機巧少女は傷つかない―蒼の世界―   作:namaZ

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四月は何かと忙しく投稿が遅くなってしまいました。誠に申し訳ございません。

今回は皆様のアイドル(?)アストリッド・セトで御座います!
メタトロンの口調が正直手間取りました。
違和感なく読めれば幸いです。

それと『原作:機巧少女は傷つかない13巻』で<灰薔薇>が出て来てびっくら仰天ですw
まさか本当に<灰薔薇>だったとはw








十九輪

 空気の圧が体を押し潰す。

 重力が中身を引っ張り回す。

 人の身で体感できない速度は時間の感覚を狂わす。

 飛び立ってからさほど時間は経過していない。

 一秒が十秒に、二秒が一分に、三秒が十分に——————

 ただただ必死にしがみつく。

 振り落とされないようただ必死にしがみつく。

 とうに手の感覚など無い。

 空気抵抗による摩擦熱が体を削り皮膚を溶かす。

 念動防御とて万能ではない。

 体全体に展開できるほどアストリッドは念動に長けていない。

 メタトロンの背中にピッタリと張り付き進行方向前方に念動防御を集中。

 それでも完全に光速を防ぎきるのは不可能。

 速度を緩めるには魔力を流すのを中断すればいい——————

 そんな腑抜けでか弱い心は持ち合わせる金薔薇ではない!

 魔力の流れをより正確により精密に。

 彼と共に研究した筈だ。

 彼と一緒に制作した筈だ。

 彼の考察、思惑、思考、工夫、美学、根源——————

 見ていた筈だ観ていた筈だ視ていた筈だ。

 仕草も口調も目線の動きに至るまで視ていた筈だ。

 一度だけメタトロンの魔術回路を視た筈だ。

 魔力を流せ。

 反応が鈍ければ流れを変えろ。

 的確に魔力を流せ。

 時間がないんだ。

 速さを——————

 速さを——————

 更なる飛躍を——————!

 

 

「……はー、何をしているのです」

 

 

 ここにきて初めてメタトロンはアストに喋りかけた。

 酸素補給さえままならないこの状況下、言葉を発するだけで命を縮める。

 

 

「別に返答は求めてません。あまりの愚かさにあきれているだけです」

 

 ?。何か私は魔力操作をミスっただろうか?

 

「どうせお前のことです。魔力操作をミスっただの的違いな事を考えているのでしょう」

 

 なんでわかったし。

 

「お前の様な輩の考えを読むなど造作もないこと。私も同じ状況下なら同じことをします。誠に不本意ですがね」

 

 この自動人形は何を言いたいのだ?

 

「ええい察しが悪い。お前の事ですし私が何を言いたいのか分かっていませんね。……誠に……ま・こ・と・に悔しいですがお前が(あるじ)を慕う気持ちは我の忠誠心に勝るとも劣らない。その身を犠牲に我が身に魔力を注いだのが何よりの証拠。認めてやらんこともないですよアストリッド・セト」

 

 ただの人形が何を偉そうに。

 

「偉そうにと考えているでしょう。そうですね……所詮私は主によって創られた人形です。どう言い繕っても主は私を生み出した神であり人形使いの魔力補給が無ければ動かなくなる不完全な存在です。だからこそ……」

 

「どうしたの?」

 

「……いえ……なんでもありません。……どうですか?呼吸も普段道理できるようにしましたが」

 

 

 そう言えば、摩擦熱も無ければソニックブームの空気圧もない。

 これは—————— 

 

 

「光の……壁?」

 

 

 アストを保護するように光の壁が体を覆い外敵から守ってくれていた。

 

 

「アストリッド・セト。これは魔力操作の上手いお前の成果です。主以外の人形使いに使われるのは癪ですがシールドに割く余裕が生まれました。……主には敵いませんが()()の実力者だと認めてやらんこともありません」

 

 

 口が悪いだけなのかそれとも素直じゃないだけか……この調子だと後者ぽい。 

 その後、簡単に魔術回路のコツと能力を指導された。

 秘伝の魔術回路をそう易々教えていいの?と聞くと

 

 

「"同行させる"と主は仰せになりました。言葉から意図を汲み取り"アストリッド・セトに仕えろ"と解釈すれば今はお前の所有物です。戦闘は避けられません。主に認められた使い手がこんな序盤で死なせてしまったとなれば主の人形として恥でしかありません」

 

 

 毅然とした態度の中には生みの親(ラグナ)を敬愛の意を感じた。

 自分が好意を持つ人に似たような感情を懐き始めているメタトロンにアストは嫉妬も危機感も懐くことなくただ"人形使いとして女性型自動人形に感情プログラムは組み込まない方がいいな"に尽きた。

 アストリッドは自動人形に決して感情をプログラムしない。どれだけ人間の真似事を仕様が所詮は機巧仕掛けの人形。人形如きが口煩く態度をでかくするのが金薔薇として受け付けない。

 他の人形師の大半がそうだろう。

 

 メタトロン(これは)はラグナがプログラムした感情と環境で今の自我がある。気には止めない。

 こうなるようラグナが教育したのだから。

 

 

「目的地までもう間もなくです。体力を温存しといてください」

 

 

 セト家に辿り着く。

 そういえばあの子は無事かしら?ブラットレイ家であれならセト家も襲撃を受けているはず。無事ならいいけど。

 

 

「着陸ポイントはどうします?」

 

 

 玄関中庭屋上でもどこでもいいけど……毒を振り撒く私が毒されちゃったかな。

 

 

「——————んで」

 

「? 今何と?」

 

「突っ込んで」

 

「は!?正気の沙汰ですか!?」

 

「時間短縮出来るし忘れ物取ったらさっさと飛べるでしょ。ほら、イケ」

 

 

 反論自体しても無駄と判断したメタトロンは主の様な無茶な命令を下すアストリッドに好感を覚えた。

 流星はそのまま直線に目的地へと軌道を描く。

 研究室の隣の部屋に突撃すれば機器に被害はでないだろう。

 威力を一点集中にすれば着地地点のみ破壊される。

 

 

「衝撃に備えて下さい」

 

 

 目的地の真上に付くと同時に——————急降下。

 光の接触面は障害物を難無く消滅させる。

 光は万物全てを消し去る。光より速い分子は存在しない。

 光はあらゆるモノを置き去りにし何者にも止める事も出来ない。

 主の誇る自動人形で最も統率力と空間制圧能力が優れている。

 それが——————

 

 一人の魔術師に止められたと納得できるか?

 

 "ありえない!"

 

 

『御久シブリデス。金薔薇様。今日モ麗シイデ御座イマスネ』

 

 

 軍団()の壁もそびえ立つ要塞も強固な結界さえ貫く絶対的力。太陽を味方にする大天使メタトロンの一撃を完璧に片手で防いでいる。

 これが精鋭中の精鋭。黒薔薇、銀薔薇、白薔薇に認められ()()されている人物。

 これが薔薇を守護する直属部隊トップランカー。

 これが薔薇直属魔術師戦闘部隊隊長。

 

 

「シュプリッター——————ッ!!」

 

『無礼ヲ承知デ申上ゲマスガ淑女ガソンナ大声デ叫ブモノデハ有リマセヌヨ金薔薇様。何ヨリ住マイニ穴ヲ空ケルノハ頂ケマセン』

 

「くっ」

 

 

 強制支配(フォース)でメタトロンを空中に離脱させる。

 

 

『上昇ハ危険デス』

 

 

 激痛。ぐるぐると頭が回る。混乱する思考を高速で働かせシュプリッターの事前情報を思い出し何をされたのか理解した。

 

 <結界>

 

 セト家をドーム型に包み込む巨大な結界。これ程大規模な結界を一瞬で起動させる技量。年期と経験が違う! 

 

 

『落チ着イテ下サイ金薔薇様。話シ合イヲ所望シマス』

 

「それで?のこのこ降りてええそうねとのんびり楽しくお茶会(ティータイム)に洒落込めと?……馬鹿にしないで!」

 

『ムヤミヤタラニ瘴気ヲ撒キ散ラスモノデハ在リマセン。瘴気ヲ抑エテ下サイ。私ハ薔薇直属魔術師戦闘部隊隊長トシテ参ジテオリマス。ドウカ話シ合イヲ……モウ……時間ガ無イノデス』

 

「……要件を言いなさい。話し合いならここからでも出来るわ」

 

『寛大ナゴ決断……感謝シマス。先程ハ申シ訳在リマセン。裏切リ者ノ侵入ヲ防グ為<結界>ヲ張ラセテ頂キマシタ。屋敷ノ者モ無事デス。手厚イ歓迎ヲシテ頂キ休マレテオリマス』

 

「誰も死んでないでしょうね?それとも人質のつもりかしら?」

 

『ソウ受ケ取ッテ頂イテモ構イマセン。デスガ誤解ナキヨウ。私ハ味方デス』

 

「それは私が決める事であって貴方ではないわ。それで?私に何をさせたいの?」

 

『……私デハ今ノ流レヲ止メル事ハ出来マセン。情報漏洩阻止。他ノ組織ノ介入。私一人デハソレガ限界デス。金薔薇様ニハ黒薔薇様ノ救出。可能ナラ灰薔薇様ノ殺害ヲ頼ミタイノデス』

 

「態々それを言いに来たの?」

 

『ソレダケデハ在リマセン。ドウゾ腐毒なる獣(ベヒモス)デス』

 

 

 空間が歪みそこから腐毒なる獣(ベヒモス)が姿を現す。

 これも<結界>。

 シュプリッターの<結界魔術>の情報は<三人の魔女(トップシークレット)>の素性情報と同等ランクに位置している。

 シュプリッターの<結界魔術>の情報は世界中から狙われている。それ程多才で応用性があり強固で秘匿性に優れている。

 

 

『ソレト研究資料ヲ拝見サセテ頂キマシタ。起動装置ノ方ハ中々ノ出来デスガ魔術回路ノ方ハ……』

 

 

 勝手に人の研究資料を読み漁ったことに殺意の波動が芽生える。魔術師にとって魔術を隠匿し、血族のみに伝えるのが沈黙のルール。それをこの変質者はセト家の研究成果を拝見した?

 

 "ざけんなよ変態野郎がァ!!"

 

 

「……わかってる。三人の魔女に匹敵する貴方に意見を聞いても?」

 

 

 落ち着け。落ち着くんだ私。我慢我慢我慢だ。非常に、ひじょーーーに!遺憾だがこの場は抑えるんだ。矛を向けても何の解決にもならない。私怨で争うのは無駄に時間を浪費するだけだ。こうしている今もラグナは戦っている。私の助けを待っている。合理的に物事を考えろ。

 

 

『ソウデスネ……此処ハ一ツ勝負ヲシマセンカ?』

 

「勝負?は、ふざけているの?」

 

『私ハ至ッテ真面目デス。私ニ掠リ傷等ヲ負ワセレバ金薔薇様ノ勝チ。金薔薇様ガ無力化サレレバ私ノ勝チ。簡単ナルールデ御座イマス』

 

「……利益は?」

 

『コノママ起動装置ヲ渡シテモ宜シイノデスガ正シク起動ハシナイデショウ。私ナラ無理矢理接続可能です。その場合持って数秒。数回ガ限界デス』

 

「断言するのね」

 

『断言シマス。ソレニ……私ノ助力ダケデハ数秒モ扱エマセン。アノ方ノ助力モ必要ナノデスガ……ソレハ勝手カラノ御話デス』

 

「戦う意図は?貴方が素直に協力すれば済む話なんだけど?」

 

『イイエ。其レデハ意味ガ無イノデス。灰薔薇——————エクリヴァン・B・ヴィシーヲ倒スニハ私ニ傷ヲ負ワスノガ重要ナノデス。時間ハ有限デス。始メマショウ。躱して下さい。一手デ終ワリマスヨ?』

 

 

 『イデアの破片(シュプリッター)』——————起動。

 <氷結結界>—————『天地氷塊・月白』

 

 半径三〇センチ、円柱型のサークルがアストがさっきまで浮遊していた空間を氷らせた。

 初見で躱せたのは運が良かったから。シュプリッターが開始の合図と同時に行ったから反応できたのだ。

 

 

「メタトロン!」

 

「……了解!!」

 

 

 回避不可、認識不可のレーザーがシュプリッターを撃ち抜く。

 撃てば当たる光の粒子。

 シュプリッターは避けることなく<結界>で防いでいた。

 

 

『<障壁結界>——————『多重多層障壁』。……この光。ブリュー伯爵家ノ魔剣(グラム)ヲ連想サセマス。ケド違ウ。似テイルノハ見タ目ダケデ中身ガ。構造ガ。理論ガ。倫理ガ。真理ガマルデ違ウ。『多重多層障壁』ハ私ノ有スル結界ノ中デ上位クラスノ強度。正面ニシカ展開ハ出来マセンガ今ダ破ラレタ事ハ有リマセン。デハ。次ノ手ヲ———』

 

 

 アストから魔力補給を受けた腐毒なる獣(ベヒモス)が背後から恩賜の腐毒(ロトンブレス)を浴びせた。

 

 

『<浄化結界>——————『麗和浄』。<包囲結界>——————『結』。流石ハ金薔薇様。<浄化結界>デ瘴気ヲ完璧ニ祓エナイトハ……。数ハ限ラレテイルノデ一気ニ()()ハ御遠慮シタイ。サ。次ノ手ヲ』

 

 

 結界が速すぎる!一手、二手、三手と魔術をぶつけても其れに応じた結界が()()()()()()()()()()()している。

 幾らなんでもそれは在り得ない。

 攻撃を受けてから術式を編み最善の手を構成し発動する。瞬時に、しかも1から編み出すなど不可能。

 基盤——————結界魔術を発動する大元の基盤が存在する。

 自動人形(オートマトン)が人形使いの魔力で瞬時に魔術を起動できるように——————其れに類するもので結界魔術を時間ロスする事無く使用している。

 

 なるほど……シュプリッターの言い分は尤もだ。"灰薔薇——————エクリヴァン・B・ヴィシーを倒すには私に傷を負わすのが重要"。

 此れから先、三人の魔女と戦うかもしれない。灰薔薇は強固の要塞に立て籠もり最深部で鎧を着込んでいるかもしれない。

 その可能性を考慮すれば、たった一人の魔術師に傷を負わす事がどれ程重要で、どれ程難関で——————倒すべき相手なのか——————

 

 これは勝負じゃない、戦争だ。勝てば手助けをしてくれる?手を抜いて勝てる相手じゃない。生かす攻撃が決定打にならないならソレを無視してやるまでだ!

 

 

「私には目的が……やるべき事がある。ソレに貴方の力が必要なら……死なないでね」

 

 

 シュプリッターは深く腰を下げ首(こうべ)を垂れる。

 

 

『ア˝ァ……。勿論デ御座イマス。全力デ。本気デ来テ下サイ。其レデコソ金薔薇様デス!』

 

 

 喜びの歓喜に身を震わす"シュプリッター"

 

 

「あの人から返事を貰うまで……生きて貰わないと困るんだから!」

 

「ここでソレを言うのですか貴方は!?」

 

 

 アストリッドの惚気に盛大なツッコミを入れるメタトロンであった。

 

 

 

 

 

 

 




他アニメ・漫画の技。


シュプリッターの結界魔術紹介

①<氷結結界>—————『天地氷塊・月白』

※『BLEACH』朽木ルキア
 斬魄刀袖白雪 初の舞月白:地面から円柱状に氷結させる

 《範囲は原作より狭く半径三〇センチ。<一メートル>。


②<障壁結界>——————『多重多層障壁』

※『ネギま!』
 障壁を多数展開。

 《目の前にしか展開できない。


③<浄化結界>——————『麗和浄』

※『スレイヤーズ』
 解毒の呪文。淡い光が全身を包み込む。どんな毒にも効くわけではない。睡眠薬にも効果あり。複数の毒を同時に消すことも出来るらしい。

 《今作ではそこまで強力な効果はない。


④<包囲結界>——————『結』

※『結界師』
 間流結界術。包囲・定礎・結・滅=解

 《滅の無い結界だと思って下さい、
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