金薔薇まではやらないんだろうなー(´・ω・`)
今回のパーティーに出席したのはほんの気まぐれからだ。
アストリッド・セトはこのような催し物は嫌いではない方だ。
ほんの二、三年前に金薔薇のレリーフが施された指輪—————<薔薇の
屋敷に帰ったらまず薔薇の香りが漂うお風呂で汗を流す。そして、人が居ない自然豊かな草原で一人。特注品で作らせた高級感漂うテーブルとイスに身を任せながら、これまた特注で作らせた日傘で太陽の放射線を遮断し紅茶を楽しむ。メイドが一人居るがこのテーブル、イスのように家具(メイド)なのだがら全く気にしない。
私は日々を満喫していた。
だけど、一つだけ気掛かりがある。私より一年早く指輪を継承し、幹部の一人になったある男。彼の噂は親の代から面識がある他の薔薇から愚痴のように聞かされた。
黒薔薇曰く、気にくわぬ小僧。
白薔薇曰く、鬼才。
銀薔薇曰く、無愛想。
他の薔薇も似たような事を言っていたが、全員が口をすっぱくして「奴は戦争好きの目立ちたがり屋」と言っていた。
古参の方々や大幹部の方々にこんなにも注目されているこの男は何者なのか?彼の事に興味を持つのにそう時間は掛からなかった。
国、東南西北問わずあらゆる方面から彼の情報を集めた。彼の噂はまるで一つのお伽噺のようだった。生まれてから今日まで彼には成功しかなかったのだ。そしてやはり一番耳にする噂が戦争についてだ。なんと自動人形を使わず念動と一本の刀だけで戦う戦闘スタイルなのだそうだ。彼の噂の中には十歳の時に自動人形を作ったとされているがなんだか疑わしくなる。
しかし、彼を知れば知るほど私は彼の事をもっと知りたいと思った。
彼と私は似ている。
生まれも、生き方も、存在も、彼と私はよく似ていた。
私にとっての『戦争』はなにより娯楽であり自分の存在を証明でき、自分の全てをぶつけることが出来るった一つの居場所だ。
セトの
若くして力を持て余していしまった私は戦争に愉悦を覚えた。なら彼はどうなのだろうか?私同様戦争を愉悦としてとらえているのか、はたまたただの暇つぶしか。だが、それはありえない。私だから分かる。彼は求めている。探している。自分と同じ存在を—————『化け物』を—————
私は彼に会いたいと思った。何故会いたいかは私でも分からない。でも、もし、彼に出会うことが出来れば私の何かが変わると思ったのだ。しかし、彼は見つからなかった。あらゆる戦争に出向いたが彼は見つからなかったのだ。やはり噂は噂だったのか?だが薔薇の方々がそんな根の葉もない噂を私に聞かせるとは考えられない。
…………困った………手掛かりがない…………
彼の本名が分からないので此方から出向く事も出来ない。唯一出会える可能性がある場所と言えば戦場だけ—————その戦場でさえ会えない。
会いたいのに会えない—————日が経つにつれて私は彼の事ばかり考えるようになった。
何なのだろうこの気持ちは?何故か彼の事が頭から離れない…………彼を考えれば考えるほど胸が苦しくなる。この感覚なんだ?新手の呪法による攻撃か?呪法に詳しい私はそれはないと頭の中で否定する。ではこの胸を締め付けるような感覚は何なのだ?苦しい、だけど嫌じゃない苦しみ。何故かこの胸の苦しみが、痛みが、心地好いと思う自分がいる。
☦ ☦ ☦ ☦ ☦
今日は気分転換を含め久しぶりにパーティーに参加する事にした。この胸のムズムズする感覚も少しはまぎれるだろう。このような所では舐められたら終わりだ。黒で彩られたドレス。フリルが重ねられたスカートは薔薇のように膨らんでいるのがチャームポイント。剥きだしの肩を、大きなリボンが飾っている。
後はいつも通り使えそうな
やはり仮面を忘れたのは不味かったかしら。私の顔を見た人達が警戒して近づこうともしない。はぁ……仕方ない。今日は玩具探しは諦めるか……
ため息をし、近くのテーブルに移動しようとしたところいつの間にか右手を握られていた。驚愕。この私が手を握られるまで気付かなかった。それは私が今までに体験したことがないことだ。正直、驚きを顔に出さなかった奇跡に近い。
「………なにか?」
当たり障りのない質問。いつもの私なら無礼にも指輪に触れた者、あまつさえ指輪に口付けをした瞬間に—————否、触る瞬間に回避は出来た筈だ。それができない程今の私は彼の事で頭がいっぱいなのだろう。今日は気分転換に来たのにこれでは本末転倒である。だが、何故だろう?目の前にいる人物に握られた右手を引き剥がせるのにそれができないでいた。握られていた手の体温。私を見つめる鋭い眼差し。頬が熱くなるのを、胸が高鳴るのを感じる。
なんだ?なんなのだ?知らない………私はこんなの知らない………胸がはち切れんばかりに痛い。だけど不思議と嫌じゃない痛み。まただ………またこの痛みだ。鼓動の音がうるさい。本当になんなのだ?目の前の人物とは今日初めて出会う。なのに初めて会った気がしない。蒼髪蒼眼。整った顔立ちに綺麗な蒼眼。目の前の人物の右手をよく見ると薬指には薔薇の指輪が填められていた。薔薇の色は——————『蒼』
蒼?どこかで見た………いや、聞いた事があるような………そう言えば黒薔薇様が、「今回の蒼薔薇は生意気な小僧だ」と言っていた。
結社において男性とは非常に珍しい。結社の幹部のほとんどが女性なのだ。そして今回の幹部は十人中九人は女性、あと一人は例の彼だけ。なら——————目の前に居る男が私が探し求めていた人。
「一曲……踊りませんか?」
レディを誘うのにはあまりにも有り触れた口説き文句。ダンスなどただの余興と考えていた私は、初めてただ一曲のダンスに誘われたのが嬉しかった。
空いていた左手を自分の胸に当てる。先ほどからうるさいこの心臓の鼓動を確かめるように左手で鼓動を感じ取る。そして彼と目を合わした瞬間、鼓動の音が早くなる。
そして私は分かってしまった。この胸の痛みの意味を……
私は彼に……
彼という存在に……