!
中央を突き進むお姫様は死体の道を築き上げながら目前まで迫って——————止まる。
大変遅くなりました。
感想等をお待ちしております!!
他アニメ・漫画から使わせていただいたキャラと能力説明。
※アクセルワールド14巻初登場キャラクター<大天使メタトロン>
バランスをとるために性能面(全体的に)で弱体化の可能性あり。