先手必勝!
小細工なし、正面から高速で距離を詰める。
鍛えられた肉体は燕尾服をピチピチに着こなしているが膨張に膨張を重ねる筋肉はただでさえ筋肉質の肉体を二~三倍に膨れ上がり一七〇センチの肉体が三メートルを優に超えている巨体に変身を遂げる。
燕尾服は執事長ビネット専用カスタマイズが施されており嫌な音を立てず筋肉にピッタリ張り付きより筋肉の筋を強調させる。
「邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だああぁぁああああぁぁぁ!!!」
バリケードを破壊しジャガー型自動人形をスクラップにし人形使いを薙ぎ倒す。
止まらない止められない止まることは許されない!タックルで全てを吹き飛ばす。一歩踏み出すたびに地面は陥没し踏ん張る力で地面がえぐれるほどの強烈なタックル。
レイン様を敵の大将まで辿り着く道をつくるため突き進む!
腕をクロスさせ一直線に進む。
一歩踏み出しすたびに速さは上がり最初はただの筋肉の塊でしかなかったビネットは何時しか触れる事も叶わず真っ直ぐ突っ込んでくると分かっていても避けることが不可能なほどの速さを誇っていた。
——————亜音速
名前の通り音速に近いけど音速より遅い速さを亜音速。
されど此処までの速さにのったビネットを止めるのは人間には"不可能"。さながら結社の魔術師には隕石が突っ込んできたと錯覚するほどの威力と速さ。
触れたものすべてを破壊する肉体強化の究極形体。
筋・骨格筋・平滑筋・心筋・肉体のありとあらゆる運動器官を強化し強靭にする。
「あの化け物を止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「犠牲を厭うな!殺せ殺せころせええ!!!!」
「後ろにつかせるな!なんとしても食い止めろ!!」
あまりにも鍛えられた筋肉は鎧の役目を果たす。
打撃、斬撃、銃撃、筋肉の砲弾はすべてを押し潰す!
「ぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるいぬるい!!なんと貧弱!なんと脆弱!そんな攻撃では筋肉どころか服も貫けぬわ!」
ビネットの燕尾服は破れぬための伸縮機能と生半可な攻撃では傷一つつかぬ特殊繊維で出来ているわけではない。
ビネットにとって燕尾服は生涯のパートナーであり体の一部。
そう、体の
ビネットが魔術をかけているのは肉体の運動器官。何時いかなる場合でもこの服を脱ぐことのなかったビネットと燕尾服は正しく一心同体。否、<人衣一体>!!!
筋肉には多少劣るがその強度は鋼並!
体の一部という事は燕尾服も筋肉と同じく伸縮する!
肉体強化魔術はブラットレイ家の血族の者に代々受け継がれてきた。ブラットレイ家は元々騎士の一族、自軍が負けるのは許されない存在。今より副作用が酷かった時代一人が限定的に超常の力を発揮しても数で押されれば意味はない。そこで厳しい時代を生き抜くためある一族の者が自分の信頼する仲間に肉体強化魔術を教えた。そこから代々当主は気に入った者に肉体強化魔術を教えてきた。勿論魔術を口外しないと信頼した相手だけ。
ビネットはレインの父親である先々代の当主に魔術を伝授された。
そして彼は——————筋肉の可能性に気付いてしまったのだ。
「観ろ私の筋肉をおおおおおおおおおぉぉぉぉおおお!!」
「この筋肉ダルマが!」
「褒め言葉だよユーたちよ!!」
「熱線はどうだ!?」
ジャガー型自動人形から一斉に放たれた二十を超える熱線がビネットの服を焼き払うがすべて筋肉に防がれる。
「はぁぁあああああああああああぁぁぁぁああああ!!?本当に人間か!?一〇〇〇度の熱を一点に圧縮された貫通型の魔術だぞ!」
「服はまだしも何故体を貫かない!?」
動揺を隠せない結社の魔術師。だが、動かない人形使いなどただの的だ。
亜音速を保ちながら弧を描きながら起動を変える。
「きさまらぁあああ!!よくも私の相棒(燕尾服)をーーーーーーーッ!!」
そんな事を叫びながら身長三メートル超えの固まりが突っ込んでくる。攻撃も効かず防ぐすべもない亜音速のタックルは結社に命を捧げている彼らにとって恐怖を植え付けた。
☦ ☦ ☦ ☦ ☦
レインの基本戦闘スタイルはサーベルを使った接近戦闘。サーベルは一本より二本の二刀流使い。
東洋の侍のように一撃で極める抜刀術のような技はなく手数で攻めるタイプ。
だが——————その経験と連撃から繰り出される鋭さは侮れない。
彼女はその家柄上よく戦場を闊歩していた。
味方からは"
<デーア>はイタリア語で女神の意味を持つ。圧倒的に敵を蹂躙する姿は味方からは勝利の女神にみえた。
では別視点(敵)からは?
血の雨を降らせ真っ赤に染まるその姿は
"
そして——————
「(終戦後は両方からそれぞれ文字を取って
ネッビアはあらためて目の前の存在の危険性を理解する。このお姫様もう私しか視えていない。二〇〇人も居る中でこの男がもっとも危険だと感じ取り迷うことなく此処まで来たのだ。経験か獣並の勘かは分からないがその直感は恐怖すら覚える。
「元蒼薔薇様では呼びにくいのでレイン様でよろしいですか?」
「うん、べつにいいよ!」
「え?ほんと?それじゃあ早速……レイン……(チョイイケボ)」
「キモイから却下」
これから殺し合う仲にみえない甘い?会話。歩幅十歩分の距離。
レインのキモイはネッビアの心を削る。直接口で言われる耐久性は意外とないのだ。
「これはグサッときますね。普通にレイン様とお呼びしますので許可を頂いでも?」
「私貴方の事全然知らないからやだ」
「……何度かお会いしましたよね?」
「ん~~~~~~~~……いた?」
「そこからかよ!」
まさか存在自体認識されて居なかったことに更に心に罅が入る。
副隊長の心は硝子なのだ。
勢いを巻き返そうと話を振る。
「あの筋肉の塊はブラットレイ家の使用人なら誰でも?レイン様もアレ(筋肉ゴリラ)出来るんですか?」
もうレインは結社のメンバーではないのでそのまま名前を呼ぶことにする。
「私にはむりかなー。歴代あそこまで肉体強化できたのってビネットくらいかな?逆に私が聞きたいくらいだよぉー強化ってより頑丈により活発に働きかけるってことなのに質量保存の法則無視してるんだよ!なんで身長が二メートルも伸びるの!?活発に働きかけるにしたって働きかけすぎだよ!」
レインはレインで執事長に思うところがあるようだ。
「それでね?私聞いたんだよそれどうやってるのーって!なんて返しが来たと思う?」
「え……?えぇ~とぉー……『内緒でございます』とか……?」
似てないも似つかない声真似で真面目に返す。
聞かれたことは真剣に悩んで答えるのが副隊長なのだ。
「ブブーーー!正解は『筋肉に不可能はないのです……キラリ』……気色悪いわ!!」
返す言葉もなく苦笑い。
こんな会話だが二人とも互いの得物から目を離さない。
隙ができないか会話を振ったがそう簡単には行かないようだ。
「いいんですかこんなのんびりして?数は此方が有利ですから時間が経てば此方の陣営が勝ちますよ?」
挑発。
自分から仕掛ける気のないネッビアはレインを焚き付ける。
自分から仕掛けるより相手の方から来てくれれば魔術効果抜群。
だからそろそろ仕掛けてこいよ?っと醸し出すオラオラオーラとひょっとこのお面が合わさり常人ならもう手を出している。
だがレインは常人の枠を超えている。
「そ~んな煽り方じゃお姉さん感じないぞ☆そもそも……」
濃密な殺気がネッビアだけに向けられる。
顔には出さないが手汗でナイフが滑らないようより力を込める。
全神経を集中させろ。
足運び・重心・目線・指先に至るまで注意をはらい。
カウンターを確実にとれる体制を維持する。
「いつ私が……」
———くる!!
「ヤるって言ったかな?」
「まったくその通りでございます」
浮遊感。
視界に広がるのは部下やブラットレイ家使用人の血飛沫、木々、空、地をぐちゃぐちゃに混ぜ返した景色。
突き飛ばされた。
自動人形や部下を巻き込みながら木々を圧し折り岩壁に激突し突き抜けようやく止まる。
ブラットレイ家の石塀を岩壁と勘違いしたようだ。
侵入しだい蒼薔薇様、金薔薇様、黄薔薇様を発見次第抹殺しなくてはならない。
だが、ここであの二人を殺さないと危険だ。
殺気で自身を注意するよう促し真横から攻撃。
先の浮遊感の正体はあの筋肉ゴリラ。
飛ばされた距離と肉体の損傷からタックルではなく殴り飛ばさらた。
念動防御も攻撃を受け流す事もできずもろ筋肉砲弾をくらった。
生きてはいても全身の骨は砕け内蔵の損傷も無視できない。
立ち上がる。
ゆっくりとだが確実に。
レインと筋肉ゴリラは驚きの表情を浮かべる。
肉を突き抜け外から丸見えの骨が再生していく。
骨だけじゃない。
ひしゃげた腕も足も再生し元に戻る。
何事も無かったかのようにボロボロのフードとでこに罅の入ったひょっとこのお面を付けたネッビアがそこにいた。
流石の二人もその光景に息をのむしかなかった。
「薔薇直属魔術師戦闘部隊副隊長……」
ぽつりと呟く。
「副隊長と隊長はただの立場じゃない。薔薇を守る
表情の変わることのないお面が歪む。
「
解放された気分だ。人生で一番幸せな時だ。だからこそ——————結社に蔓延る菌は消毒だ。
「ビックバンインパクト!」
力任せの渾身の一撃。其処を中心にクレーターが発生し衝撃で屋敷が半壊する。
「ガハッ!!——————無駄無駄無駄無駄無駄ァーー!この肉体がその程度の攻撃もろともせぬぅ———!?」
「———潰れろ」
豪腕。握力計も意味を成さない圧倒的な握力。
その暴力を文字通り全身で体感する。
"グシャ"肉の潰れる音。滴る血は人間の血液をすべて絞り出したかのように流れ出る。
臓器はどれも機能しない。此れで生きていれば最早人間ではない。
「お面が潰れたらどうするきですか?変えが無いので勘弁です」
「ならそのままくたばればよろしいのでは」
「ははは……手厳しい!」
刃渡り二〇センチのナイフがビネットの指を切断する。
「む!?私の筋肉(指)を!」
「どんな頑丈な筋肉も所詮は筋肉だ。魔靭で斬れないわけないだろ。それに潰されたおかげで自慢の筋肉の謎がわかったよ」
「私の筋肉の謎だと?」
ネッビアの肉体は六割がた再生している。
ビネットは左手の親指を除いて斬られた指を筋肉で塞ぐ。
今の私は黒薔薇様から頂いた魔術で化け物の領域に踏み込んでいるがコイツ(筋肉ゴリラ)も十二分に規格外だ。
「その筋肉の強度の謎は念動でコーティングしてるからだ!」
「なん……だと……!?」
筋肉を常に念動で補強し外敵から身を守っている。
通常時から筋肉ゴリラに変形するさい肉体強化で筋肉を異常に膨張させるまではいい。だがその筋肉をビネットですらコントロールしきれていないのだ。
有り余る筋肉は自分自身を傷つける。筋肉の圧力で骨が潰れたり内蔵を圧迫する。
そうならないよう筋肉全てを念動で一つ一つコーティング(補強)している。
だがそうすると防御が低下するのに何故"熱線"が効かなかったのか?
念動防御——————筋肉ゴリラの場合<念動膜>が正しい。
肉体の表面にピッタリ展開し筋肉を補強し攻撃を防御する。
正に<膜>。
それ程の精密な操作を常に続ければ防御は低下する。だけど"熱線"は効かない。
ぶっちゃければ、防御が低下した状態の<念動膜>が熱線より固かった。私のナイフはその念動膜を切断する切れ味があったただそれだけの話し。
どこからそんなに出てくるのか懐からダガー二〇本を取出し空中に念動で固定する。
さらにダガーを両手に十本ずつ握る。
「自慢の筋肉をミンチ肉にして差し上げますよ」
ダガー全てがビネットの<念動膜>を貫ける。
「……それは勘弁してもらいたいですな」
それでも奥様に任されたこの大任をまっとうするべく筋肉を奮い立たせた。
余談だが、
筋肉ネタがやりたかっただけ・・・・・・それだけなんです。
次回の投稿は四月になると思われます。
一か月ほどパソコンが使えない環境に行くのでご了承ください。