機巧少女は傷つかない―蒼の世界―   作:namaZ

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二十一輪

「……で、要するにこうゆう事か。灰薔薇に反抗するメンバーを集める為態々かまかけたり実力を試したのか?」

 

「うん」

 

「うんじゃねーよ!俺の、この!嗚呼どうしてくれる!?」

 

「……いたい」

 

「貴様!?イルクの頭を叩くな!頭に障害が起きたらどうする!」 

 

「此奴がそんなやわなわけねーだろが!」

 

「医療するから大人しくしろ男ども!」

 

 

 さっきまで瀕死だったくせにこいつ等元気だな。エーイン+α(六人)が白薔薇を叩いた俺に対し口煩く抗議してくる。何なんだコイツ等。後クレオ、治療してくれてありがとう。

 

 

「みんなうっさい」 

 

「「「「「「「「申し訳ありません!!」」」」」」」」

 

「はーー……それで?プランがあるんだろプランが。まさか無いとは……」

 

「その辺は安心しろ。俺とイルクが一晩かけた計画がある!」

 

「一晩だけかよ……聞くだけ聞いてやる、()()

 

「態度があからさまにデカくない?まぁいいや、俺とイルクの計画はまず、休憩と準備で一時間。その後灰薔薇の所まで移動して総攻撃だ!」

 

 

 ドヤ顔で言われても。

 

 

「余りの完璧な計画に惚れたか?」

 

「絶句してんだよ馬鹿野郎。そんなの計画なんて言わねー唯の特攻だ。アホだろ、ガキでももうちょいマシな作戦思いつくぞカス。そんなに死にたきゃ勝手に死んでろ低能」

 

「そこまで……そんなに……いいだろ!?冗談に……きまってんだろ!!」

 

「……なに泣いてんだよ」

 

「エーイン泣かせた?アオ、エーイン泣かせた?」

 

「だァーーー!余計ややこしくなる!」

 

 

 俺が認めた相手は何で毎回こうも変な奴らばかりなんだ。母・ビネット・エーイン・イルク。そして——————あいつは普通だな、うん。

 

 

「エーイン、いどう」

 

「お、そうだった。行くぞお前等」

 

「行くってどこに行くんだよ?」

 

「そりゃ——————ホームだろ」

 

「アオ、キー、宝石持ってて」

 

「「?」」

 

「《波のゆりかご、城へ連れて行っておくれ、水晶も銀も金も宝石の山もいらない、ただお家に帰りたいから——————》」

 

 

 俺を含めた全員が波に呑まれる。生き苦しくない。殺気が無いことからこれは攻撃ではないと()()で理解する。

 

 

「《セルビア》」

 

 

 ——————()()()

 

 

 

 

 大雑把に括りを付けるならこの魔術は転移魔術の部類に入る。《セルビア》は白薔薇が指定した水晶・銀・金・宝石を所持する者に作用する魔術。指定した物を所持していれば本人の意思関係なく強制的に転移させられる。欠点を挙げれば、白薔薇が"此処が私の居場所"と心から思える居場所に発動する。C-MOONの重力逆転<グラヴィティ・ダウン>の時も此れでエーインの所に六人を召喚したらしい。そして此処は——————

 

 

「——————そして此処は俺とイルクの愛の巣だ♡」

 

「彼女の魔術をそうペラペラ喋っていいのか?てか此処何処だ?」

 

「だから愛のって分かったから睨むなって。イベリア半島だよ」

 

「イベリア?白薔薇の故郷か」

 

「おうよ。此処であいつは生まれ育った。この場所を知っているのは黒薔薇様と銀薔薇様と……薔薇直属部隊隊長のシュプリッターぐらいだったのに……俺の愛の巣がああああああああああああああぁぁああああ!!?」

 

 

 此奴——————勝手に喋って勝手に盛り上がって勝手に落ち込む。今まで出会った事のない部類の人間だが、うざいな。

 

 

「エーイン仕方ないよ。今は緊急事態だもん。しかた……ない……もん」

 

「リーダーが白薔薇様泣かしたぞー!」

「見損なったぞリーダー!」

「『俺はあいつを泣かせない……キリ』って言ったのリーダーでしょ!」

「俺等との約束破りましたね!」

「白薔薇様を泣かすとは言語道断!」

「いや、むしろ俺等のせいなのでわ?」

「「「「「それ言っちゃいかんでしょ!?」」」」」 

 

 

 その理屈だと俺も原因の一人だな。言わないけど。

 

 

「イルクを泣かせてしまったーーー!!俺はもう生きる資格がない屑野郎だァーーーーー!?死ぬしかない……死んでやる!!あ、でも此処で死んだらイルクに迷惑がかかる……ちょっと逝ってくる」

 

「リーダー速まるな!?」

「"行く"が"逝く"になってるぞ!」

「リーダーだけのせいじゃない、俺達が悪いんだ!」

「此処で無駄死にしても何の解決にもならないって!」

「俺達にはリーダーが必要なんです!」

 

「お……お前たち……」

 

「まあ、リーダー死んだら白薔薇様も後を追うでしょうね」

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおれぇえぇの馬鹿野郎おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「「「「「もう余計な事言うなよ!?」」」」」

 

「みんなうっさい」

 

「「「「「「「申し訳ありません!!」」」」」」」

 

 

 仲いいなこいつ等。

 兎に角まぁ——————色々あってやっと落ち着いた(コント終了)わけだが、俺は此奴らに訊かなくてはいけないことがある。

 

 

「おい白薔薇、灰薔薇は何をしようとしている?」

 

「嗚呼?そんなの結社乗っ取って世界を支配する、だろ?」

 

「確かにそれもある。だがそれだけじゃない。灰薔薇エクリヴァンは結社の"三人の魔女""魔術師協会<ネクタル>"いや、組織に仕掛けるんじゃい、世界に宣戦布告している。此れが如何ゆう事か分かるか?」

 

「灰薔薇は結社どころか世界そのものを自分色に染め上げる気なのか?」

 

「正確には()()じゃない()()だ」

 

「破壊だぁ~?そんなことして何の意味がある?」

 

「意味……か。灰薔薇は復讐だと言っていた。私の血に刻まれた宿願を達成できる時だと。クレオからある程度の経緯は聞いたが世界そのものを敵に回して勝算はあるのか?」

 

「それならたぶんわかる」

 

「本当か白薔薇!」

 

「うん。ハーはイブの心臓で動く人形じゃなくて、<アインの石>を核にした人形で戦争吹っ掛けるつもりらしいよ」

 

 

<アインの石>——————世界で普及しつつある機巧魔術体系の根幹を成す重要な魔術回路の基部。<生命>の魔術回路こと<イブの心臓(コピー品)>のオリジナル。

 教会は<原罪石>、史学者は<GI晶体>、工学者は<要石>、理学者は<虚無(アイン)の石>と呼ばれ魔石の出生は判明していない。アインの石は完全には解明されておらず、イブの心臓でさえ能力の一部を抽出した程度に過ぎない。

 それ故に——————

 

 

「アインの石は分裂し世界に二つ存在しているが灰薔薇が所有しているとは考えずらい。一つはロシアの帝室の血筋が受け継いでいる。もう一つの所在は判明していないが権威ある魔術師が所有しているのが有力な情報だ。アインの石を核とした人形……俺が此の情報を掴む遥か昔の人形なんだろ?それだと……まさか……アインの石は()()存在していた?」

 

「そう。一つは分裂し二個あるって事になっているけど分裂する前も石は二つ。この情報はハーとギーと僕しか知らない」

 

「サラッと凄いこと言ったな」

 

 

 するとあれか。元々魔石は二つあり灰薔薇の一族がその一つを独占。もう一つは分裂し今に至ると。

 

 

「その情報を白薔薇と銀薔薇だけが何故知り得ている?」

 

「そ、そうですよ白薔薇様。あいつがそんな貴重な情報誰かに教えるなんてありえません!——————クッ!?」

 

「ハーの呪い侵食してるから大人しくして。僕の水で鎮静化して進行遅くするから」

 

「ありがとう、ございます……。白薔薇様の魔術を私の様な者に……私は幸せ者です……!」

 

 

 感極まり涙に肩を震わせる。

 クレオの過去に何があったかは知らないが三人の魔女に対する忠誠心は本物だ。

 

 

「僕とギーの一族はハーの家族を絞るだけ搾ったから……その際石の存在を知ったの。けどクロがまとめ役になってから虐め良くないってハーを薔薇に誘ったの」

 

「そうか、貴女と銀薔薇が大体の原因と」

 

「う……、何も言い返せない」

 

「イルクを困らせたな此のビチグソが!?」

 

「それはもういい」

 

 

 一々突っ掛かるのは止めてほしいな。話が進まない。

 

 

「白薔薇……時間が無いんだろ?灰薔薇が黒薔薇と賢者の石を使って完成させようとしている"人形"は絶対危険だ。完成すれば勝てないと分かってるだろ?灰薔薇は何処にいる?情報が足りない今奇襲しかないのも——————」

 

 

 白薔薇は人差し指をラグナの口に当てそれ以上喋るのを中断させる。不意な事に驚いてしまったが、彼氏の熱い眼差し(嫉妬)に思考を正常に戻す。

 

 

「"鍵"はシュプリッターに託した。……まつだけ……」

 

「セッティングはシュプリッターがやってるから待ってろ。な、イルク」

 

「うん」

 

 

 エーインはイルクを抱き寄せほのかな甘い香りのする水色の髪を堪能する。

 イクルは甘える様にエーインの胸の中で頬をすりすりする。

 誰にも干渉されない二人だけの空間、時間。

 

 

 

 

 ドス黒く嫉妬する六人。

 それらを無視し錬成陣を用紙に書き殴るクレオ。

 

 ——————その時が来るまで傷を癒やすか。

 

 

 しばらくするとイルクは何かの()()を片手に一同を見渡す。

 

 

「どうした白薔薇?」

 

「……準備して、シュプリッターがやってくれた」

 

 

 その表情(かお)には怒りや憎しみはなく。破片の握り締めながら何処か泣きそうで悲しそうな気がした。

 

 

 

 

     ☦     ☦     ☦     ☦     ☦

 

 

 

 

 シュプリッターの脅威はその巧まれた結界魔術にある。

 物質を腐らせ溶かす恩賜の腐毒(ロトンブレス)

 万物を破壊し創成する始まりの光。

 

 恩賜の腐毒(ロトンブレス)は結界に防がれ、メタトロンの光線は屈折させられ中々当たらない。なにより素早い。

 まだ一発も当てれそうにもないがシュプリッターが攻撃を認識してから結界を起動させている起動速度の謎が解った。

 

 シュプリッターの結界魔術は設置型だ。

 イデアの破片(シュプリッター)とは魔術を仕込んだ破片のこと。状況を予測し破片を設置し相手を罠に引きずり込む。

 なら——————

 

 

「貴方の魔術が設置型なのは看破したわ。そろそろネタ切れなんじゃない?」

 

『ソウデスネ……イデアの破片(シュプリッター)モ残リワズカ。時間モナイ事デスシ此れで最後ニシマショウ。<イデアの破片(シュプリッター)>——————『断絶結界』』

 

「……?唯の結界じゃない」

 

『見タ目ハソウデスネ。デスガ破片ヲ四ヶ所。四方向デ起動スル断絶結界ハ私ガ開発シタ結界ノ中デ最モ強力。結界内ニ掴マレバ脱出ハ不可。外カラモ破壊ハ不可。此れガ如何ユウ事ガ分カリマスカ?』

 

「もう貴方には干渉できないってこと?」

 

『エエ。魔術モ空気サエ外ニ漏ラサナイ。……戦闘ニハ初メテ導入シマスガコノ結界ヲ攻略シナイ限リ灰薔薇ニハ決シテ届カナイ。何故ナラ灰薔薇ハ——————』

 

「灰薔薇は断絶結界で護られている。なら……通る攻撃を模索し当たりが出るまで諦めない。メタトロン!!」

 

「はい!」

 

 

 私の今持つ力を最大限メタトロンに注ぎ込む。現状私の攻撃手段は瘴気かメタトロンしかない。メタトロンの光は万物を創成する始まりの光であり宇宙を終わらせる破壊の光でもある。此れが駄目なら正直打つ手が無くなるがラグナに託されたこの力で負けるビジョンが思い浮かばない。

 

 

「(不思議……根拠なんてないのに此の一撃で勝敗が決まる……そんな気がする)」

 

 

 四枚の羽を天高く発光させる姿は地上に顕現した<契約の天使>、<天の書記>、<神の代理人>を連想させる。

 

 

「すごい……!?(マスター)にも劣らない出力を出せるなんて……太陽があればもっと力を出せるのですが無い物ねだりは出来ませんね。……小さき戦士よ。耐え得るものなら——————」

 

「「耐えてみろ!」」

 

「<メタトロン・レーザー>!」

 

 

 光線が空間を消滅させシュプリッターを呑み込む。

 眩い光が一瞬で消失すると直撃コースにあった断絶結界が今も存在していた。

 

 

『私ノ……負ケ……成程。分子サイズのものは通さないが光子。素粒子は素通りするのか……。悪魔の霧(ネッビア)にも対応できなかったかもな」

 

 

 左半身は無くなり鏡の仮面も口元が割れ僅かながら下半分の素顔が窺える。 

 

 

「金薔薇様の勝ちです。此れでワタシは安心して逝けます。約束の品を……ドウゾ』

 

「何者なの?その体は人の肉体ではない。中身が無い、空っぽだ」

 

 

 左半身は消滅しそこから右半身にかけ亀裂が走っている。右腕を動かすたびに"キシキシ"と錆びたブリキ人形を連想させる。

 

 

「私は所詮破片。シュプリッター(オリジナル)破片(シュプリッター)。オリジナルの分身に過ぎません。ですガ。灰薔薇の監視の目を唯一逃れ。オリジナルノ意思を継ぎ。後は金薔薇様に託すコとが出来まス」

 

「これは……破片?」

 

イデアの破片(オリジナルシュプリッター)の一部デス。私が私の器たりうる核。仕込みハモう済ンデいます。此れに魔力を流し込むだけで■■■■は問題なく起動します。デスガ。起動するだけで正しくは発動しない。ソコデ——————」

 

 

 順序。

 段階。

 手段。

 

 説明を聞き終える。確かにそれがあれば発動するかもしれない。けどそれは——————

 

 

「……分かった。後は任せて、私が成し遂げる」

 

「アリがトう——————ゴざいマす。最後ニ。サイゴニ。"ワタシ"からノ伝言ヲ伝えます。——————"ワタシは囚ワレている。灰薔薇ヲ守護する結界の核としテ。ワタシを止メレバ結界に使われているイデアの破片(シュプリッター)ハ機能を停止する。此レヲ『私』を破った者に伝える"……以上デス」

 

 

 "パリン"っと右腕が肩から外れる。耐えきれなくなった右足の足首が砕け膝で着地するがまた砕ける連鎖が続き胸から上だけが残る。

 

 

「こ……此処マデノ様デス。誰カニ看取ラレルノモ……。マタ……。オ会イシマシょウ』

 

「えぇ……また……じゃあね」

 

 

 鍵穴は見つけた。閉ざされた扉を開けるため、手に入れる。

 "鍵"は形のない虚空なモノ。ソレを手に入れた時——————は完成する。

 

 

「他の貴方に出会ったら……始めましてかしら……」

 

 

 その呟きを訊くことはなく。表情()は口元しか見えなかったが、どこか、嬉しそうな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一週間では無理だったか・・・・・・
最終話まであと少しです。最後までお付き合い下さい。

感想、アドバイス等お願いします。
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