機巧少女は傷つかない―蒼の世界―   作:namaZ

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四月と言ったな・・・・・・アレは嘘だ。
けど三月後半だしあんまり変わんない?

そんな密かな悩みを投稿する際に感じたnamazです。


あとがきが途中で途切れており急いで書き足しました。
申し訳ありません。


十七輪

 

 

 

 C-MOON<重力逆転>——————起動。 

 C-MOONの魔術回路<重力逆転>は重力を逆転させる能力を持ち、射程はラグナを中心として約三キロに及ぶ。重力のベクトルは放射状に広がり、周囲はラグナが上になるように重力の向きが変化する。

 地球の重力に服従し地を踏みしめていては何の意味もない。

 駆け出すと同時に連なる古めかしい石造りの建物の壁に降り立つ。

 その瞬間。重力がラグナに従いベクトルが変わる。

 

 

 ——————落ちる。

 

 

 地球の重力に何の疑問を感じづ生活し生きてきた人々は突然の重力変化に対応できなかった。

 結社の手の者より裏の事情を知らない魔術師や一般人が多く住む市街地。

 平和な風景は地獄絵図——————当事者にはマヤ神話の世界の終わりが訪れだと嘆くもの。何も理解できないまま潰されるもの。必死に落ちないよう掴まるもの。助けを乞うもの。

 

 

 このままパリに向かえば被害甚大。

 

 

 だがそれはラグナにはどうでもいいこと。

 アストに渡した<メタトロン>は魔力を流すだけで飛行には何ら問題はない。飛行だけならメタトロンの処理能力で事足りる。

 メタトロンの御する魔術回路は<光>。

 "光速翼"<メタトロン・ウイング>はその身を焦がす速さで閃光一閃で目的地に辿り着くだろう。

 

 俺のの魔術回路<重力逆転>の能力情報は黄薔薇から結社に伝わっている。そろそろ来るか?

 

 

「重力異常の中心地に到着!情報通りの容姿の人形使いと自動人形を視界に捉えました」

『当初の予定通り随時視界情報を私に転移してね~』

「はっ、白薔薇様……散!」

 

 

 七人構成された部隊がそれぞれ統制の執れた動きで散開する。

 白薔薇と連絡を取っていたのが部隊リーダー各だろう。 

 

 

「地の利は貴方方が有利だろうが三キロ四方(ここ)はC-MOONの射程制空権だ」

 

 

 俺を中心に三キロ四方は重力を支配される。

 俺が立った場所が重力の中心地であり地面になる。

 

 壁を走るのを辞め今度は地面を走りまた壁を走りすぐさま部屋に侵入し天井に立った。

 

 

「ほう、俺の動きに着いてこれるか」

 

 

 七人それぞれ別の建物の部屋の天井に立っていたり路上の柵に掴まったり壁に張り付くなどして空に落ちるのを逃れていた。

 

 

「何者だ?直属部隊に隊長と副隊長以外で俺の動きに着いてこれる者が居るとは思わなかった。もしかして白薔薇の私兵なのかな?」

 

 

 六人は何も反応がなかったがリーダー格の男が肩に止まっている白梟型自動人形の嘴(くちばし)から透き通った女性の声が響く。

 

 

『……ふぁ~……ねむぃ……あーえ~っと……投降しろーそうすれば身柄を保証し新世界へ導いてやるー(棒読み)。だ、そーです』

 

 

 うわぁ~やる気ねー。アストの事前情報以上のめんどくさがり屋だな。

 

 

「いやーまさか白薔薇の私兵にこんな優秀な部下が居たとは意外だ。主が使えない分部下が優秀なのかな?」

 

 

 白薔薇は何も返さなかったが予想外の所から声が上がった。

 

 

「貴様ぁ!!"様"を付けろ"様"を!」

「白薔薇様が使えない主だと!?部下である我々が白薔薇様の手を煩わせぬよう配慮しているのだ!」

「主人に水を汲ませるメイドが何処にいる?我々が居れば白薔薇様は何もせず有意義に時間を過ごせるのだ!」

「疲れて熟睡している白薔薇様に毛布をかける瞬間こそ我々の幸せ!あの寝顔に我々は忠誠を誓ったのだぞ!」

「馬鹿!我々が寝顔の為に白薔薇様に命を捧げているちょっと変わった趣向の持ち主と勘違いされたらどうする!だが、だけど……一理ある!」

「寝ているときにはっする呼吸と吐息と時たまはっする寝言に耳が昇天するわ!」  

「毛布をかけると気持ち良さそうに身をよじり甘い吐息とむにゃむにゃと唇を震わす白薔薇様で三食おかずにできる!」

「「「「「「さすがリーダー!貴方の部下でよかった!」」」」」」

 

 HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!

 

 

「いい部下じゃないか白薔薇?」

 

「……うー……はずかしいー……//////」

 

 

 何故か白梟の頬の染まり心底恥ずかしそうに身をよじったのだった。

 

 

 

 

     ☦     ☦     ☦     ☦     ☦

 

 

 

 

「ァ—————」

 

 

 踵を振り下ろし筋肉執事を土とキスさせる。

 ぐりぐり念入りに土の味を味あわせる。 

 死んではいない。殺せなかったが正しいか。

 斬っても切ってもきり刻んでも筋肉が傷が塞ぐ。お互い決定打に欠ける戦いはビネットが不利だった。

 肉体強化魔術は肉体を頑丈にし身体能力を上げるもの。それを過剰に酷使し負荷を与え続ければ肉体に酷使した分のダメージが蓄積される。

 老化による肉体の劣化も強化魔術で無理やり誤魔化している。

 体力も日を追うごとに衰えていく。

 そんなポテンシャルで全力で戦えるのは精々五分。

 俺を死に追いやった筋肉ゴリラのアッパーカットは戦場に出て来て五分丁度。

 その後の「ビックバンインパクト!」は後先考えない全力全開の一撃。

 そんな筋肉だけを精一杯維持する状態でニ十分もよく持つ奴だ。

 

 

「意識はあるだろうそろそろ降参したらどうだ?きんにくんがきれーなクレーター造ってくれたおかげで戦況が把握できてないけど質も量もこっちが上だからそろそろ終わったんじゃないかな?」

 

 

 だから魔術を解いてらくになれよと耳元で囁く。

 

 

「——————」

 

「……ん?声を張り上げてくれないと聞こえないよー」

 

 

 返事を聞くため耳を傾けながら顔を近づけると。

 

 

「ペッ……ブラットレイを舐めるなよ小僧」 

 

「……それが遺言だな」

 

 

 いくら此奴が筋肉の塊でも削ぎ落とせば殺せだろう。ひょっとこのお面に付着した唾を拭いながらダガーを逆手に持つ。

 

 

「私こうみえて拷問が得意なんですよ。そのおかげでらくに死ねなくなりましたよよかったですねー……下半身を削げば出血多量で死ぬでしょ?」

 

 

 そのまま振り下ろそうと()()()()()()()()

 "キン"と投擲されたサーベルを弾き返す。

 

 

「……これはこれは()()()じゃーありませんか。わざわざ執事を助ける為に来たので?」

 

「助けに?にゃははははははははは!なになになになにぃい!?ビネット死にかけてるの?……ぷぷっ!やっぱりもうおじいちゃんだねビネットは。そろそろ引退して隠居生活満喫すれば?」

 

「……これはこれは、身に染みるお言葉で」

 

 

 執事をおちょくるレインから何か達成感……スッキリした表情が窺える。

 戦況は此方が有利なはず。何故此処までリラックスしきっている? 

 

 

「音が……消えた?」

 

 

 消えたのだ。五月蠅かった叫び声も自動人形が破壊される音も何もかも聞こえない。残るのは肉の焼けた匂いと木々が燃えて発生する煙だけが確認できた。

 

 

「……そんな……そんなことが……」

 

 

 脳裏に浮かんだ考えうる可能性を否定したくも状況が全てを物語っている。

 

 

「全滅したのか!?たったニ十分足らずで!」

 

「にゃはははは……久しぶりに皆殺しにしたよーこの高揚感!たまりませんなぁ!」

 

 

 蒼いドレスを真っ赤に染め上げるその姿は悪魔(デーモン)

 "血塗られた悪魔(デーモンルージュ)"蒼いドレスを血に染め上げる剣舞は戦場の死神。

 

 薔薇直属魔術師戦闘部隊副隊長<ネッビア>である私が……恐怖している?

 実際にレインの戦うところは見た事はないが情報として知っていた。戦闘方法も武器も今までどれだけの敵を斬り捨てたか。どれだけ厄介かが解る資料を記憶していた。

 だがそれは二十年前のデータ。

 それからは息子であるラグナ・ブラットレイに無償の愛を注ぎその身は戦いとは無縁な人生をおくっていた。

 それが——————

 ソレが——————

 ソレガ——————

 

 "なんだこの結果は" 

 

 此れが蒼姫の双剣(プリンセスルージュ)

 剣術の実力だけで蒼薔薇の指輪を黒薔薇様から貰い受けた本物の実力者——————

 

 

 

 

 だからこそ勝てる!

 レインは自身の剣術に絶対的信頼を寄せている。剣術こそレインが生きた証でありそれだけを追究して来たのだ。

 その剣術を支えている柱が<眼>。初代から続く視力強化こそが最大の強み。

 それと逆の事をするのが<ネッビア>本来の魔術。

 

 

「現役を引退してなおこの力。元主でありますがこう……滅茶苦茶にしてやりたいですね貴方の様な女性は。ヒィーヒィー言わせたくなる」

 

「ひぃーひぃー」

 

「そうゆう意味じゃないんだけどな……」 

 

 

 何だろこの敗北感。戦う前に負けるとはこの事か?何か違う気がするが。

 クレーター内に滑り降りてくるレイン。

 

 

「それでどうするの?降参?」

 

「降参?本気で聞いてるんですか?」

 

「え?だってもう君しかいないんだよ?」

 

「そうですね……だからこそ命を引き換えに貴方を道連れにする!!」

  

 

 魔術回路<悪魔の霧(ネッビア)>——————起動。

 ひょっとこのお面の口から微かな白みを帯びている霧状の煙が行きよいよく噴き出した。

 広範囲に及ぶ霧は躱しようがなくレインを飲み込んだ。

 

 

「こんな薄い霧意味ないよ?」

 

「いいや……私の勝ちだ」

 

 

 ダガーを逆手持ちにクロスにして突っ込む。

 

 

「そんな苦し紛れの攻撃で私を倒せるとでも?」

 

「ああ、十分だ」

 

「あれ?」

 

 

 全力疾走でレインとの距離は五歩。時間で二秒弱。

 右手のダガーが首を斬り落し左手のダガーが胴体を真っ二つにする。

 そんな単純な攻撃では逆に此方が真っ二つになるだろうが今は違う。

 

 彼の魔術<悪魔の霧(ネッビア)>の能力は"阻害する力"。

 霧状の粒子が肉体の表面に付着し外側から動きを制限する。

 だが悪魔の霧(ネッビア)の術中にかかり対象の動きに制限がかかるのは十五分~二十分。

 この時間は魔術で肉体を強化しているレインに当てはめたものなので常人なら五分~十分で動けなくなる。

 それは相手が集団と前提した戦闘の場合。

 粒子を平等に鱗粉するとどうしても時間がかかってしまうが一人の場合は一か所に集中して粒子を放出することが出来る。

 粒子の密度を上げる事により瞬間的にその部分だけを固める事が出来る。

 距離がありすぎると霧状になり瞬間的にその部分を動けなくすることが出来なくなる。

 最低でも十メートルちょい。できれば五メートル以内じゃないと使えない方法。

 幸いにもレインは近接戦闘型の騎士。向こうから射程圏内に飛び込んできてくれる。

 さらに幸運なことに狙って放出された最初の一射はレインが"油断"し回避行動をとらなかったので狙い通りの箇所に命中してくれた。

 

 二十年ぶりの戦場の"高揚感"。人を殺す"爽快感"。一方的な虐殺の"嗜虐心"。

 それらが合わさり圧倒的優位に立ったレインが"最後の一人"にみせる"余韻"。

 歴戦の猛者であるレインが生んだ余韻による"余裕な態度"。

 其処を超最大濃度粒子の霧を"眼"に命中させた。

 "瞳孔"のみに超最大濃度粒子を浴びせ外側から膜を作る事により視力を奪う。

 知覚機能を通じて人が外界から受け取る情報量は視覚が最も多く八六%。

 ソレを奪われた人間は例え最強だの究極だの言われようが思考と動きが停止する。

 人間が無防備になる視界外の攻撃。正に一発限りの必殺技に相応しい。

 

 

 

 

 

 刃が肉と骨を断ち切り肉体の血管を巡回するだけの血が真っ赤な噴水を上げる。

 斬られた本人は何が起きたのかも理解出来ずただただその噴水を見つめ思考を放棄していた。

 斬られた肉が宙を舞い同じく血を撒き散らしながら落下する。

 "ぐちゃ"水分の含んだ肉が潰れる音。

 その音が思考と意識を呼び覚ました。

 そして何故か斬られ遥か彼方へと落下した両腕の切り傷を視界におさめ自分が斬られたのだと理解した。

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁああああぁあああああああ……!なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだッ!!おまえだろ!おまえがヤられなきゃおかしーんだぁ!だって……だってええタイミングは完璧だった!!圧倒的優位の慢心意表を突いたはずだあああああ!?なのに……なんで……オレの腕が斬られているぅうう!!?」

 

 

 零距離から血を浴びたレインは蒼髪を紅色に染めただ無慈悲に現実を突きつけた。

 

 

「……私の方がカードを多く所有していただけの話しだよ。ま、カードはカードでもJOKER(ジョーカー)だけどね♪」 

 

「認めねー……みとめねーぞクソアマがぁ!?」

 

 

 殺す!コイツだけは絶対に殺す!

 

 

「そんな噛み付かないでよ……ちゃーんと首落としてあげるから」

 

 

 サーベルを振り上げるレインに対しネッビアはただ状況確認しかできなかった。

 

 

「……視覚以外も強化出来るのか?だが……それでも対応が速すぎる!」

 

「え?そんなの簡単だよー。てゆーか知らなかった?」

 

「なにを?」

 

 

 あ、そかそか此れはビネットしか知らないんだったとうんうんと頷く。

 

 

「だって私もう眼見えないもん」

 

 

 ………………………………は?

 

 

「それが理由で私は運命の人に出会えたしラグナを生むことが出来たから全然後悔はしてないんだよね。まあこれ以上教える必要もないし死ぬんだしもういいよね?」

 

 

 この殺し合いは視力を失い他の器官を使い視力があった頃以上の感覚を手に入れたレインの勝利で終わった。

 

 

 




<薔薇直属魔術師戦闘部隊副隊長<ネッビア>の敗因についての説明>

読んでも読まなくてもどちらでもいい内容なものです。
「ビネットなんで負けたんだ?」と疑問がある方のみ見て下さい。



※魔活性不協和の原理
 機巧物理学の基礎概念。異なる二種の魔術回路は同一のボディに存在できない。現時点でもそれは解消されていない。


 此れを前提に黒薔薇の魔術(まだ詳しい能力は内緒)の一部を肉体に組み込むことにより超速再生能力を使用。
 悪魔の霧(ネッビア)はひょっとこのお面に内蔵された魔術回路なので<魔活性不協和の原理>に違反しません。

此れで<魔活性不協和の原理>の謎が解消されました。では何故その二つを同時に発動させなかったのか?

 <機巧少女は傷つかない>の世界観において、他作品のような魔術や魔法を複数組み合わせて威力を上げたり戦術の幅を広げる事が出来ないんです。
 出来ないのは言い過ぎですが出来る人形使いが極端に少ないんです。
 十三人(ラウンズ)のトップランカーであるマグナスは乙女型人形「戦隊(スコードロン)」六体にそれぞれ違う魔術回路を組み込む事により『複数組み合わせて威力を上げたり戦術の幅を広げる』を実現したのですが、普通の人形使いには一体が限界だと考えています。赤羽一門のような<紅翼陣>があって初めて実現するのだと作者の見解です。

 ネッビア本人が修行すれば二つ同時に使えたかもしれませんが『発動条件は生命活動に支障をきたした時のみ』なのでネッビアの実力からそう毎度瀕死な状況にはなりませんし、暗殺・戦闘には悪魔の霧(ネッビア)だけで十分なのです。
 それと副作用がごにょごny(次回説明)
 

 あとがきで説明させて頂きましたが本文で理解できるよう書けなかった作者のダメっぷりが滲み出てしまいました。
 何か思うことがありましたらビシバシ感想をお願いします。
 
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